ARTISAN de la MUSIQUE

ARTISAN de la MUSIQUE 2009年9月号 - P.01

 巷に溢れる膨大な数の楽曲の中でも、とりわけテレビ、ラジオを通して耳にしたメロディは、無意識のうちに脳裏に焼き付き、やがて記憶として残ることになる。そして、ある日突然、ひょんなことがきっかけで、薄ぼんやりとした記憶の彼方からメロディの断片が徐々に、しかし、確実に蘇ってくるのだ。
 ほんの数フレーズを耳にしただけで、それが続くメロディを引き寄せ、気が付けばその先を口ずさんでいる。誰しもそうした経験を一度ならずもっているのではないだろうか。それは番組主題歌や劇中のBGM、あるいはCM前のほんのわずかな秒数で奏でられるジングルやアタック音かも知れない。意識下に刷り込まれた記憶は生涯にわたって生き続けているのである。

 本シリーズ「broadcast tracks」は、そうした鮮烈な印象を残し続けるテレビ番組のテーマ曲集で、一部、劇中で使用されたBGMからも選曲している。今回発売される3タイトルは、それぞれ毎日放送(MBS)、テレビ朝日、TBS、の3つの放送局でオンエアされた作品から選んだもので、放送初期のものともなれば、今から半世紀以上も昔の録音ということになる。無論、これまで放送された全ての作品が現存するわけもなく、素材が見付かっても、経年劣化や権利関係など諸般の事情で収録が困難な作品も多い。実際、本作のために集められた素材のなかには、これまで音盤化されたことのない貴重な楽曲が豊富に含まれていた。それだけに、収録が叶わなかった楽曲が数多く残されたのは残念でならない。
 しかし、今後は日本でもこれまで以上のスピードで、海外のように放送音源のアーカイブ化が進むことだろう。何しろアーカイブ化は、まだ始まったばかりなのだ。


 では、ここでごく簡単に各盤の聴き所を書き留めておこう。
 まずは10月9日にウルトラヴァイヴから発売される「毎日放送(MBS)編」から。大阪市音楽団によるオープニングテーマ「MUSIC IN THE AIR!」で幕を開ける本作は、同局の放送初期の代表的な長寿番組「真珠の小箱」を筆頭に、アニメ「サスケ」や「妖怪人間ベム」などでお馴染み作曲家の田中正史が書いた「アップダウンクイズ」BGM、前田憲男作曲による「世界まるごとHOWマッチ」オープニングテーマなど、貴重音源満載の作品集。日清提供だったことから、カップヌードルのCMソングと同じく「ハッピーじゃないか」をオープニングに採用した「ヤングおー!おー!」、藤田まことが司会進行を務めた「夜の大作戦」あたり、ある世代にはたまらなく懐かしい筈だ。
 そのほか手使海ユトロ(小笠原寛)による「世界ウルルン滞在記」の一連のBGMや、佐藤勝、間宮芳生、武満徹ら映画界のベテラン勢が書いたテレビドラマの主題曲なども多数収録。今回発売される3タイトル中、最も初音盤化曲が多く収録されている。
 とりわけ、筆者にとって念願だった「野生の王国」のオープニングテーマの初音盤化が実現したのはまたとない喜びである。同曲で青空に映える爽やかなスキャットを響かせるのは、ご存知シンガーズ・スリーの伊集加代。これまで一度も音盤化されなかったのが不思議でならない名曲だ(後期オープニングなどはシングル盤として既発)。
 また、ボーナストラックとして同局の看板番組「ヤングタウン」、「ありがとう浜村淳です」のオープニングを収録、こちらも関西圏のリスナーにはお馴染みの作品だろう。

 「毎日放送(MBS)編」に続く形で10月14日にユニバーサルミュージックから2枚同時に発売されるのが「テレビ朝日編」と「TBS編」。

「テレビ朝日編」は、同局の看板番組だった「木島則夫モーニングショー」、「桂小金治アフタヌーンショー」など、良き昭和の香りが漂うハイセンスな楽曲でスタート。こちらも初音盤化曲が多数収録されている。
 目玉曲をいくつか紹介すると、山下毅雄による「クイズタイムショク」のオープニングは、これまで3つのトラックを1つに編集した形で音盤化されていたが、今回は現存するセッションテープより、個別のトラックにわけ、さらにこれまで未音盤化だった「予告BGM」を追加収録。
 続く冨田勲作曲の「だいこんの花」は、既発盤ではナレーションが被ったヴァージョンだったが、今回はナレーション~楽曲という構成で収録、しかもナレーションは既発盤とは異なるテイクである。一方、渡辺岳夫作曲となる「非情のライセンス」は、天知茂演じる会田刑事のナレーションを採用したアルバム・ヴァージョンを収録した。 
 ほかにも近年放送された番組についても、初音盤化、初CD化を複数収録。番組名だけでピンと来なくとも、意外にも耳馴染みの楽曲が多いことに驚かされる。なお、ボーナストラックとして、ピーカブーの歌う「テレビ朝日の歌」を収録した。
 
 「TBS編」は、冒頭に前述の山下毅雄が書いた「七人の刑事」メインタイトルを放送ヴァージョンで収録。続けて「ウルトラQ」、「時間ですよ」、「Gメン'75」、「ムー」などお茶の間を湧かせた同局の代表作が目白押しだ。もちろん、番組が社会現象となり、大ヒットした「3年B組金八先生」(贈る言葉)、「男女7人夏物語」(CHA-CHA-CHA)の主題歌も収録している。
 "ドラマのTBS"というだけあって「砂の器」、「世界の中心で、愛をさけぶ」、「花より男子」、「ROOKIES」など近年の作品も実に印象的な作品が多い。そのほか「ザ・ベストテン」のBGMも複数収録。同番組については、これまで企画盤にテーマ曲や一部のBGMが収録されていたが、今回はそれらに加えて初音盤化となる「ザ・ベストテン 1位のファンファーレ」を追加収録。短い尺ながら、一瞬で放送当時にタイムスリップしてしまいそうな印象的な楽曲だ。
 また「世界ふしぎ発見」、「さんまのからくりTV」、「みのもんたの朝ズバッ!」、「2時っチャオ!」などワイドショー、バラエティ番組のテーマも、いつしか脳裏の刷り込まれた定番曲で、改めて聴くと頬が緩むこと受け合い。なお、ボーナストラックとして八城一夫が作曲し、天地総子が歌った「全国こども電話相談室」のロング・ヴァージョン、服部良一が書き、TBSテレビ・ラジオのスポーツ番組テーマに使用された「コバルトの空」を収録している。

以上、駆け足となったが、上記3タイトル是非とも併せてお聴き頂きたい。

【音楽職人トピックス】



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2012年3月17日(土)18:30~20:30
『生誕80周年記念集中講座:
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●受講お申し込みに関する詳細は、 池袋コミュニティ・カレッジHPをご覧ください。
また、お電話でのお問い合わせは、03-5949-5486まで。
濱田高志(ハマダ タカユキ)
音楽ライター兼アンソロジスト。これまで国内外で企画・監修したCDは300タイトルを数える。現在は「イージーリスニング・ステーション」(USEN)の選曲や「エキスポ・ジェネレーション」、「濱田高志のトレジャー・ミュージック」(STAR digio)のパーソナリティを担当。ミシェル・ルグランからの信頼も厚く、世界初の公認本「ミシェル・ルグラン風のささやき」(音楽之友社)を執筆したほか、「コカ・コーラCMソング データブック」(ジェネオン)「Love Sounds Style読本」など編・著作多数。2007年、ロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ『フル・サークル』をコーディネイト。

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濱田高志ロングインタビュー
(2007年2月掲載)

濱田高志 監修・選曲・解説
「TV AGE」シリーズ公式HP


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