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Behind the Music
デビュー35周年。生まれついての吟遊詩人は、今日も新しい歌を探し続ける。 - Vol.12 あがた森魚 あがた森魚
■インタビュー/文:村尾泰郎 ■デザイン:SQIP Inc. 掲載日:2007.10.25
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 72年に「赤色エレジー」でメジャー・デビューして以来、つねに時代とリンクしながら独自の世界を展開してきた、あがた森魚。デビュー35周年を迎えた今年、過去の名作が紙ジャケで続々とリイシュー。そして、長年のテーマでもある作家・稲垣足穂にインスパイアされた新作『タルホロジー』がついに完成した。セルフ・カヴァーや新曲を織り交ぜながら、久保田麻琴とのコラボレーションでパノラマの如く広がる〈あがた宇宙〉。その唯一無二の世界をたっぷりとお楽しみあれ。
--新作『タルホロジー』は久保田麻琴さんがプロデュースされてますね。どういった経緯だったんですか?
 まず2001年に『佐藤敬子先生はザンコクな人ですけど』というアルバムを出したんですが、そこで部分的に関わってもらってたんです。彼とは20世紀の終わりくらいから〈いろいろアルバムを作りたいね〉っていう話をしてて。いろいろ準備作業を進めてたんだけど、それがようやく形になったという感じですね。
--アルバムはカヴァー曲が多いですが、そのあたりの選曲も久保田さんが?
 そうです。アレンジはもちろん、曲順から参加ミュージシャンまで、全面的に彼に任せて僕は歌い手に徹しました。
--オープニングで鈴木慶一さん、細野晴臣さんをゲストに迎えて「東京節」をカヴァーされていますが、デビュー当時の雰囲気がありますね。
 そう、ちょっと大正モダニズム的な。久保田さんに言わせると、日本の近代とブラジル音楽の融合みたいなことを狙いとしたみたいで。
--ブラジル音楽というと、ルイス・ゴンザーガの名曲「白い翼」がカヴァーされています。
 ブラジルでは誰もが知ってるような曲なんだけど、すごく良い歌で。いろんな人がカヴァーしてて、どれも素晴らしいんです。ちょっと畏れ多かったんだけど、久保田さんが勧めてくれて。シルベリオ・ペソーアとデュエットすることになりました。
--『タルホロジー』というタイトルからいくと、稲垣足穂と関連深い「雪ケ谷日記」「弥勒」といったセルフ・カヴァーが本作のキモなんでしょうか。
 “弥勒”って僕のなかで稲垣足穂と繋がっていく大事な曲だから、簡単にはレコーディングできない曲なんです。あれは『ALBUM#1977』で完結しているから、リメイクするのは難しいって久保田さんに言ったら、〈だったらアルバムのタイトルを『タルホロジー』にしましょう〉っていう絶妙な提案があって。〈え~、そんなタイトルにしていいの?〉って、こっちが言ったくらい(笑)。〈だったら、こんなのもあるよ〉って“雪ケ谷日記”を持ってきたんです。
--あがたさんと稲垣足穂との出会いは、どんなものだったんですか?
 最初の最初は高校時代なんだけども、同級生が〈こんなヘンなのがあるよ〉って見せてくれたのが『一千一秒物語』だった。最初はよくわかんなかったし、奇妙な作家がいるなというのが第一印象だよね。文学っていうのは、一時期集中して読んで、忘れ、またひっくり返して読んで……。そのうち淘汰されて残っていくものがあるんだけど、そんななかで、気がつけば稲垣足穂がガーッと僕の前へ出てきた。坂口安吾と谷崎潤一郎と稲垣足穂、この3人に日本の近代文学のエッセンスが凝縮されているんじゃないかと思いますね。これは非常に勝手な主観だけど。
--あがたさんの作品で稲垣足穂がキーワードとして全面に出て来たのは、80年代に入ってからのような気がします。今回、紙ジャケ再発されたヴァージンVSを始動させて以降というか。
 やっぱり、メカニカルなテクノロジーというのは何でこういうとこに来ちゃったんだろう、という疑問に対するひとつのリアクションとして、ニュー・ウェイヴと稲垣足穂を照らし合わせてもいいんじゃないかという気がしたんです。それと、これはいま喋りながらハッと気づいたんだけど、稲垣足穂が77年に死んでるんです。だからちょうどニュー・ウェイヴが立ち上がった頃なんですよね。僕は77年に“スターカッスル星の夜の爆発”っていう曲を作ってるんだけど、それが稲垣足穂そのものを歌にして表現していくとっかかりになった曲なんです。
--最近リリースされた『あがた森魚コンサート~『永遠の遠国』at 渋谷ジアン・ジアン』は、その頃のライヴなんですか?
 あれは78年。ほんとは『永遠の遠国』完成ライヴにしたかったんだけど、結局、完成するまで8年かかったんです。最初は2、3ヶ月あればできるだろうと思ってたんだけど。それを置き土産に音楽活動を一区切りして旅に出ようと思ってた。でも出来上がらないから、その中継ぎ的に『乗物図鑑』を作り、それがヴァージンVSになって……というのが80年代初頭だった。
--そういう“旅への想い”みたいなものが、あがたさんの音楽を、これまでインスパイアしてきたんでしょうか。
 そこにはグローバルでありたいという意識もあれば、エキゾティックなものに触れていたいという意識もあれば、音楽的にさらに次の要素を吸収してみたいという部分もある。でも実はその背後には逃避願望が入ってたりもして。例えば〈吟遊詩人〉という言葉があるけれども、ひとつのところに留まっていってはいけないんじゃないだろうかと。理屈じゃないんです。〈吟遊詩人〉なんてカッコいい言葉だけど、カッコいいとかカッコ悪いとかじゃなくて、自分は知らないうちに吟遊詩人という定義をやっているんじゃないか、っていう気もする。前のものは捨てて常に新しい自分でいたいっていう、ヘンな使命感。だけど同時に、どこかに自分のルーツを変わらずに温存し続けてもいるんだけど……。だから今回のアルバムには旧曲もありつつ、35年目のあがた森魚もそこにある。でもね、次のアルバムでは、どこへどういうふうに逃避したいのか、どこでどういうふうに前進したいのか、というのをもうちょっと明確にしたい。今度はここに新たな砦を見つけたんだという。次はそういう意識で展開したいぞ、展開できるんじゃないか、どうだ!?というのはありますね。
 
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あがた森魚 リリース情報
あがた森魚のNEW STANDARD!
久保田麻琴魔術(マジック)によるパノラマ・ソングス!


Taruphology / あがた森魚
『タルホロジー』
ブリッジ
EGDS-26 / ¥2,800 (tax in.)
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01. 東京節
02. サブマリン
03. 百合コレクション
04. SexiSexi
05. 白い翼
06. 骨
07. いとこ同志
08. 雪ヶ谷日記
09. 弥勒
10. 午後4時のアメジスト
11. あともう一回

プロデュース:
久保田麻琴
ゲスト・ミュージシャン:
細野晴臣、鈴木慶一、武川雅寛ほか
あがた森魚 ライブ情報
新アルバムリリースツアー
『Taruphology Tour』決定!


出演:あがた森魚(Vo., A.G.)・武川雅寛(Vn.)・高橋佳作(Key., Acco.)・五十川清(Per.)・田口昌由(B.)

2007年10月27日(土)
東京キネマ倶楽部
ゲスト:久保田麻琴、鈴木慶一ほか
開場18:30 開演19:00
前売¥4,000 当日¥4,500
(税込・全席自由(整理番号有)1drink付)
お問合せ:アーク(TEL: 03-3311-0999)

2007年10月29日(月)
名古屋・クラブクアトロ
開場18:30 開演19:30
前売¥4,000 当日¥4,500
(税込・全席自由(整理番号有)1drink付)
お問合せ:名古屋クラブクアトロ(TEL: 052-264-8211)

2007年10月31日(水)
大阪・心斎橋クラブクアトロ
開場18:30 開演19:30
前売¥4,000 当日¥4,500
(税込・全席自由(整理番号有)1drink付)
お問合せ:大阪・心斎橋クラブクアトロ(TEL: 06-6281-8181)

※チケット取り扱い:ぴあ/ローソン/イープラス
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