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特集 いきものがかり より自由に。いきものがかりの新たなるハジマリ。

■インタビュー/文:篠原美江 ■コーディング:Astrograph 掲載日:2009.12.22

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いきものがかりのメンバー、ひいては彼らの作る音楽、リスナーとの関係性ともリンクしているもの。それは互いに寄りかかり過ぎない絶妙な距離感と、言葉を越えた信頼関係だろう。
どんなタイプの楽曲でも「ポップであること」を身上に、多くのヒット曲を生み出してきたいきものがかりが、通算4枚目のアルバムを発表する。今年、結成10周年。誰の目にも絶好調に映るグループでありながら、ただその勢いに乗ることなく、さらに自由で、より普遍的なポップスを求め、彼らは“真っ白”になることを選んだ。いきものがかりは、またここから始まる。

--今年は結成10周年なんですよね。

吉岡聖恵:今回のアルバムを作るまではそんなに意識してなかったんですけど、タイトルを『ハジマリノウタ』に決めてからね、「あ、そういえば10周年だ」って意識し始めたよね。

山下穂尊:そうだね。

--その年になぜ『ハジマリノウタ』なのかというのを。

山下:じゃ、リーダー。

水野良樹:はい(笑)。いつもアルバムタイトルは収録曲が決まってから付けるんですけど、今回もそうだったんですね。曲も全部決まって、レコーディングも半分以上進んだときに、タイトル考えようということでミーティングをしたんですよ。そのときホワイトボードにディレクターが曲目を書いていったんですけど「てのひらの音」という曲を「はじまりの音」って書いてしまって。そこでみんながピンときたんですよ。「あ、“はじまりの音”っていいかもしれない」って。

--タイトルは偶然の産物(笑)。

水野:そうなんです。それで、よくよく考えたら今年、結成10周年じゃないかと。しかも僕らはインディーズで3枚、メジャーで3枚アルバム出してるんですけど、4枚目を作るっていうのは初めてなんですね。それでまたよくよく考えたらシングル16枚出してて、ついこの間、デビューしたばっかりのつもりだったのに。さらによくよく考えたら、デビューしてからはもう4年の月日が経ってたっていう。経過した時間があるってことに、そこで気付いてですね、じゃあ、これからどういう展開で自分たちを見せていくか、どういう風に音楽を作っていかなきゃいけないかを考える時期でもあるんじゃないかと。結成10周年のこのタイミングで<始まり>っていう言葉を使うのは決意表明としてすごくいいんじゃないかって話になって盛り上がって、「じゃあ、これでいこうよ!」と。でも「ハジマリノオト」だと「てのひらの音」とタイトルが被ってしまうんで、「ハジマリノウタ」になったんです。

いきものがかり 水野良樹--アルバムのコンセプトは、元々なかったんですか。

水野:はい。でもこのタイトルになったことで、その後のコンセプトがすごくハッキリしたんですよ。それによってジャケットも何も演出を加えない、真っ白な衣装で、まっさらな状態でいることによって逆に人物が出るんじゃないかってことにもなったし、曲順もすんなり決まったし、アルバムにまつわるいろんなことがどんどん決まっていったんですよ。いちばん象徴的だったのは、1曲目に「ハジマリノウタ~遠い空澄んで~」っていう曲があるんですけど、元々この曲はサブタイトルの「遠い空澄んで」っていう曲名だったんですね。いってみれば壮大なバラードなんで、常套手段じゃないですけど、アルバムの後半に置こうとみんなが思ってたんですよ。でも改めて歌詞を読み返してみると、<ある程度の時間の経過と過程があった上で、これからを見据える>っていう詞で、それが今の僕らにめちゃくちゃ合ってる、アルバムタイトルにピッタリだってことに気付いて。じゃあ、この曲を思い切って1曲目にもってこようと。バラードだし冒険ではあるけど、じゃあ「ハジマリノウタ」っていうタイトルにしたらどうだ?ってことで。それで僕と山下でいろいろ考えた末に、元のタイトル「遠い空澄んで」をサブタイトルにしましょうってことで落ち着いたんですね。まずこの曲が1曲目にあって、もう1曲、「明日へ向かう帰り道」っていう曲もインディーズ時代からある曲なんですけど、この曲を最後にもってくることによって一貫性が保てるというか、意味のあるアルバムになるんじゃないかなと。そうやってどんどん話が進んでいったんですよ。

--確かにオープニングがバラードっていうのは意外でした。

山下:ですよね。今までそういった曲は基本的に最後の、クライマックスに入れてたんですよね。シングル曲だったり、ポップなものだったりを1曲目にすることが多かったんですけど、こういうこともやったことなかったし、ひとつトライしてみたって感じですね。いきなりバラードで始まるっていうのもアリなんじゃないかなと。そもそもは良樹のアイデアだったんですけど、そう言われて自分も改めて歌詞を読んでみて、確かに『ハジマリノウタ』っていうタイトルにマッチするなと思いましたね。いきものがかりとしては、ちょっとした挑戦・・・ではあったんですけど。

--そうですね。ただ、さっきの水野さんのお話に出た「いきものがかりとして、これからどうしていこうか」という考えがあったというのも、ちょっと意外でしたね。ここまで順風満帆にきたグループ、っていうイメージがあったので。

水野:そうですねえ・・・より自由になっていってる感じがするんですね。今回のアルバムでも、たとえばインディーズ時代、「こんな曲、作りたいな」「あんな曲、カッコいいな」って無邪気にやってた頃の意識に近い形で、「こんな曲をやってみたい」っていう衝動に素直に、純粋に応える形で曲を選んでいったし、そういう意識で書いた曲が選ばれたと思うんです。その一方で自由になった分、「じゃあ、これから何を選んでいくんだ」っていうのを、ここでもう一度考えないとダメだなあって思ったんですよね。今までは「まず、いきものがかりを知ってもらわなきゃ」とか、「まず、いきものがかりのイメージを作りあげなきゃ」とか、まずそこに対して重心が寄ってたと思うんですね。まずそこを頑張ろうと。でも今回は、たとえば「じょいふる」みたいな曲が出来るようになったことが象徴的なんですけど、だんだんと僕たちのいろんな面を見せられる状況になってきたからこそ、「じゃあ、これからどうしていくんだ?」っていうことを問われている気がしたんです。16枚もシングルを出してると、どうしても同じような曲になってしまったりとか、二番煎じじゃないですけど、前にやったものを焼き直すようなことになってしまうかもしれないし、それは注意していかなきゃいけないから。「じゃあ自分たちが今、やりたい音楽ってなんなんだろう?」ってことも考える時期なのかなっていうのが、なんとなくあるんですよね。でもそういう気持ちが芽生えるのって、いい傾向ではあると思うんですね。それは僕らも望んでいたことだし、「こんなこともできる、あんなこともできる」っていうのがいくつか叶い始めてきましたから。じゃあ自由になったからこそ何をやるか。その選択を今からハッキリしておかなきゃいけないなあ、っていうのはありますね。

--なるほど。まずデビューからの目標があって、今はその次のステップに差し掛かってるってことでしょうか。

山下:そうですね。今回はすごくフランクに曲を選べたんですよ。それってインディーズの頃、3人で集まって「なんの曲をやろうか」ってノリに近かったんですよね。どんどんそういう感じになってる。これまでって、たとえば1stだったら「どういう見せ方をしようか」っていうのを考えて選曲したりしてたんですけど、それが2枚目、3枚目と積み重なっていくうちに・・・ノリがどんどんインディーズの頃に戻ってる気がして。そのことにホッとするんですよね。でも、そういう状況になってきてることって非常に建設的なことだと思うんですよ。一周して戻ってきたというか、自分たちが無邪気に音楽を作って、それを作品として世の中に出せるっていうことが。

いきものがかり 吉岡聖恵--聖恵さんはいかがですか。

吉岡:「自由になってきた」ってことを、作り手の2人がずっと言ってて、私は今、2人の話を聞きながら「これからどうしていこうか」っていうのを考えていたんですけど(笑)。もしかしたらこの先、このアルバムにも入っていなかったようなテイストの曲を絶対に作っていくと思うんですね。だから歌い手としては今以上に範囲を広げて、目を向けていって、どんな球がきても受け取って、聴いてくれる人に返せるような表現力を・・・あ、そんな簡単に表現力だなんて言えないな・・・でも、責任はすごく感じてますね。この『ハジマリノウタ』というアルバムには、これからもっと、今までなかったような曲が出てくるだろうなっていう期待も込められているんですよ。それを歌っていくのは自分ですからね。どんな曲でも歌えるようになりたいって思います。

--これまでも、どんな曲でも歌ってきたじゃないですか(笑)。ニューアルバムでいえば「じょいふる」とか。

水野:今回は・・・ヘンな言い方なんですけど、男子2人が吉岡の声を再評価してるというかですね(笑)、やっと最近になって「ああ、よく歌ってるんだなあ」ってことに気付いたというか。ちょっと上から目線なんで怒られるんですけど・・・「あいつ、スゲエな」ってようやく・・・(笑)

山下:そう、改めてスゲエなって(笑)。

吉岡:・・・イラッとした(笑)。

水野:今年はいろんなイヴェントに出させてもらって、いろんなアーティストの方と出会って、いろんなヴォーカリストの方の歌を聴く機会に恵まれたんですね。そこで他のヴォーカリストの方にあって吉岡にないもの、またその逆も感じたりしていく中で、いきものがかりの歌ってものを考えてみたんですよ。そしたらたとえば「じょいふる」と「YELL」が共存してるってなかなかないんじゃないかと。それは吉岡が歌いきっているというか、一貫性のあるものとして表現出来てる、それがアルバムを通して出来ているっていうのはすごいなって・・・今さらながら思っているという・・・スイマセン(笑)。

吉岡:ありがとうございます(笑)。

--(笑)。まず詞曲を手掛けるソングライターが2人、その2人が作った楽曲を伝えるシンガーが1人いる。それが、これまでのいきものがかりのイメージだったんですが、今回のアルバムを聴いて、聖恵さんはバンドの一員であり、バンドのヴォーカルなんだという、そんな印象を改めてもったんですよ。

水野:ああ、そうかもしれないですね。

山下:今回のアルバムはいきものがかりの10年分、各時代の曲が詰まってるんですよ。しかも今回は、「気まぐれロマンティック」のような、いかにも女の子女の子した曲がなくて。それも偶然だったんですけど。ちょっと意外な、哲学的な言葉を使っていたりするし、そう、今回は“あたし”っていう表現をしてる曲がほとんどないんですよ。聖恵が書いた曲も一人称は“僕”だったりして。それも、聖恵=いきものがかりのヴォーカルだっていう見え方に影響してるのかもしれないですね。

--なるほど。

山下:だから今回、自分たちも狙って曲を書いてないんですよ。自然と昔書いた曲を選んでたりするんですよね。最近は、たとえばシングルだったらタイアップのお話をいただいて、それに向かって書くことが多いんですけど、このアルバムの中には10年前、それこそ高校生の頃に書いた「てのひらの音」って曲もあれば、7~8年前に書いた「秋桜」「How to make it」って曲もあったりしますからね。その頃って何にも囚われず、ただ「いきものがかりでやるために曲書こう~」みたいな感じというか、「ただ曲を書きたい」「こんな音楽を作ってみたい」っていう衝動だけだったんですよ。その当時の曲を「今のいきものがかりです」って言って、世の中に出せるところに、今回のアルバムは誇りを感じてるんですよね。

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