バンドのもつ幅広い音楽性を、あますところなく詰め込んだ1stアルバム『ACTION!』から1年。一気に知名度を高めたバンドとしては長いとも思えるタームを経て、ロッカトレンチがニューシングル「言葉をきいて/ビューティフル サン」をリリースする。ドラム/オータケ・ハヤトのメロディ・メイカーぶり、バンドの旺盛な好奇心と誠実さが存分に発揮されたまったく印象の異なる表題曲2曲。いずれもがタイアップ曲という大きなトピックを擁しているものの、その恵まれた状況に浮き足立つことなく、縛られることもなく、模索を繰り返しながら次のステップへと歩みを進めた彼らの在るべき姿が鮮やかに映し出されている。
“音楽を通して伝えること”。その意義を、山森大輔、オータケ・ハヤトの二人に訊いた。
-- ツアーを終えられて、今はようやく一段落、といったところですか。
オータケハヤト:ツアー最終日の赤坂ブリッツが無事に終わって、モード切替え中・・・と言いたいところなんですけど(笑)、制作はずっと続いていますね。
山森大輔:ツアーの打ち上げが終わるやいなや、翌朝、次の作業が待っているという(笑)。
-- (笑)。昨夏の1stアルバム『ACTION!』発表以降、リリースはひとまずお休みということでしたが、バンドとしてはどんな1年を?
山森:夏フェスに出て、アルバムのツアーをやって、今回のシングルの制作をやって、年明けてまた制作を始め、地盤固めというか、バンドとしての士気を高めて新たにスタート!って感じです。
-- その一環となるのが「Steady Rock vol.6~春のライライラライツアー2010~」だったんですね。
山森:そうです。まず自分たちの中で、このツアーをどういう位置付けにしようか、どう意味のあるものにしようか、というところから相当考えて。結果、バンドにとってすごく重要なツアーになりましたね。
-- 重要というのは具体的に言うと?
山森:今までやってきたライヴ、特にワンマンライヴって、真っ白なキャンバスに自分たちの好きな色を好きに塗れる、そういう場じゃないですか。そこでいかにロッカトレンチってものを見せるか、どういう生き様をしてる奴らなのかを知ってもらうために、今までいろいろなことを試してきたんですよ。最初の頃はあまり引き出しが多くなかったから、ただ普通にライヴをやるだけだった。そこから段々と「こうしたら、こう変われる。こういうことも出来るな。こういうのも面白いぞ」って感じで、どんどんキャパシティを広げてきたんです。そうしていろいろやった結果、今回のライヴ、春ツアーでの見せ方が、いちばん自分たちに合ってる、いちばん自分たちらしい、このバンドがあるべき姿なんだなっていう、そういう確信が持てたんですよね。そういう意味ですごく重要だったと。
オータケ:シンプルに曲に集中する。そういう見せ方というか、言ってみればこちらから投げっ放しのライヴだったんですよ、初期衝動のようなものというかね。それが俺らにはいちばん合ってるんだなと。幅広い音楽性をシンプルに投げかけることで、逆にバンドのもっているヴァリエーションが伝わりやすくなったと思うんですよ。
-- 先日の赤坂ブリッツ公演を見せていただきましたが、エンターテインメントな部分も、ストイックに歌やプレイに集中する部分も、全部がいいバランスの上に成り立ってる。そういう印象を受けました。
山森:オーディエンスに対してシンプルに自然にやったほうが、求心力は高まるんだなあっていうのを実感しましたね。
オータケ:お客さんも自由に楽しんでくれてるしね。それがいちばん健全。俺らも今回のやり方が恐らくいちばん健全だと思いますね。
-- そうですね。ライヴ・バンドとしてひとつ重要なものを掴んだ時期、絶好のタイミングでリリースされるのが今回のニューシングルということになりますが、初めてSEA BREEZE のCMで耳にした時は意外だなあというのが第一印象だったんですよ。
オータケ:ああ、明るくてアッパーで、いかにも夏!っていう曲ではないですからね(笑)。元々、曲のアイデアだけは頭の中にあったんです。それでCMの映像を見て、膨らませて。今回、ラヴソングという体裁にはしてますけど、男女のことだけでなく、動物に対してとか、家族に対してとか、友達に対しての歌っていう、そういう含みはもたせたいなと思って。
-- なるほど。
オータケ:たとえば風呂に入る時、寝る時ね。本当にひとりになる時、僕はすごい正直な人間になるんですよ。それは恐らくみんなもそうじゃないかなっていう、この曲に対してはそういう思いもあったんですよね。そこから“人間らしさ”とか“心の言葉”というものに繋がっていった。それを歌詞にしようと。でも僕はそれを恋愛のキャンバスに描いてみた。それも日常のね。だから聴く人が恋愛の歌だと思ってくれてももちろんいいし、曲のどこかしらで違う見方もできると思ってくれてもいいし。そういう展開にはしました。
-- ミドル・テンポの曲ではありますが、いかにもなバラードに仕立てないところがロッカトレンチらしいなと。
オータケ:僕はJポップを作ったつもりですけど、でもブリティッシュ・ロック的なニュアンスは大事にしたかったですよね。遅いテンポの、いわゆるどバラードにはしたくなかったんで。僕の中に“カジュアルっぽい”っていう自分だけの言葉があるんですけど、この曲もそこですね。カジュアルっぽいイメージ。聴き込んで「ああ~感動した~」みたいなのではなく、丸みがあって、BGMとしてもノリやすい感じというか。流れてきたらノッてきた、でもなんか言葉も重いな、引っ掛かるなっていう。
-- 切ない部分だけをことさら持ち上げて感動を煽るっていうのも違うでしょうし。
オータケ:ああ、それは違いますね。でも壮大にはしたかったんですよ。
-- そのスケール感がありながら大袈裟ではない、っていうのはロッカトレンチのライヴとも通底するものがありますね。
山森:それはやっぱり、直接的に求めないってことなのかも知れないですね。多分ね、みんなで一体となって荘厳な雰囲気にすることも出来なくはないと思うんですよ。でも、そうじゃないっていう。
-- 山森さんの歌がもつ説得力に対しても同じことが言えるんじゃないかと。“込めすぎない”というか。
山森:歌を歌うことに対して真正面に向き合っている、そこに誠実でありたいという気持ちは年々高まってきている、その自信だけはあるんですけど・・・ただ僕の設計図の中ではまだ2%くらいしか達成できてなかったりするので(笑)。
-- ロッカトレンチの音楽はヴァリエーションも広いので、説得力だけではどうにもならない部分もあると思うんですが。
山森:うーん、でもやっぱり僕がいちばん大切にしているのは説得力かもしれないです。たとえばボブ・ディランみたいなヘロへロな歌でも説得力はもの凄い、とかね。天才的なオペラ歌手には、その人にしか出せない説得力があるでしょうし。だから僕はいろいろな音楽、いろいろな言葉をいろいろな歌い方で表現しながら、それぞれを説得力のあるものにしていきたいんだと思いますね。いい歌には説得力がある。これは絶対だと思います。
-- それはバンドの姿勢でもある。
オータケ:そう。でも、絵でもなんでもそうですけど、やっぱりバランスは大切だし、それを枠の中でどう表現するかだと思うんですよ。でも核の部分はガツンと表れてるっていう。演奏がバカテクで、ヴォーカルにテクニックがあって声量があっても伝わらないものは伝わらないと思うし。その表現のバランスっていうのは磨いて磨いて、それを次の作品、またその次の作品という感じで繋げていきたいと思いますね。
-- 相変わらず今回のようにいい意味で聴き手を裏切りつつ、だとは思いますが(笑)、もう一方、初の両A面曲となった「ビューティフル サン」もまた「言葉をきいて」とはガラリと雰囲気が変わって。
オータケ:僕のもってる二面性というか、そのカドが立った方が出ている曲ですね。アイデアとしては夜のドライヴ。僕は田舎モンなので、都会的でクールな雰囲気の曲も好きなんですよ、ロックの中の一部分としてね。たとえばスマッシング・パンプキンズみたいな。田舎モンだから、多分、正反対のものを書きたいんでしょうね、都会で頑張って生きてきた人への憧れもあるし。でもセレブな生活をしている割には、わざわざイナたい場所で出て行って男ノリで脂ギッシュになっている、そういう人が好きなんですよ。そういう要素を含んだ、都会の夜ドライヴ、そのイメージですね。
-- 詞のモチーフはどんなところから?
オータケ:田舎から東京に出てきた若者が「さあ、やるぞ」と未来を見据えて前向きに頑張るんだけど世の中は厳しくて。いろんなことにイラついている、その心情を正直に描きました。電車なんかに乗っていろんな人を見てるとアイデアはどんどん湧いてくるし、都会で生きてる人の日常のいろんなシーンが浮かんでくるんで、最初はそれをそのまま濃く濃く描きだしてたんですけど、どうも暑苦しすぎて。
-- そこに山森さん、畠山さんも作詞に加わって。
山森:最初にハヤトくんが持ってきたモチーフを、僕らが考えて削ったり変えたりしながら作っていったんですけど、やっていくうちにルー大柴さんっぽくなっていってですね(笑)。
オータケ:ヒップホップに寄り過ぎるのはイヤだったんですよね、ロックバンドとしては。だからロックバンドのもつイナたさとしては、ルー大柴さんイメージはアリ。ヒップホップに寄ってシャレた言葉を使おうと思えば、もっといい言葉がいくらでもあるんですけど、そこにフォークロック的な要素を入れる、そのいい意味でのロックバンドらしさはやっぱり貫きたかったですね。
-- つくづく一筋縄ではいかない人たちですよねえ(笑)。ラストの「Happy Birthday」も、およそユニセフの企画曲だとは・・・
山森:でしょ(笑)。そもそもはユニセフからお話をいただいて作ったものだし、気持ちはもう大賛同してるんだけれども、そのものだけを描くのも、ストレート過ぎる表現っていうのも僕ららしくないなと思って。もう思いっきりやりました(笑)。
-- さてこのシングルを出した後、今年後半のロッカトレンチは。
オータケ:バンドの士気は高まってるんですけど、このまま突っ走るわけにもいかないんで(笑)、天然でありながら、ちょと考えつつ。常にロックバンドとしてのロッカトレンチっていうのを頭に置いて、どんなにポップであっても変わらない核がある、そういう曲をどんどん作っていきたいですね。
<インタビュー・文 / 篠原美江>




