齊藤ジョニー Special Interview 201207

齊藤ジョニー Special Interview Part.2

-- 2ndアルバムの制作を始めたのは、いつぐらいなんですか。

曲を練り始めたのは、年が変わる前くらいですかね。

-- じゃあ、デビュー・アルバムを出してすぐに気持ちは次へと向かっていったんだ。

そうですね。1stアルバムを聴き返してみると、いろいろ曲作りに関して見えてくるものがあったので、そうするとやっぱりもっといいものを作りたいという意欲が当然出てきて。だから曲はずっと書き溜めてましたね。

-- 作り始めた頃のアルバムのビジョンはどういうものだったんですか。

根底にあったのは、とにかくいい曲を作りたいってことだけだったんですけど。じゃあ、いい曲ってなんだろうっていったら、メロディにしろ歌詞にしろ、何か芯があるものというか。そう思って単純に1曲1曲作っていったんです。アルバム全体がどうなるかは、始めはわかっていなかった。で、書いていって、自分でも「これ、いいんじゃないか」って思った曲をまわりの人に聴かせると、やっぱり「いいね」って言ってくれるわけですよ。そうやって自分でも確信を持ったのは、自分の強みはいいメロディを作れることだな、と。そういうところに落ち着きまして。

-- うん。僕もそう思う。

ありがとうございます(笑)。で、プロデューサーにも「メロディだけで既にストーリーができてる」って言ってもらえたんですけど、そうすると歌詞も付けやすいんですよね。アレンジャーの方も、そういう曲だとどんどんアイディアが湧いてくるみたいで。もう、デモを聴いた段階で「これ、いいアルバムになるね!」みたいな感じだったんですよ。

-- 前作は聴くほどにジワジワ味がでてくるアルバムだなと僕は思ったんだけど、今作は一聴してガツンと響いてくる曲が増えている。届きやすいメロディ、多くの人の心を掴むメロディばかりのアルバムになっているなと思ったんです。端的に言うなら、前作よりもポップになったというか。そのへんの意識はありましたか。

ありましたね。今回は完全に全部が新曲で、昔書いた曲が1曲もないんですよ。まっさらなところから、ただいい曲を作りたいという意識だけで作り始めることができたので。前のアルバムは半分くらいが昔書いた曲で、古い曲をリ・アレンジするっていうことが自分にとってはけっこうストレスだったりもしたので、そこは大きな違いでしたね。あと、さっき言ったように、最初にあったシングルの話が帰着しなかったので、やっぱりちょっと悔しかったんですよ。その分、上の人を一発で納得させられるぐらいのものを作らないと気が済まないっていうのもあって。

-- 「こういう曲なら、文句はないだろ?!」と。

はい。「こういうことなんでしょ?!」みたいな。ハハハハ。

-- でも、その負けん気に火が着いて、こうやっていい曲がたくさんできたんだから、よかったよね(笑)。

そうですよね(笑)。

-- よりポップに、っていう意識がやっぱり強くあったわけだね。

はい。ただ、ポップなんだけど、ちょっとヒネリというか、ひねくれた部分も残しつつ。攻撃的なところも残したいねっていうのは、チームのなかでみなさん考えてくれてまして、それでこう、ほどよいバランスになったんじゃないかと。

-- しかも極めて上質なポップだし。

そうですね。まさに上質だと思います。

-- いやぁ、本当にいいメロディの詰まった、いいアルバムだなと思いましたよ。1曲目の「夏の正体」のイントロからして、スピーカーから伝わってくる音の波動が前作とは違う。エンジニアさん、前作から変わりました?

はい。今回は秋窪(博一)さんという、斉藤和義さんとか風味堂とかをやってらっしゃる方なんですけど、またこの方がすっごい音楽ツウなんですよ。で、今回はアナログをまわして、プロトゥールスを通してっていう、ハイブリッドな感じでやったんですけど、その成果もでてるんだろうなと思います。アナログまわして、ベーシック・トラックは基本的に1発録りだったんで、その緊張感が最後まで残ってるなとも思うし。

-- なるほど。ザクザクした感じもあるし、キラキラしたところもあるし、非常に広がりのある音だなぁと思って。聴いた瞬間、耳に音が飛び込んでくる。

はい。いや、僕も「今回、アナログ使ってみようかと思うんだけど」っていきなり言われて。で、録った音をモニターで聴いた瞬間、ビビっちゃって。「なんじゃこりゃ~、全然違うわ~」って。だからもう、音に関しては秋窪さんにお任せした感じでしたね。細かいところはいくつか言いましたけど、全体のサウンドに関してはもう申し分ないものだったので。

-- で、前作もライブからかけ離れてないオーガニックなサウンドが印象的だったけど、今回はまたさらにライブ感が強まっているようにも感じたんですよ。そのへんの意識はあった?

それも今回のレコーディングにアナログを使ったので、それが滲みでた結果じゃないかなと思いますけど。

-- 改めてライブ録音っぽく録りたいと主張したわけではなく。

それはもう自分のなかでは必然だったので。それが当たり前のことだと思っていたので、改めて言ったりはしてないですね。

-- 前作のレコーディングのときと変えたところ、変わったところはほかにあります?

う~ん。まぁ細かいことを言えば、曲によってピックを変えたりとか(笑)、そういうのもあるんですけど。あ、できたものに関しての聴き方が変わりましたね。テイクを選ぶときに全体を見れるようになった。例えば前作だったら「それ、ブルーグラス的に考えると、ないから嫌です」とか言ったりしてたんですけど、今回は全体を見てOKならOKだと思えるようになったというか。そういう見方がプレイにも繋がったし。

-- ブルーグラス的な部分は、あえて言わなくても自分のなかにあって滲み出るものだから……。という自信が持てたからじゃない?

まぁ、大人になったんですかね(笑)。っていうのと、今回はいい曲ができたという前提があったので、その曲の核心になる部分をしっかり伝えたいという意識のほうが大きくて。最終的にここさえ伝わればいいっていうのが自分のなかではっきりしてたので、ブルーグラス的にここはどうこうみたいなことはあんまり気にならなかったんですよ。

-- 楽曲全体の聴き心地のよさを第一に考えた。

そうです。

-- 従ってブルーグラス的なバックボーンの反映のさせ方が前作とはだいぶ違ってるよね?

はい。前のアルバムに入ってた、もろブルーグラス・チューンみたいに狙った感じはないですね。けど、「夏の正体」のギターのストロークの感じとかは、ブルーグラスをやってる自分にしか出せないものだと思うし。そういうふうに随所随所で意識せずとも滲みでてるところがあるんで。

-- そうだね。それこそダフト・パンクの「One More Time」をこういうアレンジでやれる人はほかにいないだろうし。そもそも、こういうふうにやろうとする人もいないだろうけど。

アハハハハ。ですよね。確かにこの発想はブルーグラス・ミュージックを通ってきたからっていう。で、ロックとかダンス・ミュージックとかも好きだし。

-- ってことだよね。だからこの1曲を聴いただけでも、齊藤ジョニーというミュージシャンの個性がよくわかるという。

そうですね。カヴァーの面白みってそういうところだと思ってて。一番そういうものが見えやすい。

-- うん。それからヴォーカルに関してだけど、今回は曲によって歌い方にもだいぶ変化をつけてるでしょ?  「Family Affair」みたいに巻き舌っぽく歌ってるのもあったり。いろいろやっちゃおう!っていう遊び心が感じられる。

はい。今回は歌録りもすごく楽しくて。ライブを重ねてきたからか、ヴォーカルってこんなに気持ちいいもんなんだって感じていて、だからもっといろんなヴォーカル・スタイルに挑戦していきたいって気持ちが強まってるんですよ。最初にも言ったように、歌で気持ちよくなることを最近覚えたというか。「わ、気持ちい~」みたいな感じになることが多くなってて(笑)。あの、最近、尾崎紀世彦さんが亡くなられたじゃないですか。ちっちゃい頃に何度かテレビで見てたんですけど、久々に動画で見てみたら、歌がうますぎてビックリしちゃって。「このヴォーカルのニュアンス、このリズム感、ハンパないな~」ってことに自分が気付けるようになったんでしょうね。前までは見えなかった部分が、ライブを重ねてきたおかげですごく見えるようになった。だから今は聴くのも楽しいし、歌うのも楽しいし、って感じなんですよ。

-- なるほど、確かに今回は気持ちよさそうに楽しんで歌っているのがよくわかる。歌にしても言葉にしても自由度が高くなってるし、より開放的なモードで作られた感じがしますね。

そうですね。「D.P.T.」なんかでは、わざとヘロヘロなところを残して、声が裏返ってるところもニュアンスを出すためにそのまま残したりしてるし。楽しかったですね、今回。

-- で、開放感と昂揚感のある「夏の正体」で始まり、4曲目まではノリのいい曲が続き、そこからスロー曲とかカヴァー曲があって、最後は「ハーヴェスト」という味わい深いスローで締めるという曲順がまたすごくよくて。アルバム・ミュージシャンであることの拘りがそこにもでてるよね。

ああ、嬉しいですね。ありがとうございます。やっぱりアルバムで通して聴いていただきたいという思いが強いので。

-- この先CDというフォーマットがなくなっても、これは齊藤ジョニーというアーティストが2012年に情熱と誠意をもって作ったアルバムとして長く残ると思う。

うわぁ、嬉しいですね。でも、タイトルを自分の名前にしたのもそういうことなんですよ。まさに今言ってくださったように、20年後にこのアルバムをたまたま聴いてくれる人がいたとして、そこに意味ありげなタイトルが付いてるよりも、名前をバーンって付けたほうが手に取りやすいかもしれないし。これが齊藤ジョニーの音楽なんだって思ってもらえればいいっていうか。レッド・ツェッペリンの『レッド・ツェッペリン』とか『レッド・ツェッペリンⅡ』とか、なんかそういうものでいいのかなって思って。

-- だから前作が『I am Johnny』で、今回が『齊藤ジョニー』。次はどうする?

まあ、それを考えてもらいながら聴くのも面白いかなっていうことで。そのうち『I was Johnny』とか出したりして。“昔はジョニーだった”みたいな。アハハハハハ。

 

 

<インタビュー・文 / 内本順一

 

 

←前のページ 1 2

http://musicshelf-mt.kanshin.jp/cgi-bin/mt/mt.cgi?__mode=view&_type=entry&id=7679&blog_id=7&saved_added=1
saitojhonny_j.jpg

New Album
 『齊藤ジョニー』

2012.7.25 ON SALE!

UICV-1020 / ¥3,000(tax in)

 

収録曲

1.夏の正体
2.D.P.T.
3.Happiness
4.お世話になります
5.Helpless
6.ぼくの友だち
7.Family Affair
8.One More Time
9.アカプルコの出来事
10.星の終わりのラブソング
11.絶品ガール
12.ハーヴェスト

 

齊藤ジョニー
昨年、デビュー前ながらTaylor Swiftのオープニングアクトに抜擢され、その時のパフォーマンスが話題となり、SUMMER SONIC、荒吐フェスなどに出演。デビュー後はNew Acoustic Campなど本格アコースティック野外フェスに「Saito Johnny & Shoestrings」と名づけたバンドスタイルで登場。ギター、マンドリン、ウッドベース、フィドルという日本では異色の「弦楽器のみ」のバンド編成で、他とは一線を画すパフォーマンスで各会場を沸かせた。昨年10月にリリースしたデビュー・アルバム「I am Johnny」はロック・レジェンドをルーツに、カントリー、ブルーグラスまで幅広いルーツ・ミュージックへのオマージュが存分に込められている。強烈なバンジョープレイやバスドラムを踏み倒すブルーグラスなロックナンバーが鮮烈な印象を残す一方で、その根底にはJ-POPに対する強い想いが伺える。
2012年3月、オースティンで開催された世界最大のミュージックショーケース・SXSWに出演。JAPAN NITEではHot Club Of CowtownのElana James(Fiddle)&Jake Erwin(Bass)と共演、帰国後はDavid BrombergのJapanTour仙台公演で共演など、海外アーティストとの交流も多く、どちらも見ごたえのあるセッションを披露し、「より攻撃的なアコーステック・ミュージック」「音楽の新たな扉」に果敢に挑んでいる。
今春開催の荒吐フェスではGrapevineの田中和将と齊藤ジョニーのプロデュース・アレンジャーでもある高野勳のユニットPermanentsと共演し、会場を沸かせた。この他にも新潟Rainbow ROCK Market、名古屋SAKAE SP-RINGなどの各地都市型フェスにも積極的に参加。併せて7月には新作アルバムの発売も決定しており、今後の動向から目が離せない。

 

オフィシャルHP
http://saitojohnny.com/