ARTISAN de la MUSIQUE

ARTISAN de la MUSIQUE 2010年1月号 - P.01

今回は、フランスを代表するシンガーソングライター、フランシス・ルマルクを紹介する。

 

フランシス・ルマルクは、1968年生まれの筆者より一世代、ともすればさらにもう一世代上の音楽ファンによく知られたアーティストだ。

 

日本ではイヴ・モンタンによって歌われた「パリで」(原題:A Paris)や「兵隊が戦争に行く時」(同:Quand un soldat)、イヴェット・ジローが歌って大ヒットした彼女の十八番「小さな靴屋さん」(同:Le petit cordonier)、「蛙」(同:Le grenouille)の作者として夙に有名だが、彼自身のレコードも早くから国内盤としてシングルや4曲入りEP、10吋盤、LPといった形で紹介されており、そのため若い世代もルマルクの名を知らずとも何かしらの形で彼の作品にふれているのではないだろうか。例えばミシェル・ルグランが54年に発表した『アイ・ラヴ・パリ』。同作に収録された「パリで」の演奏にフィーチャーされた軽やかな口笛も実はルマルクによるものだ。

 

 

彼は映画音楽も複数手掛けており、ミシェル・ルグランと共作したマルセル・カルネ監督の『広場(ひろっぱ)』(60年)やジャック・タチ監督の『プレイタイム』(67年)のサントラなどは比較的よく知られた作品だろう。昨年、仏ユニバーサルより彼の映画音楽を集めた企画盤『le cinema de Francis Lemarque』が発売され、本国でもその活動を再び評価する動きが出始めている。
フランシス・ルマルクは本名をナタン・コルブといい、1917年11月25日パリのラッブ通り生まれ。幼少時よりシャンソンが好きで、7歳の頃からアコーディオンに合わせて歌い始め、10歳にもなると、兄と友人のクレベールの三人でアパートの中庭で歌ってバラ銭を稼いだという。12歳で印刷屋の小僧となり、その後は石屋、毛皮屋、帽子屋などおよそ20種類の職業に従事。やがて、芝居に興味を覚えて、歌人劇団のメンバーとなった。34年には兄モーリスと〈レ・フレール・マルク〉を名乗って本格的にデビュー。歌ったのはジャック・プレヴェール作詞、ジョセフ・コスマ作曲の「二頭立馬車」(Le tandem)だった。
36年には人民戦線の時代にシルヴァン・イトキンとグループを組んで、労働者に占拠されていた工場で慰問公演を敢行。

戦後はギターを手に入れて作詞・作曲に明け暮れ、やがてプレヴェールの仲介によって、最初の作品をイヴ・モンタンに提供することになった。先に挙げた「パリで」や「兵隊が戦争に行く時」はその頃の作品だ。ルマルクとモンタンは共に貧しい労働者出身ということもあり、意気投合したという。
飾り気がなく、庶民的で親しみやすいメロディと人間味溢れる抒情的な詩の世界から、日本では“裏町の抒情詩人”として紹介されてきたが、本国での人気や作品の総数からすれば、紹介楽曲はほんの氷山の一角に過ぎず、日本未紹介の作品のなかには、まだまだ聴くべき作品が豊富に残されている。
そこで本稿では、第一弾として彼が75年にバークレー・レコードから発売した企画盤『パリ・ポプリ』を紹介する。

 

 

 

『パリ・ポプリ』はジョルジュ・クロンジュ*(詞)とフランシス・ルマルク(曲)が75年に発表したアルバムで、なんとLP3枚、およそ2時間に及ぶ一大音楽絵巻である。フランス革命から(ドイツ軍からの)パリ解放までのパリと、パリに生きる人々とその闘いの歴史を綴ったもので、クロンジュは生前「この作品で取り上げた1789年から1944年という時期は、自由の名のもとに行われた革命から人類の大いなる希望、解放までにあたる」と語っている。

アルバムには様々なアーティストが参加しており、ざっと挙げただけでも以下のような面々が揃う。

 

マルセル・アモン、ミシェル・デルペッシュ、ダニエル・ギシャール、ニコレッタ、セルジュ・ラマ、ムルージ、ジャック・イヴァール、セルジュ・レジアニ、フランシス・ルマルク、ジュリエット・グレコ、カトリーヌ・ソヴァージュ、フランチェスカ・ソルヴィル、ミシェル・ルグラン、クリスチャンヌ・ルグラン、ジャック・マルタン、ミレイユ・マチュー、マルセル・ロテル、そしてこれが初めてのレコーディングとなるジャン・ギドニ…。ルクセンブルグ(ラジオ&テレビ)放送グランド・オーケストラをミシェル・ルグランとピエール・カオが指揮し、アレンジはジャン=ミシェル・ドフェが手掛けている。

 

オリジナル盤は1975年のクリスマスに3枚組のボックス・アルバム仕様でバークレーから発売されたが、プロモーション不足から思うような枚数を売り上げることが出来ず、その結果、同社の営業担当者は製作陣に一報も入れぬまま、独断で在庫を全て処分してしまった。そんなこともあって、オリジナル盤には高値が付き、まさに幻のアルバムとなったわけだ。

しかし、先頃、フランシス・ルマルクの子息ステファン・コルブ氏がメモワール・ダーティスト協会と協力して同アルバムを限定復刻。世界初CD化、しかも『パリ・ポプリ』全曲を収録した2枚に加えてさらにもう1枚、ルマルクの代表作を集めた企画盤も同梱された3枚組である。ルマルク作品の魅力を知るには持ってこいの作品集だ。

日本未発売のこのアルバム、コルブ氏のご厚意により、ごくわずかながら販売許可を頂いた。購入希望者は以下のアドレスまでお名前を添えてお問い合わせを。その際、件名欄には「パリ・ポプリ購入希望」とご記入をお忘れなく。折り返し、送金方法など詳細をお知らせします。但し在庫切れの場合はご容赦下さい。(締切:2010年3月31日)

 

お問合せメールアドレス:legrandcd@gmail.com

件名:パリ・ポプリ購入希望

本文:お名前をご記入ください。

 

* ジョルジュ・クロンジュ(1923年生まれ~2003年没):作家、脚本作家。ナナ・ムスクーリ、マルセル・アモン、レ・フレール・ジャック、ティノ・ロッシ、ブールヴィル、パタシュー、アニー・コルディ、サッシャ・ディステル、ナット・キング・コール、ジャン・フェラなどのために数多くの曲の歌詞を書いた。ジャン・フェラとは、1965年に有名な『ポチョムキン』を世に送り出した。また、1981年から1989年まで、TF1局で放映され、人気を博した、ヴェロニック・ジャノ出演のテレビ・ドラマ『ポーズ・カフェ(コーヒー休憩)』の原作者兼脚本作家でもある。

 

【音楽職人トピックス】



濱田高志による
<マンスリー公開講座>のお知らせ。


TV AGEシリーズ監修・濱田高志が、2010年1月より、池袋コミュニティ・カレッジに於いてマンスリー公開講座を開催しています。
詳しくは、こちら

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2012年1月28日(土)18:30~20:30
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2012年2月25日(土)18:30~20:30
『生誕80周年記念集中講座:
ミシェル・ルグランその活動の軌跡[1[』

2012年に生誕80周年を迎える作曲家ミシェル・ルグランの活動をジャズ、映画音楽、提供曲など全てのジャンルを網羅しながら時系列に沿って辿る集中講座(全5回)。第1回はデビューから60年代初頭までの活動を振り返ります。

2012年3月17日(土)18:30~20:30
『生誕80周年記念集中講座:
ミシェル・ルグランその活動の軌跡[2]』

第2回は「シェルブールの雨傘」を中心に貴重なデモや関連楽曲を映像と共に紹介。

池袋コミュニティ・カレッジ
(豊島区南池袋 1-28-1
西武池袋本店別館 8・9階)

●受講お申し込みに関する詳細は、 池袋コミュニティ・カレッジHPをご覧ください。
また、お電話でのお問い合わせは、03-5949-5486まで。
濱田高志(ハマダ タカユキ)
音楽ライター兼アンソロジスト。これまで国内外で企画・監修したCDは300タイトルを数える。現在は「イージーリスニング・ステーション」(USEN)の選曲や「エキスポ・ジェネレーション」、「濱田高志のトレジャー・ミュージック」(STAR digio)のパーソナリティを担当。ミシェル・ルグランからの信頼も厚く、世界初の公認本「ミシェル・ルグラン風のささやき」(音楽之友社)を執筆したほか、「コカ・コーラCMソング データブック」(ジェネオン)「Love Sounds Style読本」など編・著作多数。2007年、ロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ『フル・サークル』をコーディネイト。

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濱田高志ロングインタビュー
(2007年2月掲載)

濱田高志 監修・選曲・解説
「TV AGE」シリーズ公式HP


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