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特集 東京スカパラダイスオーケストラ スカパラ、20年目の絶頂感を刻む傑作誕生!

■インタビュー/文:宇野維正 ■制作:Astrograph 掲載日:2010.3.10

 奥田民生、斉藤和義、Crystal Kayら豪華ゲストボーカルを迎えた一大エンターテイメント作にして、スカパラ20年の歴史の「重み」と「軽さ」が刻まれた記念碑的作品。東京スカパラダイス、15枚目のオリジナル・アルバム『WORLD SKA SYMPHONY』は、問答無用の傑作となった。デビュー当初からあまりにも強烈な個性の集合体であったスカパラは、これまで結果としてサブカルチャーのフィールドで、ポップのフィールドで、国内外のフェスのフィールドで、何度も違った種類ピークを迎えるという特異なキャリアを歩んできた。そんなキャリアの集大成にして、これからのスカパラのさらなる広がりを予感させるアルバムの誕生の背景を、谷中敦、茂木欣一の2人にじっくりと訊いた。

--前作『PARADISE BLUE』は20周年イヤーの幕開けを告げる原点回帰的な作品でしたけど、あれから1年ちょっとで、こんなにも見事な20周年の記念碑的なアルバムが届くなんて予想してませんでした。

谷中:おっしゃる通り、『PARADISE BLUE』で、今までの20年の活動のキモの部分をおさえというか、原点回帰的ないいアルバムができたので、次はより自由にできるかなって思ってたんですけど。ツアー中もレコーディングしつつ、去年一年間かけてこの作品を完成させることができて、本当よかったなぁって。最初に「KinouKyouAshita」を録ったんですけど、国内外を見渡しても、こういうスカをやってる人達はいないだろうって曲になって。あの曲があったから、ここまで自由度の増したアルバムになったんだと思います。すごく自由でいいムードの中でレコーディングできたし、20周年をまとめるだけじゃなくて、今後のスカパラに向けて開けたアルバムができたましたね。

茂木:もともと「KinouKyouAshita」を録った時点で、歌モノを前提にした楽曲がいっぱいできたから、そういう波を大事にしようってところで作り始めたんですよ。その後、去年の夏にTOKYO SKA JAMBOLEEって自分達の主催のフェスをやった時に、これまで自分達を応援してくれた人達とものすごいダイレクトに心が繋がったんですよね。それが歌モノだけじゃなくてすごくバラエティに溢れたこのアルバムの後押しになって。これまでのスカパラが全部繋がっていくような、20周年をカラフルに彩るようなアルバムを作っておきたいなっていう気持ちになったんです。

--スカパラのこれまでの作品って、ストイックな作品もあれば、バラエティに溢れた作品もありますけど、過去のバラエティに溢れた作品と比べても、今回の『WORLD SKA SYMPHONY』って、曲は最もバラバラなんだけど、全体のムードは統一感のある作品になってると思うんです。よっぽど密度の濃い1年を9人が過ごしてきたんだろうなって。

茂木:本当にそうだよね(笑)。

谷中:それが伝わってるとしたら嬉しいですね。これまでも、スカの基本に戻ったり、それをまた広げたりっていう、そういう繰り返しの中で自分達の音楽を確認しながらずっと進んできてるんですけど、今回これまでと違う広がり方ができたのは、去年ずっと9人で動きながら、その間に録音してきたっていうのが大きいでしょうね。それとやっぱり、夏のTOKYO SKA JAMBOLEEの成功は大きかった。僕らこれまで色んなフェス出てきて、やっぱ主催しないのはまずいよなぁっていう気持ちではいたんですけど、自分達がホストとしてやるっていうプレッシャーもあったんですよ。でも、やってみたら本当にお客さんがすごく良くて。ほんとスカだけに絞った、ある意味、地味って言ったら地味なフェスだったんだけど。

--最初に企画を聞いた時は、これまでスカパラに参加したいろんなゲストを呼んで豪華にやるんだと思ったんですけど、スカバンドを世界中から集めて、スカという音楽に焦点を絞ったのが、すごくスカパラらしい潔さでカッコよかったなぁって。

谷中:クオリティは高いけど知名度のないゲストを呼ぶってことで、すごくリスキーだったんですけど、そこでスカパラの音楽もしっかり聴いてくれていながら、海外の多分初めて聴くであろうスカバンドでもすごく盛り上がってくれる上質なファンを見て、僕らのこれまでの活動は間違ってなかったんだなって再確認ができたんです。その時の気持ちは、今作を作る時の僕らの大きな支えになってくれましたね。

--スカのバンドのあり方として、お馴染みの楽曲をやり続けて、それを熟成していくみたいなあり方って、世界的には一つのスタンダードじゃないですか。スカパラのライブにも、もちろんそういう要素もありますけど、でも、同時にどんどん新しいものを取り入れていって、こうして一年おきにアルバムを出していくっていう、その原動力はどこにあるんですか?

谷中:スカパラって、メンバー個々の情報交換がすごく大事なんですよ。みんな個人活動的なこともやってるし、それぞれが新しい音楽を聴いたりしてて、そこで面白かったことや興味のあることを日々意見交換してるんですよ、今でも。「こういうの面白いよね」って気持ちを共有することで、またスカパラの音楽が広がっていくっていう。そういうことがすごく自然にできるようになったっていうのが、ここ数年のバンドの状態の良さの理由だと思います。本当にいろんな音楽の要素が入っているので、今回このアルバムをすごく好きになってもらうと、多分他の音楽に対してもいろいろ興味を持って、音楽の趣味も広がるんじゃないかなって。だから、是非何回も聴いてもらいたいなって思うんですけど。インストゥルメンタルなフュージョンっぽい曲もあるし、「Just say yeah!」みたいなティーンエイジパンクみたいな曲もあるし。メンバーの中に「このアルバムはディズニーランドみたいだね」って言ってるメンバーがいて、一つ一つの曲がパビリオンみたいな。曲のキャラクターづけを丁寧に仕上げていくことがぬかりなくできるようになってきたのは、今までいろんなバンドと接してきたり、フェスで海外に出たり、海国内でもいろんなタイプのお客さんと交わっていくことによって、自分たちが自信持って強くやれるようになったからなのかなって。20年経って今さら自信がついたっていうのもあれですけど(笑)、そういう部分も大きいかな。

--スカパラの長い歴史の中で、茂木さんがスカパラに加入したのはわりと最近みたいな印象を持ちがちなんですけど、実はもうそこからでも10年近く経ってるんですよね。どうですか? このスカパラというバンドのあり様というのは?

茂木:あのねぇ、スカパラのメンバーってみんな、まとめに入ろうとするのをすごい嫌がるんですよ(笑)。ずっと冒険していたいっていうか。似たような感じでライブのプログラムが成立しそうになると、それをすぐに壊したくなる。その繰り返しをずっとやってきたっていうのが良かったんじゃないですかね。「まぁ、こんなもんでしょう」ってなるのをものすごく嫌がるんです。そうなると、先がすぼまりそうな気がして。やっぱ未知のところに行きたいし、聴いたことのないものを聴いてみたいし、聴いてみたいんだったら自分たちで作ろうっていう気持ちがすごくあるし、その気持ちがずっとキープされてるっていうことだと思うし。そういう姿勢をファンの人達は見て、信頼できる人たちだって思ってくれてるっていうところもあるし、何よりも自分達が飽きたくない。その繰り返しかなぁ。

--スカっていう音楽的なベースというか、自分たちのホームがあるから、そういういい循環がずっとできてるのかもしれませんね。これだけ個性のあるメンバーでも、決してバラバラにならないっていう。

谷中:そうですね。やっぱ背骨としてスカっていうものがあるおかげですね。やっぱスカパラでスカをやってるっていうことで、レゲエフェス出たり、ジャズフェスに出たり、パンク寄りのイベントに出たりっていう、そういう色んなところに出れるんですよね。そういう時に、「あぁ、スカをやってて良かったな」って思う。いろんなところで演ることで、そこで自分たちの音がどういう風に響いていくのかっていうのを体感してるんですよ。そういう感覚が自分達の中で身体に入っているから、こうしてアルバムにいろんな曲を共存させることが可能になってきたのかなって。

茂木:そうだねぇ。それぞれメンバーが聴いてる音楽もバラバラだし、だから全然思いもよらないアイデアが飛び出してくるっていいう。

谷中:アイデアは尽きることはないね。この集団はほんとに、アイデアが出ると、それを実現しないことが一番のストレスなんで(笑)、みんな躍起になってアイデアを形にしようとする(笑)。それがやっぱりみんなが楽しんでやれてるっていうことなんだろうね。

--あと、今回の『WORLD SKA SYMPHONY』を聴いて印象的だったのは、ゲストボーカルで参加してる奥田民生さんも、斉藤和義さんも、Crystal Kayさんも、みんなが知ってる民生さん、斉藤さん、クリちゃんとは違うものになってるっていう。スカパラとやるとこうなるんだっていうのがすごく濃厚に出ていて。言ってみれば、今でこそコラボって珍しくもなんともないものになりましたけど、スカパラはずっと昔からこういうコラボをやってきてて、やっぱり他とは全然違うものになるんだなって。

谷中:特にCrystal Kayちゃんは、本当に今まで聴いたことないCrystal Kayになってましたね。それは自分たちも聴いててびっくりしました。歌詞の面でもやっぱり、本人達がソロなりバンドなりでやってることとは違うことをやってもらおうみたいな気持で臨んでますけど。

--面白いもんで、歌詞がそうだと声まで違ってくるんですよね。

谷中:ですよねぇ。不思議ですよねぇ。民生さんとかもやっぱり違うし。

茂木:不思議なことに、より生身っぽさっていうのが出るんですよね。民生さんも、Crystal Kayちゃんも、和義さんもね。すごい化学反応が起きるんだなって。一緒にやってて、「こんなの聴いたことなかったなぁ」っていうのが出てきた時の喜びって言ったらね。でも、Crystal Kayちゃんなんてすごかったですよ。僕らは最初一回目に歌った時に「決まったー!」って喜んでたんですけど、彼女は全然納得がいってなくて、何回も何回も「もっといける、もっといける」ってずーっと歌ってくれて。

谷中:「最高~!」とかってみんなで言ってたら、「誉めすぎ!」って怒られたりして(笑)。

--斉藤和義さんとやった「君と僕2010」は、原曲はスカパラにとってはすごく意味のある昔の楽曲ですけど、それをこういう形でやるっていうのは、非常に今のスカパラを象徴いてると思ったんですけど。歌詞も、決してウェットな感じにならないところがスカパラっぽいなって。これまでを振り返るだけじゃなくて、これから先が見えていく感じがすごくあって。

谷中:20年前のアルバム『スカパラ登場』でもラストの曲で、今回もラストに入れたんですけど、僕らにとってももちろん大事な曲ですけど、お客さんにとっても心のベスト10第1位みたいに思ってる人も多い曲なんで、やっぱり大事に作っていきましたね。間奏の前が20年前で、間奏の後が現在で、そのあいだ、口笛を吹いてる間に20年経ってるっていう。そういうアイデアがすごくスムーズにできて。20年お互い一緒にやってくっていうのはこんな気持ちですっていうか。男同士でも、女同士でも、男と女でも、年を重ねていくっていうことはこういうことなのかなって。

--コラボするっていうより、この曲の中ではメンバーの一人として、みんなの声を代表して斉藤和義さんが歌ってるっていう感じですよね。

茂木:メンバーが詞を書いてるのでそういう感覚もあると思うし、斉藤さんにしてもCrystal Kayちゃんにしても、思わずにじみ出るものというのが、すごくソウルフルだなぁって思って。にじみ出た瞬間の人々の心に刺さる何か、空気感みたいなものが今回の作品は特に良かったなぁって。刺さり方がね。いいんですよ、ほんとに(笑)。

--20年前に『スカパラ登場』を聴いてた人は、みんなに聴いてほしいですよね、今回のアルバムは。絶対感動すると思う。

茂木:そうですね。続いてるからこそ得られるものって多いんですよね。民生さんとやった「流星とバラード」も、8年ぶりに音楽の中で再会してるわけで。8年ぶりに、「あ、久しぶり。最近どう?」みたいなものを音で出せるっていう。そういう続きの話ができるっていうのは、音楽ってすごいアートだなって思いますね。

谷中:一緒に鳴らすことで、それまで会ってなかった期間のこともお互いわかったりとかする。そういうコミュニケーションもできるしね。この前、一緒に飲んでる時に民生さんが「びっくりさせられないようになったら、ステージに立つ意味はないんだよ」って言ってて面白かったですけど。民生さんも、自分たちとやってる時は、対決っていうか、勝負みたいな気持ちで挑んできてくれるんですよ。一緒にやることで、自分の立ち位置を確認できる部分もあるんじゃないですかね。前の「美しく燃える森」から8年経ってるんで。「前の方が声出てたよ」って自分で言ったりしてるんですけど(笑)。「そんなこと全然ないっすよ」とは言ってるんですけど、でも本人的には違いは感じるんだろうし。そういう、立ち位置確認みたいなものを久しぶりにできるのも面白いなぁって。

--聴いてる人達にとっても、きっとそうでしょうね。昔聴いてたスカパラと、今聴いてるスカパラの、変わらないところと、変わったところっていうのに、そのまま自分の人生が反映されるっていうか。スカという音楽本来が持ってる、ある種の楽天性とか普遍性みたいなものが、こういう時代だからこそすごくエネルギーやパワーになっていくんだろうなって。

茂木:すごい音楽だよね、スカって。こうでなくちゃいけないみたいなことを強要することはなくて、「そういうのもありだよね」みたいなことを、自然と音楽がわからせてくれる。固定観念にとらわれなくていいんだって。イマジネーションは、いくらでも広げていいんだよっていう気持ちにさせてくれるっていう。だからいつも心にフィットするし、すごく高揚させてくれるし、同時にリラックスもさせてくれる。

谷中:どんなに景気が悪いって言っても、みんな賑やかな場所で音楽で盛り上がっていくっていうのは絶対になくならないし、それを信じてこれからもやっていきたいなって思います。本当に音楽に集中していい音楽を作る、いい音楽でお客さんを楽しませるっていう当たり前のことを丁寧にやっていけば、どんなことも怖くないなって思えるし。今はほんと便利な時代で、家にいても楽しい時代じゃないですか。家のパソコンで何でも買えるし、いろんな世界も見えるし、いろんな国のこともわかったりとかするわけで。でもやっぱり、他の人と一緒になって盛り上がるっていうのは特別な経験なんだよっていうのを強く言いたいし。ライブで一緒になって盛り上がる感覚――お客さんを見てるだけで面白いっていうのはスカパラならではだと思うんですけど(笑)――そういうすごい盛り上がってるお客さん見ながら、自分も盛り上がるみたいな。そういう場をこれからも続けていきたいし、その感覚をまたアルバムに反映させて、そのアルバムを携えてまたライヴをやってっていくっていう。その繰り返しが、一番自分たちにとって大切に思えることなんですよね。

「WORLD SKA SYMPHONY」のCDジャケットのこだわりポイントについて

WORLD SKA SYMPHONY / 東京スカパラダイスオーケストラ

--今回のアルバムジャケットのこだわりについて教えてください。

茂木:僕ね、途中から入ったメンバーという事もあって、スカパラが最初に出てきたときいちリスナーとして「黄色」っていうイメージだったのをすごく覚えているんですよ。黄色を使うって、自分たちの作品に自信があったりとか重要なときに出す色だなって思っていたので、今回はそれを思いっきり使っていますよね。後は、ツアー中に「次のアルバムはカラフルでヘビー級な作品になると思います」ってみんなに言っていたので、デザイナーがそれに対して<カラフルでヘビー級とは?>ってすごく考えてくれて、基本的なアイデアが出てきたときに「おっ!いいんじゃない!」ってなったんですよね。メンバーの写真のコラージュとかすごい手作りだし、明るい感じがするよね。

谷中:アルバムジャケットで笑って写っているのは初めてかもしれないですね。