齊藤ジョニー Special Interview 201207

齊藤ジョニー Special Interview Part.1

デビュー・アルバムから9ヵ月で早くも登場となる2ndアルバム『齊藤ジョニー』。先にシングルを何枚か切って聴く側の期待感を募らせたところでフル・アルバムを発表……という流れの多い昨今の邦楽界においては大胆とも言える出し方だが、なるほど、そのような攻めの姿勢に見合った聴き応えを有し、齊藤ジョニーが優れたアルバム・アーティストであることがよくわかる仕上がりになっている。
聴き手のイマジネーションを喚起する、展開自体に物語性があるメロディ。独創的で、遊び心もある歌詞。生楽器本来の響きを活かした、創意工夫のあるサウンド。それらが一体となった曲群から齊藤ジョニーという若き音楽家の瑞々しい感性と個性、そして音楽に対する熱意と覚悟がはっきり伝わってくるのだ。なおかつ曲によっては歌い方も変化させるなど自身が存分に楽しみながら作っているようで、それもまた頼もしい。
自らのバックボーンであるブルーグラス・ミュージックを滲ませながらも洗練された現在進行形のポップとして響かせることに成功したこの飛躍的な傑作を、彼はいかにしてものにすることができたのか。そこを探ってみた。


-- この前ちょっと久しぶりにライブを観たら、声がずいぶん強くなっているようだったし、表情からして以前とは違うように感じられて。ライブをたくさん重ねてきたことの成果がハッキリ表れているんだなって思ったんだけど、そのあたり、自分ではどうですか。

外から見てミュージシャンとして激的に変わったかどうかはわかんないんですけど、自分のなかでは確実に意識が変わってますね。何がどう上手くいったらいい感じになるのかっていう、そのコツみたいなのがわかってきたというか。コツって言うと軽いんですけどね(笑)。でも、ここをしっかりやろうっていうのが見えてきてるんで、ライブに関してはそれが大きいかなと思います。

-- 具体的に言うと?

まず、以前はどうしてもギターのグルーヴが自分にとって先に来てたんですけど、最近思ったのは、歌がグルーヴしてないとギターもグルーヴしないということで。しばらくバンドでやることが多かったんですけど、弾き語りもポツポツやるようになってからそのことに気付けたんです。バンドじゃないと、楽器が少ない分、音圧も下がるわけで、そこをどうやってギターであれこれやって埋めようかってことばかり考えてて、それが強迫観念になって弾き語りが楽しめなくなってた時期があったんですよ。けど、最近いろんなライブを観たりして、歌とギターがグルーヴしていればそれだけで成立するんだってことがわかって。この前のイベントで一緒にやらせていただいた広沢タダシさんがまさにそうだったんですけど。で、そこに気付けたら、逆にもうどんどんライブが楽しくなってきて。どうやったら気持ちよくなれるかを覚えた感じなんですよね。

-- もともとがミュージシャン気質だから、楽しむことよりも音のニュアンスを深く追求することのほうにばかり気持ちがいっちゃってたんだろうね。

そうなんでしょうね。でも歌がちゃんとリズムに乗ることで初めてアンサンブルとして気持ちよく聴こえ始めるっていうことを、やってるうちに覚えていって。例えば(奥田)民生さんとか、ギターもシンプルなことしかやってないのになんでこんなにグルーヴが出せるんだろって。それをずっと考えてたら、だんだんわかってきたというか。単純にストロークだけでもあんなに強い音が出せて、グルーヴも出せる。っていうのは、観ててすごく参考になりましたね。

-- (ほかの人のライブを)観て学び、(たくさんのライブを)やって学び、っていう。

はい。

-- ほかにデビュー前と今とではこのへんの意識が変わった、っていうところはありますか。

ええっと、ステージに立つときの心境とかはそんなに変わってないんですけど、演奏のとき以外のところで、自分の立場というか、自分を取り巻いてる環境であるとか、そういうことに対してちゃんと理解するようになったところはあるかも。

-- アーティストとしての自覚を持つようになったと。

はい。ハハハハ。あと、自分のどういうところが強くて、どういうところが今は弱いのかとか、そういうことも考えるようになって。アーティストの考える範疇を若干越えてるところもあるかもしれないけど(笑)。

-- マーケットとかも考えてみたりとか(笑)。

アハハハハ。いや、こういう線で売っていこうぜ! とか、そういうことは考えないですけど。でも自分の立場を理解することとか、そういうのはけっこう大きいことなのかなとは思いますね。

-- デビュー・アルバムの世の中での受け入れられ方に関しては、どういうふうに思ってました?

う~ん。まぁ、なんか思ったほど騒ぎになってねえな、みたいな。

-- もっと騒がれてもいい作品なのにな、と。

はい。「なんでだろう?」っていう。まぁでも、そういうことを考えたのが、さっき言った意識の変化にも繋がっていったんですけど。

-- 「なんでだろう?」って、かなり考えた?

かなり考えましたね。僕が並行してやってたGoose houseのほうはけっこう火が着いて盛り上がってたから、っていうのも正直ありましたし。そのなかで自分はこれからどうふうにしていこうかってことをすごく考えたし、自分が本当にやりたいことはこういうことなんだろうかとも考えて、で、その結果、Goose houseはやめたわけですけど。

-- メンバーのひとりとして盛り上がるのは当然嬉しいことだけど、だがしかし、みたいな。

だがしかし、みたいな。まぁ、Goose houseがなんであんなに盛り上がるのかっていうのも、理由はよくわかるんですよ。自分にないものが向こうにはあるので、それは見ててすごく勉強にもなったんですけど、ただそこに自分が乗っかり続けるのはちょっと…っていうのがあって。もちろん向こうではできないことを自分ではできているという自負もあるんですけど、まだあそこまで社会的に認知されてない状況が悔しくて。だからもう次は絶対に死に物狂いで、いい作品を作ってやろうって意識がありましたね。

-- なるほど。因みに『I am Johnny』というアルバムの出来自体には満足してたんでしょ?

そうですね。すごい面白い作品になったなとは思ってます。ただ、どっか自分のなかで受動的になってたところがあった。例えばステージに立てばもちろん一生懸命やるんですけど、なんのために自分はライブをやってるんだろうとか、そこまでの意識を持ってやってたかと訊かれたら、そうとも言えなくて。ただ用意されたライブを一生懸命やりますってだけじゃ、やっぱりダメなんですよ。だからまずそういうところの意識を、僕だけじゃなくてチーム全体で統一していこうって考えましたね。

-- デビューして3年でそこに気付く人も5年経って気付く人もいると思うんだけど、すぐにそういう考えを持てたというのは大きいよね。

大きいですね。はい。

-- そういうのもあって、またフル・アルバムで勝負したいっていう気持ちになったわけですか? シングルを挿んで場をあっためてからアルバムっていう出し方のほうが今は一般的なわけだけど。

それに関して言うと、実は当初シングルの話もあったんですけど、それが着地しないまま流れちゃって。でも、それがむしろよかったんですよね、結果的には。だったらアルバムとしてハンパないものを作ろう! っていうチーム全体の結束にも繋がったし。そもそも僕もシングルとかってあんまり買わない人なんで(笑)。好きになったらアルバムで買いたいし、アルバムというフォーマットに拘りがあるんで、2枚続けてアルバムで出せるっていうのは、個人的にはかなり嬉しいんですよ。まぁ、運がよかったのかなと。結果オーライ。

 

 


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New Album
 『齊藤ジョニー』

2012.7.25 ON SALE!

UICV-1020 / ¥3,000(tax in)

 

収録曲

1.夏の正体
2.D.P.T.
3.Happiness
4.お世話になります
5.Helpless
6.ぼくの友だち
7.Family Affair
8.One More Time
9.アカプルコの出来事
10.星の終わりのラブソング
11.絶品ガール
12.ハーヴェスト

 

齊藤ジョニー
昨年、デビュー前ながらTaylor Swiftのオープニングアクトに抜擢され、その時のパフォーマンスが話題となり、SUMMER SONIC、荒吐フェスなどに出演。デビュー後はNew Acoustic Campなど本格アコースティック野外フェスに「Saito Johnny & Shoestrings」と名づけたバンドスタイルで登場。ギター、マンドリン、ウッドベース、フィドルという日本では異色の「弦楽器のみ」のバンド編成で、他とは一線を画すパフォーマンスで各会場を沸かせた。昨年10月にリリースしたデビュー・アルバム「I am Johnny」はロック・レジェンドをルーツに、カントリー、ブルーグラスまで幅広いルーツ・ミュージックへのオマージュが存分に込められている。強烈なバンジョープレイやバスドラムを踏み倒すブルーグラスなロックナンバーが鮮烈な印象を残す一方で、その根底にはJ-POPに対する強い想いが伺える。
2012年3月、オースティンで開催された世界最大のミュージックショーケース・SXSWに出演。JAPAN NITEではHot Club Of CowtownのElana James(Fiddle)&Jake Erwin(Bass)と共演、帰国後はDavid BrombergのJapanTour仙台公演で共演など、海外アーティストとの交流も多く、どちらも見ごたえのあるセッションを披露し、「より攻撃的なアコーステック・ミュージック」「音楽の新たな扉」に果敢に挑んでいる。
今春開催の荒吐フェスではGrapevineの田中和将と齊藤ジョニーのプロデュース・アレンジャーでもある高野勳のユニットPermanentsと共演し、会場を沸かせた。この他にも新潟Rainbow ROCK Market、名古屋SAKAE SP-RINGなどの各地都市型フェスにも積極的に参加。併せて7月には新作アルバムの発売も決定しており、今後の動向から目が離せない。

 

オフィシャルHP
http://saitojohnny.com/