セカンド・アルバム『ノウニウノウン』から約8カ月ぶりに、たむらぱんから両A面のニューシングルが到着。竹のようなしなやかな強さに憧れる「バンブー」、どうせ登る人生の山なら楽しく登ろう!と歌う「マウンテン」、幸せの真の在りかを問う「パラダイス」と充実の3曲は、カラフルな曲調といい、言葉遊びの奥にたむらぱん流人生訓(!?)を込めた歌詞といい、どれもが実に彼女らしい仕上がりだ。経済不況もあいまって、大きな夢や希望を持ちづらい今日この頃。慌てず騒がず、幸せへの着実な一歩へのヒントをくれるたむらぱんの歌は、今の時代をちょっぴりラクに乗り切るための音楽サプリと言えそうだ。
--まずは1曲目の「バンブー」。曲にみなぎる逞しさが、たむらさんらしいなあとニヤニヤしながら聴きました。
ありがとうございます(笑)。
--「どうすれば日々のハッピーが増すか」というのは、たむらさんのテーマのひとつですよね。
そうですね。「バンブー」も、どういうふうに生きたら幸せに暮らせるか、より良い日々を過ごせるコツってどんなものか、みたいなことを考えて作った曲ですね。でも「今までより幸せ」っていう感覚だと今までがダメだったみたいに感じるので、そうじゃなく、先にあるもののためにがんばろうとか、今後のことを考えた上で「より良くしよう」っていう。で、「今後」というのも、すごく遠いものとか大きい理想だと辿り着くまでに時間も労力もかかるなあ…と思っちゃうので、その間も自分は日々を生きてるわけだし、最初から遠いところを目指すんじゃなく、身近なところから攻めていくほうが結果的にいいんじゃないかと(笑)。
--ハッピーは求めつつも、堅実かつ現実的に、あくまで一歩ずつ。
そう。大きい理想に向かって博打みたいにがんばるよりも、確実なところを攻めていくほうがいいなあと思うんですよね(笑)。なので私の場合「ちょっとした幸せ」とか「ささやかな楽しみ」っていう感覚になるのかなあと思います。
--この曲では、その地道にがんばる主人公が竹に喩えられているんですよね。
世の中、一般的にはマジメにまっすぐに生きることが素晴らしいっていうイメージがあると思うんですよね。でも私は、いろんなことに柔軟に対応できる人がスゴイんじゃないかと思ってるんです。流されたりもするんだけど、それも楽しめるみたいな。「絶対に流されないぞ」っていうんじゃなく。ゆとりっていうんですかね。最近の世の中は…っていうと大袈裟ですけど、こだわりとか頑固さが必ずしも通用するとは限らない気もするし(苦笑)。そんなふうに思った時に浮かんだのが、まっすぐな竹が風に揺られてる風景だったんです。
--まっすぐな美しさもありつつ、風が吹けば柔らかくしなる。竹って堅いイメージがありますけど、たとえば竹細工などを見ると、面白いほど反るし、曲がりますもんね。
そうそう。あと、フシがあるところも時間の積み重ねを感じさせたりして、いいなあと思うんですよね。
--なるほど。で、そんなしなやかな強さを獲得して、次に挑むのが人生の山。2曲目の「マウンテン」の「人生はマウンテンハイハイ」のフレーズがイイですねぇ。たむらさんって、もしやマゾ!?と思っちゃいました。
それ、鋭いですよ(笑)。この曲には「苦労を買ってしまう」意味合いも含ませてますから。
--買ってでも苦労をして、さらにそれを楽しもう…ですよね?
そうですね。やったほうがいいのはわかってるけど、体力と精神力が…って葛藤をすることがよくあるんですね。でも、最終的にやらなきゃいけないんだったら楽しんでやりたいし、夢中になってやりたいと思う。まだ「そう思えるようでありたい」というところ止まりなんですけど(苦笑)。
--「バンブー」もそうですけど、基本的に体力や労力がかかることに対しては腰が重くて、ああだこうだと思うのに、最終的には「しゃーない、やるか」って腰を上げますよね。その一巡する感じが面白いなあって。
ああ(笑)。好きなことをわーっとやるのは簡単だと思うんですよ。でも、好きではないものにもいいところや魅力があるとは思ってて、そういうものに手を出さないのはもったいないな~と思うんですよね。だからどうせならやったほうがいいと思うし、やらないとソンな気もする。でもやっぱり大変な部分も多いから、面白さを見つけながらやれるようになれたらいいなあと思うんですよね。
--つまり、欲ばり。
そうですね、基本的に(笑)。
--ロックンロールな曲調は、歌詞と一緒に出てきたんですか?
そこはホントに不思議で、いろんな展開、いろんな曲調が詰まってる曲なんですけど、全部が最初からキレイに出てきたんですよね。だから、どういうテンションやノリで作ったのか、自分でもあんまりよくわからないんです。
--何か特別なスポットに入ったのかも?
たぶんそうですね。…ただ、やっぱり「自然と出てくる」ってことはないと思うんですよ。あとになるといいことだけが記憶に残って、大変だったことを覚えていないだけなのかもしれないなって。
--出てくるまでにはぐちゃぐちゃした時間を過ごしていたのかもしれないと?
そうそう。
--で、煮詰まったところで、うわっと出てきて。
そうですね。もしかしたら、その爽快感みたいな衝撃が強かった曲なのかもしれないです。
--そして3曲目の「パラダイス」は、2曲とは対照的にユルめなムードで。
この曲は、ここがパラダイスだよって場所を示すんじゃなく、自分のなかにあるパラダイス的な感覚に気づけることの良さみたいなものを、すくい上げたかったんですよね。ちょっと視点を変えてみたり、自分や自分の身近にあるものをもう少し信頼してみたりする…そういうことが、自分の「今」をプラスに変えていく気がしたんです。だから「マウンテン」と共通してる部分もあるんですよ。「マウンテン」も自分の身の丈に合った、自分なりの幅の中で暮らしていても充分にスゴイ衝撃が起きたりするんじゃないかということを書いていて。広いところや遠いところばかり見るんじゃなく、まずは近くから覗いてみないともったいないって思うんですよね。そこに、すごくいいものがあるかもしれないのにって。
--その「身近にあるパラダイス」のイメージって、映像にするとどんな感じなんですか?
ちょっと和風なんですけど、「裸の大将」っていうドラマのオープニングとかエンディングとかのシーン……山下清が向こうに歩いていく感じの。芝生というか緑が一面にあって、その真ん中に道があって、後ろには海もあったりして。で、おにぎりとか食べながらっていう。自分がここにいることとか、おにぎりを食べてることの幸せとか、そういうシンプルさをすごく感じるんですよね。
--シンプル・イズ・ベストな方向ですね。
たぶんそっちの感覚だと思います。いっぱい見なきゃいけないとか、いろんなものが目に入ってきたり感じたりとか……そのなかで自分がわからなくなることってあるじゃないですか。自分にとってのいいものは何だろうとか、本当は何が欲しかったんだろうとか。そういうのをちゃんと見極められるようでありたいと思いますね。
--今はいかがですか? 欲しいもの、やりたいことなど、今年の抱負は?
昨年は初めていろんな場所でライヴをやったのもあって、肉体的に充実してた感じがあったんですね。動いてるな、って感じが気持ちよかったなって。そんななかで「もっとやることあるかも」と思えてきたことがあるので、それを今年に繋げていきたいなあと思ってます。すごい細かいことだと、たとえば次にリリースするもののジャケットの形とか、音楽制作のレベルを上げるとか、ライヴの演出とか。やりたいことっていうより、次回は必ずやるだろうなっていうものばっかりなんですけどね。
--でも、そういう身近な小さなことを積み上げていくことによって…。
そう、さっき言ってたみたいに、そういうちょっとずつが、最終的には遠いものとか大きな理想みたいなものに繋がっていくのかなって思うんですよね。
<インタビュー・文 / 河野アミ>



