MUSICSHELFトップ > 特集・連載 > 石田長生 インタビュー
特集 『BONINの島』ROOTS OF ISHIYAN 2 - 石田長生
■インタビュー/文:久保田泰平 ■インタビューカット撮影:本多元
■協力:小笠原村観光協会 ■デザイン:SQIP Inc 掲載日:2007.5.23
Page1 Page2 Page3
 
「こんなとこ日本にあんねんなってビックリしましたね。いままで、仕事柄いろんなとこ行きましたけど、住みたいなって思ったのは、いちばんはトンガだったんですよ。でも、小笠原はトンガを抜きましたね。実際、観光で行ってそのまま住みついたっていう人も多いもんね」(「MUSICSHELF」2006年11月10日掲載インタビューより)――2003年に初めて一人旅ライヴで訪れてから、すっかり小笠原の魅力に取り憑かれてしまった“いしやん”こと石田長生が、“愛する土地”小笠原をテーマにしたアルバム『Boninの島』を完成させた。昨年11月には4年半ぶりのソロ・アルバム『Ishiyan』を発表したばかりのいしやんだが、同作が奥深いルーツに裏付けられた“プレイヤー”としての魅力を焼き付けた作品であるならば、今回の『Boninの島』は、石田長生という人間から滲み出るやさしさ、素直さが表れた“唄うたい”としての魅力に溢れた作品だと言えよう。
--『Boninの島』の“Bonin”というのは、小笠原のこと……ですよね?
 今でもね、西洋の地図では小笠原のことを“Bonin Island”って表記されてるんですよ。そう呼ばれているのにはいろいろ説があるんですけど、無人島の“無人”って“ブジン”とも読めるじゃないですか。それが訛ってブニン……ボニンとなったっていう説がいちばん有力らしいんですよ。
--小笠原の魅力、いちばん惹かれる部分というのはどんなところなんですか?
石田長生 2003年の11月に、初めてライヴで行ったわけですけど、それよりずっと前に「オレは小笠原に行ったことがある」っていうやつから「すごいところがある、おまけに東京都で……」というような話を聞いてて、前から行ってみたいなあと思ってたんですよ。でまあ、僕の唄を島の人たちに聴かせたいっていう変わった人がいてですね(笑)、呼ばれて初めて行ったわけですけど、まあ、圧倒的な手つかずの自然――海の透明度とか、山に入るとワイルドさに圧倒されるとか、自然的なこともあったんですが、いちばんは“人間”がおもしろいなって。なんていうかなあ、よく小笠原のことを訊かれたときに答えるんですけど、世界各地、それこそ日本国内を旅してても、その土地土地の伝統ってあるじゃないですか。でも、ここにくると、伝統というものがない。伝統の薄さが新鮮なんですよ。小笠原は、人間が棲みはじめて170年ぐらいって言われてるんですけど、ここに来ると、人っていう種はまだ新しいねんなっていう気がしますね。で、普段都会の中にいてて、ある種の閉塞感みたいなものを感じるんだけど、そういうものがまったくないんですよね、ここの島には。そういうのがいちばん最初に惹かれていったところですね。
--そんな小笠原に惹かれ、この土地をテーマにした作品を書こうと思ったきっかけはどんなところだったんですか?
 やっぱり僕自身、行ってて気持ちのいいところというか、気持ちが楽になるところであるのもたしかやし、いちばん好きなところでだし……それでまあ、島の人たちに歌い継がれている古謡っていうのがあるんですけど、それを民宿の2階の部屋で聴いてたら、なんとなく書いてみようかなって気になったんですよね。ぜんぜん作為的なものはなく。それで最初に書いたのが「Boninの島」という曲で。
--誇ることなく咲く花――この出だしの歌詞は、小笠原に空気を吸っていないと出てこないようなフレーズですよね。
 そうですね。いままでの僕の歌詞のボキャブラリーにもあんまりなかった表現かなって。“花”っていうのは“人間”とのWミーニングになってますね。「泣いたあなたが笑ってた」っていう歌詞もね、島でいろんな世代の人と話をしてたら出てきた言葉で。
--小笠原の古謡も何曲かカヴァーされてますね。
石田長生 初めて行ったときRing Linkというバンドの小笠原古踊集というCDを聴いてね。ボーカルの宮武望ちゃんの唄がすごく素敵なんですよね。なかでも「レモン林」っていう古謡がものすごく好きで、それで今回カヴァーしてるんですけど、“レモン林”っていうもの自体、想像がつかない言葉ですよね。この曲は、月夜の晩に若いカップルがレモン林でデートして、人目を忍んでキスをするんだけど、それをお月様だけが見てたっていう、ものすごく純情っていうかな、ホントかわいい曲で。たぶん、小笠原の古謡の多くを作った人はポリネシアン系で日本語教育を受けた人ちゃうかな。だから、おもしろい日本語の使い方をしてる。「夜明け前」っていう曲とか「夜明け前に あなたの夢見て おきるとみたら たいへんつかれた」って。
--ちぐはぐな日本語だけど、なんかすごく伝わるものはありますね。
 そうね、思いはすごく伝わるよね。
--「夜明け前」のカヴァーでは、曲の前後に現地の“南洋踊り”のうたがフィーチャーされてますけど、「ウラーメ ウ ウルリヒ イ ウメ」とか、これは何を歌ってるんですか?
 南洋踊りは東京都の無形文化財にされてる踊りで、いまでも島では踊られているんだけれども、踊ってる人たちの誰一人として、何語なのかわからないんですよ。一説によると、若い男の人が女の人に求愛してる言葉だろうっていう説もあったりとか。
--「夜明け前」は、なぜかニュー・オーリンズ的なアレンジになってますよね。
 小笠原ってね、もともと棲みついた人は西洋系の人で、そのあとに日本人やポリネシアンが入ってきた、三つ巴のクレオール文化なんですよね。で、まあ僕もクレオールなやつだから(笑)、この曲をどういうふうにやろうかなって思ったときに、セカンドラインかなって。
 
石田長生's PLAYLIST: “My Bonin” ヒットパレード
 
| 1 | 23次のページ
プレイリストの詳しいレビューとCDや楽曲購入
石田長生 リリース情報
Boninの島 / 石田長生
石田長生
Boninの島
RDCZ-1002
¥2,800(tax in.)
ZIPPY RECORDS/
HIP LAND MUSIC CORPORATION
Amazonで試聴・購入 HMVで試聴・購入

◆収録曲◆
01. Boninの島
    作詞/作曲:石田長生
02. ウラメ~夜明け前~ウラメ(南洋踊り)
    小笠原トラディショナルソング
03. コミナト (Color Of Time)
    作曲:石田長生
04. レモン林
    小笠原トラディショナルソング
05. Bonin Guitar Rag
    小笠原トラディショナルソング
06. おやどのために
    小笠原トラディショナルソング
07. タマナの木の下で
    作詞/作曲:石田長生
08. パラオの5丁目
    小笠原トラディショナルソング
09. Night Waltz 母島
    作曲:石田長生
10. 丸木舟
    小笠原トラディショナルソング
11. 締め踊りの歌(アプタイラン)
    小笠原トラディショナルソング
12. 誰のためでもない舟
    作詞/作曲:石田長生
 
石田長生 プロフィール
1952年、大阪生まれ。10代の頃よりギタリストとして関西のロック、ジャズ・シーンで活躍する。75年に単身渡米。メンフィスの名だたるミュージシャンたちと交流し、帰国後、山岸潤史らと共にソー・バッド・レビューを結成する。その後、GAS、ザ・ヴォイス&リズムなどでのバンド活動や多くのセッション・ワークを経て、89年にCharとのアコースティック・デュオ、BAHOを結成。92年にソロ・デビューを果たし、96年から活動の中心を東京に遷すが、日本全国はもとより、南米や南太平洋、ジャマイカ、メキシコなど、世界を飛び回る活動を展開。2003年、阪神タイガース球団公認応援歌『嵐は西から』を制作。小笠原諸島でのライヴを展開。現在ソロの他、Charとの「BAHO」、木村充揮、有山じゅんじとの「平成トリオ」、NANIWA EXPの清水興らとの「トレスアミーゴス」などその活動はますます多岐に渡っている。

http://www.ishiyan.com/