ARTISAN de la MUSIQUE

ARTISAN de la MUSIQUE 2010年8月号・ジャケットのイラストレーション - P.01

  洋画のサウンドトラック・アルバムを熱心に収集していた頃、購入時に優先すべきは、映画本編の内容はもちろんのこと、何よりも音楽を手掛けた作曲家、次いでジャケットに採用されたイラストレーターの作風だった。

  大抵の場合、ジャケットにはイラストレーター名まではクレジットされていないから、あくまでも見た目のインパクトと筆致から推測するしかないわけだが、収集も年季が入ってくると、ひと目見ただけで、それが同一の作家かどうかがの判別が容易につくようになる。

 

  もともとアメリカン・コミックが好きだったこともあり、ニール・アダムズやフランク・フラゼッタが描くジャケットは片っ端から買い集めた。とりわけお気に入りだったのが、一連のDCコミックのヒーローたち、「スーパーマン」や「バットマン」の企画盤。時おり、カーマイン・インファンティーノやガルシア・ロペスによる描き下ろしも混じっているが、私は断然ニール・アダムズの力強いタッチが好みだった。

  また、フラゼッタだと、バート・バカラックが主題歌を手掛けた『何かいいことないか子猫チャン』(65年)や『紳士泥棒/大ゴールデン作戦』』(66年)、それにクリント・イーストウッドが主演し、ジェリー・フィールディングが音楽を手掛けた『ガントレット』(77年)のサントラがお気に入りだ。コミカルでライトなものからダイナミックなものまで何でも描き分ける技量には脱帽するしかない。

  また、漫画家あすなひろしも手本にしたと云われるボブ・ピークが描いたジャケット・イラストレーションも素晴しい。『唇からナイフ』(66年)や『殺しのエージェント』(66年)、『カレードマン大胆不敵』(66年)、『オリンポスの詩』(71年)、『スター・トレック』(79年)などはひと目で彼の仕事と判る代表作だ。ほかにもソール・バスが描いた『黄金の腕』(55年)や『悲しみよこんにちは』(57年)『栄光への脱出』(60年)、『危険な道』(65年)も、作家性が見事に表れたサントラ・ジャケットだろう。

 

  さて、ここからが本題。先頃、筆者の企画による画集が二冊発売された。『Cine Aquirax』、『Black & White in Wadaland』がそれで、それぞれ宇野亜喜良、和田誠の作品を集めたものだ。

  前者は愛育社の〈AQUIRAX〉シリーズ最新刊。当初は『MONO AQUIRAX』の次に出すべく立てた企画だが、諸般の事情で繰り延べになっていた画集だ。映画雑誌キネマ旬報に97年1月から翌年3月にかけて連載された「シネマの船がゆく」に描き下ろしを加えて再構成したもので、宇野独自の視点で書かれた文章が添えられることで、画集としては勿論のこと、映画ガイドとしての側面を併せ持つ作品集になっている。

 

  一方、和田誠の『Black & White in Wadaland』は、前述した宇野の『MONO AQUIRAX』そして同書の増補改訂版『MONO QUIRAX+』と同様に、モノクローム・イラストレーションで構成した作品集。こちらは和田の自選により約3,000点を掲載、何と700頁を超えるボリュームになった。なかには未発表の下描きや映画の絵コンテなども含まれている。演劇ポスターや星新一、谷川俊太郎、三谷幸喜らの小説やエッセイに添えられた挿絵もふんだんに掲載されているため、きっとどこかで目にした作品があるはずだ。

  そんな二人はそれぞれ、アナログの時代から現在まで、数々のジャケット・イラストレーションを手掛けている。和田はこれまで童謡から歌謡曲、ジャズ、効果音集まで多岐に亘るジャンルのジャケットを描いてきたし、宇野もまた間断なく様々なアーティストのジャケットを手掛けてきた。私が学生の頃、宇野が手掛けた布袋寅泰の『GUITARHYTHM』(88年)のジャケットを目にした時は心底驚いたが、10月にはBUCK-TICKの新作『RAZZLE DAZZLE』が宇野の描き下ろしだそうで、次はどんな手で驚かせてくれるのか、今から楽しみだ。

 

  そんな訳で、今回は彼らが手掛けたCDジャケットをギャラリー風に紹介する。とくとご覧頂きたい。

 

 

V.A.
『宇野誠一郎 作品集』
(04年5月)

戸川昌子
『ラスト・チャンス・キャバレー』
(04年12月)

SHAKALABBITS
『ダズリングスープ/シルク』
(06年9月)

SHAKALABBITS
『モノローグ』
(06年11月)

SHAKALABBITS
『嘘を混ぜ込んだ真実のスープ』
(07年3月)

MERRY
『M.E.R.R.Y.』
(07年11月)

V.A.阿久悠を歌った100人
『勝手にしやがれ』
(07年11月)

黒色すみれ
『片羽の天使のパバーヌ』
(09年5月)

 

 

 

V.A.
『老人探偵団とガリガリ博士の犯罪』
(72年4月)

デューク・エイセス
『デューク・エイセス50』
(05年5月)

V.A.
『上を向いて歩こう 永六輔作品集』
(07年5月)

V.A.
『ポートレイト・イン・ジャズ』
(98年5月)

V.A.
『ポートレイト・イン・ジャズ
和田誠・村上春樹セレクション』

(98年6月)

V.A.
『オリジナル・サウンドトラックによる
武満徹 映画音楽』

(06年10月)

V.A.
『桜井順CM WORKS』
(07年12月)

V.A.
『こまつ座の音楽
宇野誠一郎×井上ひさし』

(09年9月)

 

 

 

【展覧会情報】

企画展「宇野亜喜良展」
会場:刈谷市美術館
会期:20010年9月18日(土)~11月3日(水・祝)
詳細:http://www.city.kariya.lg.jp/museum
/exhibition_2010_aquirax.html
企画展「和田誠の仕事」
会場:たばこと塩の博物館(東京)
会期:2010年9月11日(土)~11月7日(日)
詳細:http://www.jti.co.jp/Culture
/museum/WelcomeJ.html

 

 

 

【音楽職人トピックス】



濱田高志による
<マンスリー公開講座>のお知らせ。


TV AGEシリーズ監修・濱田高志が、2010年1月より、池袋コミュニティ・カレッジに於いてマンスリー公開講座を開催しています。
詳しくは、こちら

<公開講座>
『ヒットメーカーが語る作品誕生秘話』

テレビ・映画音楽からアニソン、歌謡曲にCMソングまで、職業作家が様々な分野で発表した作品を、作家自身の証言と共に検証する特別講座。テーマに沿ったゲストを交え、名曲誕生の瞬間に迫ります。
【講師:濱田高志】

2012年1月28日(土)18:30~20:30
『孤高の作曲家・平岡精二』
作編曲家にしてヴィブラフォン奏者の平岡精二の活動を網羅的に辿る特別講座。未CD化曲を中心に自作自演、提供曲、映画音楽などをたっぷり紹介します。

2012年2月25日(土)18:30~20:30
『生誕80周年記念集中講座:
ミシェル・ルグランその活動の軌跡[1[』

2012年に生誕80周年を迎える作曲家ミシェル・ルグランの活動をジャズ、映画音楽、提供曲など全てのジャンルを網羅しながら時系列に沿って辿る集中講座(全5回)。第1回はデビューから60年代初頭までの活動を振り返ります。

2012年3月17日(土)18:30~20:30
『生誕80周年記念集中講座:
ミシェル・ルグランその活動の軌跡[2]』

第2回は「シェルブールの雨傘」を中心に貴重なデモや関連楽曲を映像と共に紹介。

池袋コミュニティ・カレッジ
(豊島区南池袋 1-28-1
西武池袋本店別館 8・9階)

●受講お申し込みに関する詳細は、 池袋コミュニティ・カレッジHPをご覧ください。
また、お電話でのお問い合わせは、03-5949-5486まで。
濱田高志(ハマダ タカユキ)
音楽ライター兼アンソロジスト。これまで国内外で企画・監修したCDは300タイトルを数える。現在は「イージーリスニング・ステーション」(USEN)の選曲や「エキスポ・ジェネレーション」、「濱田高志のトレジャー・ミュージック」(STAR digio)のパーソナリティを担当。ミシェル・ルグランからの信頼も厚く、世界初の公認本「ミシェル・ルグラン風のささやき」(音楽之友社)を執筆したほか、「コカ・コーラCMソング データブック」(ジェネオン)「Love Sounds Style読本」など編・著作多数。2007年、ロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ『フル・サークル』をコーディネイト。

詳しいプロフィールはコチラ


濱田高志ロングインタビュー
(2007年2月掲載)

濱田高志 監修・選曲・解説
「TV AGE」シリーズ公式HP


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