小曽根真 Page1 -

掲載日:2011.08.02

小曽根真 Page1

小曽根真が新作を2枚同時リリースした。ひとつは『リブ・アンド・レット・リブ~ラヴ・フォー・ジャパン』。これは東日本震災復興のため、彼が世界のミュージシャンに声をかけて共作したもので、収益のすべては、企業メセナ協議会のGBFund(芸術文化による震災復興支援ファンド)に寄付される。もう一作品は、自身が率いるビッグバンド、No Name Horsesとのライヴ盤『バック・アット・ザ・クラブ“イン・トリビュート”』。コクとキレのあるダイナミックなサウンドを堪能できること、うけあいである。世界の名だたるミュージシャンと対等に渡り合えるピアニスト、コンポーザーとしての実力。プレーヤーでもありながらビッグバンドをも統率する、ディレクターとしての才能。この2作は奇しくも小曽根真というアーティストの個性をくっきりと描き出している。

 


日本のために世界のミュージシャンが結集した

『リブ・アンド・レット・リブ~ラヴ・フォー・ジャパン』

-- 『リブ・アンド・レット・リブ~ラヴ・フォー・ジャパン』の制作の様子が、NHK BS1「地球テレビ エル・ムンド」で放送されました。それを拝見するととてつもないスピードで、小曽根さんが行動されたのがよく伝わってきました。まず、小曽根さんがメールで各アーティストに参加の打診をしたところから始まったんですよね。

震災直後から、何かしなければいけない、とは思っていました。ところが、4月後半までスケジュールが埋まっていたんです。また、チャリティーコンサートも考えていたのですが、それだと1回きりで終わってしまう。長期に渡って義援金が送れるものは何かと考えると矢張りCD だろう、と旅先で悩んでいた僕に妻の三鈴から「あなたはCD を作るべきだ」という一本の電話がありました。しかし、せっかく作るならクリエイティヴな作品にしたい。僕が単独で作るとなると、アルバム1枚分の新曲を書くだけで数週間は掛かってしまう。そこで、自分が尊敬する世界のミュージシャン達に声をかけて、彼らが日本に贈りたいと思った楽曲を収録することにしました。さらに、このメンバーなら世界中から義援金が集められると思ったんです。そこで、この考えをみんなにメールしたら、あっという間に返事が返ってきて。一人目にメールを送って、二人目にメールを書いている途中に、一人目から返事が返ってくるという早さでした。

-- みなさんの「日本のためになにかしたい」という想いが感じられる素敵なエピソードですね。

夜中の1時ごろからメールを打ち始めて、朝の5時ぐらいまで日程調整をしていました。そこで渡米のためのおおまかな日程が決まりました。

-- 小曽根さんの気持ちが前面に出たからこそ、多くのミュージシャンの心が動いたんでしょうね。

チック(・コリア)もいつでもいいよ、と言ってくれたし、ゲイリー(・バートン)も全く問題ない、と。ゲイリーはチックのスタジオまで自動車にヴィブラフォンを積んで、5時間かけてやってきました。ランディー・ブレッカーは、ヨーロッパに居て、当初はスケジュール的に難しそうだったんですが「なんとかする」と言ってくれて。それで、ヨーロッパから帰国し、そのままJFK空港からタクシーでスタジオに来てくれました。みなさんの「なんとかしてこのプロジェクトを成功させたい」という強い気持ちを感じましたね。僕はそのエネルギーに逆に癒されました。だから、本当に素晴らしいアルバムになったと思っています。しかも、全曲新録です。さらに、この作品は世界で発売されます。そこで、きれいな日本語を世界のみなさまに聴いていただきたいと思ったんです。

-- それが最後に収録された「ふるさと」ですね。

ジェイク(・シマブクロ)が来日して、一緒に録音した際、スタジオに妻も来ていたんです(奥様は女優の神野三鈴さん)。ジェイクとの録音が終わった後、何気なく妻に「ちょっとこれ、歌ってみてくれない?」と「ふるさと」の歌詞を渡したんです。じゃあ、といって試し録りしたものをそのままCDに収録したんです。彼女の自然体を表現したかったから。しかし「役者ってすごいな」と思ったのは、3番まで歌があるのですが、僕が弾いた間奏を聴いた後では歌い方に違いが出たことです。2番の終わりに少しジャズっぽいフレーズを入れただけで、3番の歌い方が全く変わったんです。役者の感性はすごいな、と。

-- 相手が発するものによって反応を変える…

そうなんです。芝居の基本は、相手のセリフを聞くことなんですね。ジャズも相手が何を弾いているかが一番大事なんです。自分が何を弾くかだけを考えるのではなく、そこに生まれる反応やケミストリーこそが重要です。

-- この曲が持つ意味を考えると、アルバムの価値がさらに高まるようです。

故郷は誰にとっても大切なものです。被災された方々は、故郷が壊されてしまったわけですから、そこに届けたいという想いが強かったんです。

 

-- 「ふるさと」をはじめとして、改めてじっくり耳を傾けると、日本語の歌曲には良いものが多いですね。

美しい日本語ってあるんですよ。それを現代の人たちにも知って欲しい。日本語が持っている美しい音。それを気付かせてくれたのが井上ひさしさんです。言葉自体が音楽なんです。役者がセリフを普通に喋るだけで感動する、という日本語です。

-- チックとゲイリーと小曽根さんによる「ブルー・ボッサ」は、チックの選曲だそうですね。「日本人に人気のある曲だから」ということで。

そうですね。でも、演奏の仕方は物凄くクリエイティヴです。アレンジもエンディングも何も決めないまま「You start!」と言われ、「OK!」と僕がピアノを弾き始めた。それがこのテイクです。それができるのが、ジャズの素敵なところですね。

-- ジャズのもとでは、国境も人種も越えてプレイできます。

今回は、日本、アメリカ本土、ハワイ、ポーランド…国境や人種を越えて様々なアーティストが結集しました。今回、ジェイクに参加してもらったことも大きな意味がありました。彼を知っている人には「これジェイクの演奏なの?」と驚かれるほどです。

-- これまでのイメージですとウクレレを使った主にリラックス系の音楽というものでしたが、全く違いますね。非常に熱のこもった演奏で。

熱かったですよ。彼が「もう一回、もう一回」って、一体、何テイク録ったことか(笑)。ウクレレで弾いているとは思えないほどです。

-- あと、パキート・デリヴェラとのセッションも非常に強い印象を残します。10人のストリングスの響きがたまらないですね。

これは僕の親友のコンダクターが、フェイスブックを使ってニューヨークのミュージシャンたちを集めてくれて。あっという間に10人揃ったんですよ。

-- 今回、小曽根さんがメールでミュージシャンに協力を呼びかけたり、フェイスブックを使われたりと、良い意味でITが活躍しているんですね。

本当にそうですね。電話だったらできなかったプロジェクトです。

-- そのスピード感は現代ならではです。また、東京で1日、フロリダのチックのスタジオで1日、ニューヨークで2日という強行スケジュールで録音されています。もちろん、全ての曲に小曽根さんが関わっていらっしゃるわけですが、その際の集中力たるや、想像を越えるものです。

とにかく早くこのCDを日本の皆さんに届けたい、そして一刻も早く義援金を確保したいという気持ちでした。だから収録が終わった次の日にはマスタリングをしていました。

-- そして、世界の著名なミュージシャンに加えて、ジャケットデザインでは佐藤可士和さんが参加されています。

想像を絶するほど多忙な佐藤可士和さんがたった1カ月ほどで、この素敵なジャケットを仕上げてくれました。このデザイン、すごいですよね。ポジティブなエネルギーに溢れていて。

-- ブックレットの中面には、参加したミュージシャンが手を広げて、全員が手をつないでいるかのようなレイアウトになっています。

それは妻のアイデアなんです。「リブ・アンド・レット・リブ」とは共存という意味です。共存とは、みんなで手をつなぐことですから。

 

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リリース情報
 









New Album
『LIVE & LET LIVE- LOVE FOR JAPAN

ユニバーサルミュージック

NOW ON SALE

UCCJ-2089 / ¥3,000 (tax in)

 

 









New Album
Back At The Club In Tribute

ユニバーサルミュージック

NOW ON SALE

UCCJ-2088 / ¥3,000(tax in)

 

 

ライブ情報

小曽根真 & No Name Horses
「ラプソディー・イン・ブルー」

10/15(土)

東京:かつしかシンフォニーヒルズ
[問] かつしかシンフォニーヒルズ 03-5670-2233
http://www.k-mil.gr.jp/

10/19(水)

北海道:ニトリ文化ホール
[問] 道新プレイガイド 011-241-3871
http://doshin-playguide.jp/

10/20(木)

北海道:函館市民会館
[問] 道新プレイガイド 011-241-3871
http://doshin-playguide.jp/

10/23(日)

静岡:アクトシティ浜松大ホール
[問] ハママツ・ジャズ・ウィーク事務局(ヤマハ株式会社) 053-460-2234
http://www.yamaha.co.jp/event/hjw/2011/

10/25(火)

石川:本多の森ホール
[問] 北國新聞文化センター 076-260-3535
http://hokkoku.bunkacenter.or.jp/

10/26(水)27日(木)

愛知:名古屋ブルーノート
[問] 名古屋ブルーノート 052-961-6311
http://www.nagoya-bluenote.com/index.html

10/28(金)

大阪:サンケイホール・ブリーゼ
[問] ブリーゼ・チケットセンター 06-6341-8888
http://www.sankeihallbreeze.com/index2.html

10/29(土)

東京:大田区民ホール・アプリコ
[問] 大田区民ホール・アプリコ 03-5744-1600
http://www.ota-bunka.or.jp/index.html

11/3(木:祝)

神奈川:海老名市文化会館
[問] 海老名市文化会館 046-232-3231
http://www.ebican.jp/

 

小曽根 真 プロフィール

父、小曽根実の影響でジャズに興味を持ち、独学で音楽を始める。1983年バークリー音楽大学ジャズ作曲・編曲科部門を首席で卒業。同年、米CBSと日本人初の専属契約を結び全世界デビュー。近年はクラシックにも本格的に取り組み、国内外のオーケストラと共演を重ねる。2003年、ゲイリーバートンとのデュオアルバム「ヴァーチュオーシ」でグラミー賞ノミネート。同年、バークリー音楽大学から名誉博士号を授与される。2004年にはビッグバンド「No Name Horses」を結成し、翌年デビュー・アルバムをレコーディング。2009年夏、ラテンをテーマにしたCD『JUNGLE』の記念ツア-を日本はもとより、フランス、英国にかけて行い各地で絶賛を得る。同年秋には、井上ひさし氏の新作書き下ろし作品『組曲 虐殺』の音楽と演奏をピアノ・ソロで担当し、読売演劇大賞最優秀スタッフ賞を受賞。精力的な演奏活動のかたわら、テレビ出演や舞台音楽、ドラマ音楽を手がけるなど、ジャズの世界を超えた幅広い活動へと挑戦を続けている。

 

OFFICIAL WEBSITE

http://makotoozone.com/

 

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