今年、メジャー・デビューを飾った大橋好規のソロ・ユニット、大橋トリオ。5月にリリースしたミニ・アルバム『A BIRD』に続き、早くもフル・アルバム『I Got Rhythm?』を完成させた。〈ダンス〉をテーマにしたという本作は、いつになくグルーヴィーな曲が並びつつも、美しいバラードも織り交ぜたヴァラエティ豊かな仕上がり。スリリングなセッションからは、大橋のプレイヤーとしての魅力もたっぷり味わえる。じっくり聴けて、たっぷり踊れる大橋トリオの新境地がここに。
--新作のコンセプトは〈ダンス〉だそうですが、それは最初からあったアイディアなんですか?
そうですね、曲を作る前から決めてて。なぜかというと、ライヴで歌に浸って動かずに観てる方が多いんですよ。これじゃ、ちょっといかんなと思って。僕も煽ったりとかしないんで、それも悪いなと思うんですけど。動きやすい、のりやすい曲を増やした方がいいかな、と思ったんです。あと、大橋トリオと〈ダンス〉って言葉のギャップみたいなのが面白いかなって。
--大橋さんにとって、ダンス・ミュージックというとどんなイメージですか?
今回のアルバムで言えば、どちらかというとクラシカルな感じですね。例えばタップ・ダンスとかビバップ・ダンスとか。そういう可愛い昔のダンス・ミュージックのイメージです。
--例えば「Here To Stay」なんて、そんなイメージにピッタリの曲ですね。
ジャジーでロッキンでアッパーな曲というのが今までなかったんで、そんな曲をやってみようかと。基本的に、これまでやったことのないタイプの曲をやろうと思ってたんです。
--間奏部のセッションもすごく良い感じだったんですけど、あれは即興なんですか?
即興ですね。もう勢いの演奏。僕はジャズの感覚なんで、演奏する度に違うものじゃないといけないと思うんです。
--大橋さんの曲って、カッチリ作られているような感じもありつつ、演奏はすごく自由で。そのへんのバランスが絶妙ですね。
狙ってるとこもあるんですけど、勢いを大事にしてるってところもあって。まあ、純粋にいろんな楽器を全部自分でやらなきゃいけないから、録音に時間かけてるヒマがないとも言えますね(笑)。ちょっとミスタッチとかあっても「ま、いっか」ってなっちゃいますから。味、味って。
--アレンジにしても、もっと複雑にできるところを、あえてシンプルにしているような気がして。そのへんの匙加減についてはどうですか?
そうなんですよね。あまりキメキメにはしたくないんですよ。あんまりやるとゴチャゴチャになるというイメージがあって。今回は特になんですけど、生々しさを大事にしたいとか、セッションっぽい感じがいいなとか、そんなふうに思うんですよね。
--ひとりで音を作り込んでいくミュージシャンには、どんどんディテール入り込んでしまう人もいますが、大橋さんの場合はいかがですか?
やってもいいんですけど、結局最初の感じがよかったりするんですよね。なんでもそうなんですけど、録音とかでもテイク1が一番ノッてたり。アレンジもそう。作り込みすぎない、ほど良い感じが、僕にはいちばんしっくりくるんですよね。まあ、ただ単に作り込むのが苦手、ともとれるかもしれないですけど(笑)、僕はあえてそうしないんですよ。あるところでブレーキがかかるんですよ。「おっとっとっと、これ以上は行かないよ。わかる人にはわかるから」っていう。
--ちなみにメロディーとリズムでは、どちらが書きやすいとかって、ありますか?
まあ、曲によりますけど、リズム・トラックのほうがイメージがつけやすいですね。曲で目立つのってドラム、ベースあたりな気がします、あとはリフとか。僕の場合、最初は歌を歌おうとは思っていなかったので、インストの曲とかを結構、書いていたんです。インストってやっぱりリフですからね。
--そういえば、前作のインタビューで「ようやく自分の歌声に慣れてきた」とおっしゃってましたが、今回ヴォーカルについてはいかがでした?
どうすべきか、というポイントが明確になってきたんで、早かったといえば早かったですね。でも、英語の歌詞の曲なんかは、自分のキャパを越えたものが増えちゃったなと思ってて(笑)。ちょっと苦労しましたね。自分に合っていないメロディーとかってあるじゃないですか。そういうものがちょっと多かったかなと。
--そうなんですか、気づきませんでした。例えばどの曲ですか?
それは黙っておこうかな(笑)。意識して聴かれても困るので。
--了解です(笑)。コーラス・アレンジについてはいかがですか?
コーラスはあんま気を使ってないですね。勢いでパパパッと浮かぶんですよね、「ここはこうなる、ここはああなる」とか。昔、コーラス・バンドみたいなのをやってたことがあって。だからアレンジのパターンはすぐ思いつくんですよ。そういうのも結構、最初に思いついたものが良かったりしますね。
--歌に比べるとピアノは大橋さんにとっては馴染み深いと思うんですが、やはりいちばん身近に感じる楽器ですか?
まあ、ただ単に付き合いが長いというか。腐れ縁ってやつですね、はっきり言って(笑)。
--大橋さんにとってピアノという楽器の魅力は?
音域が広くて音がいっぱい出せることかな。打楽器にもなりますしね。だから、表現がかなり幅広いんです。これは余談ですけど、指揮者になりたい人はオーケストラの譜面を見て、ピアノ1本でそれを要約して弾けるらしいです。僕にはそんなスキルはないですけど。
--来年にはホール・ツアーも控えていますけど、どんな内容になりそうですか?
まだ、そんなに煮詰めていないんですが、メンバーは増やしたほうがいいかなって思ってます。といっても、5人もいれば充分ですけどね。
--では最後に、今後、大橋トリオとしてやってみたいことはありますか?
うーん、特にないですね。しいて言えば、マイケル・ジャクソンに曲を提供したいかな(笑)。もう、「ヒール・ザ・ワールド」クラスのピースフルな曲を書きますよ。
<インタビュー・文 / 村尾泰郎>


