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2010年代の要注目の人々  前編

インターネットの進歩によって誰もがコンビニエントかつフリーに音楽を入手することができる現代。ゆえに、音楽にお金をかける人が少なくなり、全体のセールスが縮小。今やヒットチャートは、アイドルとの握手券などのプレミア・グッズ欲しさに購入する人によって支えられていると言っても過言ではない状況。本当にいいんだけどなぁ、と思う作品やアーティストが、時代に置き去りにされていくという悲しい現実を、数多く目撃するようになりました。しかし、音楽自体は決して廃れることがないでしょうし、またみなさんが嬉々としてお金を払う音楽やアーティストが、いつの日か登場することを信じて、これからもいろんなアーティストを紹介したいと思う、今日この頃です。  まぁ、そんな世知辛い状況ではありますが、2010年代に要注目の人々をピックアップしてみました。なぜか野郎ばかりです。しかもほとんどアメリカ勢。彼らが、閉塞感漂う音楽シーンの突破口的役割になることを信じて……。

 

 

アダム・ランバー / フォー・ユア・エンターテイメント アダム・ランバート
『フォー・ユア・エンターテイメント』

大人気オーディション番組『アメリカン・アイドル』の第8シーズンに登場し、準優勝。その圧倒的なヴォーカル力はもちろんであるが、アイラインをバッチリつけたメイクや、ネイルなど、デヴィッド・ボウイ顔負けのビジュアル、さらにゲイであることをカミングアウトするなど、さまざまな話題をふりまき、今や「世界で最もセクシーな独身男性」の一人に選ばれるなど、話題騒然のアダム君。このデビュー盤では、レディー・ガガ、リヴァース・クオモ(ウィーザー)、P!NKなど、そうそうたるアーティストをゲストに迎え制作。エルトン・ジョン、クイーン、ジョージ・マイケルからシザー・シスターズ、MIKAに至るまで、これまでのゲイ・アイコン的アーティストへのオマージュを感じさせる、艶やか/ゴージャスなサウンドは、まさしく虹色エンターテイメント!特に、そのセクシーで表現力のある変幻自在な歌声は、圧倒的な華やかさを放っているのです。この音を聴くまでは、歌のうまい単なる賑やかしのアーティストだと思っていたのですが(それはそれで個人的には大好きです)、そんなイメージは一気に払拭。レディー・ガガに匹敵する、2010年代を代表するポップ・アイコン的オーラをまとったアーティストであると、感じました。これから熱烈に追っかけていきたいと思います。

 

DAM-FUNK / Toeachizown DAM-FUNK
『Toeachizown』

Madlibなどを輩出、HIP-HOP/R&Bシーンを中心に現在人気沸騰のレーベル、STONES THROWより登場した、アーティスト。そのルックスは、ハードなラッパーを想像するかもしれませんが、サウンドはバリバリ80sなエレクトロ・ファンク(ちなみにモダン/フューチャー・ファンクと呼ばれているそうです)。繰り出されるドラム・ループや、厚みのあるシンセベースなど、構成されるすべてが、黒光りしていながらも、上質なポップ感をまとっていて、魅力的です。近頃は聞き飽きた感のある80sサウンドですが、これはそんじょそこらのお手盛りなものとは違う。また全曲、生音&一発録りというのだから、驚きです。ちなみにこの人は、90年代よりウェストコースト、G-FUNK界隈で腕をならし、またスヌープ・ドッグのツアーではキーボーディストとして活躍していた実力者。なるほど、この超絶的なファンキー・グルーヴは、そういった実績により積み上げられたものなのかもしれない。

 

デビット・タマオカ / ケインフィールド・ヒーロー〜サトウキビ畑のヒーロー デビット・タマオカ
『ケインフィールド・ヒーロー〜サトウキビ畑のヒーロー』

ジャック・ジョンソン主宰の「コクア・ミュージック・フェスティバル」で2006年におこなわれたBMI Awardにて、最優秀シンガーソングライター賞を獲得。その後、ジェイソン・ムラーズ、フーバスタンクなどとも共演している、ハワイ・カウアイ島在住日系人アーティスト。2005年のグラミーで最優秀賞を獲得したハワイアン・ミュージック界の実力者、チャールズ・ブロットマンをプロデューサーに迎え、制作されたアルバム。「ケインフィールド(サトウキビ畑)」の広がる島で、自身の祖先への敬愛を捧げながら過ごす日常の風景を、アコースティックギターのシンプルな音色で丁寧に綴っています。そんな彼のサウンド世界で、魅了されるのが歌声。トレイシー・チャップマンを彷彿させる、ソフトでありながらも哀愁の漂うヴォーカルは、男性アーティストとは信じられない存在感。同郷のジャックとは異なる感動を噛み締めることができるはずです。

 

ナイス・ナイス / Extra Wow ナイス・ナイス
『Extra Wow』

オレゴン州ポートランド出身、<Warp>レーベルより登場した、ジェイソン・ビューラーとマーク・シラジによるユニット。昨年末には、ヨーロッパツアーを敢行、さらに同時期にリリースした1stEP「ONE HIT」は、瞬く間にソールドアウトするほど、すでに注目度は高い存在です。そのサウンドは、バトルスやアニマル・コレクティブといったN.Y.のアンダーグラウンド・シーンのバンドに通じる、インテリジェンスかつエモーショナルな世界観。しかし、その要素だけでなく、彼らの作り出す音には、聴く者のカラダを切り裂いてしまうような強烈なビートが存在しているのです。それが今まであまり体感したことのない衝撃で、荒くれ者(キワ者とも言う)好きな、筆者のココロにストレートに突き刺さってきました。たぶん彼らは、とても知的なキャラクターだとは思いますが。今後の展開を考えると、ワクワクしてしまったバンドです。彼らを筆頭に、ポートランドには才能あふれる「ナイス」なアーティストが多数いる様子。今後注目してみてはいかがでしょうか?

 

パラシュート / ルージング・スリープ パラシュート
『ルージング・スリープ』

ヴァージニア州出身、大学の同級生だった5人で2008年に結成したバンド。同年にはダフィー、テイラー・スウィフト、ジョナス・ブラザーズなどと同じステージに立つなど、デビュー直後から熱い期待と注目を浴びている存在です。そのサウンドは、彼らのナイスなルックス同様、甘くて爽快なポップ・ロック。例えるならば、マルーン5のようなものでしょうか。このデビュー盤においても、彼らのそんな魅力が弾ける仕上がりになっています。ミシェル・ブランチやボン・ジョヴィからバックストリート・ボーイズまで手がける大御所、ジョン・シャンクスをプロデューサーに迎え制作されたアルバム。胸キュンなポップ感だけでなく、コールドプレイを彷彿させるようなドラマティックかつメランコリックな世界や、キングス・オブ・レオンのようなダイナミックなロック節もあったりするので、いろいろと楽しめるポイントの多い仕上がりになっていると思います。また聴き終えると、パラシュートを使って、広い世界を空中遊泳しているような気分を味わえるのでは?

 

【後編(2/16掲載予定)に続く】

 


ひとりの新人アーティストの才能とブレイクが音楽シーンを活性させる。この原理はいくら時代が移り変わろうとも不変なものだ。このコーナーでは業界きっての早耳と先見の明をもつ、音楽評論家&音楽ライターが、今最も気になる、今後ブレイク間違いなしの原石をピック・アップし、レコメンしていきます。

松永尚久
(マツナガ タカヒサ)
男性ファッション誌編集部を経て、フリーのライター/エディターに。最近は音楽をメインにしながら、時々アートや映画、ファッション界隈の仕事もしています。サーフ・ミュージック系の楽曲を集めたコンピ盤『アコースティック・トリッピン』(EMI)を監修したことも。