クラブジャズというジャンルが音楽シーンに浸透して久しい。そのカテゴライズが適切だとするならば、quasimode(クオシモード)は、間違いなくその最前列にポジションを取っている。しかし、それでいながら、彼らにはその枠からはみ出さんばかりの勢いがある。新作『daybreak』は、名門ブルーノートへの本格移籍第一弾。ダンサブルで躍動感あるグルーヴと、メロディアスで華麗な旋律が前作からさらに進化。加えて海外の若手ジャズミュージシャンとのコラボレーションも結実し、世界と対等に渡り歩ける実力をも見せつけている。
--最新作は、ブルーノートへの移籍後、初のアルバムとなります。それ以前にも、ブルーノート70周年記念として今年の始めにカヴァーアルバムをリリースされています。やはり、この名門レーベルに対する思い入れは強いですか?
松岡:そうですね。前回のアルバムだけでも、結構、夢が叶ってしまったという気持ちです(笑)。それに加えてオリジナルも作れる、と。これまでオリジナル楽曲を中心としたアルバムは3枚リリースしたのですが、その3枚目を出したあたりからクラブに来ないような人が聴いてくれるようになったと実感しました。そこで、今回のアルバムではさらに新しい取り組みをしたいと思い、かなり意気込んで作りましたね。
--新しい取り組みとは、例えばどんなところでしょう?
松岡:quasimodeを聴いて他のジャズも聴くようになった、と言ってくれる人が多いんです。そこで、コンセプトとして、ジャズを聴いてこなかった人にも、ジャズをもっと知るための入り口でありたいと思いました。だから、これまでのスタンスよりも少し広げて、より多くの人たちに楽しんでもらえるようにしたつもりです。
--確かにそれは僕も今回のアルバムで感じたところです。以前のアルバムだとジャズのスピリチュアルな部分がテーマでしたよね。しかし、今回は、そのテイストも感じさせながら、多くのリスナーにアピールできる、良い意味での聴きやすさに溢れた作品だと思います。そして、ゲストの方たちも豪華ですね。
平戸:そうですね。海外からゲスト3人に入っていただきました。これまでは、カーメン・ランディやドワイト・トリブルといった大御所の方々に参加していただいたのですが、今回は僕らと同世代のミュージシャンたちばかりです。というのも、さっき松岡が言ったように、もっと一般の人たちに聴いて欲しい、しかも、ジャズというものをもっと若い人たちに知って欲しいという想いがあったからです。彼らも常々活動しながら、ジャズはマニアックなものではなく、ジャズは楽しくて素晴らしい音楽だということをきっと感じていると思うんです。そうした同じ立ち位置や価値観を持つ人たちとコラボできたことは、とても有意義でした。
--若手ミュージシャンの価値観が世界的に共通しているのは面白いことですね。それが、ロックでもなくポップスでもなくジャズであることもです。それは前回のこのコーナーに登場してもらった、SOIL&"PIMP"SESSIONSでも感じたことです。参加アーティストでは、ウーター・ヘメルの参加がまず目を引きます。彼の参加はメンバーからの要請ですか?
平戸:ウーターに関しては、僕らも参加させていただいたNorth Sea Jazz Festivalで同じ舞台に立ったときから、プロデューサーの小松さんがチェックしていたシンガー・ソングライターです。その後、東京Jazzにも出演されたので、そのタイミングでお会いして話す機会を得ました。
--そんなウーターをフィーチャーした「Happy Few」は、アレンジも面白く、ウーターのヴォーカルものびのびしていますね。それをquasimodeの演奏がしっかり下支えしているのも感じます。
平戸:ウーターの歌い回しやスタイルをメンバー全員が理解し、その上で曲を作りアレンジしていきました。彼からは「僕が歌いたいキーや曲調を理解してくれている」と言ってくれました。お互いがリスペクトし合える関係が作れたと思います。
--女性ジャズヴォーカルのベテラン、ディー・ディー・ブリッジウォーターの娘で、同じくヴォーカリストのチャイナ・モーゼスも参加されていますね。
平戸:彼女はフランスのブルーノートのアーティストなので、僕らとはレーベルメイトという関係にあります。このレーベルの70周年のイヴェントが日本であったのですが、そこでご一緒させていただきました。また、僕と今泉は、彼女がブルートート東京でライヴを行ったときにセッションさせていただいたという経緯もあります。東京JAZZでも一緒でした。このようにイヴェントごとに関わる機会が多いですね。彼女のチャーミングな歌声が素晴らしいと思っています。
--そして彼女が参加した曲は「Afro Blue」ですね。
平戸:彼女のお母さんが歌ったヴァージョンが有名です。そこで、この2つを聴き比べてもらうのも面白いと思います。チャイナの歌の後に、ディー・ディーのヴァージョンを聴いてもらえば、ジャズの奥深さがわかってもらえるのではないでしょうか。
--そのディー・ディーの「Afro Blue」といえば、1974年に日本で製作されたものですよね。坊主頭のディー・ディーの写真を使った印象的なジャケットで。日本のミュージシャンも参加しているアルバムです。
松岡:ディー・ディーの「Afro Blue」はクラブクラシック。ですから、チャイナに歌ってもらうとしたらやはりこの曲かな、と。
--チャイナ側の反応はどうだったんですか?
松岡:ディー・ディーの代表的な一曲なので、プレッシャーを感じるかと思っていました。また、この曲を録音するのは恐らく初めてだったと思いますが「さっき、お母さんに連絡してきたわ」と楽しそうでした。
--もうひとりのゲストは、ハイ・ファイヴ・クインテットでの活躍で知られるとランンペッター、ファブリッツィオ・ボッソです。
平戸:昨年、銀座ジャズインターナショナルというイヴェントのアフターパーティーで彼の演奏を聴く機会がありました。そこでの素晴らしいプレイが印象に残っていました。そこで新作のレコーディングにあたりオファーしたら、1曲吹いてくれたんです。現在、世界で3本の指に入る実力を持つトランぺッターだと思います。
--さて、今回からドラマーに今泉さんが正式加入されています。以前からquasimodeとは親交があったそうですが、メンバーとなって思うところを聞かせてください。
今泉:quasimodeのことはリスペクトしていましたから、メンバーが築いて来たことは損なうことなく、少しでも力になれればと思っています。
--リズムのパターンやフィルなど、かなりカラフルな感じがしました。
今泉:ありがとうございます。元々、ヒップホップをはじめとしていろんなジャンルの音楽が好きで、特にジャズに固執しているわけでもありません。その中から、バンドのサウンドに合う形を模索した結果だと思います。それと、matzz(松岡)さんもドラムが叩けるので、アドバイスをもらったことも大きいですね。
--そもそもquasimodeと今泉さんが知り合ったきっかけは?
松岡:他のミュージシャンからの紹介です。ドラマーに求めていたのは、ジャズだけではなく、さまざまな音楽に対応できることでした。彼の場合はジャズも上手いし、本人が聴いたことのないような音楽でも理解してくれて、吸収してくれること。なおかつオカズ(フィル)に良いものを出してくれるから、リズムのコンビネーションが深くなったと思います。
須長:ベーシストとして、その柔軟なリズムにとのように混ざるかということを考えながら、また話し合いながらレコーディングしましたね。
--新作に収められたオリジナル曲は、そんな須長さんと今泉さんで作られた曲と平戸さんと松岡さんで作られた曲に分かれますね。
平戸:これまでは僕と松岡で曲作りをしていました。それがquasimodeのサウンドの核となっていると思います。今回は、それに加えてジャズはもっと柔軟で楽しい音楽なんだ、と伝えたかったことと、ジャズの間口を広がたかったんです。そこで、須長はポップス系のアーティストとの共演も多いし、今泉はヒップホップがベースとしてあるので、曲作りをしてもらいました。彼らのそうした部分とこれまでのサウンドが融合することで新しい何かが生まれることを期待しました。
--そしてリードトラックはダンスクラシックのカヴァー「Relight My Fire」です。この選曲には驚きました。
平戸:これは小松プロデューサーの発案です。提案されたときは正直驚きましたが、ジャズをベースにしつつも、どんな楽曲でもカヴァーすれば自分たちの色に染め上げられるという自信があります。ダンスクラシックという素材を通して、僕らの音楽を聴いてもらえる方が増えるのは嬉しいことです。
松岡:これまではジャズというジャンルの中の曲をカヴァーしていました。しかし、今回この曲に取り組んでみて、ジャズを聴いていない人に対してもアピールできるものになったと思います。
--これからツアーが控えていますね。
平戸:12月9日には渋谷のJzBratでキックオフパーティーを開催します。前回のツアーで回ったところには全て行きたいですね。そこで「帰って来たぞ」と応援してくれているファンの人たちに言いたいですし、新しい土地にももっと行きたいです。
--ブルーノートに完全移籍し、世界のアーティストとも平等に渡り合って、さらに進化したquasimodeにライヴ会場で出逢えることを楽しみにしています。
<インタビュー・文 / 中林直樹>




