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特集 Roots of Ishiyan - 石田長生の現在を形成している10の事柄 - 石田長生
掲載日:2006.11.10
■インタビュー/文:久保田泰平  ■撮影:本多 元  ■デザイン:SQIP
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石田長生 ソー・バッド・レビュー、CharとのBAHO、木村充揮と有山じゅんじとによる平成トリオ、さらには国内外におよぶ数々のアーティストとのセッションなど。ギタリスト/シンガー、石田長生がミュージシャンとしての長いキャリアのなかで残してきたソウルフルな名演は数知れず。そんな彼が、このたび4年半ぶりとなるソロ・アルバム、その名もズバリ『Ishiyan』を発表した。11曲+デザート・トラックと称した1曲を加えた全12曲は、それぞれがそれぞれの表情を持ち、ブルース、ジャズ、ソウルだけにとどまらない彼の幅広い音楽性を反映させた、バラエティー豊かな内容になっている。「短編を集めたひとつの作品に仕上げている映画っていうのがあるじゃないですか。一編ごとに監督が違ったりっていうね。そういうのが好きなんですよ。それぞれが競り合ってて、それぞれの色が出てて ね。今回は、アルバムのトータル云々よりも、その曲にいちばん合うてるイメージ、楽曲にとっていちばん相応しい背景というかな、それを意識してアレンジしましたね。言葉も含めて、映像的に受け取ってもらえればうれしいですよ」
 トータル云々は意識ぜずとも、結果的にアルバムは“濃い”内容になっている。しかし、その耳あたりは至極優しい。実にリラックスして楽しめるものだ。「そう思ってもらえればうれしいですね。ほとんどの曲を作ったときがプロ野球のシーズンオフだったのもよかったんでしょうね(笑)。シーズン中やったら、阪神タイガースのことが気になってしもうて、落ち着いてでけへんから(笑)」
 アルバム・タイトルがタイトルだけに、まさに現在の石田長生を映し出したといえる『Ishiyan』。ゆえに、今回のプレイリストのテーマも……「Roots of ISHIYAN」ってことで!
自分のハートから出てくるもんを自分の音楽に反映させたい
そういう時期に来てんねんな。まあ、気分はまた変わるかも知れないけど、今はそう。だからね、実は最近、家であんまり音楽を聴かなかったりするんですよ。たとえば、居酒屋に行ったときに有線とかでどうでもいいような曲がかかっていたとしても、生理的に自分の中に入ってきてまうねんね。それって悪い影響を受ける場合もあるし、あんまり外からの影響は受けたくないなっていうのがあるから、あえて家ではあんまり聴かないんです。聴くとしたら、ほんまに昔っから聴いてた定番みたいなもんを聴くぐらいで。音楽を聴くよりも、赤星の盗塁ひとつ見てたほうがぐっとくるというかね(笑)、音楽以外のところからはじゃんじゃん影響受けたいとは思うてんねんけど。
音楽を始めたきっかけ
A Hard Days Night / The Beatles
A Hard Days Night
The Beatles
 小学5年のときに「ヤァ!ヤァ!ヤァ!」の映画を観に連れてってもろうて、始まった瞬間、「オレはおおきなったらこういうことしよう!」って、そこで決めたんですよ。アタマの“ジャ〜ン♪”っていうのが鳴って、ビートルズがファンに追いかけられて走って逃げる、ジョージがコケる……映画始まった瞬間、これやと思ったね。マイクの前でエレキ・ギターを首からぶらさげて歌うって、なんてかっこええんやろうって。それまで憧れていたものってスポーツ選手やったんですよ。小学校の野球部では、二軍やったけど4番でサードやった。めっちゃビミョーなとこ(笑)。あと、ボクサーになりたい思うてたな。海老原博幸が好きやってね。音楽は、それまで邦楽の流行歌を聴いてたぐらい。橋幸夫さんが好きで、ファンレター出したら直筆サイン入りのブロマイド付けて返してきよった。それ持ってすぐ、近所の床屋行ったもんね。同じ頭にしてくれって(笑)。“潮来刈り”っていうね。あと、「渡り鳥シリーズ」の小林旭を見て、「ギター弾けたらかっこええんやろうなあ」って、なんとなく思ってた程度。
ギター
Sweet Little Angel / B.B.KING
Sweet Little Angel
B.B.KING
 好きなギタリストはいっぱいおるけど、ブルースで言えばまずB.B.キングね。でも、BBキングの良さって、最初はあんまりわかんなかったんですよ。エリック・クラプトンとかジェフ・ベックのほうがぜんぜんうまいと思ってましたね。ところが、B.B.キングが初めて日本に来たときに大阪の厚生年金ホールに観に行ったんですけど、そこで“歌うギター”っていうのを初めて観たんですよ。ギターがね、歌ったり泣いたりしてた。
ジャズ
It's Nice To Be With You / Jim Hall
It's Nice To Be With You
Jim Hall
 ビートルズに憧れて、そのあとクリームとかジミ・ヘンドリクスが出現するわけですよ。高校2年のときやな。まわりのやつはみんなそういうのをコピーしてるやつ多かったんやけど、オレはちょっとあまのじゃくなところがあるから、同じことすんのもイヤやなと。そんなことを思うてたときに、地元のレコード屋で“アート・ロックの若き獅子たち”っていうキャッチ・コピーに惹かれて、テン・イヤーズ・アフターのレコードを買って帰ったんですよ。それでまあ聴いてみたら、3コードのブギウギの速いやつでね、かっこええなあと。解説見たら、この曲にはウディ・ハーマンのリフが使われているとかなんとか書いてあって、いままでそんな速いブギウギのリズムを聴いたことなかったし、これはジャズやと思ったんですよ。こんなんできるようになるにはジャズを習わないかんなと思って、要するに勘違いでジャズ・ギターを習い始めたわけですよ。で、ある日、先生から「ケニー・バレルが来るから観に行けば」って言われて、コンサートを観に行ったんですよね。で、観に行ったら前座で、つるっパゲでスーツ着た、うだつのあがらんようなオッサンがギター弾きだしたんですよ。そんときね、B.B.キングのときといっしょで、「ギターが歌を歌ってる」って思ったんですよ。そのあとのケニー・バレルでは、なんにも思わなかったけど(笑)。
メンフィス
Sha la la / Al Green
Sha la la
Al Green
 「Soul To Soul」っていうライヴ映画を観て、そこに出てたウィルソン・ピケットにエラく感動してね。そっから黒い音楽に魅せられるようになって、そのあとでオーティス・レディングのレコードを買ってきたんですよ。スティーヴ・クロッパーのムダのいっさいないバッキングに、これまたエラく感動してね。もう、完璧ですよ。いい塩梅の演奏で。それ聴いて、さらに黒い音楽にのめり込むようになって、メンフィスというのがオレの中で憧れの地になっていったわけですよ。で、23歳のときにアル・グリーンを知るわけですけど、甘い歌声もさることながら、ドラムの音がとてつもなくイイ音しててね。スネアのタイミングとかなんでこんなにタメがあるんやろうって。で、ある日、近所やった藤井裕(ベーシスト。のちに上田正樹らとSOUTH TO SOUTHを結成)の家に遊びに行ったとき、たまたまTVでアル・グリーンが動いてるのを初めて観たんですよ。もう、バリバリのソウル・ショーでね。それ観て裕ちゃんに「オレ、メンフィス行ってくるわ」って。大阪駅で夜中に貨物の積みおろしのバイトやってお金貯めて、それでメンフィスに行ったわけですよ。で、毎日ハイ(アル・グリーンが所属していたレーベル)のスタジオに通って、「アイム・フロム・ジャパン」「アイ・ラヴ・メンフィス・サウンド」「アイ・プレイ・ギター」ぐらいしかしゃべられんから、毎日門前払い。そのうち、「オマエ、毎日来てんなあ。まあ、ちょっと入れや」言われて、ようやくスタジオに入れてもらったんやけど、「オマエ、ギター弾くらしいなあ。なんかやれ」言われてね。それまでバンドのギターばっかやってたんで、石田長生弾き語りでなんかできる曲もないし、どうしようか思ったんやけど、昔キャバレーの営業で演奏してたデューク・エリントンの「Satin Doll」だったらできる思って、それをやってね。演奏終わったら、「オマエ、めちゃくちゃすごいな」「毎日来てもええぞ」って言われてね。それから毎日のようにスタジオを見学させてもろうてたんだけど、ある日、O.V.ライトのレコーディングを見てるとき、そこにアル・グリーンが現れてね、そのときはめちゃくちゃうれしかった。
石田長生 Information
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石田長生 プロフィール
1952年、大阪生まれ。10代の頃よりギタリストとして関西のロック、ジャズ・シーンで活躍する。75年に単身渡米。メンフィスの名だたるミュージシャンたちと交流し、帰国後、山岸潤史らと共にソー・バッド・レビューを結成する。その後、GAS、ザ・ヴォイス&リズムなどでのバンド活動や多くのセッション・ワークを経て、89年にCharとのアコースティック・デュオ、BAHOを結成。92年にソロ・デビューを果たし、96年から活動の中心を東京に遷すが、日本全国はもとより、南米や南太平洋、ジャマイカ、メキシコなど、世界を飛び回る活動を展開。2003年からは小笠原諸島でのライヴをおこなうなど、その活動はますます多岐に渡っている。11月8日に4年半ぶり、通算8枚目となるオリジナル・アルバム『Ishiyan』を発表したばかり。
 
http://www.ishiyan.com/

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