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世界の楽屋から vol.18

直枝政広(カーネーション)の楽屋から

■インタビュー/文:加藤賢崇 ■協力:フォーチュンテリングカフェ 占・茶(SENCHA) ■コーディング:Astrograph 掲載日:2012.10.12

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さて、この連載では第5回目に登場いただいたカーネーションの直枝政広さんですがもう3年もたってしまいました! あれからいろいろあったしなあ。そろそろ、また顔を出してもらっとかないといけないじゃろう。そして、あの大作アルバム『Velvet Velvet』から3年、やっと待望のニュー、フル・アルバム『SWEET ROMANCE』が完成したそうです! 今回ラジオの生放送に出られる前の時間にスキをついて下北沢で直枝さんをキャッチしてきました!

賢崇:「あれから、いろいろありましたが、前回もシングルが先行で出てアルバム、今回もミニ・アルバム『UTOPIA』出て、しばらくたってフル・アルバムという流れになりましたね」

直枝:「いきなりメンバー2人になっちゃったりしてね、スムーズにアルバムにいけない状況とかあって。ライブで建て直していくんだけど」

賢崇:「ドラマーが大きいですかね。前作の中原由貴さん(タマコウォルズ)から、ライブでは宮田繁男さん(ex.オリジナル・ラブ)が叩いてた時期もありましたよね?」

直枝:「あとPOP鈴木さん(前野健太とDAIVID BOWIEたち)と、3人で交互にやってて。去年の9月くらいから、張替智広くん(HALIFANIE、キンモクセイ)。グッとこっちに前向きに入ってきてくれる感じがいちばん自然だったというか」

賢崇:「今回のアルバム1枚まかせられるドラマーがやってきた、という」

直枝:「もちろん、ぼくはPOPさんのドラムも好きだし、宮田さんにも、すごい煽られるものあるんだけど。こればかりは、なんか不思議なんだけどね」

賢崇:「プレイ・スタイル以上に、今の自分の気持ちにしっくりくる、みたいな」

直枝:「大田くんもそうだと思う。大田くんがいちばんうるさいんでね。リズムに関して。」

賢崇:「昨年、震災があったことも、この作品には反映しているんでしょうね」

直枝:「うん。あるよね。ない人はいないんじゃい? そのまんま引き続きなんだよね。あの状況はずっと続いていく、てことが自分の中に覚悟としてあって、このアルバムが生まれてきた、ってことがわかった」

賢崇:「ざっくり言うと、メロウな曲が増えている感じはしますね」

直枝:「そうね。ダウナーではないんだけど。去年は割とフテ寝してたんですよ(笑)。自分の心が急に冬眠に入っちゃったようなところがあって。みんなそうなんじゃない?」

賢崇:「ま、去年はね」

直枝:「内側見ちゃうよね? それでもライブをやったし、ミニ・アルバム作って、よかったな、と。そのままフテ寝してたら、フテ寝の理由ってどんどん増えてくるから、たぶん止まっちゃったと思う。あえて動いたことでよかったのかな(笑)」

賢崇:「今作の「I LOVE YOU」て曲は、昔やってた曲なんですか?」

直枝:「やってないんですよ。これは『天国と地獄』ってアルバム用のデモとして作って、91年かな? その頃のカーネーション自体が割とヒップホップとかダンス・ミュージックの影響でトンガってる時期だったんで、ちょっと路線が合わないな、となったのかな。ストレートなポップ・ソングだから。まあディレクターとかからは「パーッと抜けたような曲作って」とか常に言われてて、ぼく自身もスキあらばポップな曲を書こうと思ってたし」

賢崇:「それ以外の今回用に作られた曲はやはり、ゆったりめで、ブルージーな曲調もありますね」

直枝:「空間がグッと深くなるような、ね」

賢崇:「カーネーションはずっとそうなんだろうけど、今回はとりわけ、構成がアナログ・レコードっぽいですよね。A面B面の区切りがハッキリしている」

直枝:「とってもわかりやすいですよね。『リボルバー』的な(笑)」

賢崇:「A面最後の曲がまたB面の最後に来るのも」

直枝:「どこか『サージェント』的な(笑)」

賢崇:「曲から拡がる風景も、これは都会じゃないですよね。A面は街なんだけど、どこかの地方都市みたいな。B面は自然の中ですね」

直枝:「心の中の風景が映し出されてるとこ、あると思うよ。「口笛ふいて」って曲は生まれた土地を離れなければいけなくなった子供たちの歌。きれいな水のある場所からね」

賢崇:「カルピス名作劇場とか思い浮かびますね(笑)。ハイジとペーターが馬車に乗って」

直枝:「水車とか。ほんとそうだね」

賢崇:「お菓子のカールのCMとかも想像しますね」

直枝:「「遠くへ」という曲も、自分の子供の頃の東京近郊の空も浮かびますね」

賢崇:「B面は「Gimme Somehing, I Need Your Lovin'」から、パーッと太陽があって草原があって、アウト・ドアな感じ、曲が進んでいくにしたがって夕暮れになっていき、と。曲作ってるときはバラバラなのかもしれないけど、並べてみるとひとつのストーリーが見えてくるんですね。「遠くへ」なんて、歌詞の中に「どうやっても動かなくなった船もある」ていうフレーズを聴くと、なんかムーンライダーズに向けて歌ってるのかな?とか。憧れて追っていたバンドが活動停止した寂しさをこめて(笑)」

直枝:「それ、違うよ(笑)。曲は2年前にできてたんだもん。震災より前だし」

賢崇:「どうしても深読みしちゃいたくなるじゃないすか。その前の「未来図」ってナンバーとか、直枝さんの曲を大田さんに歌わせていて、ああカーネーションのバンドの未来図を大田さんに託しているのか、と。お前はおれから離れないで、ひとりにしないでくれよ、みたいな(笑)」

直枝:「それは~全然違うよ~(笑)」

賢崇:「グランドファーザーズも復活したことだし(大田がカーネーション以前に参加したバンド。今年、10月に20数年ぶりに新譜をリリース)そっちへ戻るのかよ~、みたいな」

直枝:「いや、戻ってもいいけどさあ(笑)。これはバンドの未来図というより、完璧に、震災以後の歌だからさ、とってもヘヴィなものを孕んだ内容ではあるけれど最初から大田くんに1曲歌ってもらう予定で書いてたから。で、夢のある歌だから、って説明」

賢崇:「夢のある歌、といっても「世界はぬかるみと破れた地図で出来上がってる」なんてフレーズもありますね」

直枝:「そこから子供達が壁に描いた未来図からチョークでまっすぐ線を、道を伸ばしていくイメージ」

賢崇:「その前の曲「UTOPIA」に「川を流れていった一面の花びら」て歌詞があり、「未来図」も最後は「無数の花が舞う」で、花でつながってるんですね」

直枝:「そこをちゃんと花で飾りたい、花で埋もれてみたい、て気持ちがね」

賢崇:「アルバム・タイトルの『SWEET ROMANCE』にも合ってきますね」

直枝:「ジャケットも森の中、何重にも色が重なって、ある意味サイケデリックだよね」

賢崇:「A面はほんとにサイケというかドラッギーですよね。1曲目からずっと夢の中とか、眠りから覚めてるのかどうなのか、みたいな感じがずっと続きますよね。この「Spike & Me」で共演した大谷能生さんはどういう経緯でコラボを?」

直枝:「彼は2007年にぼくが書いた本(『宇宙の柳、たましいの下着』)の書評も書いてくれていて、今年たまたまイベントでちゃんと出会ったのね、実はカーネーションを以前から大好きで聴いててくれたようで、ぜひ何か、と向こうからアピールしてくれて。その後、彼の講演も聞きに行ったり、交流を深めつつ、曲が出来てからも充分考えて、このサイズでこうすれば彼のプレイが活きるはず、と確信できてからオファーしました」

賢崇:「そこへ自分じゃない人の歌詞が混じるってことへは?」

直枝:「全然ウェルカムで。どんどんイメージが交差して混沌としていったほうが面白いし」

賢崇:「意外にしっくりきてましたね。まったく違和感がないというか。今回様々なゲストミュージシャンが参加されてますが、キーボードにはソウル・フラワー・ユニオンの奥野真哉さんやリクオさん、サックスに梅津和時さんというのも意外ですね」

直枝:「震災直後にとあるBarで梅津さんとレピッシュのTATSUくんとインプロをやったんです。そこでできた曲がミニ・アルバム『UTOPIA』に入ってる「女川」って曲になったんだけど」

賢崇:「そのときが初対面だったんですか? お互い業界に長くいるのに」

直枝:「梅津さんと昔一緒やってた篠田昌已さんとは80年代から知り合いだったのにね。でも何十年という流れがあって、今、出会う運命、というのが人生というか、面白いですね」

賢崇:「そうやって梅津さんが今、カーネーションに共感してくださっているのもうれしいですね。梅津さんのサックスが聴こえてくるとうれしくなりますよ」

直枝:「無理せず、何年もかけて自然に出会うべくして出会う感じでいいじゃないですか。岸野雄一くんとも昔から知り合いで、彼のアルバム(『80年代詩歌集 A to 2』)なんて、ぼくのiTunesの再生数1位だったりしたんですけど(笑)。あと、5年前くらいにたまたま錦糸町の天下一品(ラーメン屋)でバッタリ会ったりとか(笑)ちゃんと仕事をしたのは3年前の1月かな」

賢崇:「それが3年前のこの連載で取り上げたときのライブですよね」

直枝:「そこで演奏してた宮崎貴士くんと岡村みどりさんと出会い、夜の下町にステーキを何度か食べに行ってます。その頃から、いつか音楽一緒にやろうね、っていう話してて、3年たち、宮崎くんとは去年一緒にライブやったけど、今回ようやく岡村さんにレコーディングをお願いできた。ここまで来るのにも時間かかってる(笑)」

賢崇:「出会ってすぐ、なんかやろ、ていうんじゃなく自然な感じがいいですね」

直枝:「自然というか必然というか、グッと高まるときが来るんだね」

賢崇:「岡村さんのアレンジ、オーケストレーションは、ぼくも昔出した自分のソロアルバムで、一緒にレコーディングしましたけど」

直枝:「ああ『若さ、ひとりじめ』(笑)」

賢崇:「ひとりで、打ち込みで、よくここまでゴージャスな感じが出せるな、と」

直枝:「特別な才能ですよね。他にいないと思う。あんなすごい人」

賢崇:「この「Bye Bye」という曲が2バージョン収録されてますが、エンディングとか、ディズニー映画のサントラみたいな、アルバムが大団円に向かっていく感じ」

直枝:「ほんと、そうです。で、岸野くんがギチギチに音圧を詰め込まない優しい音にしてアルバムを締めくくってくれたんです。計算できる彼らのプロデュースのうまさ。いいコンビネーション。素晴らしいですね。岡村みどりさんに「Bye Bye」のホーム・デモを聴いてもらったら、とっても共感できる詞だと。感傷だけではなく力強く手を振ってさよならを言える態度がいいって、その歌詞にすぐ反応してくれた。まず、歌の世界のに入ってきてくれたんですね。その意思を理解してくれたんですから、それなら、こっちも音に注文なんかしませんよ。もう後は何が出てくれるか楽しみでしたね。ヴァン・ダイク・パークスみたいに、とか、最初っからそんなこと言いませんよ。言うこと何もない」

賢崇:「まあ、どんなゲストも直枝さんの歌の世界を最初からわかってくれる人なら、それだけで大丈夫ですよね」

直枝:「説明しないんですよ、つまり、ゲストの方を選んで、呼んだ時点でぼくらの音にずばっとハマるようになっているのだから、それがアレンジということなんだから、現場ではほぼ「最高です!」しか言わない(笑)。あとは気持ちよくなっていただく。奥野くんとかはぼくらと音楽やるのがうれしすぎるのか、過剰なほどいろんなアイデア考えてくれて音を重ねるんだけど、やめて! もういいよ!って(笑)。おれたちたまにはトリオでもやるし、後で再現できないから困る、とは言いました」

賢崇:「うれしい悲鳴ですね!」

直枝:「そうやって笑いながらだけどね、みんながカーネーションに気持ちを注いでくれて、とても助かってます」

賢崇:「そして、もう一度その直枝さんの歌に戻りますと、今作には「祈り」というキーワードもたくさん出てきますね」

直枝:「そうですね。ぼくも今まではひとつの枠の中で同じ言葉が何度も出てこないよう気をつけてエディットしてきたつもりなんだけど」

賢崇:「今回のアルバムは何曲も同じ言い回しが続いたりしますよね」

直枝:「そこを今回は、そのままにした。重なって当たり前だから。エディットする必要がない。今の気持ちはそういう気持ちなのね。祈りって言葉が何度も出てくる。理由はわかんない。今音楽をやるってことはぼくにとって、そうなんだろうなってだけで」

賢崇:「祈りって言葉はシリアスで沈痛を思い浮かべるけど、それよりここでは全体がSweetだから、祈りさえも甘い」

直枝:「去年の3月15日くらい、フテ寝してたとき(笑)、枕元にAMラジオつけて、寝てたんすよ。寝るしかないな、って。そこへラジオからスティービー・ワンダーの「太陽が当たる場所」が聴こえてきたときの陶酔。すごかったんだよね。その音楽の響きは、忘れられないものがあったんだ。それで目覚めていくんだけど。とっても救われた。あれはぼくにとっての音楽的な『SWEET ROMANCE』と言える体験だった。今、に通じる何かがある。ドン底で音楽に助けられた。忘れないね」

賢崇:「ゴロゴロしてるだけのときに、太陽が!」

直枝:「つながっているですよ、いろんなことが。そうやってアルバムができてくんだな、って、今回は特にでっかいね、それが」

賢崇:「この先、ここまでいろんなことがあったら、もう何があっても、続いていくだろう、って感じですかね。ずっと続けてくださいよ!」

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