ARTISAN de la MUSIQUE

ARTISAN de la MUSIQUE 2010年2月号・清浦夏実 - P.01

才人・菅野よう子プロデュースによる新曲をはじめ、CD化が熱望された楽曲を含む7つのタイアップ曲、石川セリの名曲「Midnight Love Call」のカヴァーまで、迸る才能を余すところなく詰め込んだ目映いほどのアルバムが遂に完成!!
つじあやの、吉良知彦(ZABADAK)、窪田ミナ、島田昌典など豪華クリエイターが集結した話題作『十九色』について話を聞いた。

 

--この度ようやくファースト・アルバムが発売されるわけですが、デビューから2年、随分と時間がかかりましたね。

 

デビューからアルバム発売までの間に大学受験を挟んでいたので、それで延びていたというところもありますけど、元々が決して急ぎ足ではなかったんです。最初の頃はどんな歌を歌っていこうか散々悩んだ時期がありましたし。でも、4枚目のシングル「悲しいほど青く/虹色ポケット」(09年10月)を出した頃からどんな曲が自分に合っているのかが判り始めて、それまで狭かった視野が急に広がったような気がします。デビューから丸2年経ってようやく迷いがなくなって吹っ切れた感じですね。私、今19歳なんですけど、10代最後にアルバムを出せたというのもタイミングとしてはすごく良かったです。

 

--デビュー曲「風さがし」(07年10月)からこれまでに出された4枚のシングルは、カップリングを含め比較的スローな曲が多かったですね。

 

確かに流行には乗っていないというか、かなりマイペースにやってきたと思います。アニメーションのタイアップということで、その世界観に合わせたかったし、しかも同時に自分の一番いいところも出したいということもあって、結果的にその両面が合致した曲がシングルになっています。だから特別スローな曲をと意識していたわけではなく、気付いたらそんな曲になっていたという感じですね。ただ、アルバムではもう少し彩りがあったほうがいいということで、デビュー曲「風さがし」をサンバ調にアレンジしたり、これまでになかったロックっぽい曲を新しくレコーディングしたりしました。

 

--デビュー・シングル「風さがし」のカップリング「夏の記憶」からして自身による作詞でしたが、作詞については当初から興味があったんですか。

 

ありましたね。でも、ただ興味があったというだけで、それまでにちゃんと作詞をしたことがなかったですし、あくまで自分でちょこちょこ書き留めていただけでした。だから、ちゃんと形にしたのはあの曲が初めてなんですよ。この先ずっと歌っていくからには、少しでも自分が楽曲に参加出来たらいいなと思って。

 

--やはり作詞する際は苦労されますか。

 

毎回苦労しますね。今回は特に大変でした。私の場合、迷走し始めると、段々暗い方向にいくことがこの2年間で判りまして(笑)。アルバム収録曲でいえば、菅野よう子さんに書いて頂いた「アノネデモネ」も、書き始めの頃は案の定暗い方向に行きそうになって。実はまだ曲も出来ていない段階で、菅野さんから〈とにかくなんでもいいからゴネゴネした小悪魔の女の子の詞を毎日書いて送ってきなさい〉と言われて書き始めたんです。で、2週間くらいダッシュで迷走してたんですけど、ある時、〈恋って楽しいものだ!〉と判って、それからは順調に書き進められました。結局、あの歌詞を書き上げるまでに1ヶ月半くらいはかかったと思います。毎日、毎日、菅野さんに詞を送っては返事をもらって、返事をもらっては新しい詞を送っての繰り返しでした。でも、小悪魔な歌を書いていても半分は妄想ですから(笑)。実際は〈小悪魔ってなんだ?〉と思いながら悩んで書いてましたからね。

 

--菅野さんの曲は、これ以前に「お弁当を食べながら」(ほっともっとCMソング)がありますね。

 

あの時は本当に短い時間で作ったので、菅野さんの生態がよく判らなかったんですけど、今回は集中して4日間くらい一緒に作業できたのですごく楽しかったです。一緒にアイスを食べたり、菅野さんがピアノを弾きながら作業しているところをすぐそばで見れたので、すごく勉強になったし、菅野さんから色んなことを教わりました。毎日が刺激的な作業の連続でしたね。菅野さんの曲はアルバムのなかで一番最後の作業だったので、締めに相応しいものでした。実は詞を書き上げて最初に曲を聴かせてもらった時に、菅野さんが〈私の曲、アルバムのなかで絶対浮くよ〉とおっしゃってたんですけど、アルバムの曲順に並べて聴いてみたら全然そんなことなくて、アルバムのなかで一番可愛い曲になったと思います。

 

--歌唱法がこれまでと明らかに違いますが、菅野さんから何か指示があったんですか。

 

菅野さんからは〈自由にやっちゃって!〉と言われたので、フェイク祭を開催しちゃったりして、本当に気楽にレコーディングしました。
ジャクソン5のマイケルふうにというか、声を張ったところがちょっと子供っぽいというか。そういうのは自分で意識して歌いましたね。

 

--ちなみに普段はどういった音楽を聴かれるんですか?

 

私、ほぼ100パーセント邦楽で、洋楽はほとんど聴かないんですよ。好きなのはaikoさんとかサザンとか斉藤和義さんとか。あと、中学生の頃にオーケストラ部でフルートをやっていたので、クラシックは普通に聴いていましたけど。でも、今回こういった曲を歌ってみて、〈あぁ、私もこういったリズミカルな曲も歌えるんだ〉と気付かされて、もっと勉強しようと思いました。これまでは、私が洋楽のアーティストのようにフェイクを交えて歌っても、きっとさまにならなくて使えないんだろうなと思っていたんです。そういった意味でも新たな発見でしたね。

 

--「銀色の悲しみ」って、曲調はハードですが、ヴォーカルは少し醒めたところがあって、どこかセルフコントロールされた印象を受けます。そうした感情を裡に秘めたところが強い意志を感じさせて、むしろロックを実感しました。

 

それは私たちの思惑通りですね。レコーディングの時に福田さんから言われたのは、〈皮ジャンを着た頭のいい不良が歌うロック〉みたいなことだったんです。一般的なロックってシャウトしたりするイメージですけど、この曲は賢い子が歌ってるロックなんですよ。実際、その時の私は〈皮ジャンってなんだよ?〉と思ってたんですけど(笑)。でも、結果的にちゃんとそうなったみたいで良かったです。

 

--歌詞も独特な世界を持っていますが、何か下敷きになったものはあるんですか。

 

作詞家の方には、男の子の失恋ソングを依頼して、その男の子が夜から朝を迎える過程で前向きになる話とかそんな感じだったと思います。でも、確かにすごく個性的な詞ですよね。この曲では、ポエトリー・リーディングも挿入されているので、新しい自分が出せました。随分、詞に助けられた部分がありましたけど、この曲はアルバムのなかで〈クラスの変わり者〉的な位置付けにしたかったんです。

 

--確かにほかの曲と比べて声色も変えていますね。あと気になったのが、石川セリの「Midnight Love Call」(77年6月発売のアルバム『気まぐれ』収録曲)のカヴァーです。この曲はどういった経緯でレコーディングすることになったんでしょう。そもそも清浦さんの世代では、この曲のオリジナル・ヴァージョンはご存知ないですよね?

 

はい。最初は知らなくて、ディレクターがピックアップしてくれた候補曲で初めて知りました。カヴァーについては、随分前からディレクターと〈アルバムを作る時は何かカヴァーしようね〉って話してたんです。この曲をレコーディングすることになった決め手は、歌詞にある〈私 雨はきらい〉ってフレーズなんです。というのも、私〈雨女〉なんですよ。
あと、この曲をレコーディングする前に「パレット」(アニメ『リストランテ・パラディーゾ』挿入歌)という大人っぽい曲を歌っていて、それを歌えるんならこういった曲もありなんじゃないの? ということで。でも、あとから聞いた話では、ディレクター人生においてこの曲をいつか誰かにカヴァーさせたいとずっと思っていたらしいんですよね。

 

--石川セリさんのヴァージョンも作曲者である南佳孝さんがのちに歌ったカヴァー・ヴァージョンも好きで聴いていましたが、今回また新たな魅力を秘めたヴァージョンが世に出た気がします。いずれも個性が強いアーティストなので、生半可な歌唱やアレンジではその2つと比べると聴き劣りするはずなんですが、まるでそんなことはなく、素直に素晴しいと思いました。

 

ありがとうございます! でも、この曲すごくむずかしかったんですよ。歌詞に〈少しお酒を 飲んでみたの〉ってフレーズがあるんですけど、それを見ながら〈私、飲めないのに…〉とか思ったりして(笑)。ただ、女の子だったら、言いたいのに言えない歯痒い気持ちを必ず持っているので、そういったところを私なりに汲み取って、そっと電話で話すように歌いました。

 

--せっかくなので、ほかの曲についても個別にお話を聞かせて下さい。アルバムのオープニングを飾るタイトル曲「十九色」はいかがでしょう。

 

アニメ『ささめきこと』のオープニング「悲しいほど青く」を窪田ミナさんに書いて頂いた時に、アルバムを作る時には絶対にまた窪田さんに曲を書いてもらおうと思ったんです。私、その時に繊細な窪田ワールドに魅了されたんですよ。窪田さんならフルートの儚い音もうまく引き出して下さるだろうなと思って。

 

--アルバムには清浦さん自身が吹くフルートの音色もフィーチャーされていますが、この曲もそうなんですね。

 

はい。窪田さんの弾くピアノに寄り添うようにして録りました。緊張しましたけど貴重な体験でしたね。そうやって、今後もレコーディングには何らかの形で参加していきたいです。

 

--「ネバーランド」は自作曲ですね。

 

これは私が生まれて初めて作った曲です。コードとかも全然判んないし、ましてや譜面は読めても書けませんでしたから、ピアノの鍵盤を探り探り、弾くというよりは押しながら作りました。録音機材を持っていなかったので、ラジカセに向かって歌いながら、間違ったらまた最初から録るという感じ作ったんです。アルバムのほぼ折り返しに配置されていて、「銀色の悲しみ」から続くこの流れも気に入っています。この曲って、子供から大人になる決意の曲なんですよ。ですからこの『十九色』というアルバムにぴったりだと思いますし、私自身とても思い入れの強い曲です。

 

--それに続くのが「虹色ポケット」です。4枚目のシングル「悲しいほど青く」のカップリング曲ですが、これもまた歌声が違う印象ですね。少し弾けた感じがチャーミングでした。

 

これは私の高校時代を思いながら歌った曲です。もっとも高校時代といっても去年の今頃のことなんですけどね(笑)。楽しかった思い出を振り返っているんだけど、どこか寂しい気持ちがする曲です。意識してこういう声にしようということはなかったんですけど、楽しい思い出を明るく振り返りたいなと思って歌ったらこうなったという。確かに少しほかとは違う雰囲気がありますね。ちょっとふざけ過ぎました(笑)。

 

--そして「悲しいほど青く」が続きます。この曲も清浦さん自身の作詞ですね。

 

過去、これほど片想いでせつない気持ちを書いたことはなかったです。最初の頃は書いているうちに段々とマイナスな気持ちに落ち込んでいったので、とても苦労しましたね。ここまで自分をさらけ出したことはなかったので、一皮むけた感じがします。いくつかあった候補曲のなかで、私自身が絶対にこの曲を歌いたいと思ったのが、このメロディなんです。ほかの候補曲とは存在感が違って、〈絶対これだ!〉と思いました。

 

--アルバムのなかでも静かな曲なのに存在感がありますね。

 

周囲から〈夏実ちゃんは、曲によって声の印象が色々変わるよね〉と言われることが多くて、最初はすごく悩んだんですよ。それっていいことなのか悪いことなのか判らなかったんですけど、この曲やカップリングの「パレット」を歌う頃には、それもあまり気にならなくなったんです。最近では〈いいじゃん、それで!〉と自信を持てるようになりました。

 

--確かに色んなタイプの曲を歌うことによって表面の印象は変わりますけど、根っこの部分というか、芯にある実直でまっすぐな歌声は変わらないと思いますよ。何色にも染まるというよりは、プリズムが光に反射して鮮やかな色で照らすようなそんな印象を受けます。

 

とはいえ、完成するまでは、〈アルバム、どんなふうになるんだろうな…〉と心配な面もあったんですけど。

 

--結果的にそれは杞憂でしたね(笑)。で、その「パレット」同様アニメのタイアップだったのが、3枚目のシングル「僕らの合い言葉」(08年7月)です。これは詞曲共に、つじあやのさんですね。

 

つじさんの詞って、シンプルだけど深いところがあって、この曲についてもいまだに考えさせられたり、勇気づけられたりしています。このシングルを出したあとで、つじさんのライヴにご招待していただいて、福田さんと一緒に観に行ったんですよ。そしたら、つじさんがこの曲をセルフカヴァーして下さっていてびっくりしました。作者にも愛されている曲です。

 

--そして「七色」。これまた名曲です。

 

この曲を作って下さった矢吹香那さんともまたご一緒したいです。私、この曲のデモテープを聴いた時に感動して泣いちゃったんですよ。だから、これが自分の曲になるというのがすごく嬉しかったんです。ここでアレンジして下さった島田昌典さんは、aiko さんの作品を手掛けられている方で、先程お話したように私がaikoさんの作品が好きだってことから「ネバーランド」の時に初めてアレンジをお願いて、今回もまたお世話になりました。

 

--先程も話しましたが、清浦さんの歌声って、感情過多にならないように、とてもうまくセルフコントロールされているような気がするんですが、そのあたりいかがですか。そういったことは意識されていますか。

 

いやいや。実は歌入れの時に菅野さんが〈夏実ちゃんはね。頭で考えて歌ったら最強だよ〉っておっしゃって。考えてみれば、私、これまでは歌入れの時に何も考えずに歌っていたんですよ。だから〈これからは考えながら歌ってごらん〉とご指南いただきました。

 

--ということは、セルフコントロールどころじゃないですね。

 

何も考えずというか、歌入れの前には、ある程度はこんな感じかな? くらいのことは考えてましたけど、基本的に歌ってる最中は何も(笑)。

 

--だとすれば、それこそ才能でしょう。感情に溺れない歌声にすごく説得力があって、言葉がすっと染みてきます。菅野さんがおっしゃるように、今後意識的に頭で考えて歌えば、さらに深みが増すような気がしますね。で、アルバムの最後が件の「Midnight Love Call」です。

 

これを一番最後に収録するのは、アルバム作り始める当初から決まっていて、〈大人の階段を上りますよ〉って意味合いが込められているんです。

 

--ジャケット写真もとてもインパクトがありますね。

 

11月に箱根で撮りました。私、髪にメイクさんお手製の羽飾りをつけてるんですよ。テーマは宇宙人(笑)。色付いた紅葉をバックに、子供から大人への色の移り変わりにも引っ掛けています。アルバムを聴いて下さる皆さんに好きな色を探してもらえるといいなと思います。

 

--では、最後にリスナーに向けて一言お願いします。

 

たかだか19歳の私ですが、〈こんなことも出来るんだぞ!〉という気合を入れて作ったアルバムです。子供から大人まで色んな人に何か感じてもらえるアルバムに仕上がったと思いますので、是非手にとって聴いて頂けたら嬉しいです。

 

 

 

 

 

【音楽職人トピックス】



濱田高志による
<マンスリー公開講座>のお知らせ。


TV AGEシリーズ監修・濱田高志が、2010年1月より、池袋コミュニティ・カレッジに於いてマンスリー公開講座を開催しています。
詳しくは、こちら

<公開講座>
『ヒットメーカーが語る作品誕生秘話』

テレビ・映画音楽からアニソン、歌謡曲にCMソングまで、職業作家が様々な分野で発表した作品を、作家自身の証言と共に検証する特別講座。テーマに沿ったゲストを交え、名曲誕生の瞬間に迫ります。
【講師:濱田高志】

2012年1月28日(土)18:30~20:30
『孤高の作曲家・平岡精二』
作編曲家にしてヴィブラフォン奏者の平岡精二の活動を網羅的に辿る特別講座。未CD化曲を中心に自作自演、提供曲、映画音楽などをたっぷり紹介します。

2012年2月25日(土)18:30~20:30
『生誕80周年記念集中講座:
ミシェル・ルグランその活動の軌跡[1[』

2012年に生誕80周年を迎える作曲家ミシェル・ルグランの活動をジャズ、映画音楽、提供曲など全てのジャンルを網羅しながら時系列に沿って辿る集中講座(全5回)。第1回はデビューから60年代初頭までの活動を振り返ります。

2012年3月17日(土)18:30~20:30
『生誕80周年記念集中講座:
ミシェル・ルグランその活動の軌跡[2]』

第2回は「シェルブールの雨傘」を中心に貴重なデモや関連楽曲を映像と共に紹介。

池袋コミュニティ・カレッジ
(豊島区南池袋 1-28-1
西武池袋本店別館 8・9階)

●受講お申し込みに関する詳細は、 池袋コミュニティ・カレッジHPをご覧ください。
また、お電話でのお問い合わせは、03-5949-5486まで。
濱田高志(ハマダ タカユキ)
音楽ライター兼アンソロジスト。これまで国内外で企画・監修したCDは300タイトルを数える。現在は「イージーリスニング・ステーション」(USEN)の選曲や「エキスポ・ジェネレーション」、「濱田高志のトレジャー・ミュージック」(STAR digio)のパーソナリティを担当。ミシェル・ルグランからの信頼も厚く、世界初の公認本「ミシェル・ルグラン風のささやき」(音楽之友社)を執筆したほか、「コカ・コーラCMソング データブック」(ジェネオン)「Love Sounds Style読本」など編・著作多数。2007年、ロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ『フル・サークル』をコーディネイト。

詳しいプロフィールはコチラ


濱田高志ロングインタビュー
(2007年2月掲載)

濱田高志 監修・選曲・解説
「TV AGE」シリーズ公式HP


ARTISAN de la MUSIQUE