ARTISAN de la MUSIQUE

ARTISAN de la MUSIQUE 2010年11月号・ROUND TABLE - P.01

  くっきりとした輪郭を持つポップなメロディと、色彩感豊かで鮮やかなサウンドに定評があるROUND TABLE。12月15日に発売されるテレビアニメ『それでも町は廻っている』のオリジナルサウンドトラック・アルバム『GO ROUND & ROUND IN THE TOWN!』は、彼らが初めて手掛けた劇音楽集だ。同アルバムは番組の劇音楽としてはもちろんのこと、映像と切り離した際、ROUND TABLEの新作としても楽しめる意欲作に仕上がっている。
  今回は同作の音楽プロデューサー福田正夫氏立ち会いのもと、メンバーの北川勝利氏に劇音楽の制作秘話、さらには最近の提供曲について話を聞いた。

 

--この度『それでも町は廻っている』のサウンドトラック・アルバムが発売されますが、そもそも劇音楽を手掛けられるのはこれが初めてなんですね。

 

北川:サントラに関しては前々からずっと興味はあって、でもその一方で周りから〈サントラは大変だよ〉って話を聞いていたので、やってみたいけど、きっと大変なんだろうなあ…と思っていたんです。で、決まったら、やっぱり〈サントラは本当に大変だよ〉ってまた脅されて(笑)。実は正式に決まる前の段階で、10個ぐらいの課題を出されて、それに対して曲を作ったんですよ。

 

--課題というのは?

 

北川:監督は僕らROUND TABLEが、普段やってる音楽以外にどんなことが出来るのかを知りたかったようなんです。だからその段階で普段は絶対に作らないタイプの曲もいくつか作りました。それこそ演歌とか。で、色々と書いたのを聴いてもらったところでなんとか合格点をいただけたようで、そのあと正式にオファーがあったんです。

 

--実作業に着手する前に既発のサントラ盤などを参考にされましたか。

 

北川:ほかの人がどういうふうにやってるのかなと思って、まずは自分が持ってるサントラを聴き直したり、あとから新たに買い揃えたりしました。でも、映画のサントラって壮大過ぎるんですよ。だからテレビのサントラも聴きましたね。もっとも、聴き過ぎてもよくないので、それは程々に、思い付いたらちょっと書いてみたり。

 

--具体的にどんな作品を聴き返されましたか。

 

北川:普通にスキャットなんかをやってるオシャレサントラ集みたいなのとか。でも、今回はそんなにスキャットを使うってことでもないのかな、と思って。実際あんまりスキャットは使ってないですしね。あとは、これまで僕らの曲がいくつかアニメのオープニングやエンディングに使われたことがあるので、そういった作品のサントラを聴き返したり。色々と聴いたなかで良かったのが、バート・バカラックが書いた「The April Fools」って曲が入ってるパーシー・フェイスのアルバムです。

 

--映画『幸せはパリで』のサントラですね。

 

北川:そう、あれがすごく良かったです。いっぱい聴いたなかで一番良かった。

 

--取り組む際に何か心掛けた点はありますか。

 

北川:作っていくなかでその都度スタッフの要求に応えていかなきゃいけないんだろうけど、あれこれ色々なことをやるよりも、今まで自分たちがやってきたことに繋がるものというか、これまで聴いてくれていた人たちがこのサントラを聴いた時に、〈あ、やっぱりROUND TABLEだね〉みたいに納得してもらえるものにしたいと思ったんです。良くも悪くも〈これ、前やってたやつじゃん!〉と突っ込みが入るような。それくらいどこかで今までの作品と繋がっているものになればいいなと考えながら作りました。

 

--そもそも『それ町』の原作はご存知でしたか。

 

北川:いや、今回お話をいただくまでは知らなくて、これを機会にすぐに読みました。やっぱり作品の雰囲気を掴まないといけないので。

 

--世界観の構築はすんなりいきましたか。

 

北川:そうですね、割とすぐ。最初の段階でメインテーマはスカがいいんじゃないかと思ったんです。ただ、最初は快調に書き始めたんですけど、途中からが大変で。

 

--アルバムの1曲目に収録されている「One Note Ska」がまさにそれですね。これ、収録曲のタイトルがどれもユニークですが、これは北川さんが付けられたんですか。

 

北川:いえ、リエちゃん(相方の伊藤利恵子)と共同作業ですが、自分が作曲したものは自分で付けてます。どうも「M-●」っていう「Mナンバー」だと作ってる最中に自分で混乱しちゃうんですよ。今回だけでなく普段ほかの曲を作る時でも、何かタイトルを付けておかないと愛着が湧かないというか、しっくりこないので、なるべく付けるようにしています。だから適当に付けておいた仮タイトルがそのまま正式タイトルになることが多いんです。曲を作り始めた時点で、パソコン上のフォルダには大体そのタイトルが付いてますね。

 

--劇伴自体はスムーズに書けたんですね。

 

北川:今までに作ってきたアルバムのなかでも、何曲かインストをやってるんですけど、そういうのって、ある種アイデア一発の思いつきでセッション風に作ってますから、メニューに沿って作るところは勝手が違いましたね。だから半分くらいまではサクサクと書けて、書いたものからメニューに線を引いて消していくと、残るのはちょっと苦手なタイプの曲でした。やっぱり得意なのから書いていくので。

 

--なるほど。では、ここで福田さんにお伺いします。本作で福田さんは音楽プロデューサーという立場ですが、具体的にどういうふうに作業を進められたんでしょうか。

 

福田:作品を作っていく上で、最終的には作曲家が監督たちと直に話すことになるんですけど、監督や音響監督は必ずしも音楽の専門知識を持っている訳ではないですから、音楽そのものを熟知されているケースが少ないんです。ですから発注の際、表現が抽象的になりがちなところがあるんですね。そんなこともあって、僕の役割としては、監督や音響監督と音楽担当、本作の場合はROUND TABLEのふたりですけど、彼らの間に立ってスタッフの要求することを彼らにうまく伝える、言い換えれば翻訳する作業、そうした立場での関わりですね。

 

--今回、福田さんがROUND TABLEを推した理由は?

 

福田:彼らの作品に『Big Wave'72』(99年7月発売)というミニアルバムがあって、それが割とサントラをイメージして作られたもので、これならサントラを任せても大丈夫って気がしたんです。それに新房監督だと現場で何が起るか判らないという恐れもあって(笑)。そうした点でも意志の疎通が図りやすい人のほうが良いだろうという読みもありました。

 

--新房監督の作品は意表をつかれるものが多いですからね。実際、音楽制作にあたって、監督からはどういった要求があったんでしょう?

 

福田:監督からは当初〈『ルパン三世』みたいな感じのフュージョンっぽい音楽で〉っていう希望があったので、それを聞いて、僕はユー&エクスプロージョン・バンドみたいなサウンドが要求されているものだと思って進めていたんです。ところがある時、急に監督が〈「オリーブの首飾り」みたいな曲が欲しいんだよね〉って言い始めて戸惑いました。それまで「フュージョン」というキーワードだったものが、どこかで「ポール・モーリア」に変わっちゃったんですよ。で、これはどう解読したらいいんだろうと思って考えたら、「編成が大きい」という点が共通していることが判って。要は大きな編成によるサウンドが欲しいんだなと理解したんです。ところが、次に打ち合せに行くと、〈今回の音楽では「浮遊感」が大事なんです〉と言われて、はたと考え込んでしまった(笑)。
その時点で作業が進んでいた曲を監督に聴いてもらったら〈「浮遊感」のある曲がないんだよね〉と言われたので、具体的にどういう感じの曲が必要なんですかと尋ねたんですよ。そしたら〈ホラーっぽい曲〉って回答で。

 

--ホラー、ですか。

 

福田:さらに具体的に聞いてみると、映画『エクソシスト』のサントラみたいな曲が欲しいということで。あぁ、つまりマイク・オールドフィールドみたいなサウンドってことなんだ、と。で、レコーディングも最終段階に近付いたところで、慌てて北川くんにホラーっぽい曲を何曲かまとめて書いてもらったんです。

 

北川:だからレコーディングの最後のほうは、スタジオでミックス作業をして、家に帰った丑三つ時に「ホラーな恐い曲」を書いてました(笑)。で、翌朝、監督のところに持って行って、ダメ出しが出たら、スタジオでまたほかの曲のミックスをやって、家に帰って再び「ホラーな恐い曲」を書くってことの繰り返し。最後の最後で十数曲作ったんですよ(笑)。

 

福田:『それ町』って、音楽を作ってる段階では原作しか存在しないので、それに沿った形で合う合わないを推測しながら曲を作っていったんですけど、結果、アニメになったものを見せてもらったら、少し原作とはテイストが違っていて、確かに新房監督が話されたようなホラー的な演出がいろいろあって、そこでようやく、あっ、ホラーってこういうことだったんだ! と。

 

--「ホラーな恐い曲」、おそらくアルバムに収録された「丸子商店街の悪夢」なんかがそれに当たると思うんですが、確かに随所で流れていますね。あとはスカによるメインテーマ「One Note Ska」が毎回かかるので印象に残っています。でも、今回サントラの音源を聴いて驚いたのが、現時点ではまだ本編では使われていない曲がたくさんあったということです。そういった意味で、リスナーもアルバムを聴くと驚くんじゃないですか。サントラではあるけれども本編とはまた違った世界が広がっている気がします。一粒で二度おいしいというか、アルバムだけでも充分に楽しめる内容になっていますね。「One Note Saturday Night」なんて主題歌「DOWNTOWN」と地続きになっていて、思わずニヤリとしてしまいます。北川さん自身は『それ町』の放送をご覧になっていかがですか。

 

北川:やっぱり自分たちが作った音楽がテレビから流れてくるのは嬉しいですね。でも、僕の『それ町』に対する最初の印象は、真綾ちゃんの歌う主題歌みたいに弦が入ってもっとホワッとした音楽が鳴ってるイメージで、実際、僕もそういった曲も書いたんですけど、番組が始まってみたら最後にまとめて書いたホラーな曲がたくさん使われてて、あれっ? って感じでした(笑)。そういった意味で原作とは少し違う印象ですけど、クオリティ的にはすごくよく出来ていて素敵だなと思います。

 

--レコーディングはいかがでしたか。

 

北川:大変だったんですけど、編成を含めかなり豪華なので、僕はすごく楽しかったです。いつもやってる素敵な人たちを集めて録音したので。作業はレコーディングだけで4日、ミックスで4日かかりました。

 

--今後もサントラ制作には関わっていきたいですか。

 

北川:今回の仕事でサントラをやってみたいという気持ちの第一歩を踏み出したので、今後また機会があればやってみたいですね。サントラって普段やってる音楽と違って曲数が多いから、やっていくうちに段々、自分の限界を越えて書いていかなきゃならないとは思うんですけど。

 

--今回はまだ限界を越えてないですか。

 

北川:ええ。今回はこれまで自分たちがやってきたことを角度を変えてやってみようということで取り組んだので。ただ、最後のホラーは越えそうになりましたね(笑)。でも、ホラーはこれまで書いたことがなかったので、あ、やれば出来るんだ! みたいな発見があって、自分でも新鮮でした。むしろ今後またこういったホラーなのやらして下さいよ! みたいな気持ちです。あとアニメはもっとやりたいですね。制約があってもどんどんチャレンジしたいです。

 

--アニメは普段からよくご覧になりますか。

 

北川:この仕事に関わるようになってから意識的に見るようになりましたけど、それ以前も夜起きてると、夜のゴールデンタイムというか、深夜帯でたくさんアニメが放送されてるじゃないですか。どこのチャンネルに変えても何かしらやってますから、結構見てますね。

 

≫次ページへ続く

 

【音楽職人トピックス】



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濱田高志(ハマダ タカユキ)
音楽ライター兼アンソロジスト。これまで国内外で企画・監修したCDは300タイトルを数える。現在は「イージーリスニング・ステーション」(USEN)の選曲や「エキスポ・ジェネレーション」、「濱田高志のトレジャー・ミュージック」(STAR digio)のパーソナリティを担当。ミシェル・ルグランからの信頼も厚く、世界初の公認本「ミシェル・ルグラン風のささやき」(音楽之友社)を執筆したほか、「コカ・コーラCMソング データブック」(ジェネオン)「Love Sounds Style読本」など編・著作多数。2007年、ロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ『フル・サークル』をコーディネイト。

詳しいプロフィールはコチラ


濱田高志ロングインタビュー
(2007年2月掲載)

濱田高志 監修・選曲・解説
「TV AGE」シリーズ公式HP


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