ARTISAN de la MUSIQUE

ARTISAN de la MUSIQUE 2009年6月号 - P.01

 2000年10月よりユニバーサル・フランスからリリースが始まった、ステファン・ルルージュ監修による〈エクテ・ル・シネマ〉は、これまでにおよそ50タイトルを数える息の長い再発企画で、断続的に、しかし着実にその数を増やし、常に安定した売り上げを誇る人気シリーズである。また、本筋のラインナップに並行する形で、番外編として、作曲家あるいは監督別に編んだ作品集を発売しており、なかでもミシェル・ルグランやセルジュ・ゲンズブール、ジョルジュ・ドルリューといった多作なアーティストについては、作品がディスク一枚に収まりきらないことから、貴重音源を満載したボックスセットの形にまとめられている。 

 本シリーズ最大の特長は、映画製作時に録音された音素材の徹底的な発掘と、デジタルリマスタリングによる音質の向上、さらに経年劣化によりオリジナル素材の再生が不可能なものについては、様々なメディアからの復元や再録音が行なわれている点だ。また、監督や作曲家、もしくはその遺族ら関係者の全面協力によって、これまで日の目をみることなく埋もれていた音源や写真素材が豊富に収録されているのも魅力である。サントラ愛好家にとっては、まさに至れり尽くせり。過去に類を見ない充実のシリーズといえるだろう。

 シリーズの第一弾はフィリップ・サルドの『警部』、『ジャン=ポール・ベルモンドの 道化師』の二作品のカップリング盤で、いずれもフランスで第一線で活躍するジャズメンが参加した意欲作。同時にサルドの『テス』と『テナント/恐怖を借りた男』のカップリング盤、そしてエリック・ドマルサンの『影の軍隊』、『仁義』の合計4タイトルが発売された。しかし、その前月には、ジャン=リュック・ゴダールの『気狂いピエロ』やフランソワ・トリュフォーの『暗くなるまでこの恋を』の音楽でお馴染み、アントワーヌ・デュアメルの作品集が発売されており、実質的に同作が本シリーズの雛形となった。

 企画スタート当初から私も取材に同行し、毎回ではないが、ステファンと共にフィリップ・サルドやクロード・ボリン、ミシェル・ルグラン、クリスチャンヌ・ルグラン、アニエス・ヴァルダ、アレクサンドル・デスプラ、ピエール・アデノ、パスカル・エステーヴ、アンドレ・ポップといった複数の映画/音楽関係者と会見し、可能な限りその模様をビデオに収めてきた。やはり第三者の憶測よりも、当事者の証言ほど面白いものはない。より作品に肉迫し、当事者でなければ知り得ない事柄が次々と飛び出すのだ。事実、その成果たるや実に興味深い新発見の連続である。

 例えば、映画音楽という特性から、作曲家や編曲家以外のセッション・メンバーがジャケットにクレジットされることは稀で、なかなかその存在が明らかにならなかったが、本シリーズでは関係者の証言からそれらが判明し、作品を新たな側面から捉え直すことが可能になった。とりわけピアニストのモーリス・ヴァンデールやヴァイオリニストのステファン・グラッペリが多数のセッションに参加していた事実には驚くばかり。ミシェル・ルグランの『ロシュフォールの恋人たち』のピアノ演奏の大半がモーリス・ヴァンデールによるものだったとはまさに目から鱗である。聞けば作曲家ごとにほぼ固定のセッション・メンバーがいたそうで、なるほど確かに言われてみればそれぞれに共通したトーンが聴き取れる。もっとも、全ての参加ミュージシャンの記録が明らかになったわけではないが、こうして徐々に謎が解き明かされていくのは実に面白い。

 そうした過程を経て制作された〈エクテ・ル・シネマ〉シリーズだが、これまで日本盤として発売されたのはミシェル・ルグランの諸作デュアメルドマルサンサルドの数タイトルのみ。そこで今回は日本公開作品を中心に10タイトルを厳選、さらに日本独自のコンピレーション『Le Jazz Manifique(ル・ジャズ・マニフィック)』を編んだ。日本盤発売にあたっては、本国盤ブックレットに掲載された関係者インタビューの翻訳とそれを補足する覚え書き、さらにオリジナル・アナログ盤のジャケット素材や、タイトルによっては日本盤用に作曲家から届いた直筆コメントを掲載。本国盤よりもさらにデータ面を充実させている。

 本シリーズをきっかけに作品に興味を覚えた方は、是非とも映画本編と併せて楽しんで欲しい。




 
 


【音楽職人トピックス】



濱田高志による
<マンスリー公開講座>のお知らせ。


TV AGEシリーズ監修・濱田高志が、2010年1月より、池袋コミュニティ・カレッジに於いてマンスリー公開講座を開催しています。
詳しくは、こちら

<公開講座>
『ヒットメーカーが語る作品誕生秘話』

テレビ・映画音楽からアニソン、歌謡曲にCMソングまで、職業作家が様々な分野で発表した作品を、作家自身の証言と共に検証する特別講座。テーマに沿ったゲストを交え、名曲誕生の瞬間に迫ります。
【講師:濱田高志】

2012年1月28日(土)18:30~20:30
『孤高の作曲家・平岡精二』
作編曲家にしてヴィブラフォン奏者の平岡精二の活動を網羅的に辿る特別講座。未CD化曲を中心に自作自演、提供曲、映画音楽などをたっぷり紹介します。

2012年2月25日(土)18:30~20:30
『生誕80周年記念集中講座:
ミシェル・ルグランその活動の軌跡[1[』

2012年に生誕80周年を迎える作曲家ミシェル・ルグランの活動をジャズ、映画音楽、提供曲など全てのジャンルを網羅しながら時系列に沿って辿る集中講座(全5回)。第1回はデビューから60年代初頭までの活動を振り返ります。

2012年3月17日(土)18:30~20:30
『生誕80周年記念集中講座:
ミシェル・ルグランその活動の軌跡[2]』

第2回は「シェルブールの雨傘」を中心に貴重なデモや関連楽曲を映像と共に紹介。

池袋コミュニティ・カレッジ
(豊島区南池袋 1-28-1
西武池袋本店別館 8・9階)

●受講お申し込みに関する詳細は、 池袋コミュニティ・カレッジHPをご覧ください。
また、お電話でのお問い合わせは、03-5949-5486まで。
濱田高志(ハマダ タカユキ)
音楽ライター兼アンソロジスト。これまで国内外で企画・監修したCDは300タイトルを数える。現在は「イージーリスニング・ステーション」(USEN)の選曲や「エキスポ・ジェネレーション」、「濱田高志のトレジャー・ミュージック」(STAR digio)のパーソナリティを担当。ミシェル・ルグランからの信頼も厚く、世界初の公認本「ミシェル・ルグラン風のささやき」(音楽之友社)を執筆したほか、「コカ・コーラCMソング データブック」(ジェネオン)「Love Sounds Style読本」など編・著作多数。2007年、ロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ『フル・サークル』をコーディネイト。

詳しいプロフィールはコチラ


濱田高志ロングインタビュー
(2007年2月掲載)

濱田高志 監修・選曲・解説
「TV AGE」シリーズ公式HP


ARTISAN de la MUSIQUE