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Feel the Music vol.116

ザッツ・LOVE PSYCHEDELICO!! - LOVE PSYCHEDELICO

■インタビュー/文:内本順一 ■コーディング:Astrograph 掲載日:2010.1.12

 約2年半ぶりとなるオリジナル・アルバムだが、ずっとここにあったような、よく馴染んだ肌触りを感じた。冒険心に満ち溢れたコンセプチュアルな前作から一転、ここに届いた新作『ABBOT KINNEY』に奇をてらったところなど何もない。肩の力を抜き、アコースティックかつ親密なサウンドと温かみのある歌を、シンプルなメロディにのせて伝えてくる。ことさら重すぎるメッセージが立ちすぎていることもなく、だから素直に音楽を聴く喜びを感じることができる。デビュー10年目にして、どこか原点に立ち返ったかのようでもあるふたりに聞いた。

--「こういうデリコを待っていたんだ!」って言いたくなるような新作です。

KUMI:ありがとう。嬉しいねぇ。確かに自分たちの一番好きなところ……自然なところに戻ってきたという感じはあるね。戻ろうって意識もあったし。前作はけっこうハードというか……。

NAOKI:コンセプチュアルだったからね。

KUMI:うん。ちょっとメッセージに寄ったところが強かったから。だから、前作を録り終えたときから、次はもうちょっとナチュラルに帰ろうっていうのがあって。

--『GOLDEN GRAPEFRUIT』のときとは、取り組み方が全然違っていたんじゃない?

NAOKI:まるっきり違うね。前作のときは、自分たちの手くせみたいなことを封印して、音だけに向き合って作ってみようという挑戦だったから。聴いたことのない音が鳴ると、ふたりとも喜ぶ、みたいな(笑)

LOVE PSYCHEDELICO:KUMIKUMI:そうやってとことん音と向き合ったものを作れたから、今回はまたフラットなところに戻ってこれたんじゃないかな。

--ホントにフラットだし、ナチュラルだし。

NAOKI:うん。“ナチュラル”っていうのは、KUMIが最初に言ったコンセプトだったね。

KUMI:そうだね。やっぱりアコースティックなサウンドだったり、カントリーの雰囲気だったりっていうのが一番好きだから。本当は常にそういうのをやっていたいぐらいで。

--ある意味、1stアルバムを聴いてる感覚にも近い感じがした。

KUMI:うん。10年やってきて、また戻ってきたような感覚かもしれないね。

NAOKI:その10年っていうのは、たまたまなのかなんなのかわからないけど、ある意味、これが新たな1stなのかなって感覚もあるよ。

KUMI:日常に戻ったような感じ。

NAOKI:かといって、1stの頃の意識と違うところも当然あって。あの頃なら例えば「LADY MADONNA~憂鬱なるスパイダー~」は絶対にあのリフで始まりたいとか、一個一個のコンセプトを持って作っていて、そうやってなんとか頑張ってできた1stアルバムだったんだけど、今回はもうそういう攻撃的なリフとかにも頼らず、なんの作為もないところで作っていたんだよね。ただ10年間で培ったいろんなことを自然に出して作れたというか。

KUMI:言ってみれば、“作為のないものを作ろう”っていう作為があったわけだけど(笑) でも、そういうものを作ろうと思えば作れるようになったっていうのは、大きいね。

--でも、作為を感じさせないナチュラルでシンプルな音ではあるんだけど、そういう音を見つけるにあたって、すごく時間をかけて綿密な作業をしていることはよくわかる。

LOVE PSYCHEDELICO:NAOKINAOKI:うん。だから、こういうバスドラの音が欲しいって思ったら、バスドラ踏んで、マイクの位置をあれこれ試して、3日間かけてやっと欲しい音ができたみたいな。そういう作業だからね。そうやってレコーディングには緊張感を持って臨んでるわけだけど、曲がアウトプットされるときに、その緊張感も一緒には届けたくないっていう。聴いてる人にとっては、気持ちのいいドライヴ・ミュージックみたいなものであってほしいんだ。でも、耳に残らないカフェ・ミュージックでは決してなくて、極上のドライヴ・ミュージックであってほしいという。

--実際、音のヌケ感が恐ろしくいいから、L.A.の広い道をドライヴしながら聴いたら最高に気持ちいいと思う。

NAOKI:うん。ホントにそういう音になってるはずだよ。そういうイメージをしながら作っていたところもあったし。

-- L.A.の空気感とか、空の色とか、そういったものがすごく反映されたサウンドだよね。

NAOKI:2008年はけっこうドップリ、L.A.にいたからね。US盤を出して、そのプロモーションでアメリカと日本を行き来してて。トータルで年の半分くらいは向こうにいたから。

--そりゃあ、いろんな面で影響受けるよね。

KUMI:L.A.のミュージシャンってみんなすごく自然体なんだよね。音楽が日常にあって、日常的な感覚で演奏してる。そこに影響を受けたね。なんか、改めてミュージシャンでいいんだって思ったというか。

--生き方がわかったみたいな?

KUMI:あ、そうそう。デリコやってるからこういうこともやる必要があるんじゃないかとか、もっとこうしていかなきゃダメなんじゃないかとか、そういうんじゃなくて、ただスタジオに行って音を出すのが仕事なんだっていう純粋なところに戻れたんだよね。なんのために作ってるんだろうとか、これからどういう方向に進むべきかとか悩んで音楽をやるんじゃなくて、ただ楽しんで音楽をやればいいんだって。もちろんやるときはストイックになるけど、精神的にラクになれたよね。純粋な気持ちに戻れた。それが大きいかな。

NAOKI:『ABBOT KINNEY』の音を聴くと、そうやって音楽を楽しんでいることも全部わかるでしょ? ホントに向こうでは“ABBOT KINNEY”のような日常だったからね。“BEAUTIFUL DAYS”だったし。

KUMI:こういうテンポ感で、ABBOT KINNEY(=L.A.のベニスにある通りの名前)を歩いていたしね。ゆっくりすぎず、早すぎず。そういうテンポ感が音楽にも出せればいいなと思っていて。ここから先も、こうやって歩いてるぐらいのテンポ感で、まず自分たちが楽しんでやっていけたらいいね!