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世界の楽屋から vol.20

白井良明の楽屋から

■インタビュー/文:加藤賢崇 ■コーディング:Astrograph 掲載日:2012.12.11

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昨年末、ムーンライダーズ活動休止のニュースはファンをたいへんガッカリさせたものですが、それから1年、各メンバーはそれぞれが精力的にソロ活動を開始。みなさん各自が、他のアーティストのプロデュースやレコーディングやライブに参加したり、加えて、ソロアルバムを発表したりライブをやったりするもんですから、案外今年のほうがファンも休む間もなくなっていた!

ザッと申しますと、鈴木慶一さんは北野武監督「アウトレイジ・ビヨンド」のサントラ、蜷川幸雄演出の舞台「ボクの四谷怪談」のサントラ、高橋幸宏さんとのユニット「ビートニクス」での久々の活動。鈴木博文さんは主宰レーベル「メトロトロンレコーズ」25周年記念ライブに、美尾洋乃さんとのユニット「ミオフー」の久々のアルバム。武川雅寛さんは16年ぶりのソロアルバム『dregs of dreams』をリリースし、地方をツアー。岡田徹さんも19年ぶりのソロアルバム『架空映画音楽集 II ~エレホンの麓で~』をリリース、さらに主催レーベル「VALB LABEL」からアイドルユニット「新チロリン」男性デュオ「レクト・ベルソ」と新人を送り出す。かしぶち哲郎さんも、ひさびさのソロライブを行なう予定。

そしてギター番長・白井良明さんも! なんといっても今年は盟友あがた森魚さんの40周年記念アルバム『女と男のいる舗道』のプロデュース! そのリリース後のライブには意外とライダーズ全員が駆けつけてたりして。そしてご自身も、ミュージシャン生活40周年記念、20年ぶりのソロアルバム『PORTRAIT OF A LEGEND 1972~2012』を完成させたよ! つってる間に、実は筆者が司会を務めたイベント「小川美潮singsチャクラ」(11月15日、渋谷O-west)にもギターで参加されてましたよ!

賢崇:「いや、お疲れ様でした。仙波清彦さんや元PINKの矢壁アツノブさんなど、豪華メンバーの特別編成バンドで。チャクラの曲も20年以上ぶりにステージで演奏されましたが、良明さんは初体験の曲ばかりで12曲。アルバム1枚作るのと同じくらい大変ですよね」

良明:「板倉文ちゃん(オリジナルチャクラのギタリスト)がどういう弾き方なのか、よくわからないんだよね~。むずかしくてさあ。最初に矢野誠さんがプロデュースしたときの譜面とかも出てきたんだけど、譜面通りに弾こうとしてもレコードの音と違ったりして。チャクラの歴史は充分素晴らしいけど、まったく同じでもつまらないし。すごく苦労したね~。」

賢崇:「まだ今後も様々なライブに参加の予定も入ってて、まったくお忙しいですが、ソロアルバムもやっとできましたね~。まあ、その制作過程とかすでにぼくらはフェイスブックなんかで着々と拝見はしてましたが。今回、作詞作曲もすべてご自身なんですね。演奏も?」

良明:「ゲストが入ってる部分以外は、ベースもドラムの打ち込みも。全体で7割くらいはそうかな。まあ歌詞は1曲目のせいこうさんのラップだけ。せいこうさんの歌詞です。」

賢崇:「80年代なかば、ちょうどムーンライダーズがポニーキャニオンに所属してたころ、同じキャニオンで、いとうせいこうさんも高木完&藤原ヒロシのタイニイパンクスと一緒にデビューしてましたね」

良明:「テントレーベルのイベントで司会やってもらったりね。でも、その頃から顔見知りではあったけど、近しくなったのは、ここ3~4年かな? せいこうさんの家が浅草のほうで、花火大会のときなど花火がよく見えるからって酒持って遊びに行くようになって。飲み友達に近い感じ? だからラップも最近ロロロ(クチロロ)でやってるラップを聴いてすごいなあとか思って、買いました!」

賢崇:「ああ、昔やってたラップとかは、あまり聴いてなかったと。新しいファンですね!」

良明:「そうそう。まあ今回は以前一緒に音を紡いだ多くのアーチストと再会するのがテーマの一つだったんだけど、一人くらいは初めての人と共演したいと。新たなドアを開けようと。丁度インスト曲が先にあって、これにラップ乗せたらいいかなあとか思って、せいこうさんに電話したら、二つ返事で「やりましょう」って言ってくれて」

賢崇:「先に音があったのかあ。確かにヒップホップのトラックとは違った感じですよね」

良明:「せいこうさんも、なんか爽やかですね~とか言ってくれて。打ち合わせた通りにはEDITしましたが。ぼくあんまりヒップホップ知らないから(笑)」

賢崇:「ラップにギター入れるとか、ヘヴィな音になりがちなとこだけど」

良明:「これはアンプも通してない、ラインそのままの音だね。せいこうさんのラップがね、40っていう数字をすごく生かしてくれて、またライダーズの歌詞をよく知ってるんだよね。影法師とかdon't trust over 40とかさ、ボコボコ入ってきて、すごくうれしくなっちゃってさ。セレブレイション的な感じにしてくれたから大感謝。1曲目に持ってきちゃった(笑) ぼく用のラップも書いてくれてオツな贈り物に感激だよね。」

賢崇:「ヒップホップ的な世界観て、ぼくたち周辺にはないじゃないですか。ニューウエーブ出身の人とか、屈折してたり迷ったり葛藤したりを形にするけど、ラップていうのは確信を持って言い切らないといけないとこあるから、そういうものがあえてほしかったんでは?」

良明:「言葉の飛び込んで来るスピードと説得力はすごいよね。何かを期待してたとこは確か。「floatin '40」て曲になったけど、最初からfloatinてタイトルはあって、浮くってイメージね。良明さんはライダーズで浮いてるんですか? なんてギャグもまじえつつ(笑)取材されて引き出されて言葉が出てきたていうか、才能があるんだね~」

賢崇:「もちろん、せいこうさんはニューウエーブ的な屈折した部分も通ってきてるだろうし、そのへんもわかってくれてますよね」

良明:「全部見えてる感じだね」

賢崇:「floatin、浮いてる、って、やっぱ40年ふわふわしてた感じですか?」

良明:「ふわふわね~w NHKの夜中とか、よく山の風景の番組とかずーっとやってるじゃない?あんなようなイメージで曲だけ作ってた。そこになんか、もうひと要素入れたくて、せいこうさん(パン!と手を叩く)て思いついた。」

賢崇:「それが見事にはまりましたね~。ヒップホップもどんどん若い世代が出てきてるけど、ここまでキッチリ職人芸的に韻を踏める人は今の若い人にいないんじゃないかな? 律儀なまでの完成度の高さが、この世代らしさですよね」

良明:「せいこうさんのことはよく知ってるんでしょ?」

賢崇:「若いころは、ぼくも一緒に舞台とかやらせていただきましたけど、やっぱりスキのない人ですよね~。もう一歩先まで常に考えてる人」

良明:「レコーディングも早かったもん。30分くらいで終わったね」

賢崇:「ラップも一緒にやってますよね? 語尾だけw」

良明:「そう。見てておれもラップやりたくなったな~、て思ってたらピッ!って紙1枚渡されて、良明さんこれね!って。おしりだけ歌ってくださいって。(笑)」

賢崇:「この曲もそうだけど、全体的にギタリストのソロアルバムにしては、ギターを弾きまくってる感じがないですよね」

良明:「途中から、あ、ギターソロも入れなきゃ、て思って、あわてて弾いたりしたけど、ディストーションの効いたソロとかないね。さわやかな普通の音ばかりで(笑)」

賢崇:「わざと抑えたんですかね」

良明:「いや、たまたま(笑) 2012年の気分ですよ。なんか歪んだことばっかやってると、さわやかなこともしたくなるんだね。 ギター歪んでるのは2曲くらいで、あとはさわやか。」

賢崇:「じゃ、次の曲から、参加されたゲストを年代順に紹介してほしいんですが、だいたい曲順もその年代にそってる感じですね~。斉藤哲夫さんとの出会いがキャリアの最初なんですよね。岡田徹さんと一緒にバックに参加されてたわけですが、斉藤さんの当時の存在感というのは。。」

良明:「当時はフォークの潮流が、一方に岡林信康さん、三上寛さんとかがいる「如月」って事務所があって、一方にはっぴいえんどとか、はちみつぱいとかの「風都市」があって、あと吉田拓郎さんとか「ユイ音楽工房」等3つくらいあって、哲夫さんはその如月にいたのね。URCレコードの流れというのかな。僕の認識ですが。」

賢崇:「メッセージ・ソング的な感じの人が多いほうですか。斉藤さんはそういう感じとも違いますよね」

良明:「うん。でも、大きなくくりで言うと、そっちに入るのかなあ」

賢崇:「ぼくら後の世代には、ポップな感じの印象が強いですが、当時はフォーク界では女の子にも人気があったりとか?」

良明:「それはやっぱ拓郎さんとかのほうじゃない? 哲夫はアガリ症だから(笑)彼にはある種奔放さがあったね。30分のステージを途中でつまんなかったりすると5分でやめて帰ったりとか(笑)」

賢崇:「良明さんは、岡田さんや武川雅寛さんと立教の音楽サークルにいたわけですよね。斉藤さんはその仲間うちって感じ?」

良明:「そうだね。OPUSってサークルに、はちみつぱいにいた渡辺勝さんとかもそこにいて。哲夫はときどき出入りをしてたような。岡田くんは4つ上の先輩なんだけど、哲夫が一緒にやってくれ、ってことで最初は岡田くんがギター弾いたりしてたらしいのね。でも岡田氏はピアニスト。それでぼくにやってくれって頼まれた(笑)」

賢崇:「その時点で、良明さんはできるやつだ、ていう周りの認知があった?」

良明:「匂いとしての我々サイドだ、みたいな?その程度と思う。まだ1年生でギターはあんまりうまくなかったよ。2年からちょっとうまくなったね。ジャズ研とか入って(笑)」

賢崇:「時代の空気として、みなさん中学高校はベンチャーズ、ビートルズから音楽入った頃でしょ? それが大学生になって日本的なフォークに入っていく感じというのは・・」

良明:「ウッドストックくらいかなあ。あと中津川フォークジャンボリーとか話題になってて。文化祭とかでもギター持って、ハーモニカホルダーとかつけて「夜汽車のブルース」(遠藤賢司)とか歌ったりすると、学校中みんな見に来て、かなりのスターになるわけですよ。女の子がご飯おごってくれたり。これだな、と(笑)いつの間にか染まって。そして如月って事務所があって、いろんなやつが所属してるらしいぞ、そこを目指そうと。就職を考えるみたいな」

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