特集 J 今だから鳴らせる音

■インタビュー/文:なるまゆか ■製作:Astrograph 掲載日:2012.3.21

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2010年のLUNA SEAのREBOOT、そして昨年の、自身のソロワーク14周年のアニバーサリーイヤーを経て、Jが生み出した約4年振りとなるオリジナルフルアルバム『ON FIRE』。エネルギッシュでスタイリッシュなロック然としたシンプルでストレートな音は、Jが真っ直ぐに音と向き合ってきた証であり、生き様にも思える。そして『ON FIRE』リリースと同日、LUNA SEA、12年振りのニューシングル「THE ONE - crash to create -」も世に放たれた。22分オーバーの超大作ですでに話題となっている本作についても語ってもらった。

--オリジナルフルアルバムのリリースは約4年振りということですが、この4年間を振り返ると、どのような時間でしたか?

 2008年に『RIDE』をリリースして気付けば4年という時間が流れて、『RIDE』は俺自身すごく良いアルバムができたなって思える作品だったんだけど、でも良いと思える反面、それだけのものができてしまうと"無"になってしまう部分もあって。絶対的なものを求めて、でもいざそれができてしまうと…っていうね。

--"無"からのスタートだったんですね。

 そう。「もっとこうやったら俺の音は強くなるかな」なんて考えながら『RIDE』のツアーをやって、それから2009年に『STARS FROM THE BROKEN NIGHT』、『Here Comes Nameless Sunrise』っていう2枚のミニアルバムを出したんだけど、この2枚はよりシンプルに自分の音を出す、より自分の音を裸にするっていうアコースティック寄りのアプローチを取った作品だったんだ。全部脱ぎ捨てたところで「本当にロックできんのか」っていう問いが自分の中に生まれて、それに対して「いや、できるはずだ」っていう強気な自分もいたけど、実際は見てみないとわかんなかったりもする。「そうかもしれない」って思ってたことを「確かにそうだった」って思わせてくれたのがこの2枚のミニアルバムだった。

--Jさんの音は常にエネルギッシュでパワフルで、それに加えてこの2枚のミニアルバムは生身のリアルな味わいがするようになった気がします。

 俺が大好きなロックっていうのは、シンプルで強くてエネルギッシュなもの。ずっとそういうサウンドを目指してきて、でもこのミニアルバムのときから少し違ってきたんだ。自分が鳴らしたかった音を、シンプルなアプローチで鳴らせたらかっこいいだろうなって思うようになった。俺は刺激的な過激な音楽が大好きだけど、過度に過激なだけのものは、俺はもうリアリティを感じないし、うるさいだけ、速いだけ、それと例えば、メロディアスなだけとか、そういうものじゃもう俺は満たされないんだよね。そういう意味も込めて、俺なりの音が出来上がったなって思えるアルバムだった。ロックって誰が聴いてもかっこいい音楽だと思うから、変な理屈がないとこで鳴る音っていうか、そういうものを作っていきたいっていう想いが俺の根本にあるんだよね。

--シンプルでストレート、誰でも単純に「かっこいい」と思える音ってことですよね。

 そう。「かっこいいことをやっていきたい」っていう、ガキの頃からなんにも変わらない想いがあって。そういう自分の欲求に素直にならないと自分が存在する意味がない気がしていて。自分の欲求に素直になるっていうのは簡単なことじゃないんだけど、俺にとってそれは音楽を作ることであり、演奏すること。やっぱり冴えない演奏をしたり、冴えない曲を作ったりしたら自分自身が冴えなくなっていく気がするし。自分の中から刺激的なものが生まれるように自分に刺激を与え続けたいなって、今までもそうだったけど、今が一番そう思ってる。

--Jさんってストイックですよね。

 快楽主義者っていう方が正しいかな(笑)。自分がドキドキできることに対してはすごく貪欲だと思う。

--常に刺激を求めて。

 そう。それは日々強くなっていくね。でもね、イヤでも経験はしてきちゃうから、感覚が麻痺するというか慣れてきちゃう部分もあって、そんな簡単なところじゃ動かない自分もいるんだ。例えばすごいおいしいコーヒー飲んでも1回目に飲んだときと2回目に飲んだときでは感動が違うじゃない。って思う様なそういう自分と、それに反発して「いや、そうじゃねえだろ」っていう自分がいて、その2つが常に戦ってる。音に向かう前は特に。

--なるほど。Jさんがよく「リリースやライヴはJっていうソロ名義だけど、やってることはバンドだから」っておっしゃってますけど、ギタリストがmasasucksさん(現the HIATUS)から溝口(和紀)さんに変わったときに改めて、"Jバンド"なんだなって実感できたんです。Jさんの考える"バンド"ってどういうものですか?

 うーん、上手く言葉にならないんだけど、バンドって共同作業なんだよね。誰か一人が手を抜いても成り立たない。それが楽しい。スポーツのチームと同じだと思う。言葉を使えばさ、誰とだって意思の疎通はできるけど、ライヴのあの大音量の中じゃ言葉なんて聞こえないわけ。それでも通じるものがあるんだよね。それを味わっちゃうとバンドはやめられない。

--それがJさんがバンドにこだわってる理由でもありますか?

 俺自身、色んな音楽を聴いてきて思うんだけど、バンドが演奏してる音楽っておもしろいんだよね。人間が持ってる強さとかそれぞれの味が楽器を通して出てくるし、それが重なり合ったのがバンドだから、それはロックバンドだけじゃなくてね。そういう重なりっていうのが、バンドサウンドが好きな理由なんだと思う。

--Jさんのバンドの原点でもあるLUNA SEAを再び動かしたことに関しては、どういう想いでしたか?

 一度止まったバンドを動かすって大変なことで、音作りに対してもライヴに対しても、すべてに対して勝負できなければ、やる必要はないと思ってた。本当に全てをかけなければ、俺たちが求めてる音は生まれないと思うし、やるからにはそういう命がけの音を作り出して、過去を超えた熱量をさらに増やせなければ意味がない。それが出来なきゃ、言ってしまえば残像でもいいわけじゃない?。これまでのDVDやCDがあるんだからそれでだって、誰かの何かは満たせると思うし。

--それだけの覚悟で臨んでいる、と。

 そう。自分たちが動き出すっていうことは今の俺たちでがむしゃらに、むきになってやらなければ成り立たない、そういうものだと思う。だからこそ一つ一つのアクション、物作りには時間がかかる。そこには責任もあるし。

--責任を果たしながらも、5人が充実した濃密な時間を過ごせてるのが音から伝わってきます。

 終幕する前のとんでもないテンションで過ごした月日、それから終幕後のそれぞれの10年、それが俺たちに何をもたらしたか、言葉にはならないけどお互いに感じてることだし、そのときに見えなかったものが見えてるんだと思う。だからこそ、そのときにはなかった何かが生まれてるんだ。当然それはプラスだけじゃなくてマイナスもある。だからこそ、そのなかでいかにプラスのものを生んでいけるか、そういう音を鳴らしていかなきゃいけないなって思う。

--Jさんは、昨年、ソロワークのセルフカバー『FOURTEEN –the best of ignitions-』をリリースして、ほぼ同時期に『LUNA SEA』のセルフカバーもリリースされて、2つを改めてレコーディングしてみていかがでしたか?

 不思議なもんでさ、音楽って何十年後になっても聴き直せる状況にあって、当時自分がやったものがそのまま聴けて、タイムマシンみたいに昔に戻れるんだよね。当時思ってたことや、がむしゃらに頑張ってたこと、そういうものを今回改めて見直してみたら、根本的なものって何も変わってなかったんだ。そこにあった情熱みたいなものが、LUNA SEAで言えば10年、ソロワークでいえば14年、変わらずに今も渦巻いているのが見えたのは嬉しかったな。

--変わらないものっていうのは、エネルギー、パワー、そういう類のものですよね。

 そうだね。衝動というか、音楽と向き合うときの熱かな。

--昨年は確認作業ができた1年になったんですね。

 結果的にね。怖いくらいそういう確認ができるタイミングだった。そこから見えた自分のスタイルやフォーム。今回のアルバムを作っていく上で自分にすごい力を与えてくれたと思う。

--確認作業を経ての今作ですね。

 やっぱりすべてが繋がってると思うね。去年はソロで活動を始めて14周年っていう自分のアニバーサリーイヤーで、かっこいい若いバンドたちとライヴイベントをやって、ツアーもあって、「Jが作る音楽はこういうものでありたい、あるべきだ」っていうのが明確に見えてきて、そこで見えてきたものが今回の『ON FIRE』にギュウギュウに詰まってるんだ。より強くなったサウンドなんだよね。

--『ON FIRE』はいつ頃から制作に入ったんですか?

 レコーディングを始めたのは去年の夏。だからその前から曲作りは始めていて。

--「here we go」は昨年の夏のツアーですでに披露されてましたね。

 うん。去年の夏のツアーの頃には自分自身が作り上げようとしてるアルバムのだいたいの形は見えてたかな。

--まっさらな新曲のリリースは約2年振りで、ウズウズしてたファンも多かったと思います。

 そうだね。そんな時間が経ってたのか、って、それにすら気づかないくらい、この2年は自分のツアーやイベント、LUNA SEAのツアーもあったし、走りっぱなしの2年間だったんだよね。でもこの2年っていう時間があったことが結果的によかったんだと思う。『RIDE』を作り終えたあとで見えてきてたものが月日を重ねたことでさらに明確に見えてきたし、去年は世の中で色んなことが起きて、そこから影響を受けたものも当然ある。時間を経たことで自分たちの向かう場所が見えてきて、それがこのアルバムをさらに力強くさせたかなって思ってる。

--やはり、すべてがここに繋がってる、と。

 そうだね。

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