昨年2009年1月にアルバム『ふりぃ』でデビューした女性シンガー・ソングライター、阿部真央が2010年代早々に待望のセカンド・アルバムをリリース。前作で見せた10代の青い衝動は表現に深みを増し、疾走感あふれるロック・ナンバーからキュートなアレンジのエレクトロ・ポップ、さらには弾き語りからしっとり聞かせるバラードまで、楽曲ボーカルスタイルともにバラエティに富んだ内容の1枚になった。様々な表情を見せるも、核となる骨太なところは変わらず、芯はブレてはいない。新しい世代の表現者、阿部真央の今、10代最後の告白を聞いた。
--まず、アルバムを作り終えての感想からお聞かせください。前作からの成長と、幅広い音楽性、豊かな表現力が感じられるアルバムになっていますね。
自信をもって「これが阿部真央です」といえる作品が作れたと思いますね。ベストは尽くせたと思います。前作の『ふりぃ』を出したとき、いろんなインタビューを受けて答えるなかで、自分の作品なのに、どこか自信がもてなくて、後ろめたい気持ちがあったんです。だから今回のシングルとアルバムはもっと自分の意見を、より自分のイメージに近いものにしていこうと思って、より自分の意見が反映された作品になったんです。だから、このアルバムは自分で自信作だと言えるし、他人から何を言われても気にしないくらい、吹っ切れた感じはありますね。
--曲順を見ても1曲目にシングルをもってくるわけでもなく、すごくトータルで作られている気がしました。
今回のアルバムは高校生のときに作った曲がほとんどで、アレンジのイメージも作ったときにある程度頭の中で出来ていたんです。それを具体的にスタッフさんに伝えて、自分のイメージに近づけていけました。
--アレンジも前作以上に、バリエーションに富んでいますよね。様々なチャレンジをしている感じがします。
いろんなことに挑戦しているのではなく、単に私の頭の中のイメージの音にしただけなんですよね。例えば、この曲はもっと低い音が欲しいというような…。このアルバムを出したということに関しては、挑戦なのかもしれません(笑)。
--1曲目の「未だ」はライブ感たっぷりで、アルバムのスタートにぴったりですね。この1年のライブ経験が活かされたものなのでしょうか。
この曲は高校3年のときに作って、デビュー直後にレコーディングしたんです。作ったときからライブ感たっぷりのストレートなアレンジがイメージの中にあったので、できるだけシンプルな曲にしたかったというのはありますね。ここ1年間のライブの経験がこの曲に活かされたというよりも、自分のイメージを具体的に伝えたから、こういう曲になったということだと思っています。
--先ほど、トータルで作られていると言いましたが、アルバムでデビューをした阿部真央さんにとって、アルバムは特別な意味をもつものですよね。改めて、阿部真央さんにとって、アルバムはどういう位置づけのものですか。
私は自分の感情や内面を表現するために音楽をやっていて、それにぴったりのものがアルバムなんです。私はたくさんの曲を、多くの人に聴いてもらいたい気持ちが強いから、アルバムを作るときは気合が入りますよね。アルバムでデビューしたかったのは、最初にシングルを出して、そのイメージが付いてしまうのは危険かなと思ったからなんです。自分にはせっかく多くの曲があるんだから、それを聴いてもらい興味をもってほしかったんです。
--このアルバムはほとんどの曲が高校生時代に作ったとのことですが、最近の創作に対する姿勢といいますか、意欲についてはいかがですか。
最近になって、ようやくそういうモードに戻ってきましたよね。この1年間は曲が全く書けなかったですから。忙しさにかまかけて怠けていたんですかね(笑)。あと、デビューしたことを意識しすぎていて、何を書いたらいいのか分からなくなっていたのもあります。売れる曲を書かなければならないのかな? とか、阿部真央のイメージはどういうものなのか、とか。バラードが続いたら次はアップテンポのものにしたほうがいいのか、とか。考えれば考えるほど、書けなくなってしまいました。
--そうだったんですね。ではなぜ、再び創作マインドが戻ってきたのでしょうか。
もう何を言われてもいいのかな、と思ったのが大きいですね。このアルバムにはピコピコしたエレクトロなサウンドにもアプローチもしているし、ライブでは踊ってみたし、とにかく自分の中でふっきれたところがあって、自分がやりたいことをやればいいのかと思ったんです。原点に戻ってやってみようかなと。私のファンの人は、私がああいうアルバムでデビューしたからというのもあるんですけど、私が今本当にやりたいこと、正しいと思ってやっていること、何をどう思っているのかを求めていると思うんです。そうじゃない人はアルバムを聴いた段階で離れているんじゃないかな。実際に、「阿部真央は何がやりたいんだ」みたいなことを言われたり、書かれたりもしましたし。そういうファンは残っていないと思うんです。そこはアルバム・デビューでよかったと思える点ですよね。最初にいろいろな面を見せているから、今いるファンの人は私が今何を求めているんだろう、ということを分かってくれているんです。それが今になって見えてきたんです。
--では、今のファンの方はありがたいですね。
ファンからもらう手紙やメッセージ、そしてライブのときの顔を見ても分かるんです。だから、この1年で私のライブ・パフォーマンスはすごく変わったと思います。阿部真央になる必要はなくて、そのままの自分を見せればファンが喜んでくれて、それが求められているなら私も気持ちが楽だし、楽しいんですよね。私は私自身を表現する一つの手段として歌っているわけで、それこそが理にかなっていると思います。
--話は変わりますが、真央さんの言葉の感覚はいつも斬新ですよね。「ふりぃ」に続いて「ポっぷ」というアルバムタイトル。これはどういうところから生まれてきたのですか。
いつも、普通じゃなくありたいというのがあるんです。だから歌詞に関しても伝わりやすいというのはいちばんに考えるんですけど、ありきたりの表現ではない。でもすんなり心に入ってくるというのがいいですね。
--そして、このアルバムを聞くと、真央さんは本当に言いたいことや伝えたいことがたくさんあるんだなというのが伝わってきます。いつもどのように歌詞を書いて、メロディを乗せていくのでしょうか。
ピンと来た言葉があったらそれをノートにメモしておくんです。そして、1行でも書いたら、そのページにはもう何も書かない。そこから思い浮かんだフレーズやメロディがあったら、それをつなげていくんです。例えば、このサビの言葉から連想される世界観の中で、そのときの気持ちを表現する言葉とそれに対となる言葉を作るみたいなことをやっているんです。私は文字数や音を合わせていく作業が好きみたいなんですね(笑)。
--歌詞には私的な表現も多いでよね。
曲はすべて実体験に基づいているんですが、私は本が好きなので、それが影響しているような気はします。作家さんでは唯川恵さんが好きですね。でも、それが全てではなくいろんな人と話す中からも感じることはあるし、いろんな紙に書かれた文章も参考になりますね。人に読まれるために印刷された文面の敬語は基本的に正しいものですよね。そういう文章を読んで正しい敬語の使い方を知ることもありますし。
--そして、歌詞の中には男性目線の曲もありますよね。僕や俺という一人称がありますし。
すべて私の感じていることを書いているんですよね。男の人にこう言われたいことを書いていたり、「もうひとつのMY BABY」は、私の男友達から、好きになった人に好きな人がいるという話を聞いて、「そういう気持ち、私もわかるな」と思って、作り始めたものなんです。だから男目線であっても、歌っているのは自分なので、それほど大きな違いはないんです。
--3曲目の「モンロー」についてはいかがですか。
これは、私が高校3年のときに書いた曲なんですが、高校のときに世界史をとっていて、そこでモンロー主義を習ったんです。でもモンローと聞いても、私はマリリン・モンローしか思い浮かばなかったんで、そこからイメージを膨らませて「私はモンローになりたい」という曲を書いたんです。私の中でモンローという言葉はキュートな響きをもっていて、官能的なイメージなんです。マリリン・モンローになれば、好きな人を振り向かせることができるんじゃないかと、歌っている曲なんです。
--「都合の良い女の唄」もリアルな曲で、ギターのストロークと真っ直ぐなボーカルに心を動かされます。特に、途中でマイクから離れて歌っている「戻れるなら」のところがいいですね。
曲を書いた時点で、この曲が求めているのはギターの弾き語りだと思ったので、そういうアレンジにしただけなんです。「戻れるなら」のところは感覚ですね。あそこの部分は最初、歌詞にはなかったんです。レコーディングをしながら「ここに戻れるなら」という歌詞を入れたら切ないんじゃないかということで、入れてみたんです。
--感動的ですね。そして、ラストの「サラリーマンの唄」。「真央さんサラリーマン経験あるの?」っていう感じですが。
新幹線に乗ったとき、隣にサラリーマンの上司と部下が座っていて、まさに歌の通りのことを話していたんです。言いたいことが言えないことは私にもあるし、サラリーマンだけではなく、こういう仕事をしている私も何かに縛られて仕事をしているわけで、そういうことを思ってこの曲を書いたんです。言いたいことを言えなくさせている世の中の流れも嫌だし。そういうことを思ってこの曲を書いたんです。書いたときに、みんなに共感してもらえるんじゃないかな、と思いましたね。
--「サラリーマンの唄」をラストにもってきた意味は?
「いつの日も」で終わることもできたんですけど、これが入ることで普通に終わらないからいいなと思ったんです。最後をライトに終われるし。私はそういうのが好きなんです。
--このアルバムは阿部真央さんのキャリアの中でこのアルバムはどういうものなる気がしますか?
何年か経ったあとに「あのときは正直だったね」と思えるくらい自分に正直に作った作品になったと思います。すごく好きな作品です。私は今後、頑張らなければと思うんです。別に自分に期待をしているわけでもないし、自信があるわけでもない。音楽を続けていくかどうかも分からないですし。でも今私が生きている10代の最後の19歳という年齢にこのアルバムを出すことが出来てよかったと思います。
--では、このアルバムを作り終えたばかりですが、阿部真央さんが思うこれからの展望はありますか。
今までよりももっと自分の意見を貫き通して活動していきたいと思いますね。こういうふうに見せたいとか、見えたいとか。私は音楽をやりたいと思っているわけではなくて、何かを表現をしたいんです。私はこれまで、それほど音楽を聴いてきたわけではないし、音楽が好きだといえるほどでもない。将来的には、他の表現者にトライしているかもしれない。自分にセンスがあるか分からないけど、トライしてみるのは短い人生の中でいいことだと思いますしね。でも、今私が認められるものは音楽だけなんです。私はただ自分を表現をしたいだけなんです。
<インタビュー・文 / 竹部吉晃>



