おとぎ話のロック、その強さとせつなさ。

涙のスジを頬に残したままの笑顔。おとぎ話のロック、その強さとせつなさ。

日常がすぐ身近にある中でのファンタジー。楽しいひとときと背中合わせの、ワビとサビ。おとぎ話のセカンド・アルバム『理由なき反抗』は、デパートの屋上にある遊園地のようなアルバムだ。古き良きロックの懐かしい響きと、いつの時代も変わらない普遍性、圧倒的な同時代性を宿したその音楽は、難しい分析も安住のテリトリーも越えた場所で、今日もポップに奏でられている。「全員が好き勝手に絵を描きながらも、底辺はスポーツマン・シップに則っている」。そんな理想のバンド像を抱くフロント・マン、有馬和樹。自身のルーツ、新作に至るまでの道のり、胸躍る次作への期待までを率直に語ってもらった。

<取材・文:篠原美江>

--ニュー・アルバム、チャートも好調のようですね。

有馬:それが、わからないんですよ。売れてるか確認するの、怖いので。もしかしたらウチの親父がいちばん詳しいんじゃないですか。「1stアルバムの売上は今、どのくらいで」とか。そんなこと俺に言われても困るんですけど(笑)。

--(笑)。この『理由なき反抗』についてのお父様の感想は?

有馬:すごく好きらしいですよ。前と比べて「バンドのパワーがよりひとつにまとまったな」とか「もう、アマチュアじゃねえな」とか言ってました(笑)。最大の賛辞が・・・はい。

--有馬さんはそのお父様が好きだった往年のロックを、ずっと聴いてこられたんですよね。

有馬:はい。でも親父は、僕が生まれて、弟も生まれちゃったので、子育てと仕事に専念して(笑)しばらく音楽から離れてたんですね。それで僕が思春期に入った頃かな、「音楽が好きなんだ」って親父に言ったら、もう、すごく嬉しそうに、自分が好きだったレコードを引っ張り出してきて。それで親父と一緒に聴きだしたって感じなんですよ。

--聴いて「古臭い」とは思わなかったんですか。

有馬:まったく思わなかったですね。めちゃくちゃカッコイイと思いました。好きなのはビートルズとかクリムゾンとかツェッペリンとか、そんなのばっかりだったんですけど、80年代の終わりから90年代の初めくらいって、CDショップに行ってもそんなの置いてないんですよ。探してもない。だから初めて自分が欲しいと思って、最初に親に買ってもらったのは、ユニコーンのベストですね。こういう音楽って日本にもあるんだなと思った。なんの前情報もなく、ただお店にいっぱい並んでるからっていう理由で買った洋楽はボン・ジョヴィ。でも聴いたら「なんだこりゃあ?」って(笑)。で、結局、オールド・ロックに走ってましたね、その後は。

--小学生なのに(笑)。

有馬:ビートルズがすべてだったんですよ。今もそうなんですけどね。だからずっと友達とは音楽の嗜好が合わずで。高校に入ってからは音楽雑誌も買い始めたんですけど、プログレのミュージシャンのポスターが付いてるような雑誌を買ってしまって「これが主流なんだ」という誤った認識を(笑)。共通の音楽嗜好を持った人と出会ったのは大学に入ってからですね。自分が知らないジャンルを知ってる先輩がいて、いきなりドイツのジャーマン・ロックを教えられた。「うわあ、俺の知らない音楽を知ってる!」と思って、すごく悔しくて(笑)。その当時ってCDの再発もまだされてなかったから、音の悪い輸入盤でも、結構な値段したんですね。それでもバイト代を全部つぎ込みました。先輩に負けたくない!と思って。東京タワーの蝋人形館の横に、謎のジャーマン・ロック専門店があるんですけど、そこで誰もしらないCDを買いまくりました(笑)。

--それはおとぎ話の音楽に影響を及ぼしてますか。

有馬:最近、及ぼしはじめましたね。1st、2ndは、今までやりたくてもできなかった真っ直ぐな音楽をやろうと思って作ったんですけど、それ以降、新たに作ってる曲は、当時の自分に戻っているというか。もちろん日本語でやることの大切さは変わりないんだけど、あの頃の気持ちのまんまで、確信もって曲を書いてアレンジしている気はしますね。

--それは『理由なき反抗』を作った達成感があってこそのものなんですか。

有馬:そうですね。メンバー間でギクシャクしたこともあって、それを全員で乗り切って作れた感じがあるので。でもその先に何が見えてくるか、僕は不安だったんですね。だけど、元々自分がなんで音楽やってるのかっていったら、ただ好きだからっていう、それしかなかった。そのことを最近になって再認識して、そこからまた音楽を始められてるから、今、すごくいい状態なんですよ。

--メンバー間で方向性の違いがあったとか?

有馬:僕、ガンガン曲を書くほうなので、先に行ってしまうんですよ。メンバーはそれについてきてはいるんだけど、「なんで俺だけがこんなに頑張ってるのかな」と思ったり。だから「俺たちに明日はない」っていう曲も「FESTIVAL EXPRESS」っていう曲も、メンバーに向けて書いたんですよ。「もう、やるしかないじゃん!頑張ろうぜ!」と。それなのに、なんでみんなついてこないの?っていう。それで「この曲は俺のアンサーだから!」って話をしたら、みんなすごく感動して「やっぱりそうだったんだ」って。言わなきゃわかんねーのか!みたいな(笑)。もう笑いながら殴り合ってるって感じでしたよね。そんなことがあって、4人でスクラム組んでやってこうぜって感じになって・・・よかった。

--よかった(笑)。でもその紆余曲折ぶりは、後になったら関係なくなるときもくるでしょう。

有馬:そうなんですよね。無意味な悩みが後になって曲に繋がってきたりする。今はなんでもいいから、あくせくすることが大事かなと思ってますね。

--そもそもコンセプトもなかったんですか。

有馬:こういうアルバム作ろうっていうのはなかったです。不思議ですよね。次のアルバムに関しては、構想もあるんですけど、『理由なき反抗』に関しては全然。それを考えるよりも先に、メンバーと話をしなきゃっていう思いのほうが強すぎたから。ヒリヒリしてたし、「もしかしたらアルバム出来ないんじゃないか」と思って、怖くて怖くてしょうがなかったです。よく言われるんですよ「こういうコンセプトで作ったんですよね?」って。でも違うんです。ギミックない。しかも僕、嘘つけないし(笑)。

--このアルバムで有馬さんが表現したのは、結果的に"今の気持ち"なんですよね。

有馬:そうですね。1stのテーマは「続ける」「止めちゃいけない」みたいなことだったんですけど、そこから続いてきた僕の次のテーマが"今"だったんですね。「今が大事だ、今歌わなければダメだ」という。だから"今"っていう言葉がすごく多くなってる。もうひとつは"愛"。一人称で、半径何メートルくらいのことを歌った歌って、今たくさんあるので、そんなことを歌ってもしょうがないなと。もっと圧倒的なことを歌いたいなと思ったんですよ。"愛"という言葉は僕にとっては"空"と同義語なんですけど、調べたら、自分が好きなダニエル・ジョンストンも、空のことばっかり歌ってた。「やった!いいんだ!」と思いました(笑)。「もっと面白い、あけすけな詞を書けよ」って言われることもあるんですけど、僕が書きたいのはこれだけだから。もう何を言われてもブレないですね。究極を言ってしまえば、おじいちゃんおばあちゃんから子供まで歌えるもの、聴けるものというか。

--どうしてそういう発想になったんでしょうね。

有馬:小さい子がビートルズを歌ってるのも、おばあちゃんが「昔、好きだったのよ~」って言いながら「ペニー・レイン」を歌ってるのも、すごく素敵なことじゃないですか。おとぎ話もそうでありたいんですよ。垣根がない音楽をやりたい。それは絶対変わらないと思うし、変えたくないです。だから例えば、プログレのエッセンスを取り入れたとしても、辻褄の合う音楽でありたいんですよ。

--ということは、おとぎ話の音楽にある"今"は、結局は"永遠"であるっていうことですよね。

有馬:そういうことですよね。だから、おとぎ話の音楽は最後に絶対に残る(笑)。以前は他のバンドがすごく気になってたし、周りの意見も気にしてた。でも今は何を言われても「あ、そう!」って言える(笑)。

--ポップであること、残る作品を作ることって難しいと思うんですけどね。

有馬:そうですね。だからポップな作品を作るには、まずバンド全員が人間としてポップであることを意識したほうがいいなと思って。今、そんな話をバンド内でしてますね。だから、アルバムの最後に入っている「とびらをあける」みたいなテーマをもった曲も、次はよりポップに消化したいし、今まさにそんな感じになってきてるんですよ。その前に弾き語りで歌った「とびらをあける」があってよかったなと思ってますけど。

--「とびらをあける」っていうのは、いわゆるメッセージソングですよね。

有馬:テレビつけると、ナイフもって人を刺す人間ばっかりじゃないですか。自殺する人も多い。そんな時代に何を歌うのかは考えました。そこは考えたけど、でも僕、考えて歌詞を書くタイプじゃないので。部屋でギター弾きながら出てくる言葉をそのまま書いたらそうなってたんです。「ああ、辻褄合ってるなあ」って思いましたよね。僕、ジョン・レノンが大好きだから、ああいう曲やらなきゃしょうがない運命なのかもしれないんだけど(笑)。ただ、背負おうとするんじゃなくて、音楽として面白い、楽しいのがいちばんなんですけどね。

--次の作品のイメージを少しだけ教えてもらえますか。

有馬:
サージェント・ペパーズみたいなアルバムにしたいんですよねえ。イメージは「世界」。いろんな世界がある、世界だらけの作品になると思います(笑)。
理由なき反抗
『理由なき反抗』
NOW ON SALE!
UK PROJECT
UKFT-004 / ¥2,310(tax in.)

収録曲
1.ネオンBOYS
2.FUN CLUB
3.また、よろしく
4.おとぎ話の「愛」のテーマ
5.赤へ飛び込め
6.クラシック
7.理由なき反抗
8.BLUE BLUE
9.SMILE
10.俺達に明日は無い
11.FESTIVAL EXPRESS
12.とびらをあける


11.28 新宿LOFT
※おとぎ話ワンマン!

12.6 京都MOJO WEST

12.22 梅田シャングリラ

『COUNTDOWN JAPAN 08/09』
12.30 幕張メッセ国際展示場

詳しくはオフィシャルHPで


おとぎ話(オトギバナシ)

有馬和樹:Vocal/Guitar
牛尾健太:Guitar
前越啓輔:Drums
風間洋隆:Bass

これまでのあらすじ
父親が聞いていたビートルズやツェッペリンやピンク・フロイドなどのロッククラシックが流れる家庭でスクスクと育ったボーカル、ギターの有馬(天然パーマ)が2000年春、明治学院大学に入学。過去にフィッシュマンズやTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTを輩出した音楽サークルで出会った風間君(bass)と楽器初心者同士で「おとぎ話」を結成。その頃はVelvet Undergroundに憧れて、女子のドラムとの3人組。ゆらゆら帝国、DMBQなどのサイケやガレージを指向したバンドだった。 2002年春、有馬は新入生の牛尾君のギターに感銘をうけ、バンドに加入させる事に成功。東高円寺UFO CLUBを中心にライブ活動を行う。しかしながら自分なりに頑張っていたが泣かず飛ばず。たまたま見たGOING STEADYのライブを機に、これではいかんと刺激をうけ徐々に音楽性を変化させていく。そして勇気を出して峯田和伸さんに渡したデモテープが功を奏し、 2005年7月いわきで憧れの銀杏BOYZと夢の共演を果たす。喜んだのも束の間、直後に女子ドラマーが脱退。 途方に暮れていたら、8月のある日、大学のサークルでライバル的な存在だった前越君(CLISMS[クリスマス]のドラム&ヴォーカルとしてLITTLE CREATURESのレーベルであるchordiaryからCDもリリースしている)が自ら名乗りをあげてくれた。 ようやく理想のバンド像に近づき、2007年1月1stシングル「KIDS / クラッシュ」をリリース。 6月大阪城野音での「発掘思うツボ音泉」でのライブを見たYOーKINGさんに「キモいけど、いいね?。3年後が楽しみだよ。」と励まされる。夏、大阪でのラッシュボールに出演し、炎天下のセカンドステージにお客さんを釘付けにするなど、徐々に知名度をあげて行く。そして、9月1stアルバム「SALE」をリリース。各店のインディーズチャートで1位を記録。11月レコ発ツアーファイナルの下北沢クラブキューでの初ワンマンがSOLD OUT。12月30日幕張メッセでのカウントダウンジャパンに出演。 2008年3月2ndシングル「ハローグッバイep.」リリース。この夏は8/3ROCK IN JAPAN、8/27金沢エイトホールでのくるりのライブに誘われたり。 「POPの端っこにいながら、ROCKのド真ん中」を目指して、今日も元気に演奏中。 つづく

オフィシャルサイト
http://www.otgbanashi.com/


特集:1曲目で全てわかる