2009年4月29日@代官山UNIT
PLAGUES時代から数えると、そのキャリアは悠に15年を越える深沼元昭。数々のプロデュース・ワークに加え、近年ではロック・バンドGHEEEのヴォーカル&ギターとしてメンバーに名を連ねる。もはやベテランの域に達していながらその鮮度がまったく落ちないのは、旺盛な創作意欲と職人気質、音楽に対するフレキシブルな姿勢が成せる精力的な活動のためだろう。そんな中、自身のソロ・プロジェクトであり本日の主役でもあるMellowheadが、実に4年ぶりとなるアルバムをリリース。その最新作を引っ提げてのツアー初日が、代官山UNITで行われた。

緻密なサウンド・プロダクションで構築された完成度の高いポップ・ミュージックが、どうバンド・サウンドに還元されるのか。音盤に凝縮された音がライヴという空間でいかに広がりを見せるか。それがMellowheadのライヴの醍醐味だった。だが今回は"バンドとしてのMellowhead"に重きを置いたアルバム、当然ライヴもそこに則したものになるだろう。これまで以上にバンドマン・深沼元昭のパフォーマンスに期待を馳せる。
メンバーはドラムに小松シゲル(NONA REEVES)、ベースに林幸治(TRICERATOPS)、ギターに藤田顕(PLECTRUM)という布陣。客演、サポートというよりは、もはやパーマネントなバンド然とした佇まいである。そこから醸し出される緊張感と親和感は気心の知れた仲であること以上に、深沼がプレイヤーとしての彼らに大きな信頼をおいているからだろう。そういえば、深沼以下メンバーは皆どこか雰囲気が似ている気がする。コーラスに真城めぐみ(HICKSVILLE)を迎え、新作からのナンバーと旧曲を交互に畳み掛けた序盤。力強く、太く、肉感的な演奏は磐石、だがエネルギッシュだ。プレイヤー、シンガー、そしてフロントマンとしての深沼はなお逞しく、Mellowheadを自身の看板として掲げる彼の矜持を感じる。
コーラスの真城が下がり男所帯となったバンドが聴かせる、泥臭く重厚な「Here」も束の間、ゲスト・ヴォーカリストのLucyがステージに。ライヴの流れを途切れさせることなくゲストを迎え入れる、そのスマートなこと。キュートなそのイメージとは裏腹にパワフルな歌を聴かせる彼女と拮抗するように、演奏も熱を帯びていく。白眉は中盤のハイライトともいうべき「胸いっぱいの愛」。最新作で新たにレコーディングされたPLAGUES時代のナンバーだ。十数年の時を経て今、パーマネントな存在ともいうべきこのバンドでこの曲を演奏する深沼の胸中を計り知ることはできない。だが、この歌が計らずとも現在の彼の姿と相通ずること、何よりナチュラルな光を湛えた照明の中で歌いギターを弾く彼は、往時よりもはるかに凛々しく見えたこと、それだけは確かだ。かつてのライヴで聴いたときよりも滋味と説得力を増した「A Phantom song」。これからもこの曲は様々な感情とキャリアを内包して、さらに味わい深く熟してゆくのだろう。熱いものが込み上げた。朋友・片寄明人が登場したアンコール。ゲストを迎えた贅沢なセッションの図、なのになぜかとても自然だ。「最後にもう1曲」。やまないアンコールに応えての「nothing」、その勢いのまま、PLAGUES時代の「ヴィルヌーヴに憧れて」になだれ込む。それは過去と今、2曲のロックン・ロールが最新の形で溶け合い、大きく解放された瞬間だった。




