MUSICSHELFトップ > 特集・連載 > 難波弘之 インタビュー
the players' worlds プロの世界「Vol.13」難波弘之「主役も脇役も張れる鍵盤帝国の王子」
■インタビュー/文:久保田泰平  ■撮影:阪本勇  撮影協力:株式会社 芝浦スタジオ
掲載日:2007.10.31
 プロ・ミュージシャンとして活動を始めて30年あまり。金子マリ&バックス・バニー、センス・オブ・ワンダー、野獣王国、A.P.J.、ExhiVisionなどさまざまなバンド/ユニットのメンバーとして活動する一方、ライヴ・サポートやセッション・プレイヤーとしても活躍してきたキーボーディスト、難波弘之。作曲、編曲、プロデュースなどの才能を活かし、現在もポピュラー音楽シーンのみならず、TV、ゲーム音楽の世界に至るまでその名を轟かせるマルチ・ミュージシャンが、朗らかな語り口でインタビューに応えてくれた。
--そもそもご実家が音楽一家だったそうで。
 そうなんですよ。父親はジャズ・アコーディオン奏者だったんですけど、日本で初めてハモンドオルガンを銀座三越のイベントで弾き、個人でも購入しました。僕が子供の頃の写真に写ってるんですけど、もちろん当時のことは憶えてなくて、だいぶ大きくなってから写真を見てびっくりしましたね。母親はフランス近代歌曲の声楽家で、いまで言うボイトレみたいなこともしてたんです。家にはダークダックスや立川清登さんがレッスンに来てたりしていましたね。
--楽器を演奏するようになったのはいつ頃からなんですか?
難波弘之 3歳の時からです。気がついたらピアノを弾かされていたって感じで。昭和30年代だったんで、当時ピアノを習ってる男の子なんてまわりにはいませんでしたよ。実家は巣鴨だったんですけど、まわりは商店の子ばっかりで、小学校の頃はちょっといじめられたりしました。ピアノを弾けると、上級生の合唱の伴奏をやらされたり、目立っちゃうんですよね。そんなこともあって、音楽はあまり好きじゃなくて、手塚漫画に夢中になってました。それで目を悪くして、メガネをかけるようになり、またそれでいじめられて(笑)。とにかく強制されるのがイヤで、クラシックだなんだ問わず、興味を持って音楽を聴かなかったんですよ。ビートルズにも興味を示さなかったぐらいで。でも、大ヒットした曲は自然と耳に入って来るので、坂本九さんの「上を向いて歩こう」は「良い曲だなあ」と思いましたね。
--小中学生の頃は音楽より漫画?
 どっちかって言うとそうでしたね。その流れでミステリーやSF小説に夢中になって、中学の時はまだバンドもやってなかったし、いわゆる今のヲタクの元祖のようなヤツでしたね(笑)。ピアノは弾かされてましたけど、ドビュッシーやバッハはいいけどメンデルスゾーンとかベートーベンはイヤみたいな好き嫌いがあったんで、真面目にはやれなかったんですよね。
--そんな難波さんが自主的に音楽と向き合うようになったのは?
難波弘之 中学生の頃、SF仲間の友達がビートルズとかGSとか大好きで。そいつの家に遊びに行った時、TVでスパイダースを観てね、コレはいいじゃんと思って。スパイダースは音楽性が非常に高くてね、キーボードの大野克夫さんはセンスいいなあって。それをきっかけに洋楽のロックも聴くようになって、やっぱりキーボードが入ってるグループばっか聴いてました。GSだとスパイダース、ゴールデン・カップス、ハプニングス・フォー、洋楽だとゾンビーズ、アイアン・バタフライ、ドアーズ、ヴァニラ・ファッジ、プロコル・ハルム、ナイス、ピンク・フロイド……みたいな。ピアノをやるのはイヤだったんだけど、こういうんだったら自分でもやりたいと思って。それで、高校に入ってから友達とバンドを組んだりして。
--大学生の時にはプロ・デビューの誘いを?
 声をかけられたのは大学の半ばぐらいでしたね。当時は愛の三色すみれっていうプログレ・トリオと、ヴォーグっていうファンキーなバンドをやっていたんですけど、ライヴの時、PAの人に声をかけられて「なんで、おまえはこんなヘタクソな連中といっしょにやってんだ(笑)? 金子マリっていう上手いヴォーカルがいるから今度紹介するよ」なんて言われているうちに、何と学園祭に金子マリとなるちょ(鳴瀬喜博)が来たんですよ。で、「新しいバンドをやるんだけど、いっしょにやらないか? だけど、プログレじゃないぞ(笑)」って誘われたんです。
--その新しいバンドが、金子マリ&バックス・バニー。
難波弘之 ですね。それまで金子マリがCharとやってたスモーキー・メディスンっていうバンドは割とハードだったから、てっきりそういうのかなと思って入ったら、ブラック・テイストの渋いサウンドだったんで、意外でしたね。あと、いちばん衝撃だったのは、リズム隊を固めようってことで、関西で合宿に入ったんですけど、、その時に石田長生とか山岸潤史とか上田正樹とか、サウス・トゥ・サウスのメンバーやウェストロード・ブルース・バンドのメンバーと知り合いになってね。僕はお笑いが好きだったんで、関西人の感覚っていうのは子供のときから親しんでたんですけど、芸人じゃない一般の人もああいうしゃべり方をするんだって衝撃を受けました(笑)。しかも、音楽性はブラック・ミュージックのエッセンスをやすやすと消化していて、こりゃ東京のバンドはかなわんわと思って、ちょっとしたコンプレックスを感じましたね。
--あれから30年あまり、難波さんのバイオグラフィー(公式サイト参考)を眺めてみると、現在に至るまで濃密な活動をされてるなあと。
 結局、表方と裏方の両方をやっていたからなんじゃないですかね。いやあ、このあいだ驚いたのはね、僕のファンですっていう人がいたんで、「僕の作品でなにが好きですか?」って訊いたら、「ゲーム音楽しか聴いたことない」って言うんですよ(笑)。そういう世代がついに現れたかって。
--多岐に渡る音楽活動をされている難波さんですが、まだやっていない、やってみたい仕事はありますか?
 う~ん、たいがいのことはやっちゃいましたよね。小説も書くし、自分で作曲もやってるから、「自分の小説を映画化して音楽も自分でやっちゃえば?」なんてよく言われるんですけど、そういう願望は、僕はあまりないんですよね。なんかね、親方願望みたいなものはないんですよ。昔、僕が芳本美代子っていうアイドルの曲を書いて、それを大村雅朗さんにアレンジしてもらったんですけど、その時すごく新鮮でね。そういうほうがおもしろい。来年早々に、初めて打ち込みで作ったアルバムを出すんですけど、それは元ソウル・ボッサ・トリオの松本浩一にリミックスやってもらったりして、自分の曲が切り貼りされるとこんなになるんだっておもしろさがあるんですよね。だから、自分自身でチャレンジっていうより、自分の作品を他人にいじられたりするのがおもしろいかなって。
難波弘之 Professional's eye
--難波さんのプロとしてのこだわりを教えてください。
 なんでしょうねえ……まあ、たとえば、どんなに便利になっても、オルガンの代用でシンセを使わないとか、そういうことですかね。僕ね、デジタル・シンセの音をエディットしないで、工場出荷時に入っているデータのまんま弾いていいのは黒人だけだと思ってるんですよ(笑)。なんか、黒人ってDX-7そのままの音で弾いても唯一格好良くできる人たちだと思うんですけよね。
難波弘之 Private Music
--リスナーとして、最近はどのような音楽の聴き方、接し方をされてますか?
 僕、家でもあまり音楽を聴かないし、移動中とかにも聴かないんですよね。ながらで音楽を聴けないんで。仕事上、聴かなきゃいけない時しか聴かない感じですね、そういえば。今は、映像といっしょに楽しんだほうがおもしろいものがいっぱい出てきてるんで、ライヴDVDとか、そういうのを観ちゃいますよね。
--ご自身のキャリアの中でいちばん思い出深い曲を1曲挙げてください。
 アルバムだと、金子マリ&バックス・バニーのファースト。今、いろんな人に聴いてもらいたいんだけど、いろんな問題があってCDになってなくて。これは自分で今聴いても結構がんばってるじゃんっていう感じですね。他のメンバーをよそに、ひとりでプログレやってるっていう(笑)。その中の曲だと、2曲目の「晴れのち曇り」っていう曲が好きです。金子マリがファルセット・ヴォイスで歌ってるんで、彼女のなかでは異色の作品なんですけど。
 
難波弘之’s PLAYLIST: 鍵盤人生ベスト10
 
難波弘之 プレイリストの詳しいレビューとCDや楽曲購入
難波弘之 リリース情報
野獣王国 New Alumリリース
『PEACE』
『PEACE』
NOW ON SALE!!
ベガ・ミュージックエンタテインメント
VGDBRZ0031/¥3,150(tax in)
amazon.co.jpで試聴・購入する HMVで試聴・購入する
野獣王国メンバー
是方博邦:Gt.
鳴瀬喜博:B.
難波弘之:Key.
小森啓資:Dr.
難波弘之 ライブ情報
【ExhiVision】
難波弘之(Key)/和田アキラ(G)
/永井敏己(B)/長谷川浩二(Ds)
<ExhiVision 2nd Album『OVEREXPOSURE』発売記念ツアー>
10/29(月)大阪 MUSE
11/3(土)相模原 MAPLE HALL
11/16(金)宇都宮 ESPRIT
12/12(水)京都 RAG
12/14(金)吉祥寺 SILVER ELEPHANT
【野獣王国】
是方博邦(G)/難波弘之(Key)
/鳴瀬喜博(B)/小森啓資(Ds)
11/8(木)六本木 STB139
11/9(金)名古屋 BOTTOM LINE
11/10(土)岐阜 SoulDyna
11/11(日)三島 afterBeat
12/24(月)京都 RAG
【Nuovo Immigrato】
五十嵐久勝(Vo)/難波弘之(Key,Vo)
/下田武男(Ds)/高橋竜(B,Vo)
/Burny日下部(G,Vo)
11/22(木)初台 The DOORS
【TOSHIMI SESSION】
永井敏己(B)/難波弘之(Key)
/米川英之(G)/山口鷹(Ds)
12/2(日)吉祥寺 シルバーエレファント
【ZABADAK BIRTHDAY LIVE】
吉良知彦(Vo,G)/小峰公子(Vo,Acc)
/楠均(Ds)/青木孝明(Guitar)
/吉田誠(B)/難波弘之(Key)
/太田恵資(Vl)
12/6(木)渋谷 O-WEST
【難波弘之&Sense Of Wonder】
難波弘之(Key,Vo)/そうる透(Ds)
/松本慎二(B)
12/21(金)初台 The DOORS
12/25(火)大阪 Knave
12/26(水)名古屋 ell.FITS ALL

11/30(金)新橋ZZ
ゲスト:鈴木慶一
12/30(日)新橋ZZ
詳細はオフィシャルサイトをチェック!
http://www.vega-net.ne.jp/Namba/
難波弘之 プロフィール
難波弘之
難波弘之
75年、鳴瀬喜博らと結成した金子マリ&バックス・バニーでデビュー。以後、ソロ・アルバム『センス・オブ・ワンダー』をはじめ4枚のソロと、自己のグループSENS OF WONDERで3枚のアルバムをリリース。A.P.J.のメンバーでもあり、キーボード・プレーヤー、作・編曲家として山下達郎、吉田美奈子、竹内まりや、TOKIO、ゴスペラーズ、松本孝弘(Bz)、レッド・ウォリアーズ、ソウル・ボッサ・トリオらのレコーディングやライブに参加する他、音楽プロデュース、TV/ラジオ/映画/アニメ/ゲームの音楽、東京音大で准教授を務めるなど、さまざまな分野で活躍している。
オフィシャルHP:
http://www.vega-net.ne.jp/Namba/