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特集 「ザ・たこさんの無限大記念日2」完全版

特集 「ザ・たこさんの無限大記念日2」完全版

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【Part.2】
ライター・内本順一によるザ・たこさん応援ブログ
『たこ汁。ザ・たこさん ~武道館への道~』連動企画
『ザ・たこさんの無限大記念日2』@大阪・服部緑地野外音楽堂
超ロングなライブドキュメント。

タイトル
ザ・たこさん、結成21年目の自主企画フェス。
暑くて熱かった1日に生まれたドラマ

「無限大記念日、来年もやろうや」。昨年10月2日、ザ・たこさんが初めて渋谷クラブクアトロでワンマン・ライブをやったあとの打ち上げの席で、オカウチポテトやオーサカ=モノレールの中田亮さんらとそんな話をしたことを覚えている。「2回3回と、続けるべき」「こういうのは続けてこそ価値がある」といったことを中田さんや僕は少々酔いながら言い、オカウチポテトはといえば「そうですねぇ、やれたらいいですねぇ」などと応じつつ、しかし「やります!」とは明言せずにわっはっはと笑っていたものだった。

2013年9月28日(土)。『ザ・たこさんの無限大記念日』と題されたフェスが兵庫県三田市にあるキャンプ場、三田アスレチックにて行われた。大阪のファンク~ソウル・バンド、ザ・たこさんの結成20周年を記念して開催された野外フェス。チケットが伸び悩んでいるとも聞いていたが、フタを開けてみれば大盛況で、フェスというものに出るのが初めてだった田中星児さんに始まり、オーサカ=モノレール、ギターパンダ、マキタスポーツ、チャラン・ポ・ランタンといった出演者たちはみな大熱演。緑豊かなキャンプ場という場所自体の居心地のよさに加えて好天にも恵まれ、それはとても素晴らしいフェスになったのだった。だから、それを体験したひとは誰もが2回目の開催を望んでいた。もちろん僕も。なぜなら最高に楽しくて居心地のいいフェスだったから。というのもあるけど、これが2回3回と続いていけばザ・たこさんというバンドがさらに面白く、あるシーンのなかでより重要な存在になっていくだろうとも思ったからだ。ザ・たこさんのようなバンドが毎年フェスをやり、そのフェスが育っていくのと同時にバンド自体とその存在価値も大きくなっていくこと。それはある種の「希望」に感じられた。

だが、このフェスの立案者であり主催者でもあるザ・たこさんのベーシスト、オカウチポテトは、クアトロ公演の打ち上げの時点ではまだ2回目をやるかどうか迷っていた。今年7月に話を聞いたとき、彼はその頃を振り返ってこう言っていた。
「正直、しばらく迷ってたんですよ。また三田まで来てもらうのはさすがにどうなんだろうと思って。去年はザ・たこさん結成20周年やから成立したわけだけど、次は20周年とちゃうから、やるならどういう切り口にすればいいのかっていうのもあったし。年末近くまで迷ってましたね」
また、このフェスの1回目は、オカウチがバイトで貯めたお金を頭金にして会場を押さえ、まさしく私財をなげうって実現させたもの。フェス自体は成功に終わり、オカウチも充足感を得たことだろうが、しかし残った借金の額はけっこうなものだったようだ。だからいろんなひとから「またやってくださいよ」と言われる度に、彼は「いや、やってくださいよ」と返していたという。簡単にまたやってくださいとか言うな!……というような気持ちも、その頃はあったのかもしれない。だが、多くのひとが自分に言ってくる「すごくいいフェスでしたね」「またやってください」の言葉は彼の心にどんどん蓄積され、次第に気持ちが動き、かたまっていった。そこまで言われてやらずに済ませられるか、と。彼はこう言っていた。
「始めは、やってくればっかり言ってないでちょっとは手伝ってくれよって気持ちもあったと思うんです。でも、もう見ててくれてるだけでええやんって気持ちに変わっていった。この電車、どこに行こうとしているのかわからんけど、乗るひとは乗って、見るひとはずっと見とってくれって気持ちになったんです」

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Photo by Hiroko Fukagawa

問題は場所だった。また三田のキャンプ場でやるのは設営的にもアクセス面でもたいへんであることは1回目の経験からわかっていた。そこで発想を転換させて出てきた場所が、北大阪急行(御堂筋線直通)「緑地公園」駅から徒歩5分という、アクセスのしやすい「服部緑地野外音楽堂」。三田のときのような“遠足感”はなくなるが、とにかく足を運びやすい場所ということを第一に考え、オカウチはまずそこをおさえた。そこから一気に進展。「来年もやるぞ!」というモードにいよいよなり、12月27日に下北沢mona recordsで行われたワンマン・ライブ<元祖!ザ・タコサンアワー 東京編>では「決定!!  ザ・たこさんの無限大記念日2。2014年9月6日(土) @服部緑地野外音楽堂」と筆で書かれた簡易フライヤーが号外として配られた。これがつまり、ザ・たこさんのメンバーたちにとっては戦いの狼煙であったわけだ。そこから彼らの『ザ・たこさんの無限大記念日2』に向けた日々が始まった。1回目のときと違ったのは、安藤や山口も今回は初めから大ノリ気だったということだ。

前回はオカウチが自らの熱い思いを爆発させつつ準備を進め、出演者のオファーも自分ひとりでしていった。本当にやるのか、やれるのか、と躊躇していたほかのメンバーの了承を待たず、半ば暴走気味につっ走ってことを進めていったのだ。が、今回は早くから全員揃って(山口曰く「ノンアルコールで」)ミーティングを重ね、出演者もみんなで決めて交渉に入ったという。初めは集客のことを考え、芸能人よりのひとを呼ぶ案もあったらしい。が、話し合いの結果、最終的に何よりもライブのよさに定評のあるバンドまたはソロ・アーティストばかりがラインナップされることとなった。オーサカ=モノレール、BLACK BOTTOM BRASS BAND、バンバンバザール、ソウルフラワーユニオンの中川敬、浦朋恵、pug27、金佑龍、そしてザ・たこさん。また、ライブのよさに定評がある……というのとは違うが、第1回目の田中星児に続くレジェンド(?)枠として、「河内のオッサンの唄」で知られるミス花子の出演も決まった。

7月に話したとき、山口しんじはこう言っていた。
「去年の無限大があんなに素晴らしいものになったのは、やっぱり本気で音楽やってるひと、本当にグッドミュージックが大好きで頑張ってるひとたちがあれだけ集まってくれたからやと思うんですよ。インディーであっても、みんな本気で頑張っていいライブしよるからお客さんが集まるわけで。だから今回も本気で頑張ってて、いいライブを見せるバンドを僕は呼びたかった。そこが一番大事やと思うから。そういう意味で、僕はもう今回の出演者に関してはほんまにガッツポーズなんです」
その通りだと僕も思った。グッドミュージックが何よりも好物で、いいライブを観ることに何より幸福を感じるひとたちにとって、まさに“間違いない”顔ぶれ。ライブに全てを賭け、それを生きがいに感じているような、そういうアーティストばかりがズラリ揃ったのだから。

だがしかし、前売りチケットは今回もなかなか売れなかった。第1回目が4500円だったのに対し、今回は3100円という買いやすい(行きやすい)料金設定にしたにも関わらずだ。ザ・たこさんを愛し、昨年「突撃! となりの女風呂(on a blow!!)」の12インチを発売したNAG TIME RECORDは、少しでもチケットが売れればと助力。前売りを買ったひと(限定300名)に、当日会場でザ・たこさんのニューCD(新曲「見た目はZZトップ」にボーナストラックとして代表曲などのライブテイク7曲を加えたもの)を渡すという太っ腹な案を打ち出した。しかもそれはオマケ的なCD-Rなどではなく、しっかりジャケにも凝ってプレスされた正規盤。ザ・たこさんはその新曲を気合い入れてレコーディングし、そして去年に続き「ローリング大作戦」を開始した。ローリング大作戦。それは大阪の飲食店などをまわって、チケットを扱ってもらったり、ポスターを貼らせてもらったり、フライヤーを置かせてもらったりする直接訪問型の販促大作戦だ。NAG TIME RECORD、多くの飲食店や楽器店、FM OSAKAを始めとするラジオ局、それにザ・たこさんが歌にまでした大スポこと大阪スポーツ誌までが、無限大記念日のために、ザ・たこさんのために、一肌脱いだ(大スポは「ザ・たこさん 魂の叫びを聞け」という見出しでデカデカと記事を載せた)。みんなの愛に支えられたバンド、ザ・たこさん。そうしたことによって公演間近に前売りはだいぶ動いたようだった。がしかし、それでもまだ目標枚数には遠く及ばないと、僕はオカウチから聞いていた。果たしてこのまま当日を迎えるのか。服部緑地野音はちゃんと埋まるのか、ガラガラなのか、どうなのか。とにかく行ってみないことにはわからない。というわけでワクワク感と共に若干の不安も抱えながら、9月6日……「無限大記念日2」の開催当日を迎えたのだった。

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