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特集 楳図かずお ロングインタビュー2 36年ぶりのニューアルバム『闇のアルバム2』の闇に迫る

■インタビュー/文:金子デメリン ■撮影:本多元 ■製作:Astrograph 掲載日:2011.9.9

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今年2月にMUSCSHELFでロングインタビューした際に、「現在36年ぶりのアルバムを鋭意制作中」との発言があり、その内容に期待が高まっていた楳図かずお先生のニューアルバム『闇のアルバム2』がいよいよ完成、8月末にリリースされた。全曲作詞作曲、もちろん歌唱の完全オリジナルアルバム。1曲1曲、細部まで練りに練られた言葉とメロディ、そしてバリエーション豊かなアレンジからは先生の数々の著作における独特のテンションで書き込まれた画風が現れているかのよう。先生の音楽への愛情と本気度が詰め込まれたすべての音楽ファン、自作自演を名乗るアーティストは必見の今年最重要アルバムである。今回のインタビューは前回に引き続き、楳図かずお研究家で、自身も漫画家である金子デメリン。先行シングル「新宿烏」にギタリストとして参加している彼女ならではインタビューとなった。

楳図かずお--この度シングル『新宿烏』とアルバム『闇のアルバム2』がリリースされましたが、発売に至る経緯を教えてください。

 僕の場合、具体的に目標がはっきりしていると創作意欲が湧くけど、そうでないときは無理やりつくろうとまでは思わない性質なんです。だから、去年ビクターの川口さんからCDリリースのお話をいただいた時点から、「ではつくろう!」という気持ちが出てきて、積極的に動いていったという感じです。多少は昔のものもあるんですが、ほとんどの曲に関しては、お話をいただいた時点から改めてつくりはじめたものなので、本当に今回のアルバムはできあがりホヤホヤの状態なんです!

--聴かせていただいたんですが、独創的で素晴らしいアルバムですね。

 そう言っていただいたのは全くお世辞でもなんでもないと思いますよ。なにしろ本人がしっかり素晴らしいアルバムだと思っちゃっているところがありますから(笑)。

--そうですね。まずは先生が本当に心から音楽が好きで、真剣に音楽を聴いていらっしゃる方がつくったアルバムなんだという感じがしました。

 ありがとうございます。それよりなにより、創作するという姿勢はずっと漫画のほうでやってきているので、そこのところをしっかり踏まえて、きちっと心に伝わっていくような内容づくりを心がけました。「内容づくり」の部分に関しては他の方に負けてないと思うもんですから。あとは具体的にどのようにでき上がるかということで、一生懸命、皆さんの力を借りてやってきました。

--10曲すべてそれぞれのカラーがあって、ジャンルの幅が広いですよね。

 俗っぽい話になりますが、いっぱいつくった中でどれか一つでも違う方向の方へ届いていけばいいなという意味もあって、意図的に全曲違うパターンでつくりたいと思ったんです。

--それぞれのジャンルを理解されていて、愛情を込めてつくっているという感じが伝わってきました。

 そんなにマニアっぽい感じになるのではなくて、わかりやすくふつうに伝わっていくような、そういうつくり方でやりたいという姿勢なんです。ただ、そうは言っても、全部ふつうではほんとうのふつうになってしまうので、そこからちょっと抜けた部分がないといけない。その辺の問題をどう乗り切るかを目標として制作しました。

--楳図先生の漫画作品を読むと楳図先生の作風が濃厚に感じられるのと同様に、このフルアルバムも楳図カラーが随所に反映されているのがファンとしてはうれしいですね。今回のフルアルバムの特色はなんですか。

 今回、「新宿烏」というのが大きな柱になっているんですが、そうすると、やはり演歌なんですよね。前回のアルバムである『闇のアルバム』と大きく違う部分は、演歌の手法というか、演歌の心を取り入れている点だと思います。

楳図かずお 金子デメリン

--『闇のアルバム2』というタイトルが決まるまでの経緯を教えてください。

 川口さんの頭の中に『闇のアルバム2』という言葉があって、そこからいろいろ考えました。案としては、36年前にリリースされた『闇のアルバム』を逆転させた『光のアルバム』など、いろいろあったんですが、最終的に『闇のアルバム2』で落ち着きました。このタイトルにしてよかったなと思うのは、「2」というからには「1」があるはずだということで、広がりがあるんですよね。過去にもつながっていくタイトルなので、「1」と「2」ではどんな違いがあって、どんなふうに進化しているかというのがよく見えてくるんです。

--新しいフルアルバムがリリースされるのは36年ぶりですが、楳図先生は、音楽への気持ちはずっと持ち続けていたんだという部分がよく表れていて、いいタイトルだと思いました。仮タイトルだったものが正式タイトルになったということですか。

 そうそう。僕、やっぱりね、最初のインスピレーションって大事だと思うんですね。そこには、考えていたり、または考えていないんだけど直感で感じているような意味があると思うので。最初の「なんとなく」という部分は大事にしたいなと思うんです。

--今回のアルバムのコンセプトは?

 思い切り分厚く、全体として一つのドラマの塊になるようにしたい。曲が揃うことによって全体的にドラマチックなものに見えるようにつくりたいと思いました。

--苦労した部分はどのあたりですか?

 デモテープをつくるために、ピアノを弾きながら歌えるようにしなくてはならないんですよ。そのための稽古がたいへんでした。ほぼ全部の曲について言えることですが、デモテープでは弾きながら歌っています。僕のつくった骨組みのアレンジをそのまま使っていただいている感じです。

--歌詞と曲とではどちらを先につくるんですか。

 まず歌詞をつくり、その後曲全体のイメージを決めます。例えば、「チキンジョージ」だったら今風のスリルを感じる音階とか、「タンゴ・アルゼンチーノ」だったらタンゴ風でとか、そういった大まかな曲調です。その後具体的な旋律やリズムをつくっていくんですよ。

--日常生活の中で突然ある旋律を思いついたとか、そういうことはありますか?それとも、「今から曲をつくるぞ」という感じで作曲するんですか。

楳図かずお まず曲を頭の中で考えます。それをピアノで確かめて、楽譜にしていきます。例えば、「チキンジョージ」なんかですと、合っているんだか外れているんだかわからないんだけど、外れていても成り立っているというような曲のつくり方なので、すごく難しかったですね。「ひとりたび」は、去年別荘に行ったときにつくった曲ですね。山奥なので、夜は外にも出られないんです。だから、家の中でつくりました。それなので、曲のはじまりは長野県からなんですよ。別荘へ行くときは、富士見というところで電車を降りて、そこからタクシーで行くんですが、富士見と茅野の間に無人駅があるんです。たまにその無人駅を利用したりするんですが、その辺は、わりと自分の体験をそのまま歌詞にしています。

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