昨今話題のUKフォーク・シーンの中で一際目立った個性的な才能を見せている若き女性シンガー・ソングライター、エミー・ザ・グレイト。ソングライティングと表現力は申し分なく、加えてルックスもよくスター性十分です。そんな彼女ですが、かわいいい顔をして、その実はちょっと生意気で毒舌の持ち主。物事の確信をピシャリと言い当てます。このインタビューでは、その特異なキャラクターが全開されており、魅力的なキャラクターが十分にうかがえると思います。
--あなたの音楽はデビュー・アルバムの『ファースト・ラヴ』はフォーク・アルバムですが、元々あなたはバンド願望があるわけで、例えばその主張をロックとして表現することも可能ですよね。デビュー・アルバム『ファースト・ラヴ』のジャケット写真もパンク的ですし。そのなかでフォークという形態にこだわっている理由はどこにありますか。
自分がフォークをやっているという気持ちはないのよね。ライヴではエレキ・ギターも弾いているし。ライヴとアルバムでは別物と考えているし。考えてみたら、そもそも私はフォークをやろうなんて気持ちはなかったのよ。たまたま周りの友達に、ヴァイオリン奏者やアコースティック・ギターを弾く人がいただけで、フォークがすごく好きだったということはなかったの。
--具体的に誰かアーティストの影響とかではなかったんですか。
昔好きだったレモンヘッズやニルヴァーナの『MTVアンプラグド』からの影響はあるかもしれないけど、それはアコースティックであってフォークではないし。振り返ってみると、イギリスに引っ越してきたとき、周りに流れていた音楽がカントリーだったのよね。だから自然に興味をもったのかもしれないわ。
--アルバムの中に「ディラン」という曲がありますが、これはボブ・ディランにインスパイアされたものなのですか。
私が学生時代のクラスメイトのことを歌っているのよ。ある男の子が私に向かって「女にはボブ・ディランのよさが分かるはずがない!」って偉そうに言っていたことを思い出して、そういう学生時代の男の子と女の子の他愛のないことを題材にしているの。確かにその子の言うように、あの頃の私は全然ボブ・ディランのよさが分からなかったわ。ザ・スミスのほうが好きだった。でも今はボブ・ディランのよさが分かるわ。彼の作品はどれもエキサイティング。それもスタンダードなフォークの名曲ではなくて、ロック的なボブ・ディランに魅力を感じるかな。ディランはロックなのよ。特に『デザイア』や『ブロンド・オン・ブロンド』や『ブロンド・オン・ザ・トラックス』といったアルバムは本当に大好きなアルバムだわ。
--その「女性にはディランは分からない」って、かなり問題発言ですよね(笑)。
でも彼はゲイだったのよ(笑)。
--あなたのヴォーカル力やソングライティング能力はすべてのジャンルに対応できるような感じで、いろんな可能性が見受けられます。このアルバムの日本盤にボーナス・トラックとして収められた「Edward is Deadword」にそれを感じます。他の曲とは作風が違うようですが。
これは昔に書いた曲なんだけど、このアルバムの雰囲気には似合わないと思って入れなかったの。アレンジも他の曲とは全然違うからEPとしてリリースしたのね。元々私の友達のために作った曲で、本当は歌詞の内容のように亡くなってはいなくて、今も生きているんだけど、あまりに美しい人だから、今のままのイメージでずっといてほしいと思って、死んだ人という設定にしたの。
--なるほど。この曲にこれからのあなたが感じられる気がします。
私にとって、ファースト・アルバムはすごく前にレコーディングした曲というイメージがあるのよね。レコーディングもこだわらないでやったし、経験がないまま作ってしまったの。それに、今の私がやりたい音楽とは少し違ってきている。だけど、この曲は最近レコーディングしたもので、メンバーがアイデアを持ち寄って、取捨選択した上でいろんな要素を入れているから、アルバムよりもちゃんと作っているのよ。今後の私の方向性が見えると思う。間違いないわ。
--あなたの歌詞を読むと歌いたい題材がたくさんあるようですね。
私はいつも写真を撮ったり、絵を描いたりしていて、本を読んでいい言葉を見つけたら必ずメモを取るようにしているの。誰かと会話をしていて、そのときは言えなかった言葉をあとでメモしたり……。それがある程度まとまったらスクラップブックに入れていく習慣があるのね。しかもそのスクラップブックはジャンル別になっていて、悲しいこととか楽しいことみたいに分かれているの。だから曲を書くときはそのスクラップブックから引き出していくわけなの。
--その多くの言葉を曲として3~4分でまとめるのは苦労しそうですよね。
それは大変な作業だわ。1曲の中にどれだけの物語を入れるかに悩むし、入れてしまったあとに、削っていく作業がまた大変なの。なるべく削らないようにしているんだけど。
--ファンの反応もダイレクトに来ますか。
私の曲は賛否両論あるのよ。普通1曲についての反応って同じだったりすると思うんだけど、私の場合、人によって全然違っていて、「いい曲」という声もあれば「最悪」という声もある。そこは面白いところだと思う。
--BPAのプロジェクトに参加した際、ノーマン・クックは、あなたの歌についてどう言っていましたか。
どうかしら? 気に入ってくれているといいけど。というのもノーマンから連絡が来たときはまたアルバムも出ていなかったから、このアルバムに対する反応は分からないの。あのときのレコーディングはたった1日だったから彼のことはよく分からないけど、いい人には間違いないと思う。だって、たった1日だけ一緒に過ごしただけだったのに、クック家の一員になった気がしたし。
--今イギリスでは、あなたを筆頭にフォークのムーブメントが広がっているようです。
盛り上がりといってもそれは去年までの話じゃないかな。もうイギリスのフォーク・シーンなんて終わっている話よ。だから、ここで紹介されている友達のミュージシャンたちは次のアルバムではフォークをやらないと思う。たまたまフォークをやっただけであって、みんな別の音楽をやるんじゃないかしら。
--それはなぜですか。
よくわからないけど、もうみんなそういう時期は終わったと思っているんじゃないかな。ライヴやレコーディングの経験を積んで、凝った音楽ができるようになっているから、新しいことをやってみたくなっているの。
--でも元々イギリスには、トラディショナル・フォークの歴史がありますよね。
元々フォーク・ソングはシーンやビジネスとは無縁の音楽なのよ。フォーク・ソングって、他の国やどの街にもあるもので、それを歌うシンガーたちはそれで大きなお金を稼ごうという気があるわけではない。ただ物語を伝えていくために歌っていたと思うの。人から人へ、あるいは街から街へ…。それがいつしかブルースになり、ロックンロールになっていたんじゃないかな。今のヒップホップだって最初はそういうところから始まっているでしょ? ロックやヒップホップはレコードになって、シーンになって大きなビジネスになるけど、フォークはそういうものではないんじゃないかと思っているのよ。
<インタビュー・文 / 竹部吉晃>




