2010年代のブライテスト・ホープ候補ナンバー・ワンの呼び声の高い、ニュー・カマーの登場だ。その名もMAGIC PARTY。AIRI(vo)と本田光史郎(B、Music Composed)の2人組だ。60年代のサイケデリック・ロック・テイストの濃いサウンドをベースにドリーミーなポップスは、10代の音楽ファンからビートルズ世代までをもとりこにしてしまいそうな、不思議なマジックをもっており、来年以降大いに飛躍しそうな可能性を感じさせる。とにかく曲がよく、アレンジもカッコいい。さらにはAIRIがポップ・アイコンとしての魅力にあふれたキャラクターの持ち主である。来年の今頃、彼らは? と想像すると楽しみでならない。
--まずはプロフィール的なところからお聞きしたいのですが。まずマジック・パーティーを結成する前、本田さんはどういった活動をされていたのですか。
本田:元々いろいろなバンドで音楽活動をしていたんですが、あるバンドが解散することになったのをきっかけに、数年前から職業作家みたいな感じで曲を書きはじめたんです。そんなとき、ある仕事で、女性シンガーに曲を書いてみないかと言われ、実際にやってみたら、予想以上に上手くいって、自分の書いた曲が女性のボーカルで歌われることに気持ちよく感じたんですね。そこから今回のプロジェクトに繋がっていくんですよ。
--楽器の担当はベースですよね。
本田:本当はキーボードを希望していたんですけど、最初にバンドをやったときに、ジャンケンで負けて(笑)、ベースになって、それ以来、ベースを弾いているんです。作曲はギターでメロディとコードを作って、そこからパソコンで作り込んでいくんですけど。
--ベーシストゆえのメロディ作りの傾向はありますか。
本田:一時期、自分はベーシストとしてどうなのかな? という悩みがあったんです。でも何かの雑誌で、ポール・マッカートニーが曲を作るときは、最後にベースラインを考えるって言っているのを読んで、一気に悩みが解決されましたね。「あっ一緒や」って(笑)。
--ブライアン・ウィルソンもベーシスト兼ソングライターですもんね。では、AIRIさんとの出会いはどのように?
本田:女性に曲を書く楽しみを知ったことがきっかけで、女性とユニットを組みたくなったんです。でも周囲に女性ボーカルがいなかったので、ネットで募集をかけたり、楽器屋に張り紙したり、知り合いに頼んだり…。その中で、滋賀県で活動している才能あるボーカリストがいるから会ってみないかと言われ、東京からわざわざ滋賀まで声を聴きに行って、まさにその声に一目ぼれしました。
--どんな印象を持ったんですか。
本田:彼女のハスキーな声ですよね。僕はハスキーな声が好きなんですよ。なので、初めて聴いたときに「いいな」と思いました。自分の書くポップなメロディにハスキーな声が合うんじゃないかと。あと、彼女の歌に対する姿勢というのか、歌うことでその世界に入り込む感じに好感を持ちましたね。あとはとにかく歌うことが大好きなんだなっていう印象がありました。
--AIRIさんは滋賀でどんな活動をしていたんですか。
AIRI:(当時やってた)バンドのリハとライブとバイトしての繰り返し(笑)。ちょうどバンドが解散したあとで2人組ユニットでアコースティックの曲を歌っていたんです。そんなときに声をかけていただいたんですが、まさか自分がすぐ東京に行くことになるとは思ってなくて……。声をかけていただいたときは、即決で「これしかない」って思いました。
--結成当初、音楽性のビジョンはどういうものでしたか。
本田:色々なジャンルの曲を作って、どれが彼女の声に合うかってことを模索していました。やっていくうちに、サイケデリックな曲を中心に広げていけたらというビジョンが見えてきました。基本的には色々なジャンルの音楽に取り組んでいきたいですね。
--音楽制作の面ではスムーズにいきましたか。
本田:好きな音楽が似ているので、問題ないですね。もう1年半近く経ちますが、言い争いもありませんし(笑)。その間ずっと曲を書いて、そこへAIRIに歌詞を書いてもらって、歌って……という作業の繰り返しでした。
AIRI:これまで作ってくれた曲がみんな好きなものだったので、歌っていてもすごく楽しいですね。
--ユニット名の由来は?
AIRI:音楽って、人の心を動かし、感動させるもので、それって魔法みたいだなって思っていたんです。なので、私たちが作り出す音楽で、聴いてくれる皆さんを仲間(PARTY)に入れて、一緒にやっていけたらなって思いを込めているんです。
--ファーストシングル「Believe in Paradise」はどんな経緯で作られたのでしょうか。ドラマ「深夜食堂」の主題歌ですよね。プレッシャーはありましたか。
本田:この曲はドラマの主題歌として書き下ろしたもので、そのテーマが「都会のオアシス」だったので、慌しく動き回っている場所から、オアシスへ飛び立つ壮大さ、力強さを軸に書きました。このドラマもどちらかというと明るい雰囲気のものではないので、そこと自分たちの曲をどうミックスしていこうかというところを考えました。プレッシャーは、ないと言えばウソで、やっぱりありましたね。
--最初はエレクトロかなと思いきや、途中からウォール・オブ・サウンドのような展開になり、それでいて、オルタナティブ・ロックのようなイメージもありで…。
本田:自分のクセで、エレクトロやストリングスとか、色々な音を足しちゃうんですよ。これでもかなり減らした方なんですけど(笑)。でも、その根底にはリスナーの気持ちを軽く裏切りたいという気持ちがあるんですよ。予定調和で終わらせたくないみたいな。
--歌詞に込められたテーマは、どういったものですか。
AIRI:「都会のオアシス」というテーマに執着しすぎないようにしながら、「毎日、悲しいことやつらいことがあるけど、それを乗り越えたところにパラダイスがあるんだよ」というメッセージを込めて書きました。
--自分たちが作った曲が、実際にドラマに流れているのを目にした印象はいかがですか。
AIRI:普段見ているテレビから自分の声が流れてきたとき、鳥肌が立ちました。しかもたくさんの人に聴いてもらえるということに感動して。ドラマが終わった瞬間に、友達からメールが来ましたしね。それまであまりメールしたことのない人だったんですけど…(笑)。
--急に知り合いや親戚が増えたみたいな(笑)。ビデオクリップもかなり凝ったものでしたね。東京タワーが印象的です。
AIRI:楽しかったですね。一つの作品をみんなで作り上げていくことに快感を覚えました。丸一日かかったんですけど、すごく短く感じました。
本田:東京タワーのロケは、ライトアップの時間制限があるとかで、最後は押し気味でしたけど、最終的には何とかギリギリ間に合いました。
--「Believe in Paradise」のカップリングの「ハローBaby」はにロック・テイストが強いですね。
本田:「ハローBaby」は自分たちの原点である、サイケデリックな感じを集約した曲です。これはベースのフレーズから考えて作ったものですね。
AIRI:一回聴いただけで「これは来た! 好き!!」って思ってしまって、ノリもすごくいいんで、歌詞も乗せやすかったです。レコーディングしていても楽しかったです。
--12月には次のシングル「奇跡の夜」がリリースされます。こちらの曲は少しカラーが違いますね。
本田:冬に合う曲を作りたいなと思ったんです。デモテープを作ってAIRIに歌ってもらったんだけど、何かが足りないなと感じて、そこで、冬らしいジャズっぽいピアノサウンドがほしいなと。個性的なピアノを探しているときに、以前から知り合いだった風味堂の渡(和久)さんに声をかけさせてもらったんです。二つ返事でOKをいただいて、参加してもらった結果、想像以上のものになりましたね。イントロやピアノソロについては、渡さんのアレンジを取り入れたので、原曲とはかなり違ったものになっています。自分が書いた曲に、渡さんが間奏のピアノを入れて、それに負けじと自分がベースで頑張ったんです。ビートルズの「サムシング」曲は、ジョージが書いた曲にポールが素晴らしいベースを乗せているんですが、今回はまさにそんな雰囲気が自分の中にありましたね。
--AIRIさんは初めて他のボーカリストの方をフィーチャリングしたわけですよね。感想はいかがでしたか?
AIRI:男性と一緒に歌ったことがなかったので、こんなに気持ちのいいものなんだ、と感動しました。違和感なく歌えましたね。渡さんって、感情を込めてすごく表情豊かに歌われる方なので、その技術を吸収するつもりで歌いました。
--さらっと聴くと、メロウな感じのバラードなんですが、基本的なところでは「Believe in Paradise」と同じく、ドラマティックな魅力が感じられます。
本田:壮大で力強い感じのリズムが好きなので、その辺は共通していると思いますね。自分がずっとバンドをやってきたので、バンド・サウンドのアレンジへのこだわりがあるんですよね。
--この歌詞はどんなところから出てきたんですか。
AIRI:最初にメロディを聴いたときに、「冬の曲だな」ってすぐ思いました。そのうえで、ハッピーな曲なのか切ない曲なのかどっちだろうと考えたときに、絶対切ない方だろうなって。お互い好き同士なのに、一歩踏み出せずに最後まで平行線のままの2人をイメージしたんです。私は外でも家の中でもそうなんですが、いつも曲を聴いて、歌詞が思い浮かんだら忘れないうちに、バーっと書いちゃうんです。それをヒントに妄想と実体験を加えて書き上げていくんです。
--本田さんは、AIRIさんの歌詞はイメージどおりですか。
本田:いつも、自分のイメージは全く伝えず、曲を聴いた印象のまま書いてもらっているんです。でも、ほぼイメージどおりの詞になってきます。時々自分が想像しなかったような歌詞が返ってくることもあるんですが、それはプラスになっていますね。「彼女にはこういうふうに聴こえているんだ」というのが分かるので。だから、どんな歌詞が付いてくるのか、いつも楽しみです。その歌詞を踏まえて、音のアレンジを変えることもありますし。
AIRI:元々落ち込みやすい性格で、ひとりでやっているときは暗い詞になることが多かったんです。でも今はみんなで作っている感じがあるし、曲調も明るいんで、聴いていて元気が出るイメージ膨らませて書いていますね。
--今後、やってみたいことは?
本田:今回、風味堂の渡さんとコラボできたことで、僕ら2人だけじゃなくて、色々なアーティストとコラボレートできたらという思いがあります。AIRIのボーカルが強いものを持っているので、これがあれば、色んなことをやっても、ズレが出てくることはないと思いますから。
AIRI:実は私は声にずっとコンプレックスをもっていたんです。でも、こういうロックの感じで歌うようになって、解消されていきました。今では自分の声も好きになりましたし。これからは自分のダイレクトな歌声を届けたいと思っていて、どんどんライブをやっていきたいですね。
<インタビュー・文 / 竹部吉晃>




