2009年のUNCHAINは2ndアルバム『Music is the key』のリリースを皮切りに、これまで以上に精力的なライブを全国各地で展開し、そこでつかんだ手ごたえや新たな発見を昨年秋にリリースしたシングル「Gravity」に詰め込んだ。その後も止まることなくライブを重ね、鍛え上げた彼らのライブパフォーマンスは正確さとアグレッシブさがガッチリとかみ合い、格段に成長を遂げた。 そして2010年、UNCHAINはニュー・シングル「The World Is Yours」のリリースでスタートを切る。同時に現在入手困難な彼らのインディーズ時代のアルバム2作品も新装リリースされ、更に3月には彼らの楽曲54曲を全部演奏するというイベントも控えている。これまで以上に精力的に活動を行うUNCHAINの次に向かう先は? 谷川正憲に訊いた。
--昨年のインタビューで 「ライブが大切で試行錯誤をしながらも、楽しんでやっていきたい。」 と語っていましたが、実際かなりの数のライブをこなして、手ごたえを感じる部分は多かったのではないでしょうか。オーディエンスの期待感が伝わってくるとか。
そうですね、段々とお客さんが増えていったというのもあるんですけど、感じますね。そういうお客さんの期待感や緊張感がこっちにも伝わってきますね。 あと昨年はじめて日本語の曲に挑戦して、日本語ってやっぱり聴きやすいんだろうなってお客さんの反応からも見て取れたんですけど、でも最終的にお客さんが求めているものって日本語とか英語とかそういう事じゃなくて、もっと楽しめるかどうか、ドキドキできるかどうかみたいな、そんなフィーリングの部分なのかなって。日本語の曲をやったから気付けた部分ですので、チャレンジしてよかったなって思いますね。
--そんな2009年を経て、今年第1弾としてリリースされる「The World Is Yours」ですが、前作「Gravity」に続いて日本語歌詞ですよね。これはバンドにとって自然な流れなのでしょうか。
日本語の曲をやってみて、あらためて日本語の面白さというのを実感できて、英語とはまた違った、1つの言葉でも色んな意味があって、色んな言い回しができて、なんぼでも出てくるし、作っていて面白いですね。これからも挑戦していきたいですね。
--2008年に初の日本語歌詞のシングルを3作連続でリリースした時と比べて、楽曲制作の上で意識的な変化はありましたか。
3部作を作ったときは、実際ライブで歌ったときに言葉が一語一句聞き取れて、歌詞の世界感だったり、物語をわかってもらえるように書かないといけないって、そういう気持ちがあったんですけど、やってみて、どんなにわかりやすい言葉を並べても、やっぱりライブで1回聴いただけで理解してもらうことは難しいですし、そこにこだわる事ではないと感じて、それよりも日本語の持つ気持ちの良いリズム感だったり表現の面白さで、もっとリズミックに歌っても良いんじゃないかなと思い、それで作ったのが前作の「Gravity」なんですね。そこでまた開けた感じがあって、これまでは、大げさに言うと、まずは僕らが楽しんでそれを観てくれたお客さんも楽しんでもらえればいいなというところがあったんですが、今はしっかりとしたメッセージを持って、それをお客さんに届けるというスタンスで考えています。
--なるほど。そして次にたどり着いた先が 「The World Is Yours」 ということですね。
「The World Is Yours」 は、昨年、大阪から東京に拠点を置いたときに、最初に京都の田舎から大阪に出てきたときのとんがっていてパンキッシュだった頃を思い出して、「オレの音楽で世界を変えてやる!」みたいな(笑)、そんな意気込みが昔すごくあったんですね。何も知らない土地に行って今までにないような音楽を作って自分の道を切り開いていこうと、そういう気持ちを強く持ってずっとやってきたから、ここまで来れたと信じていて、道なき道かもしれないけど、その先に必ず自分だけの世界というのがあると信じて、自分で切り開いていこうという、そういう曲ですね。
--キャリアを積んで、新天地(東京)に出てきたという事も、より自分を客観的に見つめられたのではないのでしょうか。
そうかもしれませんね。でも、まだまだです(笑)。
--疾走感のあるロックチューンですが、その一言では表せない位、様々なサウンドが詰め込まれていますよね。プログレ的な味付けも入っていたり。
サウンド的には前回のアルバム『Music is the key』のときは融合という意味では収録されている10曲とも様々なタイプの曲が集まってアルバムひとつで色んなサウンドが融合されているというコンセプトだったので、曲単位で言うとロックはよりロックの曲として、ソウルはよりソウルらしい曲としてストレートに作ったんですね。 ただ本来は1曲の中で様々なジャンルやサウンドを融合して、ロックにジャズやパンクやソウルを自分たちなりに加えてオリジナリティをつけていくというのが僕たちのやり方なので、そうしたこのバンドをスタートするきっかけ、つまり初期衝動に立ち返って作っていこうという意識で「Gravity」から作っています。「The World Is Yours」も今回いろんなサウンドを融合して、1曲の中にタイプの違った様々な世界観が同居する感じで仕上げています。
--「Higher」も気持ちの良いナンバーに仕上がっていますね。
「Higher」はダンスチューンという軸からブレない様に、プログレッシヴに味付けをしたりしています。やっぱりライブでその曲の輪郭がハッキリと伝えられるように、気持ちの良い部分をしっかり残すという事は大切にしていいます。
--3曲目の「strain」、5曲目の「Scene with you」は佐藤さんのナンバーということですが、これまでよりも谷川さんと佐藤さんの作品のカラーがハッキリと分かれてきたような気がするのですが。
そうですね。 佐藤くんの曲には僕が出せない部分があるんで、佐藤くんはルーツにJ-POPや歌謡曲が自然と根付いているんですよ。そういう文化がしっかりとベースにあるから「strain」はパンキッシュな曲ですけど、彼のルーツがしっかりと流れていますね。
--4曲目「TAKES ME BACK」。バンドをはじめるきっかけとなった、みなさんがリスペクトするREACHのカヴァーですよね。これまで洋楽カヴァーが多かった中で、なぜこのタイミングでREACHを取り上げようと思ったのですか。
「Gravity」の時にカヴァーしたクラッシュも僕らのルーツでもあるんですが、やっぱり今回初期衝動を思い出したという部分が大きくて、この前久々に聴いてみたら10年前と同じ位の衝撃を受けたんですね。「ほんま、こんなにすごかったけ?」って感じで。10年経ってもそう思える事ってなかなかないと思うんですよ。それで今回はそのまま忠実にカヴァーしたんですが、やっぱり自分たちがリスペクトしているバンドですから過剰なアレンジを加えることは出来なかったんですね。 僕は彼らが今、あの頃の作品をリリースしていたら当時よりももっと評価されていると思いますし、評価されるべきバンドだと思っているんです。だから僕たちがそれをしっかりとファンに伝える、紹介するという意味でも、今回収録しようと思ったんです。
--6曲目「myself」はインディーズ時代の作品のリメイクになりますよね。
今回、インディーズ盤もリマスタリングして同時にリリースするという事もあって、その中で「myself」という曲は特に今のUNCHAINがもう1回やったら良くなる!進化させられると思ったんですね。オリジナルの「myself」は聴いてみると面白いんですよ。良い意味でのTOO MUCHさというか、若さゆえの大胆さみたいな。そういうのが面白いんですけど、そういった僕たちの初期衝動を思い出しつつ、今の自分たちを出していこうというアレンジでして、2006年当時の「myself」をやっていた頃の自分と、今の自分の成長度を確かめられましたし、聴き比べてもらってもその辺の進化形がわかってもらえるかなと思いまして。
--アレンジとして必要とされている到達点より、もう一つ上の到達点をいったとお聞きしましたが。
そうですね。この曲はもっと踊れる曲だと思ったんです。それをもとにアレンジしていったんですけど、最初はなかなか上手くいかなくて、レコーディング前日まで悩んでいたんですけど、終了前ギリギリで頭の三連譜の”チャッチャッチャ”というのを思いついて、そこから次々にアイデアが浮かんで、今回のアレンジになったんですけど、サビで急にロックになる感じとか、サビ後のダンサブルなものと混ざった感じ、この辺が全て今回のコンセプトに合うし、進化形のUNCHAINという部分は出せたんじゃないかなと。僕もすごく気に入っています。
--次に同時発売されるインディーズ時代の2作品をリマスタリングして、2枚組でリリースする『the early years』についてお聞きします。今回このタイミングでリリースをした理由というのは。
インディーズ盤の2枚が手に入り難い状況で、やっぱり今のファンにも聴いて欲しいですし、自分たちの気持ちの中では今回のタイミングかなと思って。リマスタリングは感覚的に言うと、これまでのものよりも聴きやすく仕上げたという感じですね。あらためて聴き返して見ると、すごい面白いことやってるなと思える曲ばかりで、それは若さゆえの「こんな事やってたんやな」みたいな恥ずかしい部分もあるんですけど、今振り返っても斬新さは感じてもらえるかなと思いますので、その辺を聴いてほしいですね。
--今だから話せる当時の思い出やエピソードなどありましたら教えてください。
1枚目『The Space Of The Sense』の2曲目「The age stream」、4曲目「light your shadow」、7曲目「Don't Miss It (Bonus Track)」は、佐藤くんが加入する前に作った曲なんで、ギターは全部僕が弾いています。 あらためて聴くと昔の方が上手いやんみたいな(笑)。特に「Don't Miss It (Bonus Track)」はめっちゃ玄人っぽい単音カッティングをやっていますんで、これはちょっと聴いてほしいですね。
1枚目はアレンジもガッチガチにキメて、1音でも納得いかなかったらやり直すみたいな作り方をしていたんですけど、2枚目の『The Music Humanized Is Here』はその反発で、もっとセッション的でルーズな感じを出したいと思って、遊びの部分と、メンバーの出したい部分を自由に詰め込んで作ったんです。僕は当時ゴスペルにはまっていて、その辺のコーラスアレンジも所々に入ってますので、その辺りも聴いてほしいですし、吉田くんが大好きなマーズ・ヴォルタ(米のプログレ・バンド)の影響を受けたプレイが聴ける6曲目「Confront the world」も注目です。あと7曲目「Inspire of life (Club Mix feat. YAVZ. COM)」のYAVZ.COMは僕の友人なんですけど、彼の家に遊びに行って2人でリフから作って、ベースも僕が弾いてという感じで、MIXというよりも1から作ったような曲ですね。
--最後に、3月28日からスタートする東名阪ツアーですが、いままでに発表してきた全てのオリジナル楽曲と未発表新曲の全54曲を3日間に渡って演奏するという、こちらも画期的というかすごいイベントになりそうですね。
今回『the early years』が出るという事もあり、新しいUNCHAINになるためのきっかけとなる、UNCHAIN革命的なイベントだと思っています。各会場で曲がダブらないのでどの曲をやるかは来てのお楽しみですが、東京は最終日なので、どの曲をやるのかわかってしまいますけど(笑)、その分、スペシャルな事も考えていますので楽しみにしておいてほしいですね。
--新しいUNCHAINになるとは?
今回UNCHAINの54曲全曲をやる事によってもう一度自分たちを見つめなおして、新しい自分たちの方向性をみつけたいという意味ですね。もしかしたら、今回を期に今後演奏しなくなる曲とかもあると思いますし。
--ニューアルバムも制作中だと聞きましたが。
はい。次はその新しいUNCHAINの方向性をしっかりと見定めたものを出したいと思っていて、その上でも今回の「The World Is Yours」はNEXT UNCHAINの道標的な作品と言えます。次のアルバムはこれぞUNCHAINという作品になると思いますよ。
<インタビュー/文:MUSICSHELF編集部 福嶋 剛>




