mi-gu 人気女性ドラマーのソロ・ユニット

人気女性ドラマーのソロ・ユニット

コーネリアスをはじめスガシカオや布袋寅泰ら、大勢の一流ミュージシャンのドラムを手掛けるあらきゆうこ。その彼女がソロ・アーティストとして活動する際に使用する名義がmi-gu(ミグ)。多忙の合間を縫って、待望のニュー・アルバム『pulling from above』が完成した。独自の世界を追求するmi-guの話だけではなく、これまであまり語られることのなかあったドラマー、あらきゆうこの本音もうかがった。


--最近、とみにいろんなところで、あらきさんのドラムを耳にします。この間もテレビで布袋寅泰さんのバックをやられていましたし。最近、仕事のオファーが増えていることはありますか。

そういう実感はないんですが、スケジュール的に可能な依頼が来た場合は、何かしらのご縁があるのかもしれないと思って、出来るだけ受けるようにしています。それで、話をいただいたときはいつも、経緯を聞くんです。大抵は「コーネリアスを見て」って言われるので、そういうことなら「ぜひ」と言って、受けるようにしています。布袋さんの場合はその前に、今井美樹さんのドラムを叩いたことがあったからで、しかもその依頼が、東大寺でロックオペラをやるという面白そうな仕事だったので。

--タフなコーネリアス・グループのドラムをこなされているのですから、どんなオファーにも対応できるような気がしますが。

コーネリアス・グループはリハが長いですからね(笑)。コーネリアスはクリックを使った、ある意味特殊なモノなので、あれができるからといって何でもできるわけではないんですよ(笑)。ドラムっていう楽器は、とても奥が深くて40歳になってやっとできることとか、50歳にならないとできないこととかがあると思うんです。人生を背負った演奏は、練習したから出来るのではなく、生活や人生の経験から出てくるものなんですよ。

--あらきさんはコーネリアスのドラムを担当して何年目ですか。

98年の『ファンタズマ』のワールド・ツアーからだから10年。初ライブはアムステルダム公演なんですが、実は私、高校の時から最初に海外に行くときは仕事で、と決めていたんで、それが実現して、すごく嬉しかったことを覚えています(笑)。ラッキーでしたね。

--あらきさんが選ばれた理由って聞いたことはありますか。

前に聞いた話だと、小山田さんが新しい女の子のドラマーを探していたときに、エンジニアの高山(徹)さんが私の名前を出してくれたみたいなんです。初めて、スタジオに入ったとき、私もまだ若かったし向こう見ずだったんで、「こういうパターンもできます」みたいな感じで図々しくいろいろ叩いたんですよ。でもそのときにすごく楽しくやれて、そうしたらレコーディングが終わってすぐ、その場で、「ツアーがあるんだけど」と言われて、全てが始まったんです。

--コーネリアス・グループ以前と以後ではプレイヤーとしてのあらきさんは違うのでしょうか。

確実にコーネリアス・グループで成長しているんですけど、私の見方では、コーネリアス・グループでツアーをやった後に、いろいろな方のバックをやって、そこからもう一度コーネリアスに戻ってきたときに、自分の変わったところが確認することができるというか。例えば、クリックに対するドラムの置き方とかも変わってきていて。コーネリアスで使ってるように、クリックを他の現場で使いたいって話が出た時に、割とドラマーとしては嫌がる傾向があるんだけど、私は大賛成なんですよ。それはコーネリアス・グループ のおかげだと思いますね。最近コーネリアス以外で印象的だったステージは、先ほど言った布袋さんの東大寺、くるりとやったオーケストラとのライブとか。コーネリアスをはじめ、度胸と経験値が必要なライブが多いので、それを任されたことで責任感が芽生えてきて、成長に繋がっているのかもしれませんね。

--また、先日のプラスティック・オノ・バンドでのライブも新しい一面を見た気がしました。

実はあのとき、ヨーコさんとのリハは前日の5分だけだったんです。しかも、ライブ当日、本番は7時からなのに、その時点でまだヨーコさんはホテルにいたという(笑)。ライブのとき、本田ゆかさんに「ヨーコさんは基本、インプロだから」って言われていたので、どの演奏にも対応できるような準備はしておかないといけないって思っていました。それと、バンドのコンダクターだったショーンの合図に従わなきゃいけないというのがあって大変でしたが、ヨーコさんがステージに出ると、その場の空気がヨーコさんの世界になってしまうんで、深く考えずにそこに包み込まれてしまえばいいんだなって。

--ライブの翌々日にショーンにインタビューしたとき、「なぜ『ドント・ウォーリー・キョーコ』をやったの?」って聞いたら「リハがいらないから」って(笑)。でも、69年にジョンとヨーコ、クラプトンなどでライブをやって以来、40年ぶりに復活したプラスティック・オノ・バンドのドラムがあらきさんって、すごいことですね。

それは嬉しかったですね。とりあえず家で『ピース・イン・トロント』のライブDVDを見たんですけど、どこを参考にしていいかよく分からなくて、......。これは現場に任せるしかないかと(笑)。

--『SENSUOUS』で、一つの極みに行ったような気がしたので、オノ・バンドでのライブはコーネリアス・グループの新しい可能性を見た気がしました。

その後、オノ・バンドのレコーディングでニューヨークに行ったんです。ほとんどの曲のプロデューサー的な役割は小山田さんなんですけど、一曲だけ完全にバンドメンバーに任された曲があって。その曲をやっているときに「コーネリアスでも"こんな風な曲かな"」という意見が出ていたんで(笑)、そういう意味では、直接的に影響受けているのかもしれませんね。

--そのコーネリアス・グループのサウンドって、無機質なものに聴こえがちなのに、どこか人間味の温かみを感じるんです。機械でやることを人力でやることの意味みたいなものがあると思うんですが、それを表しているのがあらきさんのドラムのような気がします。

『SENSUOUS』のCDのドラムの音は、完全にサンプリングされているとはいえ、使われている音自体は全部私が叩いたものなんです。それをライブで再現すると、ああいう感じになる。自分の手癖じゃない演奏なんで、面白かったですね。最初のうちは譜面を見て、音を聞きながらやっていたんですが、「さすがに無理」ってところは小山田さんをチラッと見て、少しだけ自分なりにアレンジしたりして(笑)。

--そういえば、今回のmi-guのアルバムのタイトル曲「pulling from above」はコーネリアス・グループの未発表曲みたいですね。

コーネリアス・グループでやろうと思って作ったわけじゃなかったんですけど、コーネリアスに近いように感じたので、是非参加してほしいなと思ったんです。このタイトルは「上から引っ張る力」という意味なんですが、世の中にある"上がる力"に身を任せて"楽しい世界にいけたらいいな"というこのアルバムの一番大きなテーマでもある思いを込めた曲です。

--また「Choose the Light」での言葉の使い方も、小山田君の影響がうかがえます。

確かにそうですね。「GUM」の雰囲気があるかも。作ったときは、自分でやった気になっていましたけど、そう言われるとそうかも(笑)。10年一緒にやっていますから。すごく影響受けていると思いますよ。

--そもそも、このアルバムを作ろうと思った動機は何だったんですか。

ずっとmi-gu は続けていきたいと思っていたし、mi-gu をやることで、ミュージシャンとして得ることも多いんです。例えば、mi-gu をやっていなかったら、バンドのフロント・マンに対しての感情を今ほど持てなかったと思うんです。mi-gu をやることで、ボーカリストのすごさや作曲者の苦労に気がついたんです。自分なりのリスペクトの意も示したかったんです。

--そういえば以前、小山田君にインタビューしたとき、「教授の後ろでギターを弾いて意識が変わった」って言っていましたよ。

私の逆ですね(笑)。

--このアルバムは書き溜めた言葉から制作が始まっているそうですね。

私の歌詞は生活しているときの経験のもとに言葉が生まれてくるんです。だからいつもメモを取って、どんどん貯めていく。例えばあるアーティストと一緒に仕事をするときに感じた印象を言葉にして、それを「この言葉にはこういうドラム合いそう」とか、アイデアを出していくうちに、曲になっていって、アルバムを出したい気持ちが高まっていくんです。

--でも歌詞は英語ですよね。

日本語でストレートに伝えるより、余白を残して雰囲気で捉えたいと思うんです。要するに、サウンドトラックに、直接的な言葉が入っていたら、受け取る人のイメージが限られてきますよね。きちんとはまるものは素晴らしいと思うんですが、私の場合は、自分がイメージを限定するのではなく、聴いた人がイメージを決めてくれたほうがいいかなと。そこに精一杯の気持ちを込めているので、それで十分です。

--ご主人でもあり、同じコーネリアス・グループのメンバーでもある清水さんに頼るところが大きいですか。

自分のことは全然分からないんですが、彼はプレイヤーから見た私のドラム、プロデュース的な面から見た私のドラムをよく分かってくれているので、頼りになりますね。私はmi-guのサウンドには、サウンドにドラムを入れたくない方向に行っちゃうんですよ。それに関する指摘だとか、「歌詞に日本語も入れたほうがいい」とか。最初は否定するんですけど、じっくり考えて、従う気持ちになってくるんです。

--ドラマーのソロ・アルバムなのにドラムの音を入れないって、面白いです。

私は家にいるときは無音にしているんです。聴いたとしても教授のピアノ・ソロとか、静かな音楽だけ。だから私の生活の中で、ドラムは鳴ってないんですよ。ドラムを叩くときは、気持ちが切り替わっているんで、曲を作る時には私の頭にドラムは鳴っていないんです。

--実験的だけど、可愛らしい音色で、ドラムの可能性、打楽器の表現力を感じるアルバムになっていると思いますが。それに、まさに日常のサントラという気がしました。

そんな感じで受け止めてもらえるとすごく嬉しいです。自然にやったらこうなったというだけなんですが、ただ、意識としては壊れ具合と遊び心みたいなものは、大事にしたいなと思っていますね。でも、私はドラマーだけど、ひとりで何かをするよりは、誰かと一緒にやることが重要だと思っているんです。同じ8ビートを叩いていても、メンバーによって全然違う雰囲気になる。私はいつも人との出会いを大切にしていて、その時に出せる音を出していきたいと思っています。

--1曲目に「The Era of Aquarius」という曲が入っていますが、あらきさんってみずがめ座なんですか。

私はうお座なんですけど......(笑)。それは、自分の星座の話ではなく、今の星の話なんです。西洋占星術で今時代はアクエリアスに入ったと言われていて、その新しい時代のキーワードは「自由、平等、博愛」なんです。ただ、そのような穏やかなみずがめ座の時代にたどり着くには、その前の段階でいろいろ苦しい経験をしなければならない。それが魚座の時代だった。今すぐにみずがめ座の時代に行けなくても、いろいろな感情を乗り越えて、最終的にそこにたどり着けばいいってことを表現したかったんです。実は裏のメイン・テーマのつもりで1曲目のタイトルをこのキーワードにしたんですね。

--なるほど。細部までとても繊細に決め細やかに作られたアルバムになりましたね。そういえば、あらきさんの憧れのドラマーって、誰ですか。

今なら高橋幸宏さんと山木秀夫さんとリンゴ・スターの3人。ドラムはドラム・ソロじゃないと思うんですよ。ドラムは曲に入って生きるもので、そこでビートがカッコいいとか、ドラムを含めていい曲だと思われるようなドラムを叩きたいですね。

--リンゴはドラム・ソロが大嫌いだと言っていましたからね。

そうなんですか? オーガスタ・キャンプで杏子さんのソロをやるときに、事務所の社長から「ゆうこ、もっと派手なドラム・ソロをやれ!」と言われるんですよ。だから、やることもあるんですが。社長はビートルズが大好きだから、今度社長に「リンゴはドラム・ソロ嫌いなんですよ」って言ってみます(笑)。

<取材、文/竹部吉晃

pulling from above
『pulling from above』
5.06 ON SALE!
commmons
RZCM-46091 / ¥ 2,500(tax in.)

収録曲
1.The Era of Aquarius
2.pulling from above
3.Lazy Brain
4.Emerging
5.Choose the Light
6.the drummer and the dancer
7.Feelings
8.Rainbow
9.floating~pelicanman version
10.Venus, the Bringer of Peace
11.Sakaiminato 3


東京の夏フェスに出演決定!!

『WORLD HAPPINESS 2009』
2009年8月9日(日)
夢の島公園陸上競技場


『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2009 in EZO』
2009年8月14日(金)15(土)

詳しくはオフィシャルHPで


あらきゆうこ(mi-gu)
CORNELIUS、salyu、Polaris、くるり、杏子、スガシカオ、COIL、Dr.strange Love、清春、等を始めとした多数のアーティスト達のレコーディングセッションやライブに参加しているドラマー、あらきゆうこ。そして、彼女のその音楽的感性をよりパーソナルに、より深く追求しているのが、ソロプロジェクトmi-gu。2003年4月16日に1st album「migu」をヨーロッパ、日本で同時リリース。国内外で高い評価を得る。 そして2006年9月6日には待望のセカンドアルバム「From space」をリリース。 ドラマーとして、アーティストとして今後、目が離せない存在である。

オフィシャルHP
http://www.office-augusta.com/araki/


特集:オーガスタ・キャンプとコイルの10周年

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