GOING UNDER GROUNDのヴォーカル/ギターにしてフロントマン、松本素生がソロ・プロジェクト〈SxOxU〉を発動。11月のシングル「Funny Sunny Day」に続いてミニ・アルバム『SxOxU』をリリースする。プロデューサーに指名したヒダカトオル(BEAT CRUSADERS)とともに作り上げたサウンドは、ディストーショナルなギター・サウンドとグッド・メロディーがチャームだった90'sオルタナ・ギター・ポップ(ピクシーズ、マシュー・スウィート、スーパーチャンク、ティーンエイジ・ファンクラブなどなど)を彷彿とさせるもの。自身が聴き親しんできた音楽を、楽しく、ノリよく体現した、ソロ・ワークスならではの醍醐味に溢れた作品なのである!
--作品の背景にある90年代オルタナ系ギター・ポップを聴き親しんだ世代としては無性に愛おしくなるアルバムですね。ホント、いいアルバムです!
ありがとうございます。いいアルバムでびっくりしてます、自分でも(笑)。年上の方からは思わぬ反応をもらいますしね。以前撮ってもらったことのあるPVの監督、30代後半ぐらいなんですけど、その人から突然「最高じゃないか!」ってメールが届くみたいな(笑)。
--20代の反応は?
20代の反応はまだこれから……でも、SxOxUの音楽は、食べものに例えるとハンバーグじゃないんですよね。もつ焼……ですかね(笑)。20代の頃って、もつ焼の本当の美味さをわかって食べてなかったと思うんですよ。最初は抵抗あるんだけど、だんだん大好きになってくみたいな。でもまあ、メロディーがいいんで20代にもちゃんと届いてくれると思いますけどね。
--ではでは、SxOxUをやることになったきっかけを伺いましょうか。
ソロをやろうっていうのは前々から、それこそ1年から2年弱ぐらい前から考えてて、タイミングあったらやろうかって話だったんですよ。で、4月にメンバー(キーボードの伊藤洋一)が脱退して、それもいきなり決まったものだから、あとの予定がぽっかり空いちゃって。
--伊藤さんが脱けたのは大きい出来事だと思うんですけど、GOING UNDER GROUNDのこれからを考えなきゃ、という発想にはならなかった?
たしかに、GOINGのほうもどうにかしないとっていう時期だったかと思うんだけど、ここで考えてもたぶんいいことないなあって思ったし、思い詰めてもいい結果にならないと思ったから、だったらちょっと別のこと、このタイミングでソロをやろうかって思ったんですよ。
--伊藤さんもそうですし、ご結婚された河野(丈洋)さんもそうですし、今年に入ってメンバーが人生を劇的に変化させていってることも、なにかソロへの後押しになったのかと推測するんですよ。ここいらでひとつ、オレも尻出さなきゃな、みたいな(笑)。
それ、正解ですね、お尻出したかったっていうのは(笑)。で、バンドのフロントマンがソロをやるっていうのも、さもすれば後ろ向きなイメージに捉えられるじゃないですか。こんな曲だったらバンドでやればいいんじゃないの?とか。そういうのもあって、GOINGとは真逆のことをやろうって思ったんですよね。自分のなかにあるものを活かして、がんばらないでやれるもの。楽しくて、ノリ一発でやりたいっていうのが、ソロをやるいちばんの理由ですよね。なんかその、誰々に向けてとか、そんなの実際にはよくわかんないじゃないですか。音楽を始めた時のような、ただ「やりたいんだもん!」っていうそれだけでやりたかったんですよね。で、そうやってやるんなら、仲間がいたほうがいいなあって思ってバンドにしたし、その最たるところで、ヒダカさんとだったら楽しく遊べるんじゃないかなあって。
--なるほどぉ。ヒダカさんとは最初にどんな感じでやりとりしてたんですか?
いっしょにお茶飲みながらアイディアを出してった感じですね。「そういえば、90年代に流行ったオルタナ・バンド、ギター・ポップ・バンドみたいなのがいきなりいなくなりましたねえ」とか、「自分たちが下北沢とかでライヴやってた頃、98、9年頃に鳴ってた音楽って、いまあんま鳴ってないですよねえ」「ああいうのいいよねえ」みたいなところで、「じゃあ、今ああいうの誰もやってないし、おもしろいし、オレらもそのへんの音楽で育って来たし、ブームが一周して誰もとやかく言うヤツはいないだろし……」ってなって。なんちゃって感というか、最初は遊び感覚だったんですよね。で、まずは外側から決めていって。英詞で、いろんな単語が飛び交って、ダイナソーJr.とかスーパーチャンクとかブリーダーズとかピクシーズみたいにメンバーのなかに女の子がいるっていう。それじゃあ、かっこいいギター弾く女の子といったら田渕さん(田渕ひさ子。bloodthirsty butchers、toddle、元ナンバーガール)だなってお誘いしたんですよ。こういうことやるんだけど、どうですか?みたいな感じで。わかりやすく言うと、「失敗するか成功するかわかんないけど、とにかく楽しいパーティーになると思うから遊びに来てよ」って、遊びに来た人たちが作ったアルバムなんですよね。で、やってみたらめっちゃ楽しかった。「またやろうね」みたいな感じですよね。
--田渕さんを誘ったことで、吉村さん(吉村秀樹。bloodthirsty butchersのフロントマン)というボーナスまで付きましたね!
いやホントにねえ、口の中がパサパサになりましたよ、緊張して(笑)。ずっと聴いてますからね、ブッチャーズの音楽は。で、今回やった「VOID」っていう曲は、吉村さんがいなかったら出来なかった曲なんですね。レコーディング中、何回かスタジオに遊びに来てくれたんですけど、ある日、缶チューハイを持ってふらっと現れて(笑)。で、たまたまヒダカさんとハードコアの話をしてたら、「オレがハードコア教えてやる!」っていう話になって、急にその、ブースに行かされてレクチャーが始まったんですよ。まず左足が前、ハードコアは立ち方からだって(笑)。で、誰も逆らえないから、レクチャーされるがままやってたら一曲出来たっていう(笑)。
--吉村さんも演奏を?
「VOID」では弾いてないですけど、「Remember」っていう曲では弾いていただいて。それも、もうそろそろ完成だっていう時にプレイバックして聴いてたら、横で吉村さんが曲に合わせてアコギを爪弾いてて、それがめっちゃよかったんですよ。そしたら吉村さんが、「ちょっと弾いてやろうか」って言ってくれて。うれしかったですねえ。
--曲のことでいえば、1曲目の「Don't want to be alone」が耳に飛び込んできた瞬間、「うわっ! ナンバーガールだ!」って思いながらちょっと震えました。
僕も思いましたよ。それこそナンバーガールは、チケット買ってライヴ行って、最前で観てたりしてたぐらい好きだったんで、「やべえ、あのギターが鳴ってるぞぉ!」みたいな。でまあ、即席のバンドっちゃ即席のバンドなんで、どうなるかわかんないっていうのはあったんですけど、でもその、みずえちゃん(つしまみれ)のドラムも好きだし、田渕さんのギターもいいし、そういう人たちの演奏が合わさって、曲がこれだったら悪いわけないんじゃないか?ってところがあって、プリプロとかも一切してないんですよね。そこはイマっぽくデータのやりとり……っていっても、僕が弾き語りで歌った曲を送って、コードをとってもらって、ってだけなんですけど。で、それを現場で爆発させるっていう作業の繰り返しだったんですけど、やっぱ音楽って、やってみてそんな難しいもんじゃないなっていうか、やっぱその、やりたいからやるっていう動機は間違ってなかったなと思って。
--誰に届けるか、お客さんをどう楽しませるかを考える以前に、まず自分たちが楽しがって演奏するっていうことですよね。でもまあ、ホント、とにかく曲がいいからなあ、SxOxUは。
言ってくれましたねえ。それ、自分でもそう思いました(笑)。曲がいいからなあっていう、そこはね、僕とヒダカさんのなかで絶対だったんですよ。そこがちゃんとしていれば、どれだけふざけてもいいっていうのは最初に話してて。ヒダカさんには結構ボツくらいましたからね。この曲よくないな、致命的だとかって(笑)。
--BEAT CRUSADERSも、ああいうルックスとMCをしておきながらイロモノにならないのは、曲がいいからですもんね。
そうなんですよ。僕もそこが好きなところなんですよね、ビークルの。ヒダカさんをプロデューサーに選んだのも、まさにそれですからね。で、実際に話してみると、年は10コぐらい違うんですけど、聴いてきた音楽もほとんどいっしょだったりとか、どこにキュンとくるかっていうポイントもいっしょだったりして……そうですね、僕ひとりだったらできなかったな、今回のやつは。
--今回、英詞にしたのも、メロディー自体にスポットが当たる役割をおおいに果たしているんじゃないかと思うんですよ。なまじ言葉がわかってしまうと、その世界観によって聴く人を選ぶことにもなるし。
ふるいにかけられるみたいなのがありますもんね。僕もそう思ってて、良くも悪くも言葉に引っぱられる瞬間が、いままでやっててあったし、そこはSxOxUをやるうえでちょっとウザいなみたいなところだったんですよね。音楽って、歌詞がいいこと言ってるから感動するっていうことでもないじゃないですか。だから今回、歌詞に関してはメッセージというものはまったくないんですよね。最近はとくに歌詞で曲を聴く人が多いじゃないですか。いいこと言ってるなあ、みたいな。そこへのアンチもありつつ、自分のバンドでやってきたことも否定はしないけど、それだけじゃないぜっていうのがメッセージかな。伝えたいことはそういうものだったりしますね。25ぐらいの時に、がんばって良いこと言おうと思って歌詞書いてて、レコーディングの歌入れまで粘ってたら、エンジニアの人が「いいんだよリズムに乗ってれば」って軽く言われて。その時は、リズムに乗っていれば言葉なんかどうでもいいんだよっていう意味にとっちゃったんですけど、そうじゃなくて、こんなにいいメロディーがあるんだから歌詞で100%伝えなくてもいいんじゃないのっていう、そういうことが最近わかりましたね。
--キャリア的に、これからはより信念を持ってやっていかなくちゃいけないと思うんですけど、そういう意味では、今回のようなソロ・ワークスはすごく必要だったものだと思うんです。
まさにそうですね。音楽なんておもしろくないですっていうふうにはなりたくないし、十代の時に「自分は音楽で生きてくんだ」って思った時の気持ちをずっと持ち続けるにはどうしたらいいのかなあって考えたら、「好きなことをやろう!」っていうところですよね。僕より年上のバンド、ビークルもそうだし、the pillowsとかザ・コレクターズとか、僕が好きな人たちみんな、楽しそうに本気でやってるなあって思うんですよ。そこはやっぱ越えたいとも思うし、あの人たちがあんな楽しくやってるんだったら、オレももっとやりたい!みたいな、そういうふうに思いますね。
< インタビュー・文 / 久保田泰平 >
--アナログレコードからCD、そして配信、更に最近ではメモリーカードなど時代と共にメディアが進化し続け、それによってリスニングスタイルも大きく変化を続けている。 リスナー側でもメディアに対する様々な意見が飛び交う中、肝心の作り手であるアーティストはこの流れをどのように受け止めているのだろうか。今回は松本素生に尋ねてみた。
CDが売れない時代になって大変だなと思います。
でも、「(時代の流れ)だよねぇ。」って感じます。「だよねぇ。」と思う部分もあるし
ある意味、CDが売れる売れないという事はどっちでも良いという感じもある。
だって今までだって買う人は買ってくれるし、買わない人は買わないし。
(リスナーとして)僕もiTunes Music Storeで買いますよ。廃盤がないから、どうしてもすぐ聴きたかったら、CDの中古盤を探して5千円近く費やして買う事を考えると、iTunesで買っちゃいますよ。音を届ける側としては、僕は聴いてくれるんだったら手段は問わずで、どっちでもいいし、CDが売れない時代って言いますけど、例えば「ライブ会場限定で(自分が好きなアーティストの)CD-Rが売ってるらしいぜ」って情報を聞いたら、買っちゃうし、それが欲しいからライブにも来てくれますよね。CDだけじゃなくてライブも全部ひっくるめて、自分たちを観に来てくれるんだったら(媒体は)形を選んでいる場合じゃないですよね。だってどんな形であれ聴いてくれるのに、その手段をこっちから押し付けちゃうんだから。音楽でメシを食っている立場として、もしかしたら矛盾しているかもしれないんだけど、自分もそういう風にするし、手軽だから聴きたい曲だけダウンロードすることだってあるし。
むしろそれを買ってもらうための仕掛けとかアイデアを出していく事が俺たちの役目じゃないかなって。とか偉そうに言っちゃいましたが(笑)。そう思いますね。



