ARTISAN de la MUSIQUE

ARTISAN de la MUSIQUE 2010年4月号・TV AGE - P.01

今回は<TV AGE シリーズ>の中核を成すCM音楽に深く携わった二人のアーティストの作品をご紹介。我が国のCM音楽の開祖・三木鶏郎の作品を集めた企画盤『三木鶏郎リリカル・ソングス』、そしてコマソンの女王・天地総子が服部メロディを歌った『天地総子と東京ブギ・ウギ+8』の2タイトル。

 

 

三木鶏郎リリカル・ソングス まずは我が国のCM音楽の開祖にして冗談音楽で爆発的な人気を誇った作曲家・三木鶏郎の作品集『三木鶏郎リリカル・ソングス』。彼は生前、自作を「Lyric」(叙情)、「Comic」(喜劇)、「satire」(風刺)、「編曲希望曲」、「自薦ベスト30」などおよそ22ものカテゴリに分けてリスト化しており、そのいずれもが作者ならではの観点で細かく分類されていた。なかでも興味深いのが“リリカル・ソング”と呼ばれる「Lyric」のカテゴリで、その大半が「自薦ベスト30」に含まれている。実際「Lyric」に分類された楽曲は、聴けば誰もが納得する名曲揃い。一度耳にしたら忘れられないキャッチーなフレーズと軽快なリズムに彩られたCM音楽、コミック・ソングと異なり、“リリカル・ソング”は、時に優雅に、またある時は寂寥感に満ちたセンチメンタルな旋律で、聴き手を魅了してやまないのだ。平易な言葉で深い感情を表し、季節の移ろいを描いたそれらの楽曲は、時を経てなお瑞々しく色褪せることがない。

本作『三木鶏郎リリカル・ソングス』は、そうした「Lyric」に焦点を当てた作品集で、その大半がこれが初音盤化となるものだ。過去に編まれた作品集では別の歌手が歌った曲、これまで放送で一度紹介されたきり未音盤化だった曲、あるいは既発盤とは異なるテイク。例を挙げれば、朝日放送(大阪)『ABCホームソング』で芦野宏が歌った「初恋」や、文化放送「みんなでやろう冗談音楽」で楠トシエが歌った「影絵のワルツ」など、全25曲のうち19曲が初音盤化となる。いわば従来の編集盤の対極に位置する作品集だ。

選曲にあたっては、前述の「Lyric」にカテゴリされたリストに目配せしつつ、その選に漏れた楽曲も視野に入れ、そこから既発盤との重複を考慮して、最終的に筆者の判断で厳選、その上でアルバムに『三木鶏郎リリカル・ソングス』のタイトルを冠した。三木は「Lyric」のカテゴリに20曲選出しているが、本作にはそのうちの14曲を収録。残る6曲のほとんどは既発盤で聴くことが出来る。

本作に収めた25曲は、若干の齟齬はあるにせよ、三木が謳った“リリカル・ソング”の定義から大きく外れてはいないだろう。本作が、彼の作曲家としての才能はもとより、作詞家としての才能にも耳を傾ける良い機会になれば幸いである。

 

三木鶏郎の輝かしい業績は、過去にCM音楽はもちろんのこと、ラジオ、テレビ番組主題曲や、彼がその名を轟かせるきっかけとなった『日曜娯楽版』のために書かれた楽曲、エノケンや楠トシエのために書いた楽曲など多様なジャンルのなかから編まれた選集や各種企画盤が好評を博していた。しかし、クラシックのスタイルを基に抒情的な詩を得て発表された“リリカル・ソング”がまとまるのはこれが初めて。是非とも“冗談音楽”とは違った側面に触れて欲しい。

 

 

天地総子と<br />東京ブギ・ウギ+8 一方、本作は今年歌手活動50周年を迎える天地総子が、コロムビアでレコーディングした数多くの楽曲のなかから、アルバム『天地総子と東京ブギウギ』(74年2月発売)を中心に、番組主題歌やオリジナルソングまで、発表時期やジャンルを横断して編んだ作品集である。本シリーズ《TV AGE》では、彼女が歌ったコマーシャルソングを中心に編んだ『天地総子大全/フーコのコマソン・パラダイス』(07年9月発売)を発売済みだが、本作はいわばその姉妹編。その大半がこれが初CD化曲となる。まさに満を持しての登場といえるだろう。ボーナストラックとして収録された8曲は天地のために書かれたオリジナル・ソングと彼女が三代目を務めた『オバケのQ太郎』の主題歌/挿入歌。いずれも初CD化である。

とはいえ、ここに収録された20曲は彼女のキャリア全体からすれば、ごく一部に過ぎず、まさに氷山の一角も同然だ。実際、彼女は特撮やアニメ関連の主題歌・挿入歌の録音も多く、歌謡曲の分野でも他社を含め複数のシングルを発表している。それらについてはいずれ別の機会にまとめられることだろう。これを機にさらなる発掘が進むことを期待したい。

天地も初代コマソンの女王こと楠トシエと同様に三木鶏郎作品を複数曲歌っており、未音盤化の楽曲が存在する。それらもいずれ今後、何かしらの形で企画盤に収録出来れば幸いだ。

 

 

※次回は作曲家・渡辺岳夫の作品集『One Man’s Music渡辺岳夫の世界』(アニメ/特撮編、ドラマ編)2タイトルと、彼の軌跡を追った証言録『渡辺岳夫の肖像』を逸早くご紹介する予定。

 

 

【音楽職人トピックス】



濱田高志による
<マンスリー公開講座>のお知らせ。


TV AGEシリーズ監修・濱田高志が、2010年1月より、池袋コミュニティ・カレッジに於いてマンスリー公開講座を開催しています。
詳しくは、こちら

<公開講座>
『ヒットメーカーが語る作品誕生秘話』

テレビ・映画音楽からアニソン、歌謡曲にCMソングまで、職業作家が様々な分野で発表した作品を、作家自身の証言と共に検証する特別講座。テーマに沿ったゲストを交え、名曲誕生の瞬間に迫ります。
【講師:濱田高志】

2012年1月28日(土)18:30~20:30
『孤高の作曲家・平岡精二』
作編曲家にしてヴィブラフォン奏者の平岡精二の活動を網羅的に辿る特別講座。未CD化曲を中心に自作自演、提供曲、映画音楽などをたっぷり紹介します。

2012年2月25日(土)18:30~20:30
『生誕80周年記念集中講座:
ミシェル・ルグランその活動の軌跡[1[』

2012年に生誕80周年を迎える作曲家ミシェル・ルグランの活動をジャズ、映画音楽、提供曲など全てのジャンルを網羅しながら時系列に沿って辿る集中講座(全5回)。第1回はデビューから60年代初頭までの活動を振り返ります。

2012年3月17日(土)18:30~20:30
『生誕80周年記念集中講座:
ミシェル・ルグランその活動の軌跡[2]』

第2回は「シェルブールの雨傘」を中心に貴重なデモや関連楽曲を映像と共に紹介。

池袋コミュニティ・カレッジ
(豊島区南池袋 1-28-1
西武池袋本店別館 8・9階)

●受講お申し込みに関する詳細は、 池袋コミュニティ・カレッジHPをご覧ください。
また、お電話でのお問い合わせは、03-5949-5486まで。
濱田高志(ハマダ タカユキ)
音楽ライター兼アンソロジスト。これまで国内外で企画・監修したCDは300タイトルを数える。現在は「イージーリスニング・ステーション」(USEN)の選曲や「エキスポ・ジェネレーション」、「濱田高志のトレジャー・ミュージック」(STAR digio)のパーソナリティを担当。ミシェル・ルグランからの信頼も厚く、世界初の公認本「ミシェル・ルグラン風のささやき」(音楽之友社)を執筆したほか、「コカ・コーラCMソング データブック」(ジェネオン)「Love Sounds Style読本」など編・著作多数。2007年、ロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ『フル・サークル』をコーディネイト。

詳しいプロフィールはコチラ


濱田高志ロングインタビュー
(2007年2月掲載)

濱田高志 監修・選曲・解説
「TV AGE」シリーズ公式HP


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