MUSICSHELFトップ>特集・連載>RHYMESTER インタビュー

Feel the Music vol.110

ONCE AGAIN~帰って来たキング・オブ・ステージ - RHYMESTER

■インタビュー/文:久保田泰平 ■コーディング:Astrograph 掲載日:2009.10.13

 感動の武道館公演から2年半。男たちが帰って来た。厳密に言えば、クラブやフェスにおける単発的なパフォーマンスがいくつかあったので、“新作を携えて”帰って来た、というベキか。とにかく、“KING OF STAGE”RHYMESTERの本格的再始動の幕が、3年半ぶりのシングル「ONCE AGAIN」でドラマティックかつエモーショナルに開ける時が来たってこと! さっそく宇多丸、Mummy-D、DJ JINの3人にマイクを向けてみようじゃないですか!

--この2年半あまりのあいだ、各々個人活動をしてきたみなさんですけど、メンバーの中でも比較的ハデな舞台に出る機会が少なかったDJ JINさんに、まずは“2年半”を振り返っていただこうかと思うんですが。

DJ JIN:この2年半は……まあ、おおまかに言うとDJをやりつつ、プロデュース、リミックスなどをやりつつっていう活動を、そこそこ追われる感じでやってまして。オレの個人的な音楽の趣味って一般的には全然知られていないタイプの新しいジャンルだったりするんですけど、そういうところをより多くの人に知って欲しいっていうのは昔からあって、それを届ける作業をやり続けてきたっていうか。ぜんぜん届かねえなっていう歯がゆさもあったし、かと思えば、意外なところからプロデュースの依頼が来たりっていうのもあったりして、少しずつ手応えはあるけれども、まだまだって思うところのほうが多かった感じですかね。音楽それ自体と取り巻く環境を変えるために相変わらずもがき闘い続けているというか。この2年半のあいだに、ヒップホップも含めて音楽がすごく変わって来てるし、常に経験値を上げながら、新しいHow toも身につけて、常に第一線に立って勝負できる“自分磨き”みたいなところは怠らず……やり続けないと終わっちゃうから、それは自分の感覚を研ぎ澄ませながら必死にやってて、まあ、そうすることが結果的に「やっぱRHYMESTERヤベえな!」っていうところに繋がってくるから、とりあえず、うん、常に必死に、自分ができることはなんだろう?っていうことを実直に問いかけながら活動してましたね。

--宇多丸さんは、ミュージシャン/MCというより、ラジオのパーソナリティーとしてのご活躍が目立って。そもそもその筋の人だと思ってる番組リスナーもいるんじゃないかと……いや、そんなことはないか。

宇多丸:いやいや、いますよぜんぜん。大量にいる。“ライムスター宇多丸の……”の“ライムスター”って何だろう?って、とくに気にもしてない人はいっぱいいる。そうじゃないと数字(聴取率)的におかしい。

--異なるフィールドからRHYMESTERにフィードバックできるものってどんなことです?

宇多丸:それはねえ、ものすごくいっぱいあって。たとえばそうですねえ、これは最終的にDがマボロシとかでやって到達した結論とまったく同じところにいったんだけど、やっぱり、届けるためにもうひとメソッド必要だじゃないですけど、いままで自分たちがやってきたことが間違ってたとは言わないが、届けるためのもうひとブラッシュアップが必要ってことですかね。オレ自身がやってることの核は変わってないというか、すごくエッジーなことも言ってるんですけど、それを届ける時に、やっぱりその、届け方とか入口の設け方とか次第でひとりよがりになるか、一般的に届かないと思われていたものでもちゃんと届くじゃないかっていうふうになるかっていう分かれ目があって。要するに、“届ける”ってことの重要性と厳しさみたいなことですね。あとは、チームワークの重要性。それぞれイイ仕事をする人には任せるじゃないけど、オレはパーソナリティーだけど全部仕切ってるわけじゃなくて、オレをうまく運転してもらうっていうことも含めてようやく番組が動くっていう。あと、番組で映画の批評とかしててすごく思ったのは、もうちょっとここに客観的な視点を入れられなかったのかな?っていうね、せっかくいい脚本なのに、どうしてそこはそんなに甘くなるのかとか、たぶんチェックする人がいないからなんだろうなとか、やっぱりこれもさっきの話と通じるんだけど、ひとりよがりにならないようにしなきゃなあっていうね、あたりまえのことなんだけど。で、それを実践することで、自分の言いたいこと、たとえばすごくエッジが立った思想みたいなのも意味を持つというか、うん。あたりまえのことだし、かつてRHYMESTERでもそういうことを心がけてはいたんだけど、ここからさらに先に行こうとしたら、そりゃそれだろうっていうことですかね。音を作ること、ラップを作ること、原稿を書くこと、ラジオ番組をやることって、僕の中では線引きがないんですよ。同じ動機を持って、違う方法で出してるっていうことだから。

--さて、ひさびさのニュー・シングル「ONCE AGAIN」で本格的再始動開始っていうことになるわけですが、このタイミングでの再始動というのは?

Mummy-D:あの時はベスト盤出して武道館やってっていう、一段落ついた感じだったので、オレら仲が悪いわけでもないからそのまんま活動を続けていくのもできたんだけど、ちょっと一回、自分たちがやってきたことを見直したりとか、ソロでやりたいことをやって武者修行して、もう一回持ち寄ろうとしたりとか、そういうことするのにちょうどいいタイミングだったんですよ。世の中的にRHYMESTERみたいな音楽を求められる時はまたあるだろうから、そん時にみんなでひとつになってなにかを出すのがいいんだろうねって言ってて。“そん時”っていうのががちょうど今なのかな。

宇多丸:ここでやろう!って決めてたっていうよりは、タイミングを図ってて、こういう方向性ならまたやる意味があるんじゃないかってとりあえず動き出してみたら、それがうまいこと曲として結実したんで、っていう感じですかね。

--「ONCE AGAIN」は、RHYMESTERには珍しくストレートな“応援ソング”になってますね。

Mummy-D:そうですね。いままでにもなにかに対して応援している曲はないこともなかったんだけど、出し方がストレートじゃなかったりとか、ちょっと照れがあったりして。今回は、思ってることをストレートに言おう!ってことで、どれだけそのエモーションをヒップホップに乗せられるかっていうことみたいなのを重視して作った感じですね。

--近年大量生産されている応援ソングに対してのアンチテーゼも含まれているのかと。

Mummy-D:応援歌っぽいものって最近いっぱいあるけど、もっとかっこよくできるんじゃないかとか、もっと深い表現でできるんじゃないかとか、ヒップホップってもっと喜怒哀楽を乗せられるものだって思ってるから、もっとやり方があるんじゃないかっていうのは思いますね。まあ、応援ソング・ブームっていうのは、世の中の厳しい状況を多少は反映しているとは思うんだけど、でも、今回のオレらの曲が世の中に蔓延る応援ソングに対するアンチテーゼっていうことではなくて、どっちかっていうとこれは自分への応援歌ですね。休止してた2年半のあいだにいろんな音楽的試行錯誤をして、うまくできたこともあればできなかったこともあって、アーティストとしての挫折とかもあったりして、そこで感じたモヤモヤを吐き出さないとオレが潰れちゃうみたいな。うん、決して狙って出てきた歌詞ではないですね。

--さすがRHYMESTERというか、巷の応援ソングに嫌悪感すら抱いている僕が聴いても納得できる歌詞というか、みなさんと世代が近いからと言ってしまえばそれまでなんですが。

宇多丸:でもまあ、一般的な応援ソングっていうのは、なんか無責任な感じがしますよね。「夢は叶うよ」とか「君はひとりじゃない」とかさ、いやいやオレのことどこまで知ってんの?って。だから、無責任=上から目線っていう、実は。そういうのと「ONCE AGAIN」に違いがあるとしたら、まあこれはオレの歌でもありってところもあるし、歌の主人公がちゃんと低い位置から話を始めてるというか、あんまり不自然なぐらいの高みに無理クリ持って行かないっていうかさ、「大丈夫だよ!」っていう話じゃなくて、「もうやるしかない」っていうぐらいの話にしとくっていうか。どうなるかわかんないけど、今は勇気を出さないとダメだから、自分に「行ける!」って言い聞かせているぐらいのガンバレソングっていうかね。ダメになりそうな人に向かって「ガンバレ!」って言ってるんじゃなくて、「オレ、やれるだろう! ガンバレよ」っていう話になってるから、たぶんそれで嫌悪感は回避されてると思う。

--今回は外部のプロデューサーを迎えてることもトピックですよね(実に14年ぶり!)。

Mummy-D:いままで自力だけでやってきましたからね。これはまあ、再始動ということで、新機軸としてなにか打ち出したいっていうのがあって。いままで自分たちの考えるRHYMESTERらしさみたいなのを追求してきたので、ここでちょっと外から見たRHYMESTERみたいな視点を入れてみたくなって、それでBACHLOGICにお願いした感じなんです。彼はビートメイカーといより、ちゃんとプロデューサーとしてアーティストの見え方とかまで考えてくれる人なんですよ。結構シンセを使ったアグレッシヴなビートが彼の持ち味だったりするんだけど、オレらの曲に関しては、シンプルかつエモーショナルにみたいな、非常に難しいオファーをして、でも、そこにうまくRHYMESTERらしさみたいなものを入れてくれて、うん、男気あるトラックにしてくれましたね。

「ONCE AGAIN」のCDジャケットのこだわりポイントについて

ONCE AGAIN / RHYMESTER宇多丸:どこかで大きな仕事を終えてきたプロフェッショナルな男たちが、なにやらとてつもない巨大なドラマティック感ともに帰って来た、っていうところですかね。今回、アートワークをお願いしたのは、マボロシとかEXILEなんかも手掛けている中代拓也さんというアート・ディレクターで、中代さんが持ってきた案のなかに、いきなりこの飛行機があって。飛行機がうしろにあってドカーン!っていうのはなにやらドラマティックだし、帰って来た感をいろんな意味で表現しきれてるなあと。RHYMESTERって、いままでアートワークはわりとストイックめというか、シンプルめなのが多かったんですけど、今回は中代さんの足し算イズムで、曲の過剰なドラマティックさみたいなものを表現していただきました。

--ところで、今年で結成20周年を迎えるわけですが。

Mummy-D:お祝い事がそんなに好きなタイプのグループじゃないから、20周年をどうやって盛り上げてやろうかっていうのはそんなにはないけど、やっぱ、10年と20年では違いますね。それは、街の風景を見てても思いますよ。20年のスパンでなにかを知ってる、たとえば渋谷の20年を知ってるっていう人はそういないじゃないですか、ヒップホップ界隈で。10年だと話の通じる人はまだいるけど、20年ってやっぱ違う。街もそうだし、人も変わっちゃうし、音楽も変わっちゃうし、そういう意味での感慨はありますね。

--現在はアルバムも制作中?

Mummy-D:曲は揃ってきた感じですかね。「ONCE AGAIN」以外でも外部プロデューサーを多く迎えてるんで、それに従って、トラックのヴァリエーションが広がってる……っていうことなんだけど、何に乗っても結局RHYMESTERになっちゃうなっていうことを感じてます。

Additional Question

アナログレコードからCD、そして配信、更に最近ではメモリーカードなど時代と共にメディアが進化し続け、それによってリスニングスタイルも大きく変化を続けている。 リスナー側でもメディアに対する様々な意見が飛び交う中、肝心の作り手であるアーティストはこの流れをどのように受け止めているのだろうか。そこで結成20周年を迎えるRHYMESTERの3人にメディアの変化に伴う意識の変化やパッケージへのこだわりについて語ってもらった。

宇多丸:パッケージ・メディアに対するこだわりって、世代固有のものだったりするんですよね、実は。たとえば、あのアルバムのジャケが良かったんだよねって言われても、それが主流だった時期は、音楽全体の歴史からすればものすごく限定的な時代の話で。要するに、一定で固まった音楽の需要のされ方ってないわけですよね。常に、それこそテクノロジーの進化とか、時代の移り変わりによって一定だったことはなかったわけで。だから、大筋の正論としては時代によって入れ替わるものだから……っていうことなんだろうけど、ただまあ、言うてもモロ“パッケージ・メディア世代”だから、こういうものの良さもあるんだよって言いたい気持ちもあるし、やっぱその“アルバム”っていうひとつ完結した作品を作りたいって思うしさ、それこそ推し曲順にアタマから並べるんじゃなくて、ちゃんと起承転結作っちゃったりとかさ、これってある世代からしたらナンセンスなんだろうけど、どうしてもそれは考えちゃう。それは、そういうものがいいと思ってた世代だからしょうがないけど、ただこれが普遍的なものだとも思ってない。

DJ JIN:もちろん、パッケージはものすごく好きなんですけど、たとえばmp3で聴くとか、そういう聴き方が主流になっていくとか、いろんな楽しみ方が増えていく……個人的にいくらパッケージがいいって言ったところでも、止められないし。ただその、音楽で食ってる身としては、まあ、録音物はともかく、ライヴに来た人みんなを満足させていきたいし、まあ、そこそこはやれてるんじゃないかと思ってるんだけど、なんかね、時代とともに楽しみ方や消費され方が変わっていっても、そこには惑わされちゃいけないなって思いますね。真剣に取り組んで考えていかなきゃいけないのかも知れないけど、今は現状のフォーマットで録音物を作って、ライヴをやったりすることに集中すべきと思ってます。

Mummy-D:ジャケがつくことって、音を作ってる側からすると、不本意なものができちゃうと不本意でしょうがないわけですよ。不本意なジャケがつくだけで音楽が台無しになっちゃたりするから、パッケージ抜きで、音楽が音楽だけで売れていくっていうのは良いことなのかも知れないけど、それがたとえばサビだけほしいとかさ、部分売りが可能なこういう時代になってくると、それはもう音楽じゃないだろうって思うし、やっぱそれだけじゃ満足できないようにどんどんなっていくと思うんですよ。やっぱ曲のなかにストーリーがあったほうがおもしろいよねとか、アルバムっていうのが昔は主流だったらしいけど、やっぱアルバムってそのなかにアーティストが込めてる順番とかストーリーがあるからおもしろいよねとか、昔のアーティストのアナログ盤を見て、音楽とアートワークを一体化させたおもしろいことをやろうとしてたよねとか、そういうものが甦ってくるんじゃないかなって思う。