挾間美帆 -

掲載日:2012.11.14

まさに、彗星のごとく、とはこういった時に使う言葉だろう。挾間美帆のデビューアルバム『ジャーニー・トゥ・ジャーニー』。詳しくはこれからお届けするインタビューをお読み頂きたいが、兎にも角にも挾間の来歴とその個性が、デビューアルバムにして充満する作品として出現した。独りのアーティスト、そして女性として、ジャズという音楽と向き合っているのだ。腕利きのプレーヤーたちと繰り広げた作品には幾重にも重ねられた音色が、ファーストアルバムにしてレイヤーのように織り込まれているのである。

-- 元々、ジャズを演奏したり、勉強されたりされていたんですか?

それが、全然違うんですよ。まず、小さい頃にヤマハの音楽教室に入って、ピアノとエレクトーンと作曲を始めました。演奏していたのはクラシックです。音大では、クラシックの作曲を勉強しました。

-- そうなんですね。子供のころ好きで良く弾いていた曲は?

レスピーギ(イタリアの作曲家 1879–1936)の「ローマの祭り」です。あとはラヴェルやイベール、プロコフィエフ、ラフマニノフなどですね。

-- 近代の作曲家が多いんですね。ピアノで弾いていたんですか?

いいえ、メインに弾いていたのは、エレクトーンでした。高校3年生まで取り組んでいました。そして、作曲も平行して学んでゆくうちに、もっと自分のオリジナリティを出したいと思うようになったんです。そこで、大学では専門的に作曲を学ぶことにしました。

-- 大学の頃、作っていた曲はどんなものだったんですか?

無調、無拍子(笑)。

-- えっ!かなりアヴァンギャルドな…。

師事していた先生が夏田昌和さんという現代作曲家だったものですから。彼は、パリ国立音楽院で学び、スペクトル音楽というものに造詣が深い方でした。私はそれをかじった程度ですが、ひじょうに面白かったですね。彼に「意味のある音を書きなさい。根拠のない音を書いてはいけない」と教わりました。現代音楽っぽく聴こえればいいや、というものではなく、ちゃんとした設計図やコンセプトがあって意義のある音楽を作る、ということを4年間学ばせていただきました。それとは別に、映像音楽の作曲にも興味があって、大学3、4年生の頃は栗山和樹さんと丸山和範さんという素晴らしい作曲家の方々に、テレビや映画、CMといった商業音楽についてお話を聴いたこともありました。


-- ここまで、ほとんどジャズとは無縁の人生ですね(笑)。

ところが、大学の中にジャズのビッグバンドがありまして。クラシック音楽を勉強する学生たちが、アフタースクール的な感じで始めた「ニュータイドジャズオーケストラ」というバンドでした。偶然、入学時の歓迎イヴェントで通りかかって聴いたら、みんなが本当に生き生きと演奏していたのが印象的で、入部しました。そこでジャズを演奏をするようになりましたが、その時点では本格的に学んではいなかったですね。

-- さて、そんな挾間さんが、ジャズの世界に大きく舵を切ってゆくのは、どのようなきっかけがあったんでしょうか?

ニュータイドジャズオーケストラには4年間在籍しました。ジャズだけではなく、フュージョンやポップスっぽいものまで演奏していました。その中で、とても興味深い曲にいくつかで出会うことができました。それまで聴いたことはなかったけれど、良い響きを発見できたんです。だから、私もそういったものを作ってみたい、と。それと、そのバンドの最高顧問が山下洋輔さんでした。あまり面識はなかったのですが、大学3年生のある日、山下さんからメールが突然届いたんです。「ピアノコンチェルトのオーケストレーションをしていただけませんか」という内容でした。そのメールを家族に見せたら、すぐに家族会議が始まりました。まず、このメールは本物か、というところから(笑)。それ以後、山下洋輔さんとお仕事をするようになったんです。ところが、同時に、私自身の作品をどのような立場で発表していったらよいのか、少しわからなくなってしまっていて。芸術家、それこそ無調の音楽を作る、クラシックの作曲家になるのか、それとも映像音楽を作るのか、あるいはプレーヤーになるのか、それともアレンジャーになるのか…。そんな時に山下さんと、初めてお仕事させていただいて、自分の作品を発表してもいいんだ、という勇気をいただいたような気がしています。じゃあ、あのビッグバンドで出会った、面白いと思った作曲家にひとまず会いに行ったら、なにかこれまでとは違う自分が見えるかも知れない、と思いました。その作曲家とは、マリア・シュナイダーとジム・マクニーリー、ヴィンス・メンドーザという人たちです。3人とも、アメリカ人で、ジャズ作曲家です。そこで彼らが教えている学校へ留学することにしたんです。

-- 来年は山下さんが主催する「ニューイヤー・ジャズ・コンサート2013」に出演されますね。かなり大々的に挾間さんがフィーチャーされるんですね。

このお話もまた、山下さんからメールでいただいて。びっくりしてまた家族会議でした(笑)。

-- そして、「ジャズ作曲家宣言」としてリリースされる『ジャーニー・トゥ・ジャーニー』ですが、m_unit という腕利きミュージシャンで固められたビッグバンドに加えて、スティーヴ・ウィルソン、ステフォン・ハリスといった大御所まで参加しています。彼らを束ねて、ひとつにして、挾間さんカラーにしてゆくのは、かなり大変だっただろうと容易に想像できるんですが。

メンバー選びに関してはかなり、慎重に、そしてわがままにさせていただきました。なにしろ、自分の音楽を、自分の理想通りにしてくれるようなミュージシャンでなければいけないという想いが強いですからね。それと、私の場合、演奏者そのものがインスピレーションの源になるんです。この人のために、このメロディを書きたいとか、このプレイが聴きたいから、こういうコーラスを作ったらぜったいかっこいいだろうな、とか。ミュージシャンの音色やテクニックが、作曲する際にかなりのウェイトを占めるんです。また、演奏者のパーソナリティは、そのプレイにすごく出ると信じています。そんなこともあり、自分の理想の音楽を突き詰めてゆくためのプロセスとして捉えていたので、大変だと思ったり、苦に感じたりしたことはありませんでした。

-- よく聴かれることだと思いますが、どのようにして作曲は行うんですか?

ピアノの前に座って、そのときまでに考えていた、この演奏者にこういったフレーズを弾いてほしいとか、こういう音楽の要素を使いたいなどといったパーツを組み立ててゆきます。そしておおよその骨組みやコンセプトを決めてから、書き出します。

-- そのときに、たとえばトランペットやサックスなどの楽器の音色まで、頭の中で響いているんですか?

そうですね。頭の中にはありますね。ただ、でき上がったものが、必ずしもジャズという枠の中に収まっている必要はないと思います。2年間の留学で学んだのは、「自分の音楽を作る」ということでした。私自身もいろんなジャンルの音楽を聴くのが好きです。ひとつのジャンルに固執して作りたいという気持ちはありません。完成したものが、挾間美帆の音楽であれば良いと思っています。ただ、今回はファーストアルバムで、名刺代わりだと考えたとき、ベースとドラムが入っていて、どの曲にも必ずインプロヴィゼーションがありますので、「ジャズ作曲家」というわかりやすい肩書きにたどり着いたんです。

-- 『ジャーニー・トゥ・ジャーニー』では、レディー・ガガの曲をカヴァーされていますが、こうしたポピュラーミュージックもよく聴かれるんですか?

聴きますよ。レディー・ガガとパフュームと、ビョークが好きです。

-- パフュームですか?

そうです。これを語り出すと止まらなくなるので、今日はやめておきます(笑)。

 

 

<インタビュー・文 /  中林直樹

 

挾間美帆's PLAYLIST「空の似合う音楽」

リリース情報


New Album

『ジャーニー・トゥ・ジャーニー』

2012.11.14 ON SALE!

UCCJ-2107 / ¥3,059(tax in)

 

<収録曲>
01. Mr. O
02. Tokyo Confidential
03. Blue Forest
04. Journey to Journey
05. Lady Gaga: Paparazzi
06. Believing in Myself
07. Ballad
08. What will You See When You Turn the Next Corner?
09. 陽だまりに、一冊の本 HidamarI
全作曲: 挾間美帆 (except 5)

★2012年7月2&3日、ブルックリン、
システムズ・トゥーにて録音
Recording & Editing Engineer: 内藤克彦
Mixing Engineer: ジム・アンダーソン
Directed by ジム・マクニーリー
Produced by挾間美帆

 

 

ライブ情報

東京オペラシティ ニューイヤー・ジャズ・コンサート2013
山下洋輔プロデュース
「挾間美帆のジャズ作曲家宣言!」

2013年1月11日(金)開演:19:00
東京オペラシティ コンサートホール
タケミツ メモリアル
S¥5,000 A¥4,000(全席指定・税込)

info
東京オペラシティチケットセンター
TEL:03-5353-9999
ジャムライス TEL:03-3478-0331

第1部
山下洋輔(挾間美帆編曲):Selections from "CANVAS in QUIET"
第2部
挾間美帆:Suite "Space in Senses"(世界初演)

詳しい情報はオフィシャルサイトへ

 

 

プロフィール

挾間美帆(Miho Hazama)

作・編曲、ピアノ


1986年生まれ。2009年、国立音楽大学作曲専攻卒業。作曲を夏田昌和、丸山和範の各氏に師事。
在学中より作編曲活動を行なう。08年、東京オペラシティ・コンサートホールで初演された山下洋輔「ピアノ・コンチェルト第3番<エクスプローラー>」のオーケストレーションを担当、絶賛を博し一躍大きな注目を集める。これまでに、東京フィルハーモニー交響楽団、兵庫芸術文化センター管弦楽団、東京佼成ウインドオーケストラ、シエナウインドオーケストラ、ヤマハ吹奏楽団などに作編曲作品を提供。また、テレビ朝日系「題名のない音楽会」出演や、自身のグループ「m_unit」など、幅広く活動する。
2010年、ジャズ・コンポジションを学ぶためニューヨークに留学。2011年、ASCAP ヤングジャズコンポーザーアワード受賞。同年、オランダのメトロポール・オーケストラのアレンジ・ワークショップに参加。2011年度の文化庁新進芸術家海外研修制度研修員に選ばれる。
2012年、マンハッタン音楽院大学院を優等で卒業し、11月には「ジャズ作曲家」としてデビュー・アルバム「ジャーニー・トゥ・ジャーニー」(ユニバーサル)をリリース。2013年東京オペラシティのニューイヤー・コンサートに登場予定。

【LINK】
公式サイト

ユニバーサル ミュージック ジャパン公式サイト

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