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トーキング・アバウト・マイ“色即ぜねれいしょん” スペシャル座談会 田口トモロヲ(監督)×みうらじゅん(原作)

みうらじゅん プロフィール

みうらじゅん

みうらじゅん
Jun Miura

1958年2月1日京都府生まれ。武蔵野美術大学在学中に漫画家デビュー。以来、イラストレーター、作家、ミュージシャン、ラジオパーソナリティなど幅広い分野で活動。常に独自の世界を創作し続け、業界内にもファンが多い稀代の人物。97年造語「マイブーム」が流行語大賞受賞語になる(ほかに「ゆるキャラ」「とんまつり」「いやげもの」などもみうらの造語)。04年日本映画批評家大賞功労賞受賞。いとうせいこうと「スライドショー」、安斎肇と「勝手に観光協会」などイベントも多数開催。著書に漫画「アイデン&ティティ」(角川文庫/03、田口トモロヲ監督により映画化)、「色即ぜねれいしょん」(光文社)「青春ノイローゼ」(双葉社)「ゆるキャラ大図鑑」(扶桑社)、写真集「アイノカテゴリー」(ぴあ)、対談集「正論」(コアマガジン)など。「みうらじゅんDS」(TBSチャンネル)BS「デザインの森」(CX)などテレビ出演も多く、CD「勝手に御当地ソング47+1日本全国旅館録音(2枚組)」DVD-BOX「シンボルず」ほか音楽、映像作品も多数。08年からTVCM、KDDI「auの庭。」で父親役として登場。

みうらじゅんOFFICIAL SITE:
http://miurajun.net/

田口トモロヲ プロフィール

田口トモロヲ

田口トモロヲ
Tomorowo Taguchi

1957年11月30日東京都生まれ。独自の路線で観るものを魅了し続ける、日本映画界に欠かせないオンリーワンの存在。大学中退後、20代を漫画家、ライター、イラストレーター等の仕事をしながら、マイナー、アングラ、インディペンデントシーンで過ごす。演劇活動としては、”発見の会”を皮切りに、劇団“健康”の旗揚げに参加。同時期に、パンクバンド“ばちかぶり”を結成し、音楽活動も開始する。82年に知人の紹介で『俗物図鑑』(内藤誠監督)で映画デビュー。その後、塚本晋也の『鉄男』(89)に主演、脚光を浴びる。俳優以外にも、みうらじゅんと94年末に結成したユニット”ブロンソンズ”で単行本「ブロンソンならこう言うね」(ごま書房)を刊行。シングルCD「大脱走’95/マンダム男の世界」アルバム「スーパーマグナム」を発売、00年から「プロジェクトX~挑戦者たち」(NHK)でナレーションを担当するなど多才ぶりを発揮。03年に『アイデン&ティティ』(03)で監督デビューを果たし成功を収め、今作『色即ぜねれいしょん』が待望の監督2作目となる。09年は『少年メリケンサック』(宮藤官九郎監督)、宮本亜門演出の舞台「三文オペラ」に出演。

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 『色即ぜねれいしょん』の原作者みうらじゅん、そして、監督を務めた田口トモロヲのゴールデン対談が実現! かつて、同じコンビで『アイデン&ティティ』も制作した二人は、プレイベートでも親友同士の仲。今回の映画化には二人のどんな想いが託されているのか? 青春をこじらせた二人がそれぞれの〈色即時代〉を振り返りながら、文系男子の光と影について語り合った。

--今回、映画化が決まった時、最初から田口さんに撮ってもらいたい、という気持ちはあったんですか?

みうらじゅん(以下みうら):最初は役者として映画に出てもらおうと思ってたんですよ。

田口トモロヲ(以下田口):映画化の話があると聞いた時、主人公の親友の池山とか伊部をやる気満々で(笑)。

みうら:ものすごく年齢が高いけどね(笑)。

田口トモロヲ×みうらじゅん田口:久しぶりに高校生ができると思って(笑)、「今度は若作りメソッドか」と期待してたんですけども、その話がいつのまにかなくなって。

みうら:それで、また一から映画化の話を始めた時に、やっぱりトモロヲさんに撮ってもらいと思って。『アイデン&ティティ』がとても好きだったし、振り幅がそんなにない青春を優しい目で撮れる監督はそんなにいないんですよね。トモロヲさんはそういったところがとてもうまい。トモロヲさんに任せたら、何も問題ないだろうって思ったんです。友達だから、というより、友達がスゴいやつだったってことなんですよ。世間では俺たち〈ゴールデン・コンビ〉って呼ばれているらしいですけど(笑)、コーエン兄弟みたいな感じで〈ゴールデン兄弟〉って呼ばれるようになりたいですね。

--監督の依頼を受けて、田口さんはどんな風に思われました?

田口:『アイデン』のラストシーンで言ってたように、「やらなきゃならないことをやるだけさ」ということなのか、と思いました。これは逃げられないなと。友達だったら失敗しても許せる、っていうことはあるかもしれないけど、逆に僕としては「失敗してなるものか!」っていうプレッシャーはありましたね。

--田口さんは「撮る」という決意を、お二人で行った沖縄旅行の別れ際にみうらさんに告げたとか。ドラマティックですね。

みうら:いやあ、この人はカッコいいですよ(笑)。

田口:これねえ、勝手に美化されてますけど(苦笑)。プライヴェートの旅行で仕事の話をするのもなんなので、それで旅行の帰りに「しばらく会わないだろうから、今言っといたほうがいいな」と思って……。まあ、こうやって伝説が作られるわけです(笑)。

--完成した映画を観ると、とても共感できる等身大の青春物語でした。甲子園を目指すスポーツマンでもなく、ケンカが強い不良でもなく、これまで主役になりにくかった文系男子の光と影が繊細に描かれていたと思います。お二人から見て、「文化系男子」の特徴ってどんなところですか?

みうらじゅんみうら:決断が鈍いですよね、やっぱ(笑)。僕も人生において大決断をしたことが少ないんで。やっぱり高校の時なんか、すごく変わりたかった。文系の人たちって、みんな「このままでいい」とは思ってないから。人に教えられたわけじゃなく、自分で方向性を探していくっていうのが辛いところで。

--ずっと霧が晴れないまま、モヤモヤしてますよね。

みうら:体育会系とかヤンキーみたいにチームに属していないから、自分が何者かわからない。団体に属していると、先輩とか後輩とか、ケンカ強いヤツとか弱いヤツとかわかってくるんだけど文化系はねえ。そこで青春をこじらせたヤツが、一歩でも進む方向を見つける。(『色即ぜねれいしょん』は)そういう映画だと思うんですよ。これまで青春を謳歌するような映画はいっぱいあったと思うけど、この映画では文化系ならではの“こじらせっぷり”が共感を呼んだらいいな、と思います。

田口:文化系でも学校の成績が良かったり、優等生になれたりする人達はまだ良いですけど、そうじゃない文化系は色が薄いですよね。はっきりしたカラーがないっていう。みうらさんもおっしゃってたけど、チームに属する以前に〈どのチームに属したらいいか?〉っていうところから迷ってる感じで、それが一生続く。それが童貞をもこじらせる(笑)。

田口トモロヲ(監督)×みうらじゅん(原作)

--やはりお二人とも、そうとう青春をこじらせてました?

みうら:僕はもう、とってもこじらせてたから。しかもね、陽気だったんですよね(笑)。暗いことにすごく憧れて、いろいろそういう本を読んだり、文章とかも暗いことを書いてみたりしたんだけど続かないんですよ、シリアスが。それはもう性格だから仕方ないけど、いまよく言われている〈自分探し〉ってやつをやってたんです。ものすごくいろいろやってたつもりだったけど、結局、何も見つからなかった。

--田口さんは?

田口:僕は陽気さなんて微塵もなかったですね。

田口トモロヲみうら:今、すごい力こめて言ったね(笑)。

田口:笑顔とか、大っ嫌いでしたから(笑)。

みうら:いいね~(笑)。

田口:ほんと、ド暗い青春だったんで。多分、みうらさんはいろんなチームを持ってるじゃないですか。そのなかで僕がいちばん暗いと思うんです(笑)。僕は仕事がら暗い面ばかりは出せないですけど、暗黒面が半分以上を占めてます(笑)。

--みうらさんと田口さんは、実は対称的な二人なんですね。

みうら:でもね、ほんとに友達になるやつって、自分にないものを持ってるやつなんですよ。似たやつじゃないんですよ。似たやつとは、今までもあんまり友だちになってないような気がするな。

田口:似たやつとチームを組めるのは体育会系だったり、違うグループの人達のような気がしますね。

みうら:そうはいっても二人とも、根っこのところはあまり変わらないんですよ。同じことを多分思ってるんだけど、それを暗~く思うのと、暗く思えないという違いくらいで。今回の映画も、前の映画でも、二人のそういうところがうまく出てるような気がするんですよ。お互い無いところ補って作ってる作品だからよくできてるんだよね。だから面白いのかもしれない。

--ちゃんと物語に光と影が……。

みうら:あるんですよ。僕、小説は一人称で書いてるんで、周りにまったく興味がいってないところを映画で補ってもらったりしているし。うまくいってるんですよね、このゴールデン兄弟(笑)。

田口:あ、ついに使い始めましたね(笑)。

みうら:うん、今ちょっと噛みそうになったけどね。二回ぐらい言うと慣れてくるんだよ(笑)。

--そんな文化系男子だったお二人が、ロックに出会って変わっていったんですね?

みうら:いや、オレはロックはダメだったんだよね。当時、(レッド・)ツェッペリンとか(ディープ・)パープルがはやってたけど、なんか苦手で。パープルの「ハイウェイ・スター」の訳詩を読んだ時に「これはダメだ」と(笑)。「こんなバカな詩、グッとこねえな」と思って。それで『バングラデッシュのコンサート』っていう映画を観に行った時、ジョージ・ハリソンはカッコつけて白いスーツ着てたけど、ボブ・ディランはGジャン着てて。それを「カッコ悪いな」って思った時に、なんかグッとくるもんがあったんです。浮いてたんですよね、着てるものも居場所も。ロックでもカントリーでもない、どこに所属してるのかわからない感じ。そんな居心地の悪い状態のディランが僕には救いだったんです。

--それって、さっきの「どこにも属せない文化系男子」と通じるものがありますね。田口さんはみうらさんにとってのディランみたいな、方向を示してくれる存在って何かあったんですか?

田口:僕は映画ですね。アンチ・ヒーローが出てくるアメリカン・ニューシネマ。最終的にハッピー・エンドじゃない映画に出会って、すごくリアルだと思ったし、そこに感情移入できた。それと音楽で言ったらパンクです。とくに好きだったのがキャプテン・ビーフハートとジョン・ライドンでした。シド・ヴィシャスよりジョン・ライドン。生き残ることの無様さを選んだ人のほうが好きなので。

田口トモロヲ×みうらじゅん--パンクのどういったところに惹かれたんですか?

田口:技術とかなくていい、ガッツさえあれば、ってことですね。70年代後半にロックがテクニック至上主義や商業的なものになってきたのを、全部チャラにしたっていう。大衆に、聴いてくれる人たちにロックを返してくれた。「君たちもヤル気さえ出せばできるんだ」って。それで僕もやり始めたし。それにパンク前後に、日本の映画界に石井聰亙監督のような人達が出てきたりもして、そういうことが僕のなかですべて連動しているんです。

--みうらさんはパンクとか聴いてました?

みうら:まったく聴いてないです(笑)。パンクの衝動を感じたのは、ディランの『ハード・レイン』というアルバムを聴いた時でした。ディランが顔を白塗りして、わけのわからないツアーに行くっていうやつで。その何か月後かにディランが初来日して、「パンクなままで来るのかな?」って思てったら、白いジャケットを着てオーケストラ風な演奏だったし、「なにをしたいんだろう、この人は?」と思って(笑)。わざとハズしているのか、ひとつの価値観に収まりたくないのか。とにかく、そこにグッとくるんです。だからオレにとってディランがロックであって、ほかはロックじゃない。

--話を映画に戻すと、『色即ぜねれいしょん』は『アイデン&ディティ』と繋がっていく話だと思いますが、二人のコンビでもう一本作って三部作にする予定などは?

みうら:実はね、この2作には間が抜けてるんですよ。セックスをする、という過程が。

--なるほど。童貞を捨てるというのは、文化系男子にとっては大イベントですもんね。

みうら:大変でしたよ。僕らこじらせてましたから(笑)。「一生できないんじゃないか?」って、ずっと思ってたし。ヤンキーとか手軽にできることなのに(笑)。だから、セックスをする映画を一本撮らないと。

田口:ゴールデン兄弟の『セックスをする』(笑)。でも、ゴールデン兄弟でプロデュースして、神代辰巳監督的な方を見つけたほうがうまくいくような気がしますね(笑)。セックスは描くのが難しいですから。

--田口さんも童貞をこじらせていたクチですか?

田口:童貞問題は大きかったですね。『色即』の主人公の純が「セックスはしたいけれども、愛が……」とか考えて葛藤するじゃないですか。文化系って、そういう時に愛のこととか考えて悩んじゃうから。「オレはほんとにこの人のことを好きなのか?」とか。体育会系だったら、お金払ってやったりできるんだけど。

みうら:そうなんだよね、できないんだよね、お金払ってはさ。だからこじらせる。

田口:セックスすることよりも、そこまでの過程が重要になってくるから。

--もしかして体育会系だったら、あんな風にオリーブに迫られたら、とっととヤッちゃってるかもしれないですね。

みうら:すぐやるでるでしょ!(笑)。

田口:船の上でやってるよ!(笑)。

みうら:いやあ、ほんとに。ディランとかジョン・レノンもそうだったけど、彼らの歌を聴くとねえ、そんな簡単にできないことですよ、セックスって。愛について知りたかったもん、すごく(笑)。

--それでは、ゴールデン兄弟による『セックスをする』を楽しみにしています。

みうら:そうだね。でも、なんか演歌歌手みたいだなあ、ゴールデン兄弟(笑)。

<インタビュー/文:村尾泰郎、撮影:本多元>

みうらじゅん スペシャルプレイリスト みうらじゅんの5曲

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