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森川欣信 連載インタビュー
COILがデビューからの10年間にリリースしたアルバムは、オリジナルアルバム6枚に、編集アルバム2枚の計8枚。オルタナ・ギター・サウンド、シンプルでディープなアコースティック・サウンド、クールなエレクトロ・ポップなど、1枚ごとにサウンドを変え、前作とは違った顔を見せてきた。その彼らのアルバムを、今改めて聞きなおすと、ひとつの興味深いストーリーが見えてくる。
『ROPELAND MUSIC』(1999)
「アナログの船でデジタルの川を行く」という1曲目「方舟」の歌詞にある、独特の音楽性が余すところなく発揮された名盤。様々な要素を積極的に取り入れつつ、ポップフィールドで展開してみせた力量は、マニア向けの一言だけで済ますには本当に惜しい。美しいメロディとラウドなギター・サウンドと打ち込みのドラムが絶妙のバランスで共存する。そのほか、彼らならではのコミカルな遊び心と鋭い切れ味も随所に見え、その印象はビートルズの「ホワイト・アルバム」を彷佛とさせる。
『ORANGE&BLUE』(2000)
ライブ活動を行うことによって、それまでの宅録ユニットというイメージから徐々にロック・バンドとしてのテイストが強調されてきた2ndアルバム。先行シングル「追放と楽園」「カウンセリング&メンテナンス」で聞かれたハードなギター・サウンドがそのままアルバムでも展開されているが、歪んだギター音の中でも美しいメロディは全く埋もれることがない。音へのこだわりを感じる。それにしても1stからの飛躍度は見事。シリアスな面も出てきていて、いい意味でファンの期待を裏切る。
『AUTO REVERSE』(2001)
デビュー以来、無尽蔵に湧き上がるアイデアと音楽的好奇心を一気に爆発させたかのように、2枚のCDに20曲を詰め込んだ3rdアルバム。1stの宅録的要素と2ndでのバンド・サウンドが見事に融合しつつ、音楽的にはさらに高度なアレンジを試行、ここに彼らのひとつの完成の域に達した。岡本定義のソングライティングのセンスの良さは絶妙の冴えを見せており、手が届くところにある日常的な素材を、そのまま歌にしてしまう技は、ポール・マッカートニー的でさえある。
『ALL ERASE OK?』(2001)
デビュー以来リリースしてきたシングルのカップリングに収録されていたナンバーを集めた裏ベスト的コンピレーション。ファンクなギターがフィーチャーされた佐藤洋介のナンバー、漫画的なコミカルさをもつ岡本定義の弾き語りナンバー等々、遊び心&プライベート感覚満載の作風になっていてメンバーそれぞれの趣味がうかがえる。ここにCOILの本質が見えるのかもしれない。デビュー曲「天才ヴァガボンド」に収録された「64」の哀愁帯びたメロディラインを聴くためだけにも、このアルバムを買う価値はある。
『0・10』(2002)
2枚組の前作と裏ベスト的アルバムで、それまでのCOILサウンドに一区切りつけた彼らが意識にネクストレベルを目指して作った4th。2人の役割も結成当初のソングライター+プロデューサー岡本とエンジニア佐藤のスタイルに回帰。「一本の映画を作るようなもの」と言ってレコーディングされたというが、実際、選りすぐられた最小限の音と言葉による深遠な音の世界観は、叙情的な映画を見終わったような感動を与える。岡本によるシナリオ、佐藤洋介による繊細な音作りが見事。世界標準の力作。
『LOVE』(2003)
アルバム毎に違った顔を見せるCOIL。ここでは、前作で聞かせた生楽器の美しい響きにエレクトロニクス的要素を重ね、エレ・ポップ風のハイブリッドなCOILサウンドを追求している。リズムマシンやシンセベースなどのエレクトロ楽器とアコギや生ドラムを共存させることで、岡本のボーカルと情緒豊かな詞の世界を鮮やかに浮かび上がらせている。どんなアレンジにも似合う岡本のメロディは、最高の知性をもち、さらにオリジナルな作家性を完成させた。アートワークはエブリシング・バット・ザ・ガールなどを手がけているUKの先鋭デザイン集団“Form”が担当。日本人アーティストでは初のことだった。
『SINGLES+』(2004)
1998年のデビュー曲「天才ヴァカボンド」から03年の「LOVELESS」までのシングル全シングル10曲と全アルバム未収録曲などで構成されたベストアルバム。PV集DVD付の2枚組でリリース。ジャケットは、当時業界初となる【QRコード】が使用された。リリース順で収録されていることで、デビュー時のオルタナ・ギター・サウンドから、シンプルでディープなアコースティック・サウンドを経て、最終的にクールなエレクトロ・ポップへとたどり着いた、彼らの音楽の変遷が分かりやすくおさらいすることができる。
『CINEMA』(2005)
『LOVE』から2年、その間、自身のホームページにダウンロード・サービス・サイトを設立しMP3ファイルで楽曲を配信するほか、ライブ会場で限定音源をカセットテープで販売するなど、音楽の流通に関しても実験的な試みを行ってきた彼ら。同時に自らのレーベル“sandwich”も設立した。このアルバムは、同レーベルからの初リリース作品となった。初期のギター・ロックから、前作の延長上のエレクトロ・ポップが並んだ、これまでのキャリアを総括したかのような内容。革新的なチャレンジを続けても、変わらないのはメロディの良さとロックマインドであることを証明する。現時点の最新アルバムにして最高傑作。久しぶりに、佐藤ボーカル曲を2曲収録。



