GIRLS 『The Girls are Mine』

GIRLS Special Interview

昨年リリースされたファースト・アルバム『アルバム』でUSインディーシーンの新鋭として注目を集めたガールズ。人を食ったようなそのバンド名、バンド名通り女子たちを従えたインパクト十分のアーティスト写真、そして何より多彩なポップ・センスが爆発したサウンドで多くのロックファンを魅了した彼らのセカンド・アルバムが到着。ファーストで傑作を作り上げたプレッシャーはまったくなく、逆にそれを楽しむかのように、新しいメンバーを迎えるとともに、スタジオレコーディングされたサウンドに改めてガールズの計り知れない可能性を感じさせる。クリストファー・オウエンス(歌詞とメロディ担当)とJRホワイト(プロダクションとスタジオ・ワーク担当)に話を聞いた。

 

 

 --  『ファーザー、サン、ホーリー・ゴースト』を聞かせていただきましたが、2011年を代表する傑作アルバムだと思います。まず作り終えた感想から教えて下さい。


JRホワイト(以下JR):完成したすぐ後は、とにかく気分が良かったよ。自分たちが満足できるかどうかだけを考えて制作して、結果その通りになったからね。でも、完成したあと、1ヶ月くらいはアルバムを聴けなかったんだ。

 

-- それはなぜ?

 

JR:ミックスやプレスして戻ってきたマスターはチェック用に聴いたけど、自分から進んでは、リハーサルが始まるまで聴けなかったんだ。受け入れるのに時間がかかるんだよ(笑)。でも実際に聴いてみたら、ハッピーだった。そして、とにかくホッとしたし、すごく興奮したよ。


-- 大傑作間違いなしだと思います。シンプルに聞こえるようで細部にこだわったアルバムであることがわかります。レコーディングはどのくらいの時間がかかったのですか。


JR:1ヶ月くらいかかったかな。ミキシングなんかを含めると1ヶ月半。いつから始めたかは覚えてないけど、レコーディングを始めたのは多分今年の5月だったと思うよ。

 

 

-- 集中して作られたんですね。前作はホームレコーディングで、今回はスタジオレコーディングになっています。そういう面での変化はいかがでしたか。

 

JR今回新しくトライしたのはその通り、スタジオでのレコーディングなんだ。あとはエンジニアを起用したこと。おかげで、レコーディングが本当にスムーズにいったよ。共同プロデューサーでエンジニアのダグはレコーディング・セッションの管理を経験しているから、作業の流れをちゃんとわかっていて助かったよ。いくつか新しい機材を使ったけど、スムーズにいったし、彼のおかげで僕たちはあまり考えなくてすんだんだ。流れをコントロールしてくれたから、オーガナイズがしっかりできていて楽だったね。


-- ダレン・ワイス(ドラム)とジョン・アンダーソン(ギター)という新しいプレイヤーを引き入れたことも大きかったと思います。

 

JRジョンと会ったのは、もうずっと前。あいつがマイスペースでメッセージを送ってきたんだ。ファースト・アルバムよりも前の話だよ。で、サンフランシスコに来たらどうかと俺たちが誘ったんだ。しばらく一緒にプレイしていたけど、彼はツアーに出るのが嫌でバンドを離れて行ってしまってさ。で、今回また戻ってきたいっていうからライアン(前のギタリスト)が抜けたあとに、レコーディングの時は一緒にプレイしていたんだ。で、制作が終わったらまた辞めちゃって……。まぁ、なんとなくわかってはいたけどね。ドラマーのダレンは、僕たちが前ジュリアン・カサブランカスのバンドと一緒にツアーをやっていたときに、彼にドラマーを探しているんだって話したら、ダレンの番号をくれたんだ。彼がサンフランシスコにきた時に、彼のドラムを見たんだけど、それが最高でさ。パズルでずっと見つからなかったピースが見つかって、ピタっとはまった感じだった。

 

-- アルバムでは素晴らしいドラムを聞かせていますね。

 

JRダレンは真面目なミュージシャンで、まだ24歳で僕たちより若いんだけど、毎日ずっと一人でドラムを練習してるんだ。ヒップホップ・アーティストのバックでドラムを叩くのが夢らしいよ(笑)。アウトキャストとかジェイZとか(笑)。そうそう、彼の兄弟のイヴァンもバンドに入ったばかりなんだ。ジョンのかわりにね。イヴァンは弟のダレンよりは真面目じゃない(笑)。でも面白い奴で、ジョークを連発しているよ。彼はハード・ロック・バンドでプレイしていたんだ。ロスで生まれ育ったから、友達もたくさんいて、僕たちとの共通の友達も結構いるしね。だからすぐに打ち解けた。彼も最高のギタープレイヤーだね。二人ともハンサムなんだけど、ルックスのいい兄弟がバンドにいるっていうのもプラスの点だな(笑)。

 

-- それはライブが楽しみです。ファーストとこのセカンドの間に、昨年のEP『Broken Dreams Club』がありました。あれを作ったことはどのような意味があったと感じていますか。

 

JRあれは、ヘビーなツアースケジュールの気分転換って感じだったね。ツアーの合間に空いた時間ができたから、ちょうどいいってことで曲をレコーディングすることにしたんだ。まだツアーの途中だったから、アルバムを作るには時間が短過ぎてEPにしたんだけど、あのEPでは色々と挑戦してみることができた。ホルンを使ったり。EPをレコーディングすることによって、この準備ができたんだ。最初はそんなつもりで作ったわけじゃなかったけど、あのEPをスタジオで作ってみたおかげで、今回もスタジオでレコーディングしようってことになったし、結果的にアルバムの予行練習というか、そんな感じになった。今となってはそう思えるよ。


-- なるほど。今回のアルバムに収録された10曲はどの曲もメロディの構築の仕方が高度ですね。ファーストに比べると、メロディが立ったギターポップが中心になっている気がします。

 

JRこうしたことは個人的なフィーリングによるとも思うんだ。僕はアルバム単位で曲は書かないから、いつもアルバム自体にテーマがないんだよ。

 

-- でも「Say I Love You」とかを聞くと、ビートルズというか、ティーンエイジ・ファンクラブを思い出します。典型的ギターポップな気がしますが。


クリストファー・オウエンス(以下CR)全然気にしていないな(笑)。意識したといえば、この曲はエバリー・ブラザーズかな。ビーチ・ボーイズみたいにも聴こえるかもね。エバリー・ブラザーズはビーチ・ボーイズのお気に入りバンドだから。エバリー・ブラザーズは、全てのルーツだよ。全ての人に影響を与えていると思う。若者に、彼らみたいになれたらって思わせる存在なんだ。

 

-- エバリー・ブラザーズでしたか!

 

CR彼らは面白いよ。だって、彼らはカントリーボーイズなのに、ロックやブラックミュージックから音楽をはじめたんだからね。ジャンルを超えているんだ。ビートルズやローリング・ストーンズも彼らからの影響は強いと思うよ。誰にでも音楽への意欲をもたせたのはエバリー・ブラザーズのおかげなんだ。俺たちもカッコいい男たちがハーモニーを歌うっていうのをやってみたかったんだ(笑)。

 

-- ところで、二人が好きなバンドで、好きなセカンドアルバムってありますか。

 

JRあるある。たくさんある。真っ先に思いつくのは、レッド・ツェッペリンのセカンド。あれはマジで大好きだよ。でもまぁ、彼らの他のレコードも素晴らしいけどね(笑)。あとはクイーンズ・オブ・ザ・ストーンエイジ。そんな感じかな。俺たちはバンドをカテゴライズしたり、セカンド云々という風には区別しないんだ。レコードを5枚くらいリリースしてから初めて、どの方向性が自分たちにベストかを決めることができるんじゃないかな。

 

-- このアルバムで聞けるギターのサウンドはローコードでエフェクターをかけずにアンプにつないだそのままの響きで弾いているような感じがいいですね。そのほか、ラウドなものからアコースティックなものまで、ギターのサウンドで雄弁にガールズの世界観を作っていますね。


JR確かに今作では、ギターが目の前にくるような感じにレコーディングしたかったんだ。スピーカーからダイレクトに聴こえてくるようにね。でも、やりすぎるのはやめたんだ。オーバーダブは絶対にナシ。ギターはあってもひとつか2つ。シンプルなままにしたんだ。俺たちにとって大切なのは、コンセプトを持たないことなんだ。基本的にひとつひとつの曲がそれぞれ独立しているように作りたいんだよ。


-- ポップであることを目指しているように感じる一方で、アルバムのハイライトは、内省的で、ダークでヘビーな「Vomit」や「Forgiveness」のような気がします。


JR「Vomit」は4~5年前に書いた曲なんだ。「Forgiveness」はタイトルのまま、”許し”についての曲。もし自分が悪いことをして、「ゴメン」と君に言うとする。それもひとつの解決だけど、それだけでは終わりじゃない。君が「許すよ」といって初めて解決する、そんな内容かな。


-- それにしても、「Vomit」はとても感動的なナンバーですね。ガールズの代表曲の1曲という気がします。ビデオを見てもシリアスな意味をもっていることがわかりますが。

 

CRビデオにこだわりはないんだよ(笑)。特に意味はなくて、美しいイメージってだけだね。ただ最初から最後まで見てって感じ。この曲で表現しているのは……人についてってこと。他人からの愛が必要すぎる人。彼は毎日毎日、愛を探して探して、探しまくる、そういう人の歌なんだ。例えば、誰かアル中の人がいたら、最初に必要なのは、自分がアル中であること、問題を抱えていることを認めること。この曲は、自分にとってその”認めること”を歌っているんだ。自分は問題があると曲の中で認めることなんだ。

 

-- 「Forgiveness」は感動的な曲でまるでレッド・ツェッペリンの「Rain Song」のような崇高さがありますね。

 

JRそうだね。この曲ではドラムをたくさん使うこと心がけたんだ。その影響かもしれないな。


--このアルバムでさらにアーティスティックに変貌されていて、バンドとして大きく飛躍したと思えますが、いかがですか。

 

JR人間だから成長するのは当たり前だよね(笑)。前作は僕とクリスの二人だけで作った感じだったけど、今回は他の人が関わって、バンドって感じだったのがよかったのかな。バンドのメンバーが制作に関わってくれて、ガールズが成長したんだと思う。でも、作品の内容自体やマテリアルはあまり変わってないよ。成長したところは、やっぱりレコーディング・プロセスだね。最初にも言ったように、部屋の代わりにスタジオでレコーディングしたとか、そういう部分が大きかったよ。

 

-- 『Father Son Holy Ghost』というアルバムタイトルの意味を教えてください。

 

CR聖書からの引用なんだ。アメリカ人なら誰でも知っている言葉。イエスと精霊と神は三位一体ということなんだけど、あえて皆が聞いた事のあるフレーズを使うことにした。もうひとつは、どんな作品でも、Origin(原点)とIdentity(アイデンティティ)、そしてSpirit(魂)があると思うんだ。だから、俺にとってFather, Son, Holy Ghostの3つは、原点、アイデンティティ、魂を意味しているんだ。うまく説明できないけど、このタイトルの意味はそれなんだ。


-- では歌詞を並べたジャケットデザインの意図は?

 

CR最初は俺たちがリリースする作品のジャケットを全てシリーズにしたかったんだ。最初のアルバムも4枚の写真を並べた、EPも同じだろ? だから今回も4枚の写真にしたかったんだ。でもマネージャーが、「新鮮じゃないから、変えたほうがいいんじゃないか?」って言ってきた。俺は「今はつまらなくても、将来、作品がすべて繋がって、セットになっているようにしたい」と言ったら、最後は「君しだいだからよく考えて」って言われて……。

 

-- ファースト・アルバムもEPもインパクトのあるデザインでしたけどね。

 

CRうん。でも結局4枚の写真の案はやめて、新しいものを考えようってことになったんだ。そんな時、ある夜に三島由紀夫の『憂國』を見たんだよ。素晴らしい映画だったな。その中にでてくる女優があまりにもキレイだったから、慌ててカメラをとってきて、テレビ画面をそのまま写真にとったんだ。彼女の目の写真でそれを4枚繋げたら、すごくキレイでさ……「これにしよう!」って満場一致だったんだけど、やはりコピーライトの問題で使えないことが分かってね……。また新しいアイデアを考えないといけなくなって、結局歌詞をジャケットにすることにしたんだ。

 

-- ガールズにとって歌詞はどういう意味をもっているの。そのこだわりは?

 

CR歌詞は俺たちにとってすごく大切で、歌詞を書くときにはすごく時間と頭を使うんだ。メロディは、まるで既に頭の中に存在しているようなもので、あまり考えなくてすむんだけど、歌詞にはこだわるんだ。力強くて、意味をしっかりと持ちながらも、複雑では決してなく、シンプルであるように心がけているよ。

 

-- 今後の行く先についての見通しはいかがでしょうか。

 

JR自分たちが作品を作る度に満足できてればそれだけいいかな。いまはとにかくツアーに出るのが楽しみなんだ。前回のツアーの終わりのほうではメチャクチャ疲れていて、燃え尽きたって感じだったけど、1年半も同じ事をやっていればそう感じるのは当たり前でね。違うことをやってリフレッシュできたから、今は、新しいメンバーと新しい曲をプレイするのが楽しみなんだ。

 

-- 来日公演がとても楽しみです。では最後にガールズの生涯フェイバリットアルバムを教えてもらえますか。


CR:マイケルジャクソンの『デンジャラス』かな。

 

 

 

< インタビュー・文/竹部吉晃

 

 

 

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1. Honey Bunny
2. Alex
3. Die
4. Saying I Love You
5. My Ma
6. Vomit
7. Just A Song
8. Magic
9. Forgiveness
10. Love Like A River
11. Jamie Marie
12. Love Life
13. Martina Martinez


GIRLS(ガールズ)

カリフォルニア出身の2人組ガールズ。メンバーはChristopher Owens/クリストファー・オウエンス(歌詞とメロディ担当)とJR White/JRホワイト(プロダクションとスタジオ・ワーク担当)。ブライアン・ウィルソンによるクラシカルなカリフォルニア・ポップにローファイなフレイバーをかぶせた彼らのサウンドは、地元サンフランシスコの生活を完璧に描ききったサウンドトラックのようで、50年代のサーフ・ポップ、60年代のサイケデリア、80年愛のハードコア、そして昨今のシューゲイザーなど、様々な要素を聴き取ることができる。2009年の10月にリリースされたファースト・アルバム『アルバム』は好評価とBUZZを獲得し、年末の年間ベストアルバムのチャートでも『アルバム』は各国/各誌で上位にランクイン。ここ日本でもSNOOZER誌の年間ベストアルバム1 位をはじめ、Rockin On15位(新人ではレディー・ガガに次いで2位)、CROSSBEAT:5位(新人では1位)の評価を獲得した。

オフィシャルHP
http://www.randc.jp/girls/top.html


「USインディー・シーンの
新たなクラシックス」

2010.02.18 掲載

GIRLS 『The Girls are Mine』