MUSICSHELFトップ > 特集・連載 > 加藤和彦(サディスティック・ミカ・バンド) インタビュー
--映画の企画は、どの辺りから生まれたものなんでしょうか。
「パッチギ!LOVE&PEACE」の音楽を担当している時と重なっていて、井筒監督に「今度ミカバンドをやるよ」と話したら、「最近は面白い音楽映画がないね」という話になって、どちらからともなく映画を撮ることになったんです。「ドキュメンタリーじゃなくて映画にしてよね」という注文だけして、後はお任せで。
--映画は今回のライヴ映像を中心とした構成でしたが、昔の映像は残っていないのですか。
ないでしょうね。あっても使わないけど。こちらから言わせれば「昔がどうした」って話だから。昔があるから今があるんだけど、歴史は僕らの体の中に入っていればいいのであって、今やっているものが面白いかどうかの話だから。昔を引きずっていないんですよ。
--映画の仕上がりについてはいかがですか。
ドキュメンタリーだけど、メンバーが喋っている言葉を、セリフみたいに使っているよね。それが映画っぽいんだよ。今度、スコセッシがストーンズの映画を撮ったよね。みんな同じこと考えているなあって思った。
--映画の中では、自分たちの曲のコピーが大変だったと言われていますが。 体が妙に覚えているものでね……。ただゲストプレイヤーのキーボードの堀江博久君や佐橋佳幸君は、僕らより詳しくて驚きました(笑)。「このイントロはこうです」って教えてくれるから、譜面がいらないくらい。「何で知っているの」と聞いたら「全コピーしましたよ」って。
--1曲目からいきなりアルバム『黒船』の世界で、改めてミカバンドの異色さを感じました。ほとんどフュージョンですよね。当時フュージョンというジャンルはあったんでしょうか。
ちょうど出始めるころだよね。フュージョンに行きかかったファンキーなインストってところでしょうね。そこにオリエンタリズムがのって、しかも『黒船』っていうタイトルだから、不思議に思われたみたい。
--それにしても、加藤さんはフォークルでのテープの早回しから始まって、カントリー、グラム、フュージョン、パンク、レゲエ、ボサノヴァといった音楽トレンドをいち早く日本のポップスに取り入れてきました。どれを聴いても本当にすごいなと思うのですが、そのブレンドの妙技はどのように編み出されたのでしょうか。
ブラジル音楽を見よう見まねで、しかもコピーではなく、日本語で成り立つポップスにできないかと作ったアルバムが『ガーディニア』なんです。今回再発されたので久しぶりに聴きなおしたけど、今自分で聴いてもいいアルバムだなと思った。だけどあの後、その音楽を追及しなかったのは、ブラジル人は超えられないことが分かったからなんだよね。やはり、血は超えられないんだよ。
--私も『ガーディニア』は名盤だと思います。他人への楽曲提供についてはいかがですか。
他人への楽曲提供については、僕の中のプロデューサー的な面が論理的、確信犯的に作っているよね。ヒット曲を依頼されるのだから、それに応えるように作るということ。だけど自分のものやミカバンドの場合は、そういったことを考えないで、いい意味の実験というか、好きなことを自分の感情の赴くままにやらせてしまう。だから自分の作品と他人への提供曲でビジネス的な帳尻を合わせていた部分もありますね。いろんなジャンルに手を出すから、いわゆる硬派なメディアからあまり評価されないんですよ。日本はやはりひとつのジャンルを追求するタイプのほうが評価されやすいんですよね。
--ミカバンドのライヴに話を戻します。久々に人前でエレキを弾いたのではないかと思いますが、その感触はいかがでしたか。特に「タイムマシンにお願い」の加藤さんのギター姿はカッコよかったですね。
あの場ではほとんど曲ごとに変えていたんで10本くらい使ったんじゃないかな。高中(正義)は1本しか使わなかったけど(笑)。
--「タイムマシンにお願い」は今聴いても全く古さを感じさせない、日本を代表するロックナンバーですが、加藤さんにとってはどんな曲ですか。
エイジレスな曲ですよね。そういう意味では不可解な曲ですし。歌詞はラブソングでもないし主張があるわけでもないし。これは作詞の松山猛の功績だけど、ロックとして良くできているよね。最近また演奏しているから、改めていい曲だと思うよ。僕の中の10本の指には入るね。困ったことに自分では歌えないんだけどね(笑)。
--ライヴを終えての手ごたえはいかがでしたか。
精神的にも肉体的にもくたびれたけど満足した。みんなも嬉しそうだったし。打ち上げでは、みんなが楽しそうだったから、良かったんじゃないかなと。
--以前のインタビューで、ミカバンドの成功は音楽マーケットを変えると言われました。確かにエルダーと若い層の融合ができたと思います。
全体的には高めの客層だったんだけど、若い人たちからも「こういうロックがあったんだ」っていう意見を聞けたので嬉しかったですね。
--最後に今後の加藤さんについて。ロックミュージシャンは文化のリーダーなんだということを証明するためにも、加藤さんには第一線で活躍していてほしいのですが。
小原と僕と屋敷豪太とANZAというハーフの若い女の子とで、バンドをやりますよ。たぶんロンドンで録音することになるかと。彼女は歌だけだから、実質的にはスリーピースっていうロックバンド。レコード会社は「次のミカバンド」みたいな打ち出し方をするだろうけど、ミカバンドを引きずる気はないし、ミカバンドの曲をやるつもりもないです。僕のロックの引き出しの中には、いろんな要素があるんで。--本当にロック・モードになっているんですね。あとは、70年代から80年代にかけて、職業作曲家として生み出してきた提供曲も、CDボックスにまとめてもらえるとありがたいのですが。
3000曲以上もあるから、忘れている曲も多いからね。何度も言うように僕は過去を振り返らないたちで、自分でまとめる気はないので、どなたか熱意のある方に選曲してもらえるなら、出してもらいたいね。
--では私が(笑)。
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