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SAM LEE Special Interview

SAM LEE

Special Interview

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イングランドの伝統音楽(トラヴェラーズという人たちに古くから伝わる歌)をコンテンポラリーな感覚で聴かせるサム・リーが来日。インタビューの機会を得たのだが、こちらに強く伝わって来たのは、彼の古い音楽に対するリスペクトだ。そんな想いがあるからこそ、文化やしきたりが異なる私たちの心と共鳴するのだろうか。ちなみに、インタビューはサムいたっての希望で屋外に椅子を並べて行った。すると、先ほどまで降っていた雨が止み、涼やかな風が吹いてくる。そして、インタビューが終わったとたん、今度は土砂降りに。サムの音楽同様、どこか不思議な時間だった。

–先日(9/22)のショーケースライブ、拝見しました。日本にはなかなかなじみのない音楽ジャンルですが、なぜか多くの人たちが心を奪われていたように思います。サムさんもきっとそれを感じたに違いありません。いきなり核心を突くような質問ですが(笑)、それはなぜだと思いますか?

イングランドなどで、フォークミュージックのなんたるやを知らない人たちからよく「感動した」と言われるんだ。多分それは、自分たちが忘れていた過去の何かを思い出すからなんじゃないかな。ただ、その要素は日本のリスナーには当てはまらないことだよね。そうなると、日本の人たちが伝統的なものや古いものの対する意識が非常に高いからだと思う。僕の音楽へのアプローチは、古いものと新しいものをマリッジさせることにあるんだ。そこにはもちろん現代性も必要。だけど、そこで終わらせるのではなく、これまで連綿と続いて来た、そしてこれからも続いてゆくであろうものを結びつけたいという気持ちが強いんだ。その部分が日本人の感性に響くのかもしれないね。

–では、そのようなアプローチをしようと考えたきっかけを教えてください。

25歳のころにフォークミュージックに出会い、それからリサーチを始めたんだ。古い音楽をフィールドレコーディングしたアーカイブも聴いたんだけど、そこに収められていたのは、トラベラーズ(アイルランドに古くから住む漂白民)や農夫、漁師たちの歌だったんだ。今まで聴いて来た音楽とは全く違う。商業的な要素は全くなく、好きで歌っているそれだけ。こんな音楽の作り方があるんだ、と目から鱗だったね。そこから全てが始まっているんだ。

–あなたの音楽を初めて聴いたとき、ある一本の映画を思い出したんです。カルト的な人気がある『ウィッカーマン』です。そこで使用されている音楽の雰囲気に近いような気がして…。

面白い指摘だね。確かにあの映画は優れた創作物なんだ。というのも、本来の伝統文化や伝統的な歌、それに伝承をある意味、盗用しているんだ。そうすることで新たな神話を描き出している。映画としては確かに優れているけど、文化全体を誤認させたという点では、怒っている人もいるのも確かだね。僕が自分の目で見て来た世界を正しく表現しているとは言えないね。ただ、イギリスのフォークミュージックシーンも実は『ウィッカーマン』的状況にあると思う。要するに本当の真実や良さというものが伝わらないで、歪んだ形で、ある意味ファンタジー化されたものにされてしまっているんだよね。

–資料を拝見すると、トラベラーであるスタンリー・ロバートソンさんが師とのことですね。音楽で生計を立てている方ではないんですよね。

約40年間漁師をやっていたよ。とても貧しい家庭で育ったんだ。歌うことで少しはお金を頂いたことはあるそうだけど、とてもそれだけで暮らせるほどではなかったんだ。そしてある程度、歳を取ってから大学や学術研究者が彼の価値に気がついて、地元の大学の教授として迎え入れられ、それから音楽で収入を得られるようになったんだ。さらにはスタンリーの奨学金制度も設けられ、現在でもそれを得て民族音楽を勉強している人たちがいるよ。だから、彼はこの未知の素地を気づいた人だといえるね。でも、いたずら好きでワイルドで、子供みたいな人なんだ。そんな人間的な魅力も持っているんだよ。

–そんな彼からどのように音楽を教わるんですか? たとえば口頭だったり、譜面を使ったりして?

教えるときは至って真剣だったよ。膝を付き合わせるようにして、彼が歌ってくれるのを聴いて、さらにレコーディングすることもできた。そして、その背景にある、知識や物語を全て話してくれるんだ。また、時々、歌が生まれたスコットランドにも連れて行ってもくれた。その風景を見ながら、800年前、1000年前に生まれた歌のことを話すんだ。

–そうした伝統を継承しながら、サムさんは新しい音楽を創作しているんですね。それを強く感じたのは、イギリスは元から存在しない楽器や音色を取り入れていることです。先日のライブでは琴を使用されていましたね。音の響きやサウンドにも新しさを感じました。その発想はどこから来るのでしょうか?

難しい質問だね(笑)。僕の性格によるところが大きいのかな。古い曲はいつ聴いても、何度聴いても飽きないんだけどね。やっぱり現代のアーティストとしては常に何か新しいことにチャレンジしていたいんだ。新しいことを生み出すことに非常にハングリーだと思う。琴は自分では演奏できないけど、あの音色をどのように自分の音楽とマッチさせるか、そうしたキュレーション的な感覚が僕は長けているんじゃないかな。

–サムさんは自分でアウトサイダーをおっしゃっていますよね。今の発言を聴くと、伝統に根ざしながら、どこか俯瞰して音楽を見ているようなスタンスなんだとわかります。

過去のシンガーと彼らを育んだ伝統に対する敬意だけは絶対に忘れたくない。それ以外に対する忠誠心は全く持っていない。これはちょっと大げさな言い方だけど、実際に僕の音楽を聴いてもらいたい、認めてもらいたいと思っているのは、どこの委員会でもないし、モダンフォークミュージックのコミュニティーでもないんだ。さっき言った『ウィッカーマン』的状況に組するつもりは全くないよ。

–そんなスタンスにぴったりの人物が、民族音楽や現代音楽に造詣の深いペンギンカフェのアーサー・ジェフスであり、新作のプロデューサーも務めていますね。彼とは初めて組んだんですか?

そう、不思議なことにね。お互いコンサートは見たことはあったんだけど、握手をしたのは今回が初めて。(セカンドフルアルバムは)もう間もなくマスタリング作業に入るところだね。

–楽しみにしています! それに12月には再来日も予定されていますから、またお会いしたいですね。


【来日情報】サム・リー& フレンズ12月に来日!

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ヴォイス・オブ・グラウンド
12月10日(水)渋谷クラブクアトロ
18:00開場/19:00開演 / 前売5,800円(税込/ドリンク別/自由/整理番号付)
出演:サム・リー&フレンズ(イングランド/トラヴェラーズ)
リアム・オ・メンリィ(アイルランド)
ゲスト:OKI(アイヌ/トンコリ)& 上間綾乃(沖縄/シンガー)
サム・リーとリアムのソウルフルなヴォーカル競演が遂に実現! ゲストにアイヌ伝統楽器トンコリのOKI、沖縄のシンガー上間綾乃が加わる。 4つの土地から生まれた、4人の革新者によるスペシャル・ライヴ!! イングランド、アイルランド、アイヌ、沖縄・・・。それぞれの土地から生まれた古来の魂が、新たな歌となって現代に甦る!

ケルティック・クリスマス2014 ~アメイジング・ヴォイス~
12月6日(土)すみだトリフォニーホール
16:30開場/17:30開演
S席6,500円 A席5,000円 B席4,000円(税込)
出演:アヌーナ/サム・リー&フレンズ/リアム・オ・メンリィ

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サム・リー&フレンズ with 雅楽 ~ イングランド伝承歌と和楽器の出会い
12月11日(木)マウントレーニアホール渋谷 プレジャープレジャー
18:00開場/19:00開演 / 全指定席 3,000円(税込)
出演:サム・リー&フレンズ(イングランド/トラヴェラーズ)
東野珠実(笙)、稲葉明徳(篳篥)
<トーク・ナビゲーター> 小沼純一
イングランドの伝承歌と和楽器の融合が生み出す、時空を超えたアートな音世界

チケット
【2公演セット券】DVD付き!※取扱い:プランクトンのみ
12/6@すみだ(S席6,500円)+12/10@渋谷(5,800円)=定価12,300円
→ 特価11,000円


 

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