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Emi Meyer  Interview & Playlist 銀河のスカートをちょっぴりめくって

Emi Meyer  Interview & Playlist

銀河のスカートをちょっぴりめくって

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京都で生まれ、シアトルで育った注目のシンガー・ソングライター、エミ・マイヤー。日本人の母とアメリカ人の父を持ち、2つの母国を行き来しながら活動する彼女は、ノラ・ジョーンズにも通じる洗練されたソングライティングとどこか〈和〉のテイストを感じさせる懐かしい声質で、幅広いリスナーを惹きつけてきた。2009年のデビュー以来、オーガニックで温もりのある音作りを追求してきたが、4枚目のフルアルバム『ギャラクシーズ・スカート』では新機軸に挑戦! 初の外部プロデューサーを起用し、躍動感あふれるバンド・サウンドと瑞々しい歌を聴かせてくれている。繊細で優しいメロディーとポップで前向きなたたずまいが絶妙にミックスされた内容は、間違いなく新境地。34分というギュッと凝縮されたサイズと相まって、何回も繰り返し聴きたくなる。〈日常に宿る神秘〉と〈新しい一歩を踏み出すスリル〉を描いた傑作はいかに生まれたのか──。日本語も流暢な彼女に、まずそんな質問からぶつけてみた。

──これまでのアルバムはすべてセルフ・プロデュースでしたが、今回はプロデューサーにデビッド・ライアン・ハリスを迎えていますね。なぜこのタイミングで、彼と共同作業をしようと?

自分のプロデュース・スタイルにちょっぴり飽きていたというか、今までと違うアレンジに挑戦してみたかったんですね。ミュージシャンとして、もう1つ成長したかったというか…。ほら、ピアノや歌って誰かに習うこともできるけど、プロデュースの教室ってないでしょう。だから誰か信頼できる人にお願いして、見本にするのが一番いいかなと。その意味では今回、デビッドさんはプロデューサーであると同時に、先生であり、メンター(助言者)的な存在でもありました。

──そもそもデビッドさんとの出会いは?

大学2年生だったかな。曲を書き始めたばかりの頃、Myspaceでビデオクリップを見たのが最初です。ジョン・メイヤーとか、私が好きなL.A.系のシンガー・ソングライターのトップページにたくさん出てたんですよ。で、この人は誰だろうと思って「For You」という曲をクリックしてみたら、すごくよくて。

──聴いてみましたが、とてもいい曲ですね。シンプルな弾き語りだけど、でも静かな躍動感もあって。

ですよね! ミニマムな構成なのに、何一つ抜けていない。メロディーの美しさ、歌詞の内容、ヴォーカルのレンジ。それに加えて、弾き語りのリズム、間の置き方。すべてパーフェクトに噛み合っている気がしたんですね。で、ほとんど直感で「いつかプロデュースしてもらうなら、絶対この人だ」と。

──ジョン・メイヤーやデイヴ・マシューズのサポート・ギタリストを務めたり、ガイ・セバスチャン(人気テレビシリーズ「オーストラリアンアイドル」の初代優勝者)をプロデュースしたり、アメリカでは“超”が付く売れっ子でしょう。

うん。でも一般のオーディエンスよりむしろ、同業者から尊敬される“ミュージシャンズ・ミュージシャン”ぽい存在かもしれない。素晴らしいシンガー・ソングライターであると同時に、ジャム・バンド的なギターもばりばり弾けて。しかもシンプルな弾き語りから手の込んだプロダクションまで、何でもこなせる。私にとっては、その幅の広さが何より魅力的でした。

──実際にアプローチしたのはいつ頃でした?

2011の冬。メールで依頼をして、その何週間か後に返事をもらいました。最初はピアノだけのデモ音源を10曲分送ったんですよ。で、ちょうどL.A.で前のミニアルバム(『LOL』)を録音する時期だったので、彼に直接会いに行って。そのまま、彼のライブのオープニングで何曲か歌ったりして(笑)。サクサク話が進みました。実は彼、私の前作もほとんど聴いてないんですよ。

──へぇ、そうなんだ(笑)。

伝えたのは「アメリカと日本を行き来しながら活動しているシンガー・ソングライターです」「これが4枚目のフルアルバムです」ということくらいで。基本的には、デモ音源だけ聴いてOKと言ってくれました。私の方も、彼のイメージをできるだけ縛らず、楽曲をのびのび自由に膨らませてもらうことが大事だと思っていたので。彼が私の過去にこだわらず、“今”だけを見てくれたのはすごく感謝しています。マネージャーやレーベルを介さず1人でコンタクトしていたので、「これなら遠慮なく遊べそうだ」って思ってくれたのかもしれないけれど(笑)。いずれにしても初対面から、古い友だちと一緒にいるような安心感はありました。

emi_sub02──外部にプロデュースを依頼するからには、いったん身を委ねてみようと。

うん、まさにそんな感じ。中途半端に口を出すくらいなら、自分でプロデュースした方がそれなりの仕上がりになるでしょうし。逆に言うと、ある程度経験を積んで自信ができたからこそ、誰かに料理してもらう度胸も付いたと思うんですよ。そう考えると、デビッドさんは早すぎも遅すぎもしない、絶妙のタイミングで返事をくれたなって、つくづく。

──余計なものは挟まず、純粋に音楽だけで結び付いたというのが素敵ですね。実際、今回の『Galaxy’s Skirt』を聴くと、今までのアルバムとは違ったケミストリーを感じます。スケール感あふれる表題曲のサウンドもそうだし。8曲目「Energy」の後半、ちょっとノイジーなギターがグーッと入ってくる瞬間とか。これまでのアルバムにはなかったスリリングさで…。

そう、そのスリル! まさにそれがほしかったんです。セルフ・プロデュースだと、たまにミュージシャンが「あっ!」と思うようなフレーズを弾いてくれたりするけど、基本的には自分の中に仕上がりのイメージがあるじゃないですか。でもデビッドさんみたいな信頼できるプロデューサーに任せると、「この楽曲が一体どう化けちゃうんだろう」というドキドキ感があって。毎日がクリスマスみたいな感じなんですよ。

──アートワークにもそういうスリル感が満ちていますね。最初に送った10曲が、そのまま収録されたんですか?

レコーディングしたのは7曲かな。後からアルバム全体のバランスも考えて、デビッドさんと一緒に2曲を書き足しました。

──レコーディングは2012年の2月、L.A.のスタジオで行われています。具体的にはどんな手順で進めていきました?

私の方からは「この曲はロックっぽい感じで」とか「こんなニュアンスのビートを入れたい」とか、本当にベーシックな希望だけ伝えて。後はお話しした通り、デビッドさんにお任せでした。彼自身、そういうカジュアルなスタイルが好きみたいなんですよ。最初からディテールにこだわるよりは、まず「こんな感じでどう?」というスケッチを描いて。後はスタジオで、気心の知れたメンバーと演奏しながら作っていく。英語だと“broad strokes”と言うんですが、太めの筆で力強く輪郭を描いていく感じ。で、気が付くと想像もしなかった曲が仕上がっている。

──クレジットを見ると、参加しているミュージシャンも錚々たるメンツですね。アラニス・モリセットからシェリル・クロウ、ベック、ジョン・メイヤー、アリシア・キーズ…。超人気アーティストのバックを務めている人ばかりで。

あ、そうなんだ。デビッドさんからは「L.A.に僕がよく知っているミュージシャンが何人かいるけど、任せてもらっていい?」と聞かれただけで。その辺のことって、実はよく知らないんです(笑)。ただ、いろんなセッションを共にして言葉で説明しなくても分かりあえる仲間だというのは、一緒にいてすごく感じました。えーと、こういうの、日本語で何の呼吸って言うんでしたっけ?

──阿吽です(笑)。

そう、それ(笑)。阿吽の呼吸。

──つまりデビッドさんは、プロデューサーであると共にバンド・リーダーでもあったと。曲ごとバラエティーに飛んだアレンジも印象的でしたが、演奏中の指示もけっこう細かかった?

いえ、そこも同じで。必要なところは具体的だけど、無駄に細かくはない感じ。たぶん彼の中に、引き出しがいっぱいあるんですね。例えばベースラインがイメージとかけ離れていた場合は、「そこはこんな感じでどう?」とさりげなく提示できる。その呼吸が絶妙というか、きちんとコントロールしつつプレーヤーとしての持ち味も引き出してくれるんです。いい意味で教師っぽいのかな…。実際、着ているものも先生みたいでしたし。

──ははは。先生っぽいファッションって、どういうの?

シックなカーディガンとか(笑)。あとは、上品なメガネをかけてたり。あえてかどうか知りませんが、そういう静かなリーダー感があるんですよ。他のミュージシャンも「デビッドはいつも、先生みたいなかっこしてるね」って笑ってましたたし。みんながリスペクトしつつフォローしているのも、いい感じでした。今回、そうやって彼が信頼するミュージシャンにすべてを委ねてみたことで、自分の新しい面を引き出してもらえたと思います。

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