ARTISAN de la MUSIQUE

ARTISAN de la MUSIQUE 2009年3月号 - P.04



『Serendipity』<br />折笠富美子 --渡辺さんに対してこんな曲を歌いたいといったリクエストはされましたか。

具体的にこんな曲というリクエストはしなかったんですけど、渡辺さんからデモをいただく度に、それらに対するイメージを、単語だったり、ちょっとしたことばだったりで返してました。で、渡辺さんがそれを持ち帰って、新たに作って...というキャッチボールがありました。
今回、渡辺さんからアルバムのコンセプトとして「一曲、一曲を演じて欲しい」と提案されたので、それぞれメッセージをストーリーにのせることを考えながら作詞したんです。歌う時も"歌う感じ"で演じたというか。渡辺さん自身、「こんな曲だったらどう演じてくれるんだろう?」と楽しみながら作って下さったようです。
渡辺さんって、音でとても上手に遊ぶ方だと思うんです。それに対しても私は感覚で捉えて応えていたんですけど、渡辺さんがそんな私の心を揺さぶってくれることで、私の声をうまく料理してくれるんじゃないかという期待があって。音楽に対して真摯でとにかくやさしい方なんです。スタッフの皆さんもそれぞれ大変な作業があると思うんですけど、常に周りで笑ってました。レコーディングスタジオは優しい空気に包まれてて楽しかったです。

--制作時のディスカッションはいかがでしたか。

お芝居の演出を受けているようでした。具体的に音楽についてのダメ出しというのは渡辺さんのほうからほとんどなくて、「この曲の主人公はこんな性格だろうから、それを踏まえて」みたいなことで、まさに演出という感じでした。

--冒頭の、靴音とSEに鼻歌での導入などはそうした演じるというコンセプトの表れでもあるんですね。

そうですね。あれは渡辺さんの提案でした。物語の中に日常の私が垣間見えるようなアルバムにしたいということで。

--制作期間はどれくらいですか。

途中、私が舞台に出演していたこともあって、歌録りはお休みした期間もあるんですけど、去年の10月頃から始めて4ヶ月くらいかかりました。

--自身のなかで思い入れのある曲というと?

一曲あげるとなると難しいですけど、最後の「Tomorrow」という曲だけは、演じることよりも、作者のあとがきのような感覚で、プロセニアムの外に飛び出して自分のことばを発しているような歌にしようと思いながら作りました。同じ作り手側の渡辺さんにもことばをいただきたいと思って、渡辺さんはこれまで作詞をされたことがなかったそうなんですけど、作詞に引き込んでしまって(笑)。ですからあの曲の詞は、メールで沢山やりとりしつつ、一緒にことばへ思いを込めた形になりました。

--ほかの方が書かれた詞については、どういった形でお願いされたんですか。

私がイメージを出して、その内容だったら、別の方に客観的に書いてもらおうということで、それを踏まえてお願いしました。

--キャラクターソングと自身のアルバムの曲とでは、取り組む上でどんな違いがありますか。

〈客観〉と〈主観〉みたいな違いです。キャラクターソングの場合は、作詞家の方も客観視して取り組んで下さるので、作品の中央は架空のものでリアルなものがないと思うんです。私も客観的にこういうふうに表現をしたらそのキャラクターらしさが出るんじゃないかと考えながら歌っているので、全てが客観的作業によって作り上げられていると思うんです。一方で、自分自身の作品の場合は、真ん中に自分自身を据えて、外に向かって表現しているので、それはそれで却って判らないところもあるんですけど、正反対で全然違うと思います。

--今後の音楽活動について伺えますか。

音楽活動があるから自分を見つめなおせる側面もありますし、それが遠からずお芝居に影響していたりすると思います。私自身はあまりジャンル分けという考えがなくて、常に自分は言葉で表現するという枠のなかにいると思っているんです。音楽って聞いていると、心が音に繊細に乗っていて、届いた時ダイレクトに元気をもらえるところがあると思うので、私の歌を聴いてくださる皆さんにもそんな気持ちを届けていきたいです。できる限り今後も表現していければと思っています。
実は、今回のアルバム全ての作業が終わった時に、渡辺さんとまた一緒に何か出来ればいいなぁと思っていたら、渡辺さんのほうから「次どうする?」なんて言って下さって。その両想いが続く限り、また渡辺さんと一緒に音楽を作っていきたいです。

--では、最後にアルバムの聴き所とリスナーへのメッセージをお願いします。

タイトルが『Serendipity』といって〈思いがけない発見〉といった意味なのですけど、例えば本を読んで100人が100人それぞれに感じ方が違うのと同じように、リスナーの皆さんがこのアルバムを通して、それぞれ色んなことを感じて、色んな発見をして下さるといいなと思っています。

(2009年3月 ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメントにて取材)



【音楽職人トピックス】



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濱田高志(ハマダ タカユキ)
音楽ライター兼アンソロジスト。これまで国内外で企画・監修したCDは300タイトルを数える。現在は「イージーリスニング・ステーション」(USEN)の選曲や「エキスポ・ジェネレーション」、「濱田高志のトレジャー・ミュージック」(STAR digio)のパーソナリティを担当。ミシェル・ルグランからの信頼も厚く、世界初の公認本「ミシェル・ルグラン風のささやき」(音楽之友社)を執筆したほか、「コカ・コーラCMソング データブック」(ジェネオン)「Love Sounds Style読本」など編・著作多数。2007年、ロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ『フル・サークル』をコーディネイト。

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濱田高志ロングインタビュー
(2007年2月掲載)

濱田高志 監修・選曲・解説
「TV AGE」シリーズ公式HP


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