伊藤ゴロー Page.2 -

掲載日:2012.04.25

伊藤ゴロー Page.2

『GLASHAUS』のジャケットデザインは、詩人、作家で批評家でもある平出 隆の手によるもの。彼は自身の著作を、自ら出版するプロジェクトを起こしている。そんな彼が、カバーアートのモチーフとして選んだのは、アメリカの画家、ドナルド・エヴァンズによる「Yteke(イテケ)」。これは実在した女性ダンサーの名を冠した架空の国の切手として描かれたものである。存在しない国の切手を創作するという極めて内向的な芸術活動に興味が尽きないが、惜しまれることに77年に32歳で夭折している。また、切手をあしらったカバーを開くとライナーノーツが、まるで封筒に包まれたかのように現れる。ライナーノーツの紙質も柔らかで暖かみのあるものだ。つまり、冒頭で述べたように、音楽、デザイン、絵画といったトータルで『GLASHAUS』、そして伊藤ゴローの世界が構築されているのだ。これは、アートと社会を繋ぐ事業を幅広く展開するスパイラルを母体とした、SPIRAL RECORDSのパワーも大きく作用しているといえるだろう。


スパイラルレコーズA&Rの山上さんから、平出さんの作品を紹介していただきました。平出さんはドナルド・エヴァンズというアーティスト紹介する本を書いているんです。その二人の世界観に惹かれました。

-- それはレコーディングが終わってからのことですか?

いえ、ブラジルに行く前からです。

-- では、エヴァンズや平出さんの世界が少なからず作品に影響しているんでしょうか?

あまり意識はしていなかったですが、多分あると思います。

-- カバーに使用されている「Yteke」はゴローさんが選んだものですか?

そうですね。いくつか候補があって。平出さんと一緒に選んだんです。ジャケットのデザインや質感にもこだわって、まるで詩集を開くような佇まいに仕上がっていると思います。

-- CDというフォーマットはもう無くなって、配信だけになってしまうだろうと言う人もいます。しかし、こういったアートワークがある限り、一概にそうではありませんね。

ジャケットはとても大切です。自分でもジャケットにときめいてCDを買ったり、それを見ながら聴くと音楽の印象が変わったり。もちろん、ジャケ買いだってするし。その楽しみを奪われたら困る(笑)。

-- ところで、話は前後しますが、アルバムタイトル『GLASHAUS』は採光室のことですね。これには、どのような意味が込められているんですか?

簡単に言えば温室です。ここ5年ほど自分の中で「温室ブーム」で。あこがれるじゃないですか、温室って(笑)。ずっと欲しいと思っているんです。そこで何をしたいというわけではなく、その佇まいが好きなんです。だから「Glashaus」というタイトルはすぐ思い浮かびましたが、他の曲名は音が完成してから付けたものです。結構考えましたね。曲からインスパイアした言葉のちょっとした響きやイメージを発展させて付けました。 

-- 音楽に造詣が深いゴローさんですから、たとえば「Five Steps」は音楽用語だったり、メソッドの名称だったりするのかも、なんて思ったんですが。

「Five Steps」は変拍子なんです、7拍子と6拍子の。大きく取れば5つの拍子で成り立っています。これは曲のモチーフを日本で作って、リオでベースと二人だけで、ほぼ即興で完成させています。ファーストテイクです。しかし、タイトルって不思議ですよね。タイトルがつくと、曲が勝手に動き出すような気がします。曲を作るときもそうですけど、自分の持っているイメージや、思っている音を出すまでが大変です。ポンっと、ツルっと、出すまでがね。タイトルもそのようなものですね。

-- 「A Stamp」は、ジャケットに使われた、エヴァンズの切手ことを表現しているんですか?

 

これはもともとnaomi & goroで、インストで演奏していた曲をモチーフにして新たに作りました。その曲名「UM SELO」がポルトガル語で切手だったんです。だから、もともとあった曲なんです。

-- そのあたりも今回のアルバムと深くつながっているようで面白いですね。

エヴァンズの切手は、それを誰かが説明してくれないと、架空の世界を描いたものだと気がつかないと思います。たとえば、雑誌に載っていてもパラパラとめくっていたら、ただの切手だと思われてしまうようなものです。ものすごく個人的な作品だと思います。でも、ふとそういう作品があることを知ってしまったら、いきなり世界が広がるじゃないですか。どんな人なんだろう、なんでこんなことするんだろう、どんな世界を想像していたんだろう、とか。そうやって広がっていくことがすごく好きなんです。



-- 今回の新譜に触れたとき、やはりエヴァンズなり、平出さんなりのことをもっと知りたくなりました。そんな深みのある世界が、ゴローさんの作品と一緒になっていることに興味が尽きません。

エヴァンズや平出さんのことを想像していくのも楽しいと思います。

-- 冒頭で、ゴローさんはこのアルバムについてずっとやりたかった音楽、とおしゃっていました。でも、それは若い頃からじゃないですよね。というのも、この完成度の高さは、当然かもしれませんが、naomi & goroでの活動やプロデューサーとしての仕事などあったからこそだと思います。つまり、若い人には絶対に作れない世界。キャリアや年齢を重ねたからできる大人の音楽だと思うんです。

長くやっていると、どんどんシンプルになっていくじゃないですか。でも、それに加えてレヴェルも上げていかなければならないと思っています。今の音楽は技術がなくても、アイデアがあれば何でもできます。しかし、いざ自分の技術ではどれくらいできるんだろう、と考えると、必ず壁が現れる。音楽的、技術的な壁です。でも、ある程度歳を取ってそんな壁にぶつかるのもいいな、と思えるようになりました。

-- そうやって客観視できるのが大人かも知れませんね。

そうですね。客観視しているんでしょうね、若い頃にはできないような。どんなジャンルの音楽でも、長くやっている人は壁を常に乗り越えているんだと思います。作っている音楽は一緒に聴こえるかも知れないけど、やはりそれなりに自分自身で解決しているんだと思います。成長しているアーティストってやっぱりいいですよね、進化しているというか。

-- さて、5月2日から6日まで、スパイラルガーデンでエヴァンズの作品の展示や、平出さんの写真の展示・著作の販売もあります。さらに5日にはゴローさんのミニライヴや平出さんとのトークショーもあります。こうしたイヴェントを通じて、ゴローさんの世界がまたひろがりそうですね。楽しみにしています。

今回はライヴをたくさんやろうと考えています。僕ひとりでもね。是非聴きに来てください。

 

 

 

<インタビュー・文 /  中林直樹  写真 / Katsuhiro Ichikawa

 

 

 

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リリース情報

itogoro_glashaus.jpg

伊藤ゴローのキャリアの集成。
『GLASHAUS』

2012.4.25 ON SALE!
XQAW-1102 / ¥3,000(tax in)

 

ジャズ~クラシック~ブラジル音楽を基調に書き下ろしをし、クラシック・ギターの演奏を軸としてのぞんだ、ジャンルを越境するインストゥルメンタル作品。リオ、東京にて録音。

これぞ浪漫的かつ抒情的な、
真の無国籍音楽です。
-坂本龍一

 

ライブ情報

伊藤ゴロー、平出隆《GLASHAUS》

トーク&ライブ
5/5(土・祝)20:00開場 20:30開演
スパイラルガーデン(青山)
入場無料
詳細はこちら

伊藤ゴロー《GLASHAUS》

ミニライブ&サイン会
6/16(土)15:00スタート
渋谷 タワーレコード5F
観覧自由
詳細はこちら

その他のツアー情報はこちら
http://itogoro.jp/ja/tour

プロフィール

伊藤ゴロー
作曲家、編曲家、ギタリスト、プロデューサー。ソロユニットMOOSE HILL、ボサノヴァデュオnaomi & goroとして国内外でのアルバムリリース、ライブ等で活動する傍ら、映画、ドラマ、CM音楽も手掛ける。原田知世の直近のアルバム2作、ペンギンカフェオーケストラのトリビュートアルバム等プロデュースワークも行う。2011年にnaomi & goro & 菊地成孔名義で、坂本龍一のレーベル「commmons」から『calendula』をリリースしヒットを記録。
また、サウンドインスタレーション「TONE_POEM」(青森県立美術館)の発表や、原田知世との朗読会「on-doc.(オンドク)」も行う。 2012年は原田知世デビュー30周年を記念し本格的にスタートする「on-doc.(オンドク)」を各地で行なう。また7月21日~9月17日に開催される青森県立美術館の夏の企画展《Art and Air ~空と飛行機をめぐる、芸術と科学の物語》のサウンドトラックも担当する。

オフィシャルサイト
http://itogoro.jp/
アルバム特設サイト
http://goroito-glashaus.com/

 

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