ARTISAN de la MUSIQUE

ARTISAN de la MUSIQUE 2009年5月号 - P.02

 さて、今回、ユニバーサル ミュージックから発売されるもうひとつのタイトルが、デビュー・シングル「鍵はかえして」(74年)から「残響」(05年)までを時系列に沿って収録した編集盤『大橋純子コンプリート・シングル・ベスト』。時代を経てなお輝きを失わない彼女の魅力的なヴォーカルが心ゆくまで堪能できる究極のアルバムである。
 今もステージでは欠かすことのできないレパートリー「シンプル・ラブ」や「サファリ・ナイト」、「ペーパー・ムーン」それに「たそがれマイ・ラブ」、「シルエット・ロマンス」といったヒット曲から、コマーシャルに採用された「カナディアン・ララバイ」、映画「将軍」のイメージソングとなった「燃えつきて」、ドラマ主題歌「愛は時を越えて」など様々なタイプの楽曲が並び、さらにはオリジナル・アルバム未収録だった、もんたよしのりとのデュエット・ソング「恋はマジック」も収録されている。これまでにも彼女のベスト盤は複数編まれているが、これこそまさに本命盤といえるだろう。

 そしてソニー ミュージックからは、大橋がニューヨークでの生活を終えて再始動した後にEPIC/SONYに残した三枚のアルバム『DEFF』(88年1月発売)、『QUESTION』(88年11月発売)、『Pagoda』(90年4月発売)にアルバム未収録シングルとつのだ☆ひろとデュエットしたダイアナ・ロスとライオネル・リッチーの「エンドレス・ラヴ」のカヴァー曲で構成した作品集『GOLDEN ☆BEST 大橋純子 ソニー ミュージック・イヤーズ』が発売される。

 これらEPIC/SONY時代の作品が制作された80年代後半から90年代初頭にかけては、世はまさにバンド・ブーム。録音のシステムも完全にアナログからデジタルに移行しており、4年間のブランクを経てアルバム制作に臨んだ大橋にとっては、全てが手探りの状態での作業だったという。佐藤 健を筆頭に清水信之、鷺巣詩郎ら多彩なアレンジャーを迎えたこれらのアルバム、派手さこそないが、全編に渡って端正なメロディが満載で、粒ぞろいの楽曲が揃っている点も聴き逃せない。なかでも様々な作家陣を招いて制作された『DEFF』、『QUESTION』に次ぐ『Pagoda』では、フィリップス時代に数多くの作詞を提供した竜真知子を再起用、大橋の魅力が横溢した独自の世界を作り出すのに成功している。

コンプリート・シングル・ベスト GOLDEN☆BEST 大橋純子<br />ソニーミュージック・イヤーズ Terra 2 Terra
 そしてVAPからは最新アルバム『Terra2』が満を持しての登場だ。93年から在籍するVAPでは、これまで『Miscellaneous』(93年2月)以降、ベスト盤を含め13枚のアルバムを発表してきたが、本作は出身地である北海道夕張応援のためのチャリティ・カヴァー・アルバムとして発表した『Terra』(07年7月)の第二弾で、井上陽水、松任谷由実、小田和正、竹内まりや、CHAGE& ASKA、チューリップら彼女と同世代のアーティストによる楽曲に、前作同様、アコースティック・ロック、ラテン、JAZZ、クラシックなどバラエティに富んだアレンジを施し、魅力的に仕上げている。巷に溢れるカヴァー・アルバムとは一線を画す大橋ならではの選曲・歌唱が聴き所だ。

 なお彼女は、デビュー35周年を迎えた現在の心境を次のように語っている。

 デビューから35年も経ったなんていまだに信じられないですね。もっとも私の場合、途中4年間のブランクがありましたから、実質30年と少しなんですけど。
 実は4年のブランクを経て現役に復帰した際、思うように調子を取り戻せなかった自分に対するジレンマがあって、以前と同じ気持ちでステージに立てるようになったのが、かれこれ10年近く経ってからなんです。でも、そうした経験があったからこそ、歌に対する思いや大切さを実感することができました。あの時期を乗り越えたお陰で、デビューした当時とは違った形で改めて歌手としての誇りを持つことが出来たんだと思います。あとはこの先どれだけ現役で頑張れるかが私の課題ですね。というのも、ジャズや演歌の世界には大先輩がたくさんいらっしゃるんですけど、私がやっているポップスの場合、その世界の先輩というのがなかなかいないものですから。そういった意味でも、同世代の仲間たちと一緒に先頭きってまだまだ頑張っていかなければならないと思っています。

 つまり、"ニュー・ミュージック"と呼ばれるジャンルで活動してきた私たちの世代が、この先、日本のポップスの世界を背負っていく立場だと思いますし、それが私個人の目標でもあり、義務だと思うんです。

 常に第一線で活躍し、現在も意欲的に新たな作品に取り組む彼女の活動からは、この先まだまだ目が離せない。


【音楽職人トピックス】



濱田高志による
<マンスリー公開講座>のお知らせ。


TV AGEシリーズ監修・濱田高志が、2010年1月より、池袋コミュニティ・カレッジに於いてマンスリー公開講座を開催しています。
詳しくは、こちら

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2012年1月28日(土)18:30~20:30
『孤高の作曲家・平岡精二』
作編曲家にしてヴィブラフォン奏者の平岡精二の活動を網羅的に辿る特別講座。未CD化曲を中心に自作自演、提供曲、映画音楽などをたっぷり紹介します。

2012年2月25日(土)18:30~20:30
『生誕80周年記念集中講座:
ミシェル・ルグランその活動の軌跡[1[』

2012年に生誕80周年を迎える作曲家ミシェル・ルグランの活動をジャズ、映画音楽、提供曲など全てのジャンルを網羅しながら時系列に沿って辿る集中講座(全5回)。第1回はデビューから60年代初頭までの活動を振り返ります。

2012年3月17日(土)18:30~20:30
『生誕80周年記念集中講座:
ミシェル・ルグランその活動の軌跡[2]』

第2回は「シェルブールの雨傘」を中心に貴重なデモや関連楽曲を映像と共に紹介。

池袋コミュニティ・カレッジ
(豊島区南池袋 1-28-1
西武池袋本店別館 8・9階)

●受講お申し込みに関する詳細は、 池袋コミュニティ・カレッジHPをご覧ください。
また、お電話でのお問い合わせは、03-5949-5486まで。
濱田高志(ハマダ タカユキ)
音楽ライター兼アンソロジスト。これまで国内外で企画・監修したCDは300タイトルを数える。現在は「イージーリスニング・ステーション」(USEN)の選曲や「エキスポ・ジェネレーション」、「濱田高志のトレジャー・ミュージック」(STAR digio)のパーソナリティを担当。ミシェル・ルグランからの信頼も厚く、世界初の公認本「ミシェル・ルグラン風のささやき」(音楽之友社)を執筆したほか、「コカ・コーラCMソング データブック」(ジェネオン)「Love Sounds Style読本」など編・著作多数。2007年、ロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ『フル・サークル』をコーディネイト。

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濱田高志ロングインタビュー
(2007年2月掲載)

濱田高志 監修・選曲・解説
「TV AGE」シリーズ公式HP


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