ロックンロールの衝動を常にバーストさせながら、聴き手の魂を容赦なく揺さぶってくる恐るべき十代×4、黒猫チェルシー。そのサウンドはガレージーでクレイジーでありながらも、同世代からオジサマまでをも元気にさせる滋養を持ったものであり、詞世界は一見どうしようもなくデタラメなようでいて、十代ならではの純情かつデリケートな感情を忍ばせた、ユーモア・センス(=ロックンロール・バンドにとっていちばん大事なもの)に富んだもの。そんな彼らが、 2009年のロック・シーンをざわつかせたファースト・ミニ・アルバム『黒猫チェルシー』から8か月ぶりとなるセカンド作『All de Fashion』を完成。メンバーを代表して、リーダーの澤竜次(ギター)と岡本啓佑(ドラムス)がインタヴューに応えてくれた。
--MUSICSHELFでは初めましてということで、バンド結成当時の頃からお話を伺おうかと思うんですが。
澤:高校一年の時に、僕が「パンク・バンドやりたいね」って持ちかけたのが最初で。それまでドラムの(岡本)啓ちゃんといっしょに3ピース・バンドをやってたんですけど、パンク・バンドをやるんだったら渡辺(大知)を誘おうかって。渡辺とは僕も啓ちゃんも高校のクラスがいっしょだったんで、まあ、それまでにもいろいろ音楽の話をすることはあって。渡辺がやってたバンドのライヴを観に行ったことがあったんですけど、その時の印象がすごく良かったんで、誘おうかなと思ったんですよね。で、ベースは幼なじみのがっちゃん(宮田)を誘って……っていうのが結成の経緯です。
--澤クンと岡本クンがやってた3ピースっていうのはどんなバンドだったんですか?
澤:ジミ・ヘンドリクスとかクリームのコピーとか、オリジナルでもブルージーな感じのものとか、15分ぐらいひたすらギターソロを弾きまくる曲とか、そんなことをやってましたね。やってて行き詰まったんで(笑)、もっと単純なことしたいなあってことでパンク・バンドっていう。
--なにを入口にそういった音楽に?
澤:なんかこう、自然な感じですね。最初はビートルズとかストーンズを聴いてて、そのうちハードロックとか聴くようになってきて……小学生の時にも5人組のバンドをやってたことがあったんですけど、その時もベースのがっちゃんと啓ちゃんもいっしょで、ビートルズとかのコピーをやってたんですね。その後、がっちゃんを含めた3人が辞めて、新しいベースが入って3人編成になったんですけど、3人編成でかっこいいバンドってどんなんがいるんやろ?って考えたらジミヘンとかクリーム。名前だけは知ってたから、じゃあそれをやってみようかってコピーしはじめた感じなんですよね。
--澤クンは音楽好きの家庭で育ったとか?
澤:父親がギターを弾いてたんで、小さい時からギターを見てて、ひとりで弾いてみたりするようになって。あとは家族でドライヴに行くと、車のなかでビートルズが流れてたりとか、そういう環境でしたね。
--息子がビートルズ聴き始めた時は、お父さんもうれしかったろうね。
澤:たぶん。結果的に僕のほうが聴き込んでると思いますけど(笑)。
--黒猫チェルシーの音楽の方向性は、澤くんがある程度決めている?
澤:そういう時もありましたけど、皆で話ながら決めてます。昔は僕の趣味が変わるたびにバンドの音楽性もどんどん変わっていって、一時期ヘヴィメタルにハマッた時期は、本気で「やろうかな?」って思ったこともありました(笑)。いろいろ聴きながら、あっち行ったりこっち行ったりしてましたね。
--で、ファーストで聴けるようなガレージ・スタイルに定まっていくわけですけど、今回のセカンドでもすでに変化の兆しを見せてますよね。
澤:パンク・バンドをやるっていうことで、最初は普通に短い曲ばっか作ってたんですけど、そのうちだんだんとギター・ソロ弾きたいなあとか(笑)、もうちょっと遅めの曲やりたいなあとか、そんなんで徐々に変わっていって。で、今回のアルバムは、東京に出てきてから作った曲がほとんどなんですけど、こっち来てからもいろんな音楽を聴いたりしていいなあって思ったものとか、こういうのやってみたいなあっていうのがさらに出てきたりしたんで、それがかたちになった感じですね。ファーストの時は、アイディアが出てきてらバーッと弾いて、弾き終わったらとりあえずそれで完成、みたいな感じでしたから。
岡本:ファーストは結成からの記録というつもりで作ったので、そんな凝ったアレンジもとくにしなかったんですよね。
--ファーストよりはかなり手の込んだ作業になった?
澤:前よりは制作らしく(笑)。前はみんな神戸に住んでて、学校にも通ってたし、土日しか東京に来れなくて、みんなで集まってゆっくりと考えたり、じっくり話し合ってみたいなことができなかったんですよ。まあ、ファーストの時はそういうものが必要なかったっていうのもあるんですけど、セカンドではみんな東京に出てきてて、こっちで作ったんで、僕の家に集まってアイディアを出し合ったり、話し合える時間もあったし、音もどんな感じがいいかなっていう明確なヴィジョンもファーストの時よりも断然あったし。
--今回は、より音が歪んでいる……というか、バーストしていますよね。ヘッドフォンで聴いていて脳ミソが揺さぶられました。
澤:今回は、ブァーッと思いっきり演奏して、空気が震えて――そういったモノがCDでも伝わるっていうものにしたくて。ファーストの時はひとつひとつ丁寧に音を録ってっていう感じで、それはそれでよかったんですけど、今回は違う雰囲気で、ギター録りの時とかもアンプの目の前で弾くとかしたのんで、空気の震えてる感じが出てるんじゃないかなと思います。ライヴはライヴで気持ちいい音を出して、CDでは自分で聴いてて気持ちいいものを出したいなってのがあったから、それぞれ、ドラムならドラム、ベースはベース、歌は歌で、自分が好きな音、聴いてて気持ちいい音を録りたいなあって感じだったんですよ。
--曲の作り方とかレコーディングの現場ってどんな感じなんですか?
澤:曲作りは、渡辺がひとりで全部作る曲があったりもするんですけど、たとえば僕が作る場合だったら、デモがある程度できたら楽器隊だけでスタジオに入って合わせて、それを渡辺に聴かせて、歌詞は任せるみたいな。あとはスタジオで思いついたリフからみんなで展開させていって、それをまず録っておいて、あとからみんなで聴いて詰めていく感じとか。
--とくに変わったことはしていない?
澤:至って地味ですね(笑)。
--テイクは重ねるほう?
澤:曲によって違いますね。
岡本:何回も録っても、結局はだいたい最初のテイクが良かったとかになるかな。
澤:歌とかはとくにそうですね。僕の場合、何回も弾いてくうちにテンションが上がっていく、っていうのはありますけど、やっぱ歌は最初に無心で歌ったものがいいんですよね。
--出来としてはかなり満足のいった感じですか?
澤:そうですね。ファーストを作ってる時から考えていたことが、すごくイメージどおりにできたんで、自分たちの自信にもなりましたし、達成感もありますね。今、次の作品に向けて、みんないろんな音楽を聴いたりしてて、それもイイ感じに繋がるかなあと。とにかく、音を出していて自分たちが気持ちいいと思えるものならば、どんなものでも取り込んでいきたいと思ってるんで。
--ちなみに、最近ぐっときた音楽って?
澤:最近はもう、モット・ザ・フープルとかスレイドとかスウィートとかエンジェルとか、そのへんばっかり聴いてて。あと、ベイ・シティ・ローラーズのベストが家にあって、それを聴き直したらあらためてすごいなあって。ああいう、すごくキャッチーなパワー・ポップとか、ニューウェイヴ系のパンクも最近聴いてますね。リチャード・ヘルのヘナヘナ感とかすごく好きです。
岡本:僕はベック・ボガート&アピスをよく聴いてて、むかし聴いててその時もかっこいいと思ったんですけど、ひさしぶりに聴いたらとんでもないなあと思って。
--あいかわらずひと筋縄じゃいかないリスナーぶりですね(笑)。だいたい高校の時とか、友達4人しかいなかったんじゃ?(笑)。
澤:自然にしてたらそうなるんで、まわりに「こんなんええで」って好きな音楽を広めて、和を少しずつ大きくしていって。でも、結果的にそんなにおっきい和にならなかったですね(笑)。
--でも、今は黒猫チェルシーのライヴを観たがってる人が急増中じゃないですか!
澤:いやあ、まあでも、まだまだ……ですね(照笑)。でもまあ、自分らの曲を知ってくれてはるっていうのは、すごくうれしいです。
<インタビュー・文 / 久保田泰平>



