1992年の結成以来、長きに渡って日本のインストゥルメンタル界のトップに君臨するDIMENSION(ディメンション)。増崎孝司(ギター)、勝田一樹(サックス)、小野塚晃(キーボード)という、個々の活動でも多忙を極める3人が、ひとたびDIMENSIONという名の下に集合すると、そこには新しい「次元」が生まれる。しかも活動はハイペース。17年間で、なんと21枚ものアルバムをリリースしてきた。そして、このたび前作から約1年というこれまた短いインターバルで、新作が届けられた。タイトルはズバリ『22』。バンド史上、最も攻撃的でポジティヴと評されるそのサウンドの秘密をメンバーに聞いた。
--いよいよ22枚目のアルバム、その名も『22』が発売されました。92年の結成から、かなりのハイペースで作品を発表され、そのパワーに驚くばかりですが、結成当初からこのようなリリース方法を目論んでいたのですか?
小野塚:いえいえ。もともと、ギターの増崎のソロアルバムに、僕と勝田が参加したのが結成のきっかけです。もちろんそれ以前にもミュージシャンとしてそれぞれの存在を知っていましたし、共演したこともあります。最初は自分たちと同世代のミュージシャンで、自分たちの音楽をやりたい、という気持ちで集まったんです。バンドとして、今のカタチが見えているわけではなかったし、作品を作り続けられるか、なんてこともわからなかった。それが次第に、バンドとしての阿吽の呼吸ができあがり現在に至っています。それと、以前はアルバムごとにテーマを決めていました。たとえば、バラードや、クラブジャズ、カバー集などです。しかし、ここ何作かをそういったことは決めずに、そのときそのときの僕らの音を表現するようにしてきました。
--そのあたりもバンドとしての成長があるから、敢えて挑戦していることなんですね。
小野塚:これはよく訊かれることですが、僕らの場合、もう、誰かが曲を1曲まるごと書いてくることはしないんです。それぞれが断片的なものを持ち寄るんです。どれだけ断片的かというと、譜面に書いた4小節、8小節というときもありますし、また「大きなホールで上からバリライトを浴びている時のような」という音楽以外の表現を持ってくるときもあります。とにかく、ゼロに近い状態から3人がディスカッションして曲作りを進めています。その方法が現状、上手く作用していると思います。一人でまるまる1曲を創り上げることはしんどいことだし、自分の持っているもの以上を出すには難しいんですね。それが全然違うキャラクターの3人の意見やアイデアが足されることによって、より面白くなるんです。
--そのあたりはやはり、長く一緒に活動してこられたからできることでしょうか。
小野塚:そうでしょうね。結成当初は今以上に産みの苦しみがありましたね。考えてもなかなかカタチにならないこともありましたし、ボツになった曲もたくさんありましたね。長年培ってきたものが今、表れているんだと思います。
--そういう意味では、最新作『22』では、メンバーのみなさんのそれぞれのイメージが詰め込まれているわけですね。
小野塚:そうですね。それぞれの断片的なアイデアを3人で話し合いながら作っていきました。最初に完成形を作るのではなくて、たとえばワンコーラスだけとか、プリプロとしてデモテープを作るんです。それを10曲以上作っていくうちに、自分たちが出したい音がなんとなく見えてくるんです。それを一度落ち着いて聴いてみて、アルバム全体として足りない曲があれば書き足していくという手法でアルバムが出来ていきます。
--その意味で、もっともイメージ先行ででき上がった曲はどれでしょうか?
勝田:強いて言うならば、2曲目の「Silver Rush」ですね。さっき小野塚君が言ったように、8小節の決まったサビメロのコード進行からスタートした曲です。そこから、漠然と「大きい曲にしたいね」というところからコードを膨らませていきました。
小野塚:必ずしも、音楽的なことだけを話してでき上がるわけじゃないんですね。たとえば、音楽を作っていく段階で「もう一段、花開く感じにしたい」、「もう少し抑えた場所が欲しい」というふうに。
--そうしたイメージが湧き出るのは、なにかきっかけがあるのでしょうか。それが、想像力の源泉で、音楽を作ったり演奏したりする上で、最も重要な部分のひとつだと思うのですが。
増崎:僕らはもう、あまり人の音楽を聴かないと思うんですね。でも、家にいても車に乗っていても音楽は聴こえてきます。そうしたものから刺激を受けているのかも知れません。曲作りの段階で、他の2人がすごく良いモチーフを出してくれたときは、とても嬉しくなって「ああ、こういう感じなんだ」と思うんです。3人とも曲作りの最初の一球目は探りながらだから、自分がそれをしっかりと受けて膨らませます。だから音楽だけではなく、自分の引き出しの中に持っているネタを、ブロックをはめるような感覚で表現していくんです。そのように、僕らの場合は少しずつでも、お互いの持っているものを出し合っていますね。
--出し合ったものがそのまま組み合わさるのではなく、化学反応を起こし、結果的にクオリティの高い楽曲に仕上がるのは、やはりさすがとしか言いようがありません。
増崎:僕のイメージに二人の感覚が入ることによって、自分の思った未来とは違うものになります。しかも、それが良い未来なので。でも、17年も活動していると、製作途中で、にっちもさっちもいかない曲もたくさんありましたよ。進めば進むほどイバラの道になる(笑)。
--そこで見極めて引き返してくる判断も重要ですね。
小野塚:そうですね。考えに考え抜いて出来た、という良さもあるんですが、音楽って映画とは違って、もっとひらめきでできていいものなんです。
--では、凄腕プレーヤーとしてならしている皆さんが今回のアルバムで、演奏者として特に気を配られたことはなんでしょうか?
小野塚:ミュージシャンとして当然ですが、すべてにおいて昔より良くなりたいという思いはあります。ただ、音楽の中で何をすべきかは、演奏する音楽を良く聴いていれば、ごく自然に演奏として出てくるんですよね。そうした「曲からの声」を聴き逃さないようにはしました。
勝田:上手い演奏はもちろんですが、記憶に残る演奏をしたいと思っていました。特にミディアムテンポの「Fine」は、上手いだけではなく、何か他の感情も伝えられればなと思い演奏しましたね。
増崎:二人とも言っているように、良いプレイをするのは、ミュージシャンとしてベーシックな部分。楽曲に対して必要なトーンをどれだけ散りばめられるかは、今までのアルバム全てに対して気を配っているところです。また、僕の場合は、ディメンション以外では、ヴォーカルのバックアップのプレイも多いので、そこで得たことを上手くバンドにフィードバックできているとは思います。サックスやキーボードをしっかりと受け止められるポジションにやっとなったかなと思います。
--また、オーディオ的な音質の良さにも驚きました。キレとコクを兼ね備えたサウンドというか
小野塚:ありがとうございます。マスタリングは、初めてバーニー・グランドマンのスタジオにお願いしました。まず試しに1曲だけ依頼したら、非常に良かったので全曲マスタリングしていただきました。
増崎:担当してくださった田中さんは、バーニー・グランドマンのスタジオの中でも、録音されたソースに対して、あれこれ加工をしない方なんです。聞くところによると、ケーブルを替えるだけだそうですよ。ブラインドテストで聴いてもすぐ音の良さがわかるほどでした。ここまで圧倒的に音質が良くなると、たとえばデジタルのオーディオプレーヤーや携帯電話で聴いたとしても、自分たちの作品が、クオリティの高いオーディオサウンドになるから、とても嬉しいですね。
--では、お三方にとって、ディメンションとはどのような位置づけなのでしょうか? ホームなのか、実験場なのか…
小野塚:いろいろな意味がありますね。昔は部活だ、と言ったこともありましたが。やはり、一人で音楽を作っていくことには限界があるんです。自分が音楽をやっていく上で、やはりさまざまな刺激が欲しいし、自分ひとりでは考えつかないようなことを創り出したり経験したりしたいわけです。その中で、僕に取ってディメンションは欠かせないものだし、今、非常にバランスが取れていると思います。ですから、毎年アルバムも作れるんだと思います。
勝田:位置づけ、というほど堅苦しく考えたくはないのですが、やはりサックスプレーヤーとして「ディメンションの勝田さん」と認知してもらえればと思っています。
増崎:僕はもうはっきりしてます。僕の人生の半分です。僕という存在を広く知ってもらえるようになったのは、このバンドのおかげです。季節でいうならば、春と夏。一番華やいでいる場所なんです。
<インタビュー・文 / 中林直樹>




