今年4月にアルバム『BUFFALO SOUL』でメジャー・デビュー以降、70年代ロック、ブルースをルーツにした新世代ロック・バンドの旗手としてメキメキと頭角を現し始めた矢先、ギタリストであった岡庭匡志が失踪~脱退。突然、窮地に立たされたa flood of circle が、目の前に立ちはだかる困難と、バンドマンとして、人としての困惑と悲しみを乗り越え、新作『PARADOX PARADE』を完成させた。佐々木 亮介(Vocal & Guitar)、渡邊 一丘 (Drums)、石井 康崇(Bass)からなる新生a flood of circle、この3人であること、3人である意味をストイックに突き詰め、期せずして生まれてしまったノンフィクションのブルース。1曲1曲のテーマ性に重きを置いた本作は、結果的に彼らが目指すブルース、その最たる証明となった。失意や喪失感を挫折に変換することなく、彼らはさらに広い世界へ向け、行進してゆく。
―突然のメンバー脱退という危機を乗り越えての新作が完成しましたね。
佐々木 亮介(Vo&G):最初はミニアルバムの予定だったんですけど、この3人になってからのいちばん新しい形を出したい、ってことでフルアルバムになりました。そこで活動を止めずにライヴをやり続けていく中で「3人でやろう」っていう決意が固まってきたし、メンバー脱退云々に引きずられずに、最新のa flood of circle の作品として表現できた、3人が新たな気持ちで臨んだっていうのが伝わりやすい作品になってると思います。
―レコーディングだったり、すでに決まっていたライヴだったり、ひとつひとつに「終えた」って実感があったんじゃないかって思うんですけど。
佐々木:まあそうですね。最初、(岡庭は)失踪だったんです、脱退じゃなくて。だから、ただ不安なだけで宙ぶらりんな状態だったんですよ。でも今回、僕らの企画でツアー(a flood of circle presents “What's Going On Tour '09”).をやって、その最初の方で彼の脱退を発表したんです。というのも、a flood of circle の冠でイヴェントをやる以上、何かが欠けたままでいるのは誠実さに欠けるってことなんじゃないかと思ったんですよね。とにかく僕ら3人、全力のものを見せたかったし、それでちゃんと脱退を発表して、ある意味スッキリしたというか、清々しい気持ちでツアーを終えることができたんですけど。
―今は、悲しみとか困惑といったネガティヴな気持ちからは徐々に解放されつつありますか。
渡邊 一丘(Dr):うん・・・とは思います。
石井 康崇(B):落ち着いてきてはいますね。
佐々木:彼が失踪した時点で、決まっていたライヴをどうするかを考えて。それを止めないって決めたときから、もう3人でやるって気持ちは固まってたんです。組んでもらったスケジュールはすべてやり遂げたかったし、ライヴに呼んでくれるところには全部行きたかったんですね。そこで発想をパッと切り替えられたので、そこからはもうここまで全力で。前回のツアー・ファイナルの6日前に彼がいなくなったんですけど、そのツアー・ファイナルで新曲も演ったんですよ。そのときサポートの大さん(奥村 大from wash?)と合わせてみて「いけるな」っていう実感をもてた。それも大きかったですね。
―今の岡庭さんに対する気持ちというのは。
佐々木:単純に不安というか、元気でやってるのかどうかを・・・人を介して、彼がどこかで生活してるっていうのは伝わってるんですけど、直接会っていないし、向こうから連絡がないので。
渡邊:間接的な確認だからね。
佐々木:うん。そこはちゃんとしたいっていうか、会って話したいなって思うこともあるんですけど。ただバンドに関しては、彼が連絡してこないっていう、それがいちばんの意思表示だと思ったし、脱退を発表しても彼からは何のリアクションもないので・・・彼とは話したい、でもバンドとしてはもう先に進みたいっていう、そういう気持ちなんですよね。
―なるほど。今回は4人のギタリストをゲストに迎えてのレコーディングということでしたが、3人で作ってしまおうとは思わなかったですか。
佐々木:単純に曲作りとか、バンドのスタンスをちゃんと見せるっていうところは、もちろん3人だけのものなんですけど、それを音楽として表すにはギターがもう1本必要だったんです。というよりは、できた曲がもうひとりギターを呼んでたんですよね。それで曲ごとに「この人が合うんじゃないか」っていうギタリストさんにお願いしたんですけど、3人の姿勢さえハッキリしてれば誰に弾いてもらっても曲はブレないっていう、最初にそういう確信がありましたから。
―それにしても個性的なバンドの人たちばかりが集まりましたよね。
全員:(笑)
佐々木:皆さん、出会いのキッカケはそれぞれ違ってたんですけど、栄純さん(菅波栄純from THE BACK HORN)には石井が手紙を書いて。
石井:とりあえず自分たちの気持ちを伝えて、「宜しくお願いします」みたいな。僕、元々、THE BACK HORNがすごく好きだったんで、栄純さんにお願いしてみたんです。
―快諾だった。
石井:はい、快諾していただきました。
佐々木:スタジオで会ったときも「手紙にグッときました」って言っていただいて。
―見方を変えれば、こんなことがなければ実現しなかったことでもあるんですよね。
佐々木:そうですね。皆さん、現役でロック・バンドをやってる人たちだし、僕らもそこから学んだこともいっぱいあるんですよね。皆さんそれぞれが違う棘をもっているというか、自分たちには絶対にないアイデアや引出しがそれぞれあるんですよ。やっぱりTHE BACK HORN、椿屋四重奏、FoZZtoneとそれぞれのバンドに独特のカラーがありますからね。
―ただ、ギターが変わるっていうのは、バンドにとっても聴き手にとっても重要なことだと思うんですよ。
佐々木:そうですね。もちろん4人で作ってきた形、培ってきたものが当然あるわけですけど、結局、バンドってひとりひとりミュージシャンが集まってひとつの形を作ってるわけじゃないですか。だから今回はギタリストが抜けましたけど、やることは同じというか、3人がそれぞれのものを持ち合わせてひとつの形を目指す、それだけだと思うんですね。ある意味、今回のことでそれに気づいたし、<自分たちはミュージシャンとしてどうなのか>っていうのを試されたとも思うし、目の前にハードルがあるならそれを超えなきゃいけないとも思えた。そのことがすごく大きかったんですよ。
―なるほど。チャレンジもあり、結果として確認できたこともあったわけですね。
渡邊:不幸中の幸いというか、新しく挑戦できたこともいっぱいありますから。
佐々木:「こんなに音楽作るのって楽しかったんだ」って。あそこで止まらなかったから、こんな風に思えたんですよね。
―ライヴに対する考え方は変わりましたか。
佐々木:当然、以前とは違いますね。メンバーではないサポートという立場でギターをお願いしているので、そこでまた新しい関係ができたというか。俺たち3人がもっているもの、作り上げたもの、アピールしているものに対して、力を貸してもらう、どうアプローチしてもらうかっていう形なので、これまでとは方法そのものが違うんですよね。でもライヴ自体はよくなっているし、俺たちも成長し続けているんじゃないかと思ってるんですよ。作品作りに対して、ひとりひとりがいかに大事かっていうのを認識したように、ライヴに対しても、それぞれが持ってきたものに対して、「じゃあここで自分はどうする」「どう勝負するか」っていうのがハッキリしたので、意識は高くなっているとは思います。
―a flood of circle というバンドは音で繋がっているという意識のほうが強かったのか、それとも内面的な人間同士での繋がりのほうが深かったのか、元々どちらのタイプだったんでしょうか。
佐々木:今でもそうですけど、友達から始まったバンドなんですよね。それは音楽があったからこその出会いだってことはもちろんなんですけど、でも今の僕らにとっていちばん大切なのはバンドとしてやっていく、それをちゃんと人に聴かせるためにCDを作って、人に見せるためにライヴをやるってことなんですね。だからまず音楽で繋がってなきゃいけないと思うし、いい意味で友達という関係に甘えたくないし、ちゃんと勝負しあいたい。それは切磋琢磨っていうことかもしれないんですけど。スタートが友達レベルで始まったことから考えたら、今はその関係のまま、さらにミュージシャンとして有機的にぶつかり合えてると思う。集中力はどんどん高まっていると思います。
―a flood of circle の基本にはブルースがありますけど、その捉え方にも変化はありますか。
佐々木: 最初、音楽の方法としてブルースを取り入れてたんですね。たとえば3コードっぽいとか、12小節の進行とか。でも今は枠に囚われず、どんどん自由にやろう と思ってるんです。僕にとってのブルースは音楽的なことよりも精神的なことというか。自分の中であったこと、たとえば悲しいことがあったら悲しいことを表 現のレヴェルまでもってって全力で叫びきるってこと、それがブルースだと思ってるんですよ。そこさえブレなければ、アレンジがもっと自由になったとしても 僕らのブルースであることに変わりはないですからね。2009年の音楽、2009年のブルースにしたいっていう気持ちは強いです。



