「 カーネーションの幸せな時代が始まる 」
矢部浩志の脱退で、直枝政広、大田譲の2人組になったカーネーションが、3年ぶりの新作『Velvet Velvet』をリリース。中原由貴(タマコウォルズ)、大野由美子(Buffalo Daughter)、宮田繁男(元オリジナル・ラヴ)、奥野真哉(ソウル・フラワー・ユニオン)など、気心の知れた仲間たちが全面的にバックアップ。濃密なセッションから生まれたサウンドは、カーネーションの熱いグルーヴに貫かれながらも、その先には見たことのない新しい風景が広がっていた。
--今回のアルバムは多彩なゲストを迎えていますが、セッションはどんな感じで進んだんですか?
直枝:こっちからまずデモテープを渡して、曲の主旨とかイメージを説明するんです。「この曲はニューオリンズじゃなくて、もうちょいカリブで」とか、「あの映画のエンディングのああいうシーン、あの空気」とか。後は放し飼いですね(笑)。譜面はちゃんとあるけど演奏はフリー。アレンジとかは演奏しながら考える。それがカーネーション流というか。
--それって、ある程度、イメージが共有できていないと難しいですよね。ゲストのミュージシャンが戸惑ったりというのはなかったですか?
直枝:全然。戸惑ってたら仕上がらないんで。まあ、みんなキャリアもあるし、そのへんは楽しんでくれている。だから、ゲストにどんなミュージシャンに来てもらうのか、それを決めるところからアレンジが始まっているといえる。例えば今回、宮田君に「この悲しみ」と「Songbook」のドラムをお願いしているんですけど、これはどちらも僕のなかではノーザン(・ソウル)のイメージで。そういうスタイリッシュな曲の場合は、中原さんより宮田君。彼が僕にソウルを教えてくれたんです。いまだにレコードを借りっぱなしなんですけど(笑)。僕の中で「ソウルのことなら宮田に訊け」みたいなところがあって、それで声をかけたんです。
--その2曲には奥野さんも入ってますね。
直枝:奥野君とは前から一緒にやりたかったというのもあるし、彼のなかにあるニューウェイヴ感覚が面白いなと。彼がやると型のハマッたノーザンじゃない、いろんなアイデアが入ったものになるだろうと思ったんです。
--大野さんの参加の経緯は?
直枝:カーネーションが92年に『天国と地獄』っていうアルバムを出した時、その後のツアーから大野さんがムーグで参加してくれたんです。当時、バンドとして新しいモードに入った時でもあり、彼女は僕たちにとって相性が良いというか、守り神みたいな存在なんです。だからこの時期、そういうゲンの良い人と一緒にやりたいと思って、久し振りに声をかけたんです。大野さんには「スティール・パンだけ持ってきてください」と伝えておいて、後は大野さんが来る日に勝手にいろんな楽器を並べておきました。
--大野さんが興味を持ちそうなやつを(笑)。
直枝:そうそう(笑)、チェレスタとかいろいろ置いといて。それを見て大野さんが「じゃあ、いろいろやってみようかな」とか言って。後は大野さんの美学で、ストリングス・アレンジを含めてコーディネートしてもらったんです。
--大野さんが入った「Willow in Space」には、スティール・パン、ストリングス、ハモンド、チェレスタなど、いろいろ入ってますよね。この曲以外にも、今回のアルバムでは使ってる楽器が多彩ですが、最初から考えていたことなんですか?
直枝:いや~、たまたまスタジオで楽器が借り放題だったんで(笑)。足踏みオルガンとかムーグとかいろんな楽器がある。だから「Willow in Space」とかも、ライヴでの再現性を考えずに、大野さんにはやりたいようにやってもらいましたね。
--あと、重要なところでドラムの中原さん。最近、ずっとサポートで入っていますね。大田さんはリズム隊の相棒として、一緒に演奏してみていかがですか?
大田:ここんところ、全然意識しなくていい状態の関係になれたというかね。やっぱり、人を意識してたらダメなんですよ。自分のノリを勝手に出しとけば良いノリになる、っていうふうに、ここのところなってきてますね。ドラムとベース、ギターの3リズムが自然に混ざってないと、どんなにカッコいいフレーズを弾いても、それがカッコよく聴こえない。だから最近では、1テイク2テイクでわりと「いいじゃん」て言えるテイクが録れるようになってきました。
直枝:自分たちで言うのもどうだかわかんないけど、オレと大田はリズム感いいんですよ、やけに(笑)。これは俺達の世代独特かな、セッションで育ってるっていう。自信があるんだよね、カーネーションのリズムのよさって。それはメロディーにも繋がるし。ノリがあってのリズム感。ただ縦にあってれば良いってもんじゃない。ロックはロックなりに欲しいリズム感てのがある。
--そこに中原さんもスッとのれる感じになった?
直枝:そうですね。まあ、彼女のほうも慣れて来てくれたんだと思う。やっぱりそのバンドそのバンド、そのミュージシャンそれぞれで独特のノリ方があって。中原さんがデモテープに忠実にやると僕は「それはやめて」って言う。「そんな、なぞんなくていいよ」って。もっとフィーリングで変えていってって。それに、そのリズムに合うパーカッションも彼女がやってくれて、それがまたうまいんだ。いい味出すというか、相当に良くて。やっぱ歌心ある人ってのは素晴らしいですね。
--そうした気心の知れたミュージシャンとセッションをして、そこで作り上げたサウンドにカーネーションが最後の仕上げをしていくわけですね。
直枝:そうですね。やっぱり歌が最後に曲に命を吹きこむ。そこが一番重要なんですよね。予定調和ではないところ、それが音楽のマジックだと思う。ですから、ミュージシャンを呼んで、アレンジしながら作っていくってこともマジック。現場に来て、フィーリングでやってもらうなかで作っていくものだから。でも、そこにもうひと味、僕らはマジックを振りかける責任がある。その越えていかなきゃいけないハードルの高みっていうのは、すごいもので。単に音を鳴らして、単に思いついた言葉を歌えばいいってもんじゃない。それ以上のところに行かないと決着がつかないみたいなところが、どうしてもあるんですよね。
--今回のアルバムはかなり高みに登ったというか、すごく見晴らしの良いアルバムですよね。濃密だけどキレが良い。
直枝:いや、もう「やった!」って感じはありますよね。去年から1年、いろいろ経験してきて、その結果がこういうアルバムとして現れるのか、と思うと不思議な感じもしたし。言われるように、見晴らしがいい、とっても吹っ切れたような気持ちがありましたね。
--しかも、同時期に、コロムビア時代の7タイトルがデラックス・エディションで再発されるとか、どういった内容なんですか?
直枝:Disc-1はリマスターで、Disc-2にはデモ音源とかシングルB面曲とか、ライヴ音源とかが時間めいっぱい入ってます(笑)。リマスターとかスゴいよ。空間広がったし、音の良さは2倍! 例えば『ア・ビューティフル・デイ』は、当時プレスにDATマスターを使ったんですけど、今回、アナログ・マスターにしたんです。それがまた音がぶっとくて全然違う。
大田:いや、ビックリ。「こんな演奏してたの?」って思ったもん、ほんとに。かなり切り捨てられてたんだって(笑)。
--新作、再発と一挙にリリースされて、カーネーションの節目を感じさますが、最後に、2人組になって新たな出発を切った現在の気持ちを聞かせてください。
直枝:去年、25周年を祝うかわりに自分の会社立ち上げて、それが祭の始まりだったというか。で、ようやくここ1年かけてアルバムに辿り着いた。ものを作ることはキツイけれども、「ものを作れる」っていう幸福感を今回体験できて、ほんと有り難いと思ってますね。この喜びをもっと実感したい。カーネーションの幸せな時代というのをこれから作り上げなきゃ、と思ってます。
大田:最近、「2人がバンドの最低単位」という気持ちをちゃんと持てるようになったというか。そういう意味では、この先、バンドとしてやっていける。まあ、これからも、このバンドが落ち着くことなんてないだろうなって肝に銘じてます(笑)。特にこんなアルバムを作っちゃって。これはもう、俺たち進化し続けてるんでしょうね。
直枝:いいこと言うねえ(笑)!
< インタビュー/文:村尾泰郎 >



